中絶手術を受ける際、多くの女性が抱える「痛み」への不安。
麻酔の適切な使用により、手術時の痛みはほとんど感じなくなります。
また、麻酔について知ることで、手術に伴う患者さんの不安を軽減できるでしょう。
本記事では、中絶手術で使用される麻酔の種類や特徴、よくある質問について詳しく解説します。
痛みへの不安や疑問を少しでも解消し、落ち着いて中絶手術に臨めるよう、事前情報としてぜひご一読ください。
中絶手術の麻酔の種類

どんな手術でも、手術方法や患者さんの状態によって、適切な麻酔が選択されます。
中絶手術に主に使用される麻酔は、以下のような種類があります。
静脈麻酔
静脈麻酔は中絶手術で最も一般的に使用されている麻酔で、点滴から麻酔薬を投与し、患者さんを一時的に眠らせる方法です。
静脈麻酔には以下のような特徴があります。
- 手術中はぼーっと眠っている状態で、麻酔が十分に効いていれば、痛みは感じない。
- 術後の覚醒が比較的早く、1~3時間で麻酔の効果が切れる。
- 安全のため、心電図や血圧計、酸素飽和度測定器などを装着し、呼吸や循環の状態をモニターしながら手術を行う。
- 手術時間が10~15分と短い初期中絶手術に適しており、多くの医療機関で採用されている。
参照元:WHO|リプラ&日本助産学会訳|中絶ケアガイドライン エグゼクティブサマリー
局所麻酔
局所麻酔は子宮頸部周辺に直接麻酔薬を注射して、その部分の痛みを和らげる方法です。
医学用語では 「傍子宮頸管(ぼうしきゅうけいかん)ブロック」「傍頸管(ぼうけいかん)ブロック」とも呼ばれ、この名称で説明を受ける場合もあるでしょう。
局所麻酔には以下のような特徴があります。
- 意識はあり、手術部位周辺の痛みを軽減し、静脈麻酔よりも効果が持続する。
- 麻酔薬が全身を回らないため、術後の吐き気やふらつきなどの副作用が少なく、手術後の回復が早い。
- WHO(世界保健機関)も推奨する麻酔方法。
- 静脈麻酔との併用で、患者さんの不安や痛みを最小限にできる。
- 注射箇所を適切に見極めて施術する必要があるため、技術的な難易度が高く、実施できる医師や施設が限られる可能性がある。
参照元:WHO|リプラ&日本助産学会訳|中絶ケアガイドライン エグゼクティブサマリー
全身麻酔
全身麻酔は静脈麻酔よりもさらに深く麻酔をかける方法です。
通常、中絶手術で必要とされることは少ないものの、持病や服薬などの患者さんの状況により使用されることがあります。
全身麻酔には以下のような特徴があります。
- 完全に意識がなくなり、全身の感覚がなくなる。
- 呼吸や循環など全身の状態を管理する必要があるため、麻酔科医による厳密な管理のもとで行われる。
- 覚醒までの時間が静脈麻酔よりも長くなる傾向がある。
- 高血圧や糖尿病、てんかん、心臓病、呼吸器疾患などの持病や精神薬・睡眠薬の常用がある場合、全身麻酔を選択することがある。
- 実施できる医療機関が限られる。
ブロック麻酔
ブロック麻酔は、背中・腰から背骨の隙間に細い管を刺し、神経伝達を一時的に遮断して痛みを感じなくする方法です。
意識は保たれたままで、胸から下に痛みを感じなくなります。
帝王切開手術などで使用される脊髄麻酔(せきずいますい)や硬膜外麻酔(こうまくがいますい)を総称してブロック麻酔と呼んでいます。
ブロック麻酔を中絶手術で使用することは、ほとんどありません。
しかし、局所麻酔を医学的に「傍頸管ブロック」と呼ぶこともあり、ブロック麻酔と混同されやすいため、ご自身で調べるときに間違えないよう気を付けましょう。
担当の医師から中絶手術の説明を受ける際に、麻酔についても必ず相談し、メリット・デメリットを把握したうえで最終決定してください。
ルナレディースクリニックは静脈麻酔と局所麻酔を併用

