「パートナーとの性行為に失敗してしまった」「無防備な性行為を強要された」
このような場合には、望まない妊娠を防ぐためにアフターピルを服用する必要があります。
アフターピルは「緊急避妊薬」とも呼ばれ、正しく服用すれば非常に高い確率で避妊が可能です。
この記事では、アフターピルについて以下を解説します。
- 服用方法
- 低用量ピルの違い
- 副作用と注意点
望まない妊娠を防ぐために、正しい知識を身につけていきましょう。
アフターピルとは
アフターピルとは、望まない妊娠を防ぐために服用する「緊急避妊薬」です。性交後の避妊に失敗したときに緊急に用いるため「緊急避妊薬」や「性交後避妊」「モーニングアフターピル」とも呼ばれています。
妊娠を望んでいないにもかかわらず避妊をせずに性行為をした、もしくは避妊に失敗してしまった場合など、以下のようなケースにあてはまる場合は、医師からアフターピルの処方を受けてください。
【アフターピルが必要になるケース】
- コンドームや低用量ピルなどの計画的な避妊をせずに性行為をした
- 性交後、コンドームが破れていることがわかった
- 低用量ピルの服用を忘れた
- 性被害を受けた
アフターピルの避妊成功率は、性交後できるだけ早く服用することで高まります。ここでは、アフターピルの仕組みと低用量ピルとの違いを解説します。
参考:緊急避妊薬 | Tokyo Sexual Health
アフターピルで避妊ができる仕組み
アフターピルは、排卵を一時的におさえたり遅らせたりすることで受精を妨げます。また、妊娠に必要な受精卵の着床も妨げると考えられています。
妊娠には、排卵された卵子に精子が入り込んだ状態の受精卵が子宮に着地(着床)する過程が必要です。アフターピルは、この過程の排卵や着床の準備を妨げて避妊の確率を上げると考えられています。
そのため、着床が完了してしまった場合、アフターピルは効果を発揮できません。アフターピルは性交後から服用までの時間が短ければ短いほど効果が高まることがわかっており、少なくとも性交後72時間以内に服用することが推奨されています。
アフターピルを服用すると排卵に影響を与えるため、普段の生理周期がずれることが多いです。ですが、約95%の人は次の生理予定日の7日後以内には生理が来ることがわかっています。
低用量ピルとの違い
低用量ピルはアフターピルと服用方法や効果などに違いがあり、世界では計画的な避妊方法として広く知られています。低用量ピルは、毎日規則正しく服用することで、排卵をおさえ妊娠を防ぎます。
アフターピルと低用量ピルには、次のような違いがあります。
主な服用方法 | 避妊効果の継続 | ||
---|---|---|---|
アフターピル | 性交後72時間以内に1回 | 継続しない | 緊急的な避妊のみ |
低用量ピル | 21日間連続服用+7日間休薬 | 休薬期間も継続 | 計画的な避妊、月経困難症など |
低用量ピルは、正しく服用することで排卵を継続的におさえることが可能です。そのため、避妊ができるほか月経困難症※の治療や生理開始日をずらす目的で服用されることもあります。
※月経困難症:生活に支障をきたす程度の生理期間中の不快症状(生理痛・吐き気・頭痛・疲労感・精神症状)
アフターピルの種類と副作用・避妊の効果は?
アフターピルには種類があり、次の3種類が世界中で使用されています。
【アフターピルの種類】
- レボノルゲストレル
- ヤッペ法
- エラ(ウリプリスタル)
日本で主に使われるのはレボノルゲストレル(商品名:ノルレボ)です。性交後72時間以内の服用が推奨されています。
ヤッペ法も日本で承認されていますが、レボノルゲストレルと比較して吐き気や嘔吐の副作用が出やすく、避妊効果もレボノルゲストレルの方が高いため、現在はあまり使われていません。
エラ(ウリプリスタル)は性交後120時間以内の服用であれば避妊効果が得られます。WHOでは使用が推奨されていますが、日本では未承認の医薬品です。
ここでは、アフターピルの服用方法と副作用について解説します。
アフターピルの種類別内服方法
アフターピルの種類と服用方法は以下の通りです。アフターピルは、基本性交後72時間以内の服用が必要です。また、保険適用がないため費用は自費となります。
アフターピルの種類 | 内服方法 | 妊娠阻止率 | 費用 |
---|---|---|---|
レボノルゲストレル | 性交後72時間以内に1錠 を1回服用 | 81.0%(※1) | 自費 |
ヤッペ法 | 性交後72時間以内にプラノバール錠を2錠、さらに12時間後に2錠服用 | 57%(※2) | 自費 |
エラ(ウリプリスタル) | 性交後120時間以内に30mgを1回服用 | 妊娠する確率 として 1.2〜2.1% | 自費 |
※1:国内第III相試験(性交後72時間以内に1錠を1回服用)の場合(ノルレボ添付文書より)
※2:WHOによる試験(性交後72時間以内に1回目を服用)の場合
参考:緊急避妊法の適正使用に関する指針(平成 28 年度改訂版)
アフターピルの副作用
アフターピルの服用によって、まれに副作用が起こることがあります。よく見られる副作用は以下の通りです。
【アフターピルによる副作用】
- 不正出血
- 頭痛
- 眠気・だるさ
- 吐き気
副作用が起こる確率としては、ヤッペ法に比べるとレボノルゲストレルの方が低いことがわかっています。特に、WHOの調査では、吐き気の副作用発現率はヤッペ法で51%・レボノルゲストレルで23%の確率、嘔吐はヤッペ法で19%・レボノルゲストレルで6%となりました。
レボノルゲストレルでは、吐き気の副作用は多いものの実際に吐いてしまうことはほとんどありません。万が一、アフターピルの服用後に吐いてしまっても、服用から2時間たっていれば成分は体内に吸収されているため問題ありません。2時間以内に吐いてしまった場合は医師や薬剤師に相談しましょう。
アフターピルの注意点
フターピルでは副作用が起こることが少ないと解説しましたが、服用に関して次のような注意点があります。
【アフターピルの注意点】
- アフターピルは最終手段として利用する
- 生理がずれる可能性がある
- アフターピル服用後は月経量が少ないことがある
アフターピルの排卵をおさえる作用は一時的なものであるため、避妊効果も一時的です。また、この作用によって生理周期がずれる場合が多いでしょう。
アフターピルは最終手段として利用する
アフターピルでは排卵や受精卵の着床をおさえる効果がありますが、それは一時的なものです。
排卵を数日おさえた後は通常通りに排卵が起こるので、アフターピルを服用後に再び無防備な性行為をすると妊娠する可能性があります。
妊娠を望まないタイミングで性行為をする場合には、コンドームや低用量ピルを使用しましょう。厚生労働省ではコンドームと低用量ピルの併用を推奨しています。
生理がずれる可能性がある
アフターピルは排卵をおさえるため、服用後は数日から1週間程度生理がずれる可能性があります。また、消退出血という形でアフターピルの服用から1週間程度で少量の出血が起こることがあります。
このような少ない出血が早めに来たり予定より1週間程度の遅れで生理が来たりすれば、避妊が成功したと言えるでしょう。
アフターピルの服用後、生理が以下のような状態の場合は避妊が失敗している可能性があります。早めに妊娠検査薬を使用するか婦人科を受診してください。
- 生理予定日から7日以上もしくはアフターピル服用後3週間経っても生理が来ない
- 生理が来ても、普段より軽い(出血が少ない)
生理予定日の出血が軽い場合は次に説明する消退出血もしくは着床出血の可能性があります。
アフターピル服用後は月経量が少ないことがある
アフターピル服用後に来る最初の生理(出血)では、出血量が少ないことがあります。
これはアフターピルによって体内の女性ホルモンが減少し子宮内膜が薄くなることによるものです。受精卵の着床がないと不要になった子宮内膜が少量の出血という形で剥がれ落ちます。アフターピルや低用量ピルの服用後にこのような出血が起こり、消退出血と呼ばれます。ちなみにアフターピルのレボノルゲストレルでは、約46%の確率で消退出血が起こるという報告があります。
ただし、消退出血は妊娠したときに起こる着床出血との区別が非常に難しいです。心配な方は妊娠検査薬を使用するか産婦人科へ受診しましょう。ドラッグストアで売られている妊娠検査薬は生理予定日の1週間後から使用できます。
望まない妊娠を防ぐために気をつけること
望まない妊娠を防ぐためには、正しい避妊方法と万が一の相談先を把握しておくことが大切です。
アフターピルは性交後72時間以内に服用すれば高い確率で妊娠を防げますが、100%避妊できるわけではありません。妊娠を望まないタイミングで性行為をする場合は、コンドームの着用や低用量ピルの使用を心がけてください。パートナーともしっかり話し合う必要があるでしょう。
性被害を受けた場合は、アフターピルの服用をするとともに警察庁の性犯罪被害相談電話(全国共通#8103)へ相談することも検討してみてください。医療機関への初診料やアフターピルの費用を負担してくれる制度を受けられます。
まとめ
アフターピルの服用は、妊娠を防ぐためにできる「最後の」「緊急の」手段です。性交後から72時間以内に服用すれば高い確率で避妊に成功します。
ですが、アフターピルを服用すれば100%避妊できるわけではありません。また、一時的に排卵や受精を防げますが、アフターピル服用後に無防備な性行為をすれば妊娠する可能性は高まります。
アフターピルの服用は早ければ早いほど避妊効果が高まります。近くの婦人科やオンライン診療を活用して、早めに処方をしてもらいましょう。
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