女性なら普段からなんとなく気にしている「おりもの」の見た目。
「生理ではないのにトイレットペーパーに血がついた!」
「おりものの色がいつもと違う……」
このような不安に感じたことはありませんか?
生理期間中に性器から出血があることを「不正出血」と呼び、おりものに血が混じって変色することがあります。
この記事では、おりものに血が混じる不正出血について、原因とその治療方法について見ていきましょう。
おりものに血が混じる「不正出血」とは
不正出血とは、生理期間ではないのに性器からの出血があることです。おりものに血が混じることで発見されます。
おりものは、膣の中に細菌が入ることを防いだり妊娠しやすい状態を作ったりする重要なものです。正常なおりものは、色は透明〜白っぽく、乾くと薄黄色になります。子宮などに出血があり、血が混じると赤やピンク、茶色のおりものへ変化します。
不正出血をしたときの血の量はさまざまで、急に大量の出血があることもあれば少量の出血が数ヶ月間続くようなこともあるでしょう。出血が少量の場合は、貧血症状が続くことで不正出血に気づく場合もあります。
おりものに血が混じる原因
粘膜下子宮筋腫
粘膜下子宮筋腫とは、子宮筋腫の一種です。子宮筋腫は、若い年代から閉経後の年代まで幅広くみられる良性の腫瘍です。
出血の仕方としては、普段の生理での出血量が多くなったり生理期間が長引いたりします。普段なら生理が終わっているタイミングなのに生理が続いてしまい、おりものに血が混じっていると思ってしまうこともあるでしょう。他にも、生理痛・貧血・腰痛・頻尿などの症状も出てきます。症状がないことも多いです。
粘膜下子宮筋腫は良性の腫瘍のため治療をしない場合もありますが、症状によって日常生活に支障が出る場合には治療を行います。
治療方法は大きく分けて薬物療法と手術療法があります。薬物療法は女性ホルモンの分泌を抑えて腫瘍が大きくならないようにしたり、症状を抑える薬剤を服用したりする治療方法です。手術療法は腫瘍または子宮を取り除く治療方法で、妊娠希望の有無によって治療方法を変えていきます。
子宮内膜ポリープ
子宮内膜ポリープでは、子宮の粘膜から内側に向かって突起が出てきます。子宮からの異常出血が起こることもあり、生理中の出血量が多くなったり生理期間が長引いたりすることで、貧血症状が出ることもあります。
子宮内膜ポリープは悪性の腫瘍となることもあり、閉経後にできた子宮内膜ポリープのうち約1~10%程度から子宮内膜異型増殖症や子宮内膜がんが発見されたとの報告もあります。また、子宮内膜ポリープは受精卵の着床をさまたげて不妊症の原因となる場合があるため、治療方法としては内視鏡を使用した切除術が基本です。
子宮内膜炎
子宮内膜炎は、子宮内の感染が原因で子宮内膜に炎症が起きた状態です。出産後や閉経後の女性に比較的多く見られます。また、子宮内の検査や手術を行なった後に感染することもあります。
症状としては下腹部の不快感・痛みやおりものに膿(うみ)や血が混じる、発熱などが出てくることが特徴です。子宮内膜炎が続いた状態の慢性子宮内膜炎は、不妊や流産の原因にもなるため治療が必要です。生理がある女性では、最近に感染しても生理時に子宮内膜と細菌が体の外へ排出されるため症状が出ない・あるいは一時的なことも多いです。
子宮内膜炎の治療では、抗菌薬や炎症を抑える薬剤を服用します。膿がたまっている場合には、抗菌薬を点滴したり手術したりすることもあります。
卵巣腫瘍
卵巣に腫瘍ができる卵巣腫瘍でも、おりものに血が混じることがあります。
卵巣腫瘍は、はじめのうちは症状がないことがほとんどです。腫瘍が大きくなってくるとお腹がはってきて腹痛や頻尿の症状が出てきます。また、体重が増えていないのにお腹周りだけ大きくなって服が入らなくなるということもあります。そして、あまり多くはありませんが、おりものの量が増えたり血が混じったりすることもあるでしょう。
卵巣腫瘍の治療は手術が基本です。良性の場合には腫瘍のみを切除しますが、悪性(卵巣がん)が疑われる場合には卵巣や卵管なども切除します。悪性腫瘍の場合には、卵巣がんの進行度に合わせて抗がん剤を使用します。
子宮体がん
子宮体がんは「子宮内膜がん」とも呼ばれる、子宮内膜にできるがんのことです。女性ホルモンの一つであるエストロゲンが過剰に増えてしまい子宮内膜が増殖し、長い期間をかけてがんへと進行します。
症状として最も多いのが不正出血やおりものの変化です。その他には下腹部の痛みが症状としてあらわれます。若い世代よりは、閉経前後の更年期の女性にできやすいがんとも言われています。
