B型肝炎の検査方法とは?どこで検査を受けられるのかについても併せて解説

B型肝炎は明確な自覚症状が少なく、放置されがちな病気です。しかし、B型肝炎が慢性化すると肝硬変や肝がんになる可能性があり、早期発見と治療が欠かせません。B型肝炎の検査は血液検査が一般的で、市区町村が実施するウイルス検診や職場での健康診断、病院などで検査を受けられます。

この記事では、B型肝炎の検査方法や検査結果が陽性だった場合の対処法について解説します。

B型肝炎の概要

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで起こる肝臓の病気です。

肝臓の炎症が数週間から6ヵ月以内であれば「急性B型肝炎」と呼び、6ヵ月以上持続するものを「慢性B型肝炎」と呼びます。

B型肝炎の感染者数は国内で約110万~140万人といわれており、急性B型肝炎患者の約5~10%が慢性B型肝炎を発症します。

主な感染経路は、注射針の再使用や輸血、性交渉による接触です。

感染することで肝臓の機能(代謝・貯蔵・解毒・胆汁の生成)が低下し、症状が進行すると食欲の低下・嘔吐・全身の倦怠感などが現れます。

しかし、感染初期の段階では80%の人が無症状であり、多くが重症化してから気づきます。重症化する前に病院を受診して早期発見することが理想です。

B型肝炎の検査方法

B型肝炎の検査方法は、血液検査が一般的です。血液検査では、血液中に含まれる抗原や抗体の値を調べて、陽性・陰性を判断します。

  • HBs抗原
  • HBs抗体
  • HBe抗原
  • HBc抗体(IgG-HBc抗体)
  • IgM-HBc抗体
  • HBV-DNA

ここでは、各検査の概要や基準値について詳しく解説します。

HBs抗原

HBs抗原は、B型肝炎に感染しているかが分かる最も一般的な検査です。CLIA法の場合、基準値は0.05IU/mL以上で陽性です。6ヵ月以上陽性が続くと、慢性B型肝炎と判定されます。

HBs抗体

HBs抗体は、過去に感染したB型肝炎ウイルスに対してウイルスが排除されているかどうかが分かる検査です。B型肝炎ワクチンを接種すると陽性となり、B型肝炎ウイルスに対する免疫ができていることを示します。HBs抗体だけでは、慢性B型肝炎とは判断されません。基準値は、CLIA法で数値が10mIU/mL以上であれば陽性です。

HBe抗原

HBe抗原は、B型肝炎ウイルスにおける感染力の強さが分かる検査です。6ヵ月以上続くと、慢性B型肝炎と判断されます。基準値は、CLIA法の場合で1.0以上(S/CO)が陽性です。

HBc抗体(IgG-HBc抗体)

過去にB型肝炎ウイルスに感染したかが分かる検査です。また、一定以上の高い値で慢性B型肝炎と判定されます。基準値は、CLIA法の場合で1.0以上(S/CO)が陽性です。

IgM-HBc抗体

IgM-HBc抗体は、比較的最近の期間でウイルス感染したかが分かる検査です。また、陽性の場合は、慢性B型肝炎の悪化を示します。しかし、IgM-HBc抗体だけでは慢性B型肝炎とは判定されません。基準値は、CLIA法の場合で1.0以上(S/CO)が陽性です。

HBV-DNA

HBV-DNAは、B型肝炎ウイルスに感染しているか分かる検査です。6ヵ月以上続くと慢性B型肝炎と判断されます。基準値は、PCR(リアルタイムPCR)法で少しでも検出されれば陽性です。

B型肝炎の検査機会と相場について

ここでは、B型肝炎の検査ができる場所として、「かかりつけの医療機関」「定期的な健康診断」「市区町村が実施する肝炎ウイルス検診」の3つを紹介するとともに、それぞれのメリット・デメリットと費用相場について詳しく解説します。

