この記事では、予期せぬ妊娠に戸惑っている方や、中絶手術の費用に不安を抱える方に向けて、中絶手術のお金に関する情報を詳しく解説します。
中絶手術は通常、保険適用外となりますが、特定の条件下では保険が適用されることもあります。さらに、出産育児一時金や医療費控除、分割払い、犯罪被害者向けの公費負担など、費用負担を軽減する制度も存在するのです。
妊娠や中絶で悩む方の不安を和らげ、適切な医療を受ける手助けとなる情報を、わかりやすくお伝えします。
中絶手術は保険適用にならない
中絶手術は、原則として健康保険が適用されない自由診療となります。
そのため、中絶手術にかかる費用は全額自己負担となります。
費用は医療機関によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。・
※上記は一般的な相場価格です。受診する際には各医療機関の費用を必ず確認してください
表を見ると、初期中絶に比べて中期中絶は費用が高くなっていることがわかります。これは、胎児が大きくなるにつれて初期中絶とは異なる方法で手術する必要があり、入院や治療も長引くためです。
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中絶手術で保険適用になるケース
中絶手術は原則として保険が適用されませんが、例外的に保険が適用されるケースがあります。具体的には、以下の2つの場合が挙げられます。
<母体のなかで赤ちゃんが亡くなった場合>
母体内で胎児が亡くなってしまう「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」の場合、保険が適用されます。
稽留流産とは、胎児の心拍が停止しているにもかかわらず、子宮から自然に排出されない状態を指します。この場合、医学的に必要な処置として中絶手術が行われるため、保険適用の対象となります。
<妊娠の継続に危険がともなう場合>
妊娠の継続が母体の生命を脅かすおそれがあると判断された場合も、保険が適用される可能性があります。ただし、この判断は高度な医療知識に基づいて行われるため、医師が「中絶治療」の必要性があると判断した場合のみ、保険適用の対象となります。
これらのケースでは、通常の中絶手術とは異なり、保険証を使用して診療を受けられるため、医療費の自己負担額が大幅に軽減されます。
中期中絶は出産育児一時金の対象
中期中絶の場合、出産育児一時金の対象となります。出産育児一時金とは、健康保険から支給される給付金です。
出産にかかる費用の負担を軽減するために設けられた制度で、1児につき50万円が支給されます。
通常の出産だけでなく、妊娠85日(約4カ月)以降の死産や人工妊娠中絶も対象となるため、中期中絶も出産育児一時金の対象となります。
中期中絶を受けて出産育児一時金を受け取るには、以下の手続きが必要です。
- 医療機関で中絶手術を受ける
- 医療機関へ費用を全額支払う
- 「健康保険出産育児一時金支給申請書」に必要事項を記入し、領収書や明細書、その他必要書類とともに健康保険組合に提出する
- 審査を経て、指定の口座に一時金が振り込まれる
なお、多くの医療機関では、被保険者に代わって健康保険組合から直接出産一時金の支給を受ける「直接支払制度」を利用しています。直接支払制度は、患者があらかじめ高額な費用を用意する必要がなく、出産一時金の申請手続きが簡略化されるメリットもあります。
直接支払制度が利用可能かどうかは、事前に医療機関に確認しておきましょう。
中絶手術は医療費控除の申請が可能
中絶手術の費用は、医療費控除の対象となります。医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を通じて所得税の還付を受けられる制度です。中絶手術の費用も、この医療費控除の対象となります。
医療費控除額は、以下の計算式で求められます。
また、医療費控除の申請は、以下の流れのとおりです。
- 1年間の医療費の領収書を集める
- 上記の計算式で医療費控除額を算出する
- 確定申告書に必要事項を記入し、医療費の明細書を添付する
- 確定申告書を税務署に提出する
医療費控除を利用すると、中絶手術にかかった費用の一部を取り戻せます。ただし、母体保護法に基づき医師が必要と判断した中絶のみが対象です。自己都合による中絶の場合は対象外となる可能性があるため、注意しましょう。
保険適用外でも保険証の持参がおすすめ
中絶手術は原則として保険適用外ですが、保険証を持参することをおすすめします。保険証を持参したほうがよい理由は主に2つあります。
1つ目の理由は、術前検査で疾患が見つかった場合、保険が適用されるためです。たとえば、中絶手術の前に行われる検査で子宮筋腫や貧血などの疾患が見つかった場合、その疾患の治療に関しては保険が適用される可能性があります。
2つ目の理由は、身分証明書として利用できるためです。多くの医療機関では、患者の本人確認を行っています。
保険証は身分証明書としても有効であり、本人確認の際に利用できます。
保険証を持参することで、予期せぬ状況にも対応しやすくなります。中絶手術を受ける際は、念のため保険証を持参するようにしましょう。
費用を一括で払えない場合は分割払いも可
中絶手術の費用が高額で一括で支払うことが難しい場合、クレジットカードによる分割払いで支払うことも可能です。多くの医療機関では、患者の利便性を考慮し、クレジットカードの分割払いに対応しています。
ただし、医療機関によって利用可能なクレジットカードの種類は異なります。クレジットカード払いや分割払いを希望する場合は事前に医療機関に確認し、支払いに関する不安を少しでも解消しておきましょう。
犯罪被害にあった方は公費負担制度の対象
性的暴行などの犯罪被害によって妊娠し、中絶手術を受ける必要がある方には、警察の犯罪被害者に対する公費負担制度が適用されます。この制度は、被害者の経済的負担を軽減し、必要な医療を受けやすくすることを目的としています。
公費負担制度では、中絶手術の費用だけでなく、カウンセリング費用も対象です。カウンセリングを受けることで、精神的なサポートを得ながら回復に向けて進むことができます。
参照:警視庁|犯罪被害者等に対する公費支出要領の制定について
詳しくは、各都道府県警察の相談窓口への相談がおすすめです。相談窓口では、制度の詳細や申請方法について丁寧に説明してくれます。また、プライバシーに配慮した対応を受けられるため、安心して相談できます。
まとめ
この記事では、中絶手術のお金に関するさまざまな情報を解説しました。
中絶手術は原則として保険適用外ですが、特定の条件下では保険が適用されます。
また、出産一時金や医療費控除の申請、犯罪被害者向けの公費負担制度の利用により、費用負担を軽減できる場合もあります。さらに、一括での支払いが難しい場合は、クレジットカードの分割払いを利用するのもひとつの方法です。
中絶手術に関する経済的な不安を抱えている方は、この記事で紹介したさまざまな制度や選択肢を参考に、まずは信頼できる産婦人科に相談してみましょう。