妊娠初期の中絶を考えはじめた際に、いつまで受けられるのかと不安に感じる人もいるでしょう。また、費用はどのくらいか、同意書は必要なのかなど、さまざまな不安が生じるものです。
この記事では、妊娠11週6日までの初期中絶について、方法や費用、受診の流れ、相談先などをわかりやすく解説します。
妊娠週数によって選べる方法が変わるため、まず何をすべきかを確認し、早めに医療機関へ相談しましょう。
妊娠初期の中絶はいつまで可能?
妊娠初期の中絶を考えている場合、まずは妊娠週数の確認が必要です。妊娠週数によって、選べる中絶方法や費用、体への負担、必要な手続きが変わります。
| 妊娠週数 | 中絶の区分 | 主な特徴 |
| 妊娠9週0日以下 | 初期中絶 | 手術または経口中絶薬を検討できる |
| 妊娠11週6日まで | 初期中絶 | 吸引法や掻爬法などの手術をおこなう |
| 妊娠12週0日以降 | 中期中絶 | 入院を伴う処置となり、死産届の提出や火葬が必要になる |
| 妊娠22週以降 | 人工妊娠中絶の対象外 | 法律上、人工妊娠中絶は受けられない |
妊娠初期中絶は妊娠11週6日までが対象
妊娠初期中絶とは、一般的に妊娠11週6日までにおこなう人工妊娠中絶です。子宮内の妊娠組織を取り出す吸引法や掻爬法などの手術がおこなわれます。
妊娠12週0日以降は中期中絶となり、初期中絶とは処置方法が異なります。入院が必要になり、死産届の提出や火葬などの手続きも発生するため、体だけでなく精神面や費用面の負担も大きくなる点に注意が必要です。
妊娠週数がわからない場合は早めに受診する
妊娠週数がわからない場合は、自分で判断せず、医療機関で確認しましょう。
妊娠週数は性交した日から数えるのではなく、最後の生理が始まった日を妊娠0週0日として数えます。ただし、最終月経日から計算した週数が、実際の妊娠週数と一致するとは限りません。
月経不順がある場合や、生理と思っていた出血が別の原因によるものだった場合は、週数がずれることもあります。
医療機関では、超音波検査によって胎嚢(妊娠初期に子宮内で確認できる袋状のもの)の位置や大きさなどを確認します。妊娠週数だけでなく、子宮内に妊娠しているかどうかを確認するためにも、早めに受診しましょう。
中絶するか迷っている場合も、まずは医療機関で妊娠の状態を確認することが大切です。
妊娠初期中絶の主な3つの方法
妊娠初期の中絶方法には、主に以下の3つがあります。
- 吸引法
- 掻爬法(そうはほう)
- 経口中絶薬
どの方法を選べるかは、妊娠週数や体の状態、医療機関の方針によって異なります。
方法ごとの特徴についてくわしく見てみましょう。
1.吸引法
吸引法は、専用の器具で子宮内の妊娠組織をやさしく吸い出す方法です。妊娠初期中絶で広く用いられています。
なかでも電動ポンプを使わず手動で吸引する「手動真空吸引法(MVA)」は、子宮への負担が少ない方法とされており、WHO(世界保健機関)も、安全性の高い方法として推奨しています。
体への負担を抑えたい方は、手動真空吸引法(MVA)を採用している医療機関かどうかを事前に確認しておきましょう。
2.掻爬法(そうはほう)
掻爬法(そうはほう)は、器具(キュレット)で子宮内の妊娠組織をかき出す、長く用いられてきた方法です。
しかし、近年は子宮への負担が比較的少ない吸引法(MVA)が中心になりつつあります。
3.経口中絶薬
経口中絶薬は、2種類の薬を順番に使用して人工妊娠中絶をおこなう方法です。日本では、子宮内妊娠が確認された妊娠9週0日以下の人が対象となります。
最初に、妊娠の継続に必要な働きを抑える薬の服用をおこないます。その36~48時間後に、子宮を収縮させて妊娠組織の排出を促す薬の服用をおこなうという流れです。
2剤目の使用後には、強い下腹部痛や出血のほか、吐き気、嘔吐などが起こることもあります。
また、薬を使用すれば自宅だけで中絶を完了できるわけではなく、医療機関による経過確認が必要です。
医療機関からの距離や居住地域など、一定の条件を満たした場合は、2剤目の使用後に帰宅できることがあります。条件を満たさない場合は、中絶が完了したことを確認するまで、院内待機や入院が必要です。
また、薬を使用しても中絶が完了しない場合もあります。その場合は、吸引法などによる追加の処置が必要です。
なお、経口中絶薬に対応している医療機関は限られます。ルナレディースクリニックでも、経口中絶薬での中絶はおこなっておりません。
妊娠初期中絶の費用相場と保険適用の有無
妊娠初期中絶にかかる費用は、妊娠週数や中絶方法、麻酔、検査内容などによって異なります。
おおよその金額の目安や、保険適用の有無について解説します。
妊娠初期中絶の費用は10万~20万円程度が目安
妊娠初期中絶の費用は、一般的に10万~20万円程度が目安です。
実際にかかる費用には、主に次のようなものがあります。
- 初診料
- 超音波検査や血液検査などの術前検査費
