【医師監修】B型肝炎ワクチンの費用・スケジュールなどを解説

B型肝炎は性交渉などで感染が広がる病気です。感染した場合、ほとんどは感染してから数か月後に体内からウイルスが排除され、自然に治癒する病気ですが、慢性肝炎に移行する場合やごく稀に「劇症肝炎」となって命に関わる場合がある怖い病気です。

性行為での感染を予防する方法はコンドームを着けることですが、一番確実な予防法はB型肝炎ワクチンの予防接種です。

本記事では、B型肝炎ワクチンの費用や接種スケジュール等を詳しく解説します。

B型肝炎とは

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスへの感染によって肝臓の炎症が起きる病気です。感染経路は、感染者の血液や体液が体内に入ることで感染します。

  • 感染者との性行為
  • 血液や体液が付着したものの共有
  • 感染者である妊婦から新生児への感染

といった感染経路があります。

B型肝炎ウイルスに感染すると、大人の場合は数ヶ月、新生児の場合は10年~20年ほど無症状の潜伏期間が続きます。

潜伏期間が過ぎると、急性肝炎を発症し、体のだるさや吐き気といった風邪のような症状のほか、白目や皮膚が黄色くなる『黄疸』や、尿が濃くなるといった症状が現れます。

B型肝炎は多くの場合は自然治癒しますが、10%程度の方は『慢性肝炎』に移行する場合があります。

慢性肝炎に移行すると根本的な治療が難しいため、感染そのものを予防することが大切です

B型肝炎の予防法

B型肝炎の感染経路は、

  1. 性交渉や体液付着物の共有による『水平感染』
  2. 感染者である妊婦から新生児に感染する『垂直感染』

の2種類です。

B型肝炎ウイルスへの感染を予防するには、次のような方法があります。

  • よく知らない相手との性交渉は避ける
  • 性交渉の際にはコンドームを着用する
  • カミソリやピアッサー、歯ブラシなど、体液が付着している可能性があるものの共有は避ける
  • B型肝炎ワクチンを接種する

この中で最も確実なのは、B型肝炎ワクチンを接種するという方法です。

万が一B型肝炎ウイルスに感染している方の体液に触れてしまった場合でも、ワクチンで免疫を獲得していれば、高い確率で感染を防ぐことができます。

B型肝炎のワクチンについて

B型肝炎ワクチンとは具体的にどういったものなのでしょうか?

ワクチンは主に以下の2種類に分けられます。

生ワクチン病気として発症しないようにした毒性を弱めて病原性をなくした細菌やウイルスをワクチンの原材料にしている。
不活化ワクチン感染能力を失った、あるいは殺菌された細菌やウイルスをワクチンの原材料にしている。

 

B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンに該当し、皮下に注射します。

数回接種することによって十分な免疫の獲得が可能です。B型ワクチンの接種スケジュール等は、接種年齢が10歳以上かどうかで若干異なります。詳しいスケジュールを以下に解説しますので、ワクチン接種を検討している方はご確認ください。

10歳以上のワクチン接種スケジュール

ワクチンを接種する年齢が10歳を超えている場合は、0.5mLのワクチンを以下のようなスケジュールで3回接種します。

初回2回目3回目
初回の1ヶ月後初回の5~6ヶ月後

3回接種した後に抗体ができているかどうかを採血で確認し、不十分であれば追加接種を行います。

1回のワクチン接種で基準以上の抗体を獲得できる割合は、40歳未満で約95%、40歳〜60歳で約90%、60歳以上になると65歳〜70%です。B型肝炎ワクチンによる抗体獲得率は若いほど高い傾向にあります。一度免疫を獲得すれば、30年以上にわたってB型肝炎の予防効果が続くとの報告もあります。

10歳未満の予防接種スケジュール

ワクチンを接種する年齢が10歳未満の場合は、0.25mLのワクチンを以下のようなスケジュールで3回接種します。

初回2回目3回目
生後2ヶ月以降初回の1ヶ月後初回の5~6ヶ月後

ワクチンの量が10歳以上に比べて半減するのが特徴です。

乳児の場合、ワクチンを接種できるのは生後2ヶ月以降となります。10歳未満であっても、基準値以上の抗体を獲得できていない場合は追加接種が可能です。

妊婦が感染している場合のスケジュール

妊娠している母親が既にB型肝炎ウイルスに感染している場合、生まれてくる赤ちゃんにB型肝炎ワクチンを投与することで、赤ちゃんのB型肝炎を予防することができます。

新生児には、0.25miのワクチンを以下のスケジュールで接種します。また生後5日以内(生後12時間以内が望ましい)に抗HBs人免疫グロブリンを投与する必要があります。

初回2回目3回目
生後12時間以内初回の1ヶ月後初回の6ヶ月後

新生児であっても、基準値以上の抗体を獲得できていない場合は、追加接種が可能です。

B型肝炎ワクチンの費用

ワクチンの費用は、そのワクチンが『定期接種』と『任意接種』のどちらに分類されているかで異なります。

定期接種対象の方は公費でワクチン接種が可能
任意接種ワクチン接種は自費

B型肝炎ワクチンは、2016年10月1日から1歳未満の子を対象に定期接種となりました。ワクチンを完全に無料で受ける場合は、1歳になる前に3回のワクチン接種を終える必要があります。1歳を超えるとワクチン1回ごとに自費負担となりますので、ご注意ください。自費負担の場合の費用は、1回5000円~8000円程度が目安です。

妊婦がB型肝炎に感染している場合は、『B型肝炎母子感染防止対策』のもと、赤ちゃんは無料でワクチンを接種できます。

ワクチンの副作用

B型肝炎ワクチンはウイルスを殺した不活化ワクチンということもあり、副作用が比較的おだやかで安全なワクチンとして知られています。

B型肝炎ワクチン特有の副作用はありませんが、ワクチンの副作用として一般的な症状が現れることが多いです。

  • 接種部位の疼痛、腫れ、赤み、かゆみ
  • 発熱
  • 発疹
  • 関節痛
  • 筋肉痛
  • 吐