クラミジアは、性行為の経験がある方ならどなたでもかかる可能性のある病気です。特に、パートナーが複数、もしくは不特定多数の人と性行為をした経験がある場合、クラミジアにかかる確率は上がります。
「もしかしたら私、クラミジアかもしれない」という方に向けて、クラミジアの主な症状をお示しします。クラミジアの可能性が少しでもあれば、すぐに病院を受診しましょう。
クラミジアとは
クラミジアとは、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌の一種が原因となる感染症のことです。自覚症状がない場合が多く、感染に気がつかないことも多いです。放置すると不妊(男女とも)や母子感染の原因となります。
クラミジアは、日本で最も多い性感染症(STD: Sexually Transmitted Diseases)です。性感染症とは、性行為により病原体を含む分泌液(精液、膣からの分泌液など)や血液に触れることで、粘膜や傷口から感染する病気のことです。通常の性行為(膣性交)はもちろんのこと、口腔性交(オーラルセックス:フェラチオ、クンニリングス)や肛門性交(アナルセックス)でも感染します。
クラミジアは感染症法により5類感染症に指定されています。さらに定点医療機関<指定医療機関>より報告される定点把握対象疾患にも指定されており、定点医療機関で診察した医師は国への届出が義務付けられています。
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クラミジアの症状
クラミジアの主な症状と、症状の実際の写真をお見せします。症状は、身体のどこにクラミジアが感染するかによって異なります。最も多いのは性器クラミジアですが、そのほか咽頭や肛門・大腸、眼にもクラミジアが感染します。
女性に見られる症状
女性の場合、クラミジアに感染しても75〜90%程度は症状がないといわれています。症状が出る場合、おりものが黄色くなり量が増える、生理痛のような下腹部の痛み、性交時痛、不正性器出血、頻尿などが見られます。
女性がクラミジアに感染すると、最初は子宮頸管炎を起こします。放置すると40%あまりの人が子宮頸管炎から子宮内膜炎、そして卵管炎を含む骨盤内付属器炎に進展します。さらに進行すると骨盤内炎症性疾患(PID;pelvic inflammatory disease)、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症 候群)などを起こし重症となることがあります。ここまで病状が進行すると、発熱や右上腹部痛などの症状が出ます。
クラミジア感染による卵管炎は、卵管不妊や異所性妊娠(子宮外妊娠など)の原因となることも多いです。
妊婦さんがクラミジアに感染した場合は、流産や早産を起こす事があります。また、赤ちゃんのクラミジア産道感染の原因となります。この場合、赤ちゃんに新生児肺炎や結膜炎などが起こります。
男性に見られる症状
男性の場合はクラミジアに感染しても、50%程度が無症状です。症状が出る場合、男性に見られるクラミジアの症状で最も多いのは、排尿時の痛み、尿道の不快感、かゆみなどです。尿道から分泌物が出ることもあります。
男性がクラミジアに感染すると尿道炎を起こす事が多いですが、若い人の精巣上体炎の原因の主なものとされています。
咽頭に感染した場合の症状
咽頭クラミジアは、咽頭(いんとう;のど)の粘膜にクラミジアが感染したものです。性行為(特にオーラルセックス)により、尿道や膣の分泌液や感染者の唾液が咽頭の粘膜に触れることで感染します。
咽頭クラミジアの場合、喉の痛みや違和感などの症状が出ることがあります。また首のリンパ節が腫れる(頸部リンパ節腫脹)がありますが、症状が全くない人も多いです。
直腸に感染した場合の症状
肛門クラミジアは、性行為(特にアナルセックス)により肛門にクラミジアが感染したものです。そのほとんどが無症状であるといわれています。
眼に感染した場合の症状
クラミジアがついた手で目を触ることによって眼の粘膜に感染すると、封入体結膜炎を起こします。この場合、目のかゆみなどの症状が出ます。
クラミジアの原因
クラミジの原因は、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌の一種です。クラミジア・トラコマチスがどのように感染して、どのくらいの潜伏期間があるかを下にまとめました。
クラミジアの感染経路
クラミジア感染は、主に性行為により感染する病気です。感染者の粘膜や分泌液と接触することで起こります。また、出産時の産道感染により、母子感染を起こすことがあります。
クラミジアに感染した人のうち、10%は淋菌にも同時に感染しています。特に症状がある場合は、クラミジアと淋菌の検査を同時に行い、病原体が検出されたら両方の治療を行います。
クラミジアの潜伏期間
潜伏期間とは、細菌などの病原体に感染してから初めて症状が出るまでの期間をいいます。同じ性感染症でも、潜伏期間は病気によって異なります。
クラミジアの潜伏期間は2〜3週間といわれています。これは2〜7日で症状が出る淋菌感染症と比べるとやや長めです。
クラミジアの検査方法
クラミジアの検査は、尿や膣・尿道分泌液、おりもの、咽頭(ぬぐい液やうがい液)などに存在するクラミジアを、抗原検査もしくは遺伝子検出法で検出します。
抗原検査には、市販のキットを用います。塗沫標本を蛍光抗体染色(DFA)するものと、 抗原物質を酵素抗体法(EIA)で測定するものがあります。DFAは感度が良い反面、判定に経験が必要です。EIAは簡単にできますが、クラミジアの種類までは判別できないのが難点です。
遺伝子検出法も、市販のキットが使用できます。感度は良いものの、クラミジアが死んでいても陽性になるため注意が必要です。
また血液クラミジア抗体の検査は、過去にクラミジアに感染したことがある人は陽性となることがあるため、現在治療が必要かどうかについてはこの検査だけでは分かりません。
最も確実なのはクラミジアの病原体を検出する事ですが、時間がかかることと特別な技術が必要なこともあり、一般的にはあまり行われていません。
クラミジアの治療方法と治療期間
クラミジアの治療方法は、抗菌薬の内服です。主にテトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、およびニューキノロン系薬が用いられます。
クラミジアの治療期間は、病状と用いる薬によって異なります。1回飲めば済む薬もあれば、7日間連続で飲む必要のある薬もあります。また飲み薬ではなく点滴で治療を行うこともあり、その場合は3~7日間連続で点滴を行います。
抗菌薬は決められた期間きっちり内服しましょう。症状が消えたからと薬を勝手にやめると、クラミジアが生き残ってしまう事があります。約3週間後に受診し、クラミジアがきちんと消えているかを確認しましょう。
クラミジアを予防するために
クラミジアの予防には、そもそもクラミジア感染が疑われる相手と性行為をしないことが重要です。複数のパートナーがいる場合、また不特定多数の相手と性行為をする場合には、症状がなくても定期的に検査を受けましょう。
また、性行為時にコンドームを使用するのが最も確実な予防法です。コンドームは、クラミジアだけではなく他の性感染症も予防してくれるので、性行為時には必ず使用する習慣をつけましょう。
残念ながら、2022年6月現在では、クラミジアの予防接種はありません。また、感染しても免疫を獲得しないので、何度も繰り返し感染するのも特徴です。
クラミジアに関するよくある質問
クラミジアに関するよくある質問を集めました。ここにない質問があるかたや、ちょっとした疑問や不安などをお持ちの方は、ぜひ診察時にお尋ねください。
クラミジアの薬だけをもらう方法はある?
ありません。クラミジアの薬をもらうには、診察及び検査が必要となります。というのも、まず検査をしないと本当にクラミジア感染症かどうかがわからないからです。同じ性感染症である淋菌などとの混合感染を起こしていることも多く、検査をしないと治療方針が定まりません。
パートナーの分の薬ももらえる?
パートナーの分のお薬をお渡しすることはできません。理由は、上記と同様です。パートナーさんにもしっかりと診察を受けていただき、現在の状態に最も合った薬を処方してもらうのが、結果的に早く治るし費用も安く上がることが多いです。
まとめ
以上、クラミジアの症状とその写真についてまとめるとともに、クラミジアの原因や感染経路、治療方法や予防策など、クラミジアについての基本を簡単にまとめました。クラミジアは性感染症としては最も多いものですが、症状が出ないことも多いため、治療を受けていない人も多く、知らないうちにパートナーにうつしているかもしれません。性行為を行っている人は、定期的に検査を受けてクラミジアに感染していないかを確認しておきましょう。感染していた場合、きちんと薬を飲めばちゃんと治る病気ですので、医師の指示をよく聞いて、治療を行いましょう。
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