なお、上記以外にも献血や手術前の検査、妊婦検診などで検査することが可能です。

かかりつけの医療機関

B型肝炎は、ほとんどの医療機関で検査が可能です。好きな日程が選べるため、自身の都合に合わせて受診できます。ただし、自覚症状がないと自由診療になる場合もあるので注意が必要です。保険適用時の費用で3,000円〜5,000円が相場になります。病院や日程を自分で選びたい方におすすめです。

肝炎情報センターの肝炎医療ナビゲーションシステム(肝ナビ)では、肝炎ウイルス検査ができる病院を検索できます。受診する医療機関に悩む場合は、利用してみてはいかがでしょうか。

定期的な健康診断

定期的な健康診断や人間ドックで検査できる場合があります。B型肝炎の検査項目がない場合は、オプションで追加も可能です。健康診断のついでに検査できる手軽さがメリットといえるでしょう。

デメリットは日程が決まっていること、検査を受けることが職場の人に知られる可能性があることです。費用は1,000円〜3,000円が相場で、職場によっては無料の場合もあります。

市区町村が実施する肝炎ウイルス検診

市区町村が実施する肝炎ウイルス検診で検査が可能です。保健所や各自治体が委託する医療機関で検査を受けられます。健康増進法に基づく健康増進事業なので、検査費用は無料です。

ただし、検査日程は決まっており、年齢制限で40歳以上が対象になります。40歳以上で5年ごとに、個別に肝炎ウイルス検査のお知らせが届きます。

B型肝炎の検査結果が陽性だった場合にやるべきこと

ここでは、B型肝炎の検査結果が陽性だった場合にやるべきことを解説します。

肝疾患を専門に取り扱う医療機関に受診する

指定医療機関を受診して入院することで、「肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業」による医療費の助成を受けられます。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状のないことがほとんどです。重症化する前に治療を受けましょう。

B型肝炎に係る医療費助成制度を申請する

医療費助成制度を活用することで、お金の心配をせずに治療に専念することができます。

ここでは、医療費助成制度の概要と申請方法について詳しく解説します。

B型肝炎に係る医療費助成制度の概要

肝炎治療特別促進事業による医療費助成制度で、厚生労働省が推進している肝炎総合対策です。都道府県が実施主体で、国民の健康の保持、増進を図ることを目的としています。

下記が医療費助成の対象となる治療です。

  • B型慢性活動性肝炎に対するインターフェロン治療
  • B型慢性肝疾患に対する核酸アナログ製剤治療

自己負担限度額は原則1万円で、一定額以上の収入がある場合は2万円です。

B型肝炎に係る医療費助成制度の申請方法

各都道府県によって異なりますが、主に下記の書類が必要になります。

  • 肝炎治療受給者証交付申請書
  • 医師の診断書
  • 健康保険等の被保険者証等の写し
  • 住民票の写し(世帯全員分)
  • 市町村民税課税年額を証明する書類(世帯全員分)

上記の書類がそろったら申請できます。

完了までの流れは、下記の通りです。

  1. 保健所の担当窓口に申請
  2. 都道府県の審査会による審査
  3. 受給者証の交付
  4. 医療機関への受診(自己負担額の支払い)

場合によってはB型肝炎訴訟も検討

B型肝炎訴訟とは、幼少期に受けた集団予防接種の注射器の連続使用によって、B型肝炎ウイルスに感染した方が起こした訴訟です。場合によっては、B型肝炎訴訟で給付金の請求ができるかもしれません。昭和23年から昭和63年までの期間で、注射器を交換する旨の指導が行われなかったとして、国の過失責任が認定されました。

まとめ

B型肝炎の検査方法と陽性の場合の対処法について解説しました。検査方法は血液検査が一般的で、健康診断やウイルス検診を始め、ほとんどの医療機関で検査を受けられます。自覚症状がないからといって放置すると、肝硬変や肝がんになる恐れがある油断できない病気です。

これまで検査を受けたか分からない方や、心配な方は、一度は検査をしておくことをおすすめします。陽性だった場合は、肝疾患を専門に取り扱う医療機関を受診して、適切な治療をすることで重症化を防げます。

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