性行為から72時間過ぎた場合も効果があるアフターピルとは?注意点も説明

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

「コンドームが破れちゃった…」「避妊してって言ったのに、彼が避妊してくれなかった」など、妊娠を望まないのに避妊がうまくいかなかった場合に妊娠の可能性を下げるのが、アフターピル(緊急避妊薬)です。

一般的な緊急避妊薬は性行為後72時間以内に飲むようになっていますが、当クリニックでは72時間を過ぎても効果がある「エラ」も取り扱っています。服用の注意点と併せてご紹介いたします。

アフターピルとは

アフターピルとは

アフターピルとは、妊娠を希望しないのに避妊を失敗した、または避妊しないで性行為をしてしまったというときに妊娠の可能性を減らす薬です。緊急避妊薬、またはモーニングアフターピルなどと呼ばれることもあります。

受精卵の着床を防ぐもので、性行為後72時間以内、薬の種類によっては120時間以内に服用することで避妊作用が期待できます。

アフターピルの仕組み

アフターピルの仕組み

アフターピルがどうして妊娠を阻止できるのか、その仕組みはまだ十分にわかっていません。アフターピルを飲むと、排卵が抑制されるとともに、着床が邪魔されて妊娠が成立しないとされています。どちらかというと排卵の抑制による効果が強いと考えられています。

ただし、これらの効果のどちらが強くなるかは、アフターピルの内服が排卵前なのか排卵後なのかによって微妙に異なると言われており、妊娠阻害率が変動する原因となっています。

性行為後72時間過ぎた場合も効果があるアフターピルとは

性行為後72時間過ぎた場合も効果があるアフターピルとは

日本で一般的に使用されているアフターピルのノルレボ(レボノルゲストレル)は、性行為後72時間以上経ってから内服すると、妊娠阻止率が急激に下がります。そんなときに使えるアフターピルが「エラ」です。海外では安全性や高い有効性により、世界各国でアフターピルとして承認されていますが、日本ではまだ未承認となっています。

エラの有効成分はウリプリスタール酢酸エステルで、黄体ホルモンのみが含まれているタイプのアフターピルです。性行為後120時間以内に内服した場合の妊娠阻止率は85%以上となっています。ただし、エラも性行為から内服までが早ければ早いほど、妊娠阻止率が高いことがわかっています。

また、エラはノルレボ(レボノルゲストレル)が効きにくい肥満の方でも十分な効果が得られます。

その他のアフターピルの種類

その他のアフターピルの種類

エラ以外に使用できるアフターピルとして、以下の2つをご紹介します。

  • プラノバール
  • レボノルゲストレル

プラノバールは月経移動などに用いられることの多い中用量ピルですが、アフターピルとしても使えます。

レボノルゲストレルは、日本で最初に使えるようになったアフターピルです。避妊効果が比較的安定しており、72時間以内の避妊にはこちらをお勧めすることが多いです。

それぞれの薬について、詳しく説明します。

プラノバール

プラノバールは中用量ピルの一種です。性行為後に緊急避妊する方法として、モーニングアフターピルの中に「ヤッペ法」という方法があり、プラノバールはその際に使用するピルとなっています。

ヤッペ法は、性行為後72時間以内と、さらに12時間後の2回、中用量ピルを服用する方法です。プラノバールを用いたヤッペ法の妊娠阻止率は96.8〜97.4%と、他のアフターピルよりもやや低めとなっています。

中用量ピルを普段から飲んでいる方の場合、飲み忘れによる避妊効果の低下が心配になったら、手持ちの中用量ピルを利用してヤッペ法を行うことができる点がメリットです。

プラノバールを用いたいヤッペ法のデメリットは、他のアフターピルよりも吐き気などの副作用が出やすく、避妊率も低いと言われていることです。また、2回服用しなければならないことで、副作用に2回耐えなければならない点もデメリットと言えます。

レボノルゲストレル

レボノルゲストレルは、2011年に日本で初めて承認されたアフターピルであるノルレボのジェネリック医薬品です。当クリニックでは72時間以内の緊急避妊には、レボノルゲストレルをおすすめしています。

ヤッペ法と比べて、吐き気や嘔吐などの副作用が少なく、より妊娠阻止率が高いのが特徴です。性行為の72時間以内に内服した場合の妊娠阻止率は85%以上で、内服までの時間が短ければ短いほど、妊娠阻止率は上昇することがわかっています。24時間以内に内服できた場合の妊娠阻止率は95%と非常に高いです。

ただし、肥満の方、肝酵素誘導作用のある薬剤を内服中の方などは、薬の効き目が弱くなる可能性があります。

アフターピルに関する注意点

アフターピルに関する注意点

アフターピルは万が一の際に非常に頼りになる薬ですが、ホルモンに影響する薬なので、飲む際にいくつか気をつけたい点があります。

ここではアフターピルについての注意点をまとめました。

副作用が出る場合がある

アフターピルの内服後、個人差はありますが以下のような症状が副作用として現れることがあります。

  • 吐き気
  • 腹痛
  • 頭痛
  • 倦怠感
  • 眠気
  • 下痢
  • 熱感

上記のような副作用がひどい場合、胃腸薬、頭痛薬、解熱剤などを併用することも可能です。また、少量であればコーヒーや栄養ドリンクといったカフェイン入りの飲料を飲んでも問題はありません。

吐き気が強く、服用した後すぐに吐いてしまうと、薬の成分が吸収されずに体外に流出してしまうため、避妊の作用を期待できなくなります。

薬の成分が体内に吸収されるまでには2時間程度かかります。服用後2時間以内に吐いてしまった場合には、もう一度服用するため医療機関に相談することをおすすめします。

頻繁に使用しない

アフターピルはあくまでも緊急用のお薬のため、頻繁に使用しないようにしましょう。アフターピルを頻繁に使用しなければならない状況というのは、女性の心身にとっても望ましくなく、場合によってはパートナーと真剣に話し合う必要があるでしょう。

「特定のパートナーがいない」、「職業上、絶対に避妊が必要」という場合は、事が起こってからアフターピルを使用するのではなく、アフターピルより効果の高い低用量ピル(経口避妊薬)を日常的に内服することがおすすめです。1日1回、定期的に服用し続けることで排卵をコントロールします。避妊以外に、ニキビ・生理痛の軽減、生理周期の調整や月経前症候群(PMS)の症状緩和にも使用されているお薬です。

次の月経まで性行為をしない

アフターピルの使用後、最も大切なのは、次の生理が来るまで性行為をしないことです。
なぜなら、アフターピルの避妊効果は100%ではないからです。アフターピルを飲んだ後に妊娠する可能性もあるため、次の生理が来て妊娠していないことが確認できるまでは、性行為は控えましょう。

まとめ

一般的なアフターピルは性行為後72時間を過ぎると急激に妊娠阻止率が下がりますが、薬の種類によっては120時間以内に服用することで避妊作用が期待できるものもあります。

アフターピルはホルモンをコントロールするお薬なので、個人差はあるものの、副作用で身体に負担がかかる可能性もあります。また、アフターピルを服用したからといって、100%避妊できるわけではありません。

しかし、当クリニックとしては、望まない妊娠で人工妊娠中絶を行うくらいなら、アフターピルを服用してほしいと考えています。人工妊娠中絶は外科手術になるため、心身ともに負担がかかり、アフターピルより費用もより高額になるためです。

緊急の避妊を必要とされる方は、ぜひ遠慮せずに当クリニックへご連絡ください。