- 手術または薬による処置費
- 麻酔費
- 抗生剤や鎮痛剤などの薬代
- 術後診察費
また、妊娠週数が進むと処置が複雑になるため、妊娠9週以降や11週以降に追加料金を設定している医療機関もあります。予約する際は、初診から術後診察までに必要な総額と、追加費用が発生する条件を確認しましょう。
中絶費用は原則として保険適用外
本人の希望や母体保護法にもとづいておこなわれる人工妊娠中絶には、原則として公的医療保険が適用されません。自由診療となるため、費用は全額自己負担です。
一方、稽留(けいりゅう)流産など、妊娠の継続がすでに止まっており、治療として子宮内の組織を取り除く場合は、保険診療になることがあります。
また、民間の医療保険から給付金を受け取れるかどうかは、中絶の理由や契約内容によって異なります。加入している保険会社や共済へ確認しましょう。
事情によっては費用について相談できる場合がある
性犯罪によって妊娠した場合は、人工妊娠中絶にかかる費用について、公費負担制度を利用できます。
人工妊娠中絶費用のほか、初診料や診断書料、性感染症の検査費用なども公費負担制度の対象です。
条件や手続き、対象となる費用は都道府県警察によって異なります。性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターや、住んでいる地域を管轄する警察へ相談しましょう。
妊娠初期中絶の注意点
妊娠初期中絶は、医師の管理下でおこなう医療処置です。しかし、処置後には出血や腹痛が起こるほか、まれに感染や子宮の損傷などの合併症が生じます。
体調に問題がないように感じても、術後診察まで受けることが大切です。処置後の過ごし方や受診が必要な症状について、事前に医師へ確認しておきましょう。
出血や腹痛が続くことがある
中絶後は、数日から1~2週間ほど、生理に似た出血や茶色い出血が続きます。また、子宮がもとの状態へ戻る際に収縮し、生理痛に似た腹痛が起こることもあります。
出血や腹痛の程度には個人差もありますが、次のような症状がある場合は、処置を受けた医療機関へ連絡してください。
- 医療機関から説明された量を超える出血がある
- 鎮痛薬を使用しても強い腹痛が続く
- 発熱がある
- 出血やおりものから強いにおいがする
- めまいやふらつきがある
受診が必要となる出血量や体温の基準は、医療機関によって案内が異なります。処置前に緊急時の連絡先とあわせて確認しましょう。
子宮を傷つけたり追加処置が必要になったりすることがある
中絶手術では、まれに子宮に傷や穴が開く子宮穿孔や、妊娠組織の一部が子宮内に残る内容物遺残も起こることがあります。
妊娠組織が残っていると、出血が長引いたり感染を起こしたりする可能性があります。残っている妊娠組織の量や出血の状態によって、薬による治療や再手術が必要です。
経口中絶薬で中絶が完了しなかった場合は、吸引法などによる追加処置が必要です。異常を早期に発見するためにも、指定された術後診察を必ず受けましょう。
| 【中絶後の性行為はいつから再開できる?】性行為を再開できる時期は、出血や腹痛の状態、子宮の回復状況によって異なるため、注意が必要です。 中絶後は、生理が再開する前に排卵することがあり、避妊せずに性行為をすると、次の生理を待たずに妊娠する可能性があります。 次の妊娠を希望しない場合は、性行為の再開時期と避妊方法について、術後診察の際に医師へ確認しましょう。 |
妊娠初期中絶の流れ
妊娠初期中絶は、受診した当日に必ず処置を受けられるわけではありません。
初診で妊娠週数や妊娠の状態を確認し、中絶方法や費用、注意点について説明を受けます。その後、必要な書類を準備し、処置と術後診察を受けるのが一般的な流れです。
では、妊娠初期中絶の流れについて、くわしく解説します。
1.受診して妊娠週数や中絶方法を確認する
最初に、母体保護法指定医がいる医療機関を受診し、妊娠週数と妊娠の状態を確認します。
診察で確認するのは、以下のような項目です。
- 最終月経日
- 妊娠検査薬の結果
- 出血や腹痛の有無
- 服用中の薬
その後、超音波検査によって、子宮内に妊娠しているか、妊娠週数がどの程度かを確認します。検査結果をもとに、選べる中絶方法や費用、処置を受ける日程について説明を受けます。
2.同意書や必要書類を準備する
中絶を受ける前には、医療機関から渡された同意書などの必要書類を準備しましょう。
同意書には、中絶方法や考えられるリスクについて説明を受けたうえで署名します。必要な署名や書類は、本人の婚姻状況や事情、医療機関の方針によって異なります。
未成年の場合、法律上、保護者の同意が一律に必要と定められているわけではありません。ただし、医療機関によっては、保護者の同意や同伴を求めます。
配偶者と連絡が取れない場合やDV、離婚協議中など、同意を得にくい事情がある場合は医療機関へ相談してください。
3.処置当日は医師の指示に沿って過ごす