ルナレディースクリニックでは、静脈麻酔と局所麻酔を併用して初期中絶手術を行っています。
WHOでは局所麻酔を使用した初期中絶を推奨しています。
しかし、局所麻酔は子宮頸管の注射箇所を適切に見極めて施術しなければならず、実施している医療機関は限られています。
また、局所麻酔だけでは、意識がはっきりしているため、患者さんの不安の声がよく聞かれます。
そのため、当クリニックでは、静脈麻酔と局所麻酔を併用し、患者さんの痛みと不安のない中絶を目指しています。
さらに、中絶の手術方法もWHOが推奨する吸引法の中で、特に子宮への負担が少ない「手動真空吸引法(MVA)」を採用し、女性にとって安全、安心な中絶手術を追求しています。
痛みへの不安がある場合は、遠慮なく、医師や医療スタッフにご相談ください。

中絶手術の麻酔に関するよくある質問

中絶手術の麻酔について、よくある質問にお答えします。
中絶手術の麻酔は何時間で切れますか?
中絶手術後、麻酔が切れる時間は、麻酔の種類や量、個人の体質によって異なります。
一般的な麻酔が切れる時間は、以下を参考にしてください。
静脈麻酔
・手術後数分から眠りから覚めますが、ボーっとした状態から戻るまでは30分〜1時間程度かかります。
・完全に麻酔が切れるまでには2〜3時間かかります。
・手術後は安全のため車いすでベッドへ移動し、2~3時間休息していただいてからの帰宅となります。
局所麻酔
・麻酔の効果は徐々に弱まり、通常2〜4時間程度で完全に麻酔が切れます。
・麻酔の効果は子宮周辺に限られるため、局所麻酔単独の使用であれば、眠気やふらつきなく、手術直後からの歩行が可能です。
麻酔の効果が切れた後でも、手術当日は一時的なふらつきや眠気、生理痛のような腹痛が出現することがあるため、車や自転車の運転はしないよう医療機関から説明があります。
当クリニックでは帰宅前にお渡しする薬の中に、鎮痛剤も処方しています。
麻酔が切れた後の痛みに不安を感じる方もいると思いますが、処方された鎮痛剤でおさまることがほとんどです。
鎮痛剤を服用しても強い痛みが続く場合は、早めに中絶を受けた医療機関へ相談しましょう。

中絶手術後の気持ち悪さは麻酔の影響ですか?
中絶手術後に感じる気持ち悪さには、麻酔の影響も含まれます。
麻酔の影響以外にも、一般的に以下のような原因が考えられます。
麻酔薬の影響 | 麻酔薬が体内から完全に排出されるまでの間、吐き気や胃の不快感を感じることがあります。 |
ホルモンバランスの急激な変化 | 妊娠を中断したことでのホルモンバランスが急激に変化するため、気持ち悪さの原因となることがあります。 |
中絶手術の影響 | 子宮への刺激や手術への緊張、罪悪感などにより、気持ち悪さが生じたり、食欲不振になったりすることがあります。 |
気持ち悪さを軽減するためには、以下のような対処法が効果的です。
- 水分を少しずつこまめに摂取する
- 安静にして体を休める
- 胸部にタオルでくるんだ保冷剤を当て、心地よいと感じる程度に冷やす
- 医師から処方された制吐剤を指示通りに服用する
症状が強く水分が摂れない場合や、長時間続く場合は、中絶手術を受けた医療機関への相談をおすすめします。
まとめ
- 静脈麻酔:短時間の意識低下、2~3時間で効果が切れる
- 局所麻酔(傍頸管ブロック):WHO推奨で副作用が少ない
- 全身麻酔:持病・服薬状況によっては麻酔科医の管理下で実施
- 一時的なふらつき・眠気があるため手術当日の運転を控える
- 鎮痛剤や制吐剤で多くの症状は対処可能
- 長引く強い痛み・吐き気は早めに医療機関へ相談を
- 静脈麻酔と局所麻酔の併用で痛みと不安を最小限に
- 手動真空吸引法(MVA)採用で子宮への負担を軽減

どんな手術でも、患者さんの不安や苦痛を軽減するために適切な麻酔を使用しています。
不安や緊張を我慢していると、体に力が入って痛みが強くなってしまうこともありますので、遠慮なく医師や医療スタッフに相談してください。
できる限りリラックスして中絶手術を終えられるようにサポートいたします。