子宮体がんの治療方法は、基本的に手術による子宮・卵巣・卵管の切除です。がんが進行している場合は、切除後に放射線治療や抗がん剤治療を行うこともあります。比較的に完治しやすい高分化型類内膜がんで筋肉層へ広がっていない場合で、妊娠希望がある場合には子宮内膜を掻き出しながら薬剤によるホルモン療法を行なって子宮や卵巣を温存することもあります。
頸管ポリープ
頚管ポリープとは、子宮の入り口(子宮頸管)の粘膜が増殖してできる炎症や腫瘍です。ほとんどが良性ですが、まれに悪性のがんや肉腫の場合もあります。
症状は出ないことも多いですが、性交中に頚管ポリープに傷が付き出血や感染症を起こすことがあります。出血が起きればおりものに血が混じります。また、生理前の排卵期に出血することもあるでしょう。
頚管ポリープは切除を行い治療が完了します。ポリープの大きさや状態によっては、外来の日帰り手術も可能です。切除したポリープは、悪性の可能性がないか検査を行うことが多いでしょう。
子宮頸管炎
子宮頸管炎はその名の通り子宮頸管の炎症です。クラミジアや淋菌などにより感染症を起こします。放っておくと不妊症や流産、早産などの原因となります。
子宮頸管炎は症状がないことも多いですが、おりものに血や膿が混じったり下腹部が痛くなったりします。感染症を起こしたとき、おりものの色が灰色や黄緑色になることもあります。尿道炎や子宮内膜炎を一緒に起こすことも多く、排尿時の痛みや発熱を起こすこともあるでしょう。性行為や分娩時、人工妊娠中絶手術などをきっかけに感染症を起こすことが多いようです。
治療では抗菌薬を服用していきます。性行為をするパートナーがいる場合、そのパートナーも感染検査や治療が必要となるでしょう。
子宮膣部びらん
子宮膣部びらんとは、子宮頸管の内側が赤くただれたような「びらん」ができている状態を指します。子宮膣部びらんは女性ホルモンのエストロゲンの分泌が活発になるとできやすく、成人女性の8〜9割に見られます。閉経し女性ホルモンの分泌が減ってくると自然とびらんも見られなくなることが多いようです。
子宮膣部びらんは病気ではないので治療が必要なこともほとんどありません。ただし、おりものが増えたり、びらんに炎症が起きて不正出血をくり返したりする場合には、膣洗浄や抗菌薬による治療を行います。なかなか症状が良くならない場合にはびらんを切除することもあります。
子宮頸がん
子宮頸がんとは、子宮の入り口である子宮頸部にできるがんです。性行為によりHPV(ヒトパピローマウィルス)の感染することでがんとなり、女性の80%は一生のうちにHPVの感染した経験を持ちます。
HPVに感染すると子宮頸部の細胞はダメージを受けますが、ほとんどの場合正常な細胞に戻ります。ごく一部の人が早期がんに移り、ごくまれにがんが進行するのです。進行がんでは、初期症状として生理不順や不正出血があらわれます。また、性交後に出血があり、おりものに血が混じることもあるようです。
子宮頸がんへと進行した場合、基本的に子宮の全摘手術を行います。がんの進行状況によっては、手術後に放射線治療や抗がん剤治療を行います。
膣炎
膣炎とは膣に起きている炎症のことで、大きく分けると感染性の膣炎と萎縮性膣炎の2種類があります。
感染性の膣炎には細菌性膣炎・カンジダ性膣炎・トリコモナス膣炎があります。性行為による感染や免疫力の低下などさまざまな原因によって発症し、おりものに変化が出ることが特徴です。多くの場合、おりものの量が増えて水っぽくなったり逆に白く固まったり魚のような臭いがしたりしますが、血が混じることは少ないでしょう。感染の原因に合わせた治療薬を使って治療を行います。
萎縮性膣炎は女性ホルモンの分泌が低下することで起こります。更年期くらいから女性ホルモンの分泌が低下し、膣の粘膜が薄く萎縮していき、ささいな刺激でも炎症ができてしまうのです。その結果、おりものにも血が混じることがあります。治療としては女性ホルモンを配合した膣錠を使うことが多いです。
膣がん
膣がんは、子宮の入り口(子宮頸部)から外陰をつなぐ筒状の組織である膣にがんができます。女性の生殖器にできるがんのうち、わずか1%を占める程度の非常にまれな病気です。
原因としてはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が挙げられ、閉経後や高齢の女性に見られることも多いです。初期症状がないことも多いですが、不正出血としておりものに血が混じったり性行為中に痛みが生じたり下腹部に痛みが出たりすることもあります。
治療方法は手術が最も一般的です。がんの広がりに応じて切除する部分が変わってきます。また、放射線治療や抗がん剤治療を併用することもあります。
着床出血
着床出血とは、受精卵が子宮内に着床するときに子宮内膜が傷つくことで起きる少量の出血です。医学的には着床出血という言葉はありませんが、妊娠したときのサインとして使われる用語です。
着床出血の程度は人により異なり、生理のようなしっかりした出血からおりものに血が混じる少量の出血までさまざまです。着床出血自体がない人もいます。出血の色は鮮やかな赤からピンク色で、基本的にはおりものの割合が多くなります。
着床出血は生理との見分けがつきにくい場合もありますが、基礎体温を普段から記録していると見分けやすいでしょう。生理の場合、基礎体温は下がりますが着床出血の場合には高温期が続きます。
まれに、流産や子宮外妊娠によって不正出血を起こすことがあります。妊娠初期で不正出血が続いたり腹痛があったりする場合には、早めに産婦人科へ受診しましょう。
\おりものの異常があれば性病検査をしましょう/
【タイミング別】おりものに血が混じる場合に考えられる原因
おりものに血が混じる場合に考えられる原因を、タイミング別に解説します。おりものに血が混じる不正出血は病気の場合もありますがホルモンバランスの変化が原因のことも多いです。
生理前
生理前のタイミングでおりものに血が混じる場合、生理のために子宮内膜がはがれ始めていることが多いです。このような場合は病気ではないため心配する必要はないでしょう。
ただし、少量の出血が何日もダラダラ続く場合は婦人科で原因を調べてもらうことをおすすめします。
また、生理前の少量の出血は着床出血の可能性もあります。おりものに血が混じった後生理がこない場合、妊娠の可能性がある人は妊娠検査薬を使ってみましょう。
生理後
生理後におりものに血が混じる場合は、生理の期間が伸びている可能性が考えられます。通常、生理による出血は3〜7日程度が正常であると言われています。8日以上も出血が続いたり、何日もおりものに血が混じっていたりする場合には何らかの病気が隠れている可能性が否めません。
生理後にも続けておりものに血が混じる場合には、婦人科の受診を検討しましょう。
排卵日の前後
排卵日前後におりものに血が混じったり軽い腹痛がしたりすることがあります。
排卵のタイミングでは、卵巣の中にある卵胞が破れることによって排卵が起こります。このとき、卵巣の膜も破れて痛みや出血が起こるのです。また、排卵の時期はホルモンバランスが大きく変化するため、女性ホルモンによって厚くなった子宮内膜が一時的にはがれて出血する場合があります。
排卵による出血は2〜3日間、長くて1週間程度で止まることが特徴です。痛みがひどいときや出血が何日も続く場合は婦人科で相談する必要があるでしょう。
おりものに血が混じったら早めの受診を
生理期間でないときの不正出血やおりものに血が混じることは、病気でなくてもよくあります。ですが、病気であるかどうかの判断は自分でするのは非常に難しいです。そのため、何か気になることがあれば早めに婦人科・産婦人科で相談しましょう。
特に次のような症状がある場合には、受診して医師へ相談することをおすすめします。
- 不正出血が1週間以上続く
- 頻繁に不正出血がある
- ひどい腹痛がある
- おりものに血が混じるが生理がこない
- 貧血や腹痛など他の症状もひどい
- おりものの色・量・匂いが普段と明らかに異なる
- 生理周期にばらつきがある
ささいな不調も病気の初期症状である可能性があります。また、症状がなくても病気が進行してしまうこともあるので、子宮がん検診や健康診断は定期的に受けるよう心がけましょう。
まとめ
この記事では、おりものに血が混じる不正出血について解説しました。不正出血とは、生理期間ではないのに性器から出血が起きることです。出血量には個人差があります。
不正出血の原因は、ホルモンバランスの乱れや婦人科系の病気などさまざまあります。病気といっても良性のものもあり、治療が必要ないことも多いです。
ですが、治療が必要な不正出血かどうかを見分けることは非常に難しいでしょう。そのため、おりものに血が混じっていることが多い人は、早めに婦人科や産婦人科を受診しましょう。そして、子宮がん検診や健康診断などを上手に活用して、病気の早期発見に役立てるようにしましょう。