中絶手術を受ける場合は、麻酔を安全に使用するため、処置前の飲食や水分摂取を制限されます。普段服用している薬がある場合も、自己判断で中止せず、事前に医師へ確認しましょう。
処置後は、麻酔の影響や出血、腹痛の状態を確認するため、院内で休みます。体調に問題がなければ日帰りできますが、麻酔を使用した当日は、自動車や自転車を運転できません。
経口中絶薬を使用する場合は、指定された日時に来院して薬を使用し、医療機関の指示にしたがって経過を確認します。
処置当日の持ち物や来院時間、付き添いの必要性や帰宅方法は、あらかじめ医療機関へ確認しておきましょう。
4.術後診察で子宮の状態を確認する
術後診察では、子宮内に妊娠組織が残っていないか、出血や感染の兆候がないか、子宮が順調に回復しているかが確認されます。
出血や腹痛が軽くても、自己判断で再診を取りやめてはいけません。医師から指定された時期に必ず受診しましょう。
中絶後に起こりやすい心身の変化
中絶後は、体調や気持ちに変化が現れることもあります。起こりやすい変化について確認しておきましょう。
つわりや胸の張りが続くことがある
中絶後も、吐き気やだるさ、眠気、胸の張りなど、妊娠中に現れた症状がしばらく残ることもあります。
これは、中絶後すぐに妊娠に伴うホルモンの状態がもとへ戻るわけではないためです。通常は時間の経過とともに落ち着きます。
ただし、症状が長く続く場合や、強い腹痛、発熱、多量の出血などを伴う場合は、妊娠組織が残っている可能性や、感染を起こしているおそれがあるため、注意が必要です。自己判断で様子を見続けず、医療機関へ相談してください。
不安や落ち込みが続くことがある
中絶後は、悲しみや罪悪感、怒りなど、さまざまな感情が現れることもあります。異なる感情が同時に生じたり、日によって気持ちが変わったりすることもあるでしょう。
すぐに気持ちを切り替えられないからといって、自分を責める必要はありません。眠れない、食事を取れない、気持ちが沈んで日常生活に支障が出ているなど、つらい状態が続く場合は、医療機関や相談窓口へ相談しましょう。
中絶を周囲に相談できない場合の相談先
中絶について家族やパートナーに話せない場合でも、一人で抱え込む必要はありません。
まずは妊娠週数や体の状態を確認できる医療機関へ相談することが大切です。すぐに受診することが難しい場合や、受診先を決められない場合は、匿名で利用できる妊娠相談窓口もあります。
| 相談先 | 主に相談できること |
| 母体保護法指定医がいる産婦人科・レディースクリニック | 妊娠週数、中絶方法、費用、同意書、処置後の体調 |
| にんしんSOS性と健康の相談センター | 妊娠への不安、受診先、今後の対応、周囲への伝え方 |
| DV相談ナビDV相談プラス性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター | 身の安全、医療機関の受診、公費負担制度、警察への相談 |
1.母体保護法指定医がいる産婦人科・レディースクリニック
妊娠している可能性がある場合に、まず相談したいのは、母体保護法指定医がいる産婦人科やレディースクリニックです。
医療機関では、妊娠しているかどうかや妊娠週数を確認したうえで、選べる中絶方法や費用、必要な書類について説明を受けられます。
家族やパートナーに話せていない場合や、医療機関からの電話や郵送物が不安な場合は、予約時に伝えておきましょう。連絡方法や支払い方法などについて、事前に確認できます。
2.匿名で相談できる窓口
身近な人に相談できない場合は、にんしんSOSや性と健康の相談センターなど、匿名で利用できる窓口への相談を検討してみましょう。
妊娠しているかもしれない不安だけでなく、医療機関の探し方や家族への伝え方、今後どのように対応すればよいか決められない場合にも利用できます。
未成年でも相談可能です。今の状況や自分の気持ちを整理するためにも、一人で抱え込まず相談しましょう。
3.DVや性被害を相談できる専門窓口
配偶者やパートナーから暴力や支配を受けている場合は、DV相談ナビやDV相談プラスなどの専門窓口へ相談しましょう。DVには身体的な暴力だけでなく、避妊に協力しない、妊娠や中絶を強要する、受診を妨げるなどの行為も含まれます。
性犯罪や性暴力による妊娠の可能性がある場合は、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターへの相談が可能です。医療機関の受診や中絶費用の公費負担、警察への相談などについて支援を受けられます。
現在も暴力を受ける危険がある場合や身の安全を確保できない場合は、警察へ相談してください。
妊娠初期中絶に関するよくある質問
妊娠初期中絶を考えていると、入院の必要性や将来の妊娠への影響、生理が再開する時期など、さまざまな疑問が生じます。
ここでは、妊娠初期中絶についてよくある質問に回答します。
1.妊娠初期中絶では入院が必要ですか?
妊娠初期の中絶手術は、一般的に日帰りで受けられます。
処置後は、麻酔の影響が落ち着き、出血や腹痛などに問題がないことを確認してから帰宅します。ただし、妊娠週数や体調、持病によっては、入院や長時間の院内待機が必要です。
経口中絶薬の場合も、居住地域や医療機関までの距離などの条件によって、帰宅できる場合と院内待機が必要な場合もあります。
受診時に、処置当日の流れや滞在時間、帰宅の条件について確認しましょう。
2.中絶すると妊娠しにくくなることはありますか?
妊娠初期の中絶を受けたことだけで、必ず将来妊娠しにくくなるわけではありません。
適切な方法で処置を受け、術後に問題なく回復すれば、その後の妊娠には基本的に影響しません。
ただし、まれに子宮穿孔や感染が起こります。合併症を放置すると、その後の妊娠に影響する可能性があるため、発熱や強い腹痛、多量の出血などがある場合は早めに受診してください。
術後診察を受け、子宮が順調に回復していることを確認することも重要です。
3.中絶後の生理はいつ再開しますか?
中絶後の生理再開時期は、一般的に処置から1~2か月程度です。ただし、再開する時期には個人差があります。
中絶直後の出血は、通常の生理とは異なります。出血が一度止まった後に生理が始まることもあるため、自分では区別しにくいでしょう。
生理が長期間再開しない場合や、出血や腹痛が続いている場合は、医療機関を受診してください。
4.プライバシーは守られますか?
医師や看護師などの医療従事者には守秘義務があり、診療で知った内容を、本人の同意なく第三者へ伝えることは原則としてありません。
ただし、医療機関からの電話や郵送物、家族が確認できるクレジットカードの利用明細などから、受診したことを知られることがあります。
家族やパートナーに受診を知られたくない事情がある場合は、予約時に伝え、電話をかけてもよい時間帯や郵送物の有無、支払い方法などを確認しましょう。
未成年の場合や、本人の安全に重大な危険がある場合には、通常とは異なる対応が必要になることもあります。不安がある場合は、受診前に医療機関へ相談してください。
妊娠初期中絶に不安がある場合は一人で抱え込まず相談を
妊娠初期中絶は、妊娠11週6日までにおこなう人工妊娠中絶です。妊娠週数によって、選べる方法や費用、体への負担、必要な手続きが変わります。
妊娠初期の中絶方法には、吸引法や掻爬法、経口中絶薬があります。ただし、経口中絶薬を使用できるのは、子宮内妊娠が確認された妊娠9週0日以下の場合です。
費用は10万~20万円程度が目安で、原則として公的医療保険は適用されません。医療機関によって検査費や術後診察費が別にかかることもあるため、予約時に総額を確認しましょう。
妊娠週数がわからない場合や中絶するか決められない場合でも、受診を先延ばしにする必要はありません。まずは母体保護法指定医がいる医療機関で、妊娠週数と妊娠の状態を確認することが大切です。
家族やパートナーに話せない場合は、匿名で利用できる妊娠相談窓口があります。DVや性被害が関係している場合は、専門窓口で身の安全や費用、公的支援について相談できます。
今の状況を安全に話せる医療機関や相談窓口へ早めに相談しましょう。



