唇や性器にボツボツができると「もしかして性病?」と不安になりますよね。
しかしそれは性病ではなく、『フォアダイス』かもしれません。
本記事では、フォアダイスとは何かを専門医が解説します。
- フォアダイスの症状
- フォアダイスがなぜできるのか
- フォアダイスと間違われやすい病気
フォアダイスとは
人の皮膚には、皮脂を分泌する『皮脂腺』があります。
皮脂腺から分泌された皮脂は本来毛穴から皮膚上に排出されますが、毛根の周囲にできるはずの皮脂腺が、毛根のない場所にできる場合があります。
その場合は皮脂を毛穴から排出できないため、皮脂は皮下にたまって塊となります。
フォアダイスとは、この皮脂の塊が皮膚から透けてブツブツに見えるようになった状態のことです。いわばニキビのようなもので、多くの成人男性にみられる生理現象です。
成人男性の約7割に認められ、女性よりも男性に多く見られます。
フォアダイスの症状
フォアダイスでは、直径1~3mmの白~黄色、もしくは肌色のブツブツが皮膚や粘膜に現れます。皮脂腺が透けて見えているだけなので、痛みやかゆみといった症状はありません。
唇のほか、男性の場合は男性器の陰茎や包皮、女性の場合は女性器の膣から小陰唇に現れる場合が多いです。特に多いのが男性器の陰茎の裏側や側面にできるフォアダイスで、包茎の方に多いと言われています。
陰茎にできるフォアダイスとよく似ているのが『真珠様陰茎小丘疹』です。
真珠様陰茎小丘疹は、直径1mm程度のブツブツがきれいに1~2列に並び、真珠のネックレスのように亀頭周囲をぐるっと取り囲みます。
フォアダイスと異なる点としては、フォアダイスは毛穴のない所に皮脂腺ができており、皮脂が皮下にたまることでブツブツとした小丘疹ができるのに対して、真珠様陰茎小丘疹は表皮と皮下組織の間、いわゆる真皮の部分に血管が増生したり線維化が起こるすることで小丘疹ができる病気です。
女性器のフォアダイスは、膣から小陰唇にかけて、比較的広い範囲に現れるのが特徴です。
唇にもフォアダイスができることがあり、白~黄色のブツブツが帯状に並びます。
フォアダイスと真珠様陰茎小丘疹はどちらも病的意義はないため、治療は不要です。しかし見た目上どうしても気になるということであれば、手術で取り除くことができます。
フォアダイスができる理由
フォアダイスは性器にできることが多いため性病と勘違いされやすいですが、実際は皮脂が皮脂腺に溜まっているだけの生理現象です。
痛みやかゆみなどの症状はありませんし、感染症でもないので、性行為を避けたり治療をしたりする必要はありません。
根本的な原因は明らかになっておらず、フォアダイスを完全に予防する方法はありません。
フォアダイスは病気ではないものの、性行為の際に目立ちやすいため除去を希望する方もいます。
フォアダイスは手術で除去でき、電気焼灼や炭酸ガスレーザー照射による除去が一般的です。
局所麻酔の日帰り手術で済みますので、気になる方は病院で相談してみましょう。
フォアダイスと間違えやすい病気
フォアダイスはただの生理現象ですが、その見た目からよく他の病気と間違えられます。
特に間違えられやすいのが、口唇ヘルペスと尖圭コンジローマです。
両者は感染症であり、フォアダイスとは以下のような違いがあります。
原因 | 感染経路 | 症状 | |
フォアダイス | 生理現象 | なし | 唇や性器に直径1~3mmのブツブツができる。痛みやかゆみはない |
口唇ヘルペス | HSV-1への感染 | 接触感染/飛沫感染 | 唇の周りにかゆみや痛みが生じ、水ぶくれができる |
尖圭コンジローマ | HPVへの感染 | 接触感染 | 性器や肛門周辺に乳頭状のイボが多発する。痛みやかゆみはない場合が多い |
それぞれの違いや特徴について、詳しく解説していきます。
口唇ヘルペスは、『単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)』というウイルスが原因で引き起こされる感染症です。
感染経路は直接感染と飛沫感染で、幼少期の親から子への感染が多いと言われています。
口唇ヘルペスの主な症状は、唇周囲のかゆみや痛み、水ぶくれです。
HSV-1は一度感染すると体内に潜伏し続け、風邪などで体力が落ちた際に活性化して症状を見せます。
フォアダイスもビタミン不足の際に唇に現れると言われており、症状が現れる場所が似ている点も口唇ヘルペスと間違われやすい所以です。
両者は、口唇ヘルペスが痛みや水ぶくれを伴う一方、フォアダイスはイボ様のブツブツ以外症状がない点が異なります。
口唇ヘルペスかフォアダイスかは、痛みや水ぶくれの有無から判別可能です。
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染で引き起こされる性感染症です。
感染から数週間~数ヶ月の潜伏期間を経て、性器や肛門周辺に乳頭状のイボが多発します。
感染経路は、感染者との性行為による接触感染です。
尖圭コンジローマもフォアダイスと同様痛みを生じない場合が多く、イボができる場所も似ているため、フォアダイスはしばしば尖圭コンジローマと間違われます。
両者の違いは、尖圭コンジローマは放置すると乳頭状のイボがカリフラワー状に広がっていく一方、フォアダイスのイボは尖圭コンジローマよりも小さく均一的な大きさで、放置しても広がらない点です。
尖圭コンジローマは、ガン化する可能性もあるため、適切な治療が求められます。
フォアダイスかどうか判断に迷ったら病院へ
フォアダイスはただの生理現象で治療は必要ありませんが、フォアダイスと間違われやすい口唇ヘルペスや尖圭コンジローマは人に移る感染症です。
両者を放置しておくと症状が悪化する上に、感染を広げてしまう恐れもあります。
特に尖圭コンジローマは、見た目だけではなく痛みがない点もフォアダイスと似ており、一般の方が両者を見分けるのは困難です。
安易な自己判断の結果、症状の悪化や感染拡大につながる可能性もありますので、判断に迷ったら必ず病院を受診するようにしましょう。
まとめ
フォアダイスとは、皮脂腺にできた皮脂の塊が透けて見え、ブツブツになった状態を指します。
毛穴から皮脂が排出されないことで起こる生理現象であり、性病ではありません。
唇や性器に現れやすく、しばしば口唇ヘルペスや尖圭コンジローマに間違われます。
フォアダイスは治療の必要はありませんが、見た目が気になる場合は手術で除去可能です。
口唇ヘルペスや尖圭コンジローマの場合は悪化や感染拡大の恐れもあるため、判断に迷ったら必ず病院を受診しましょう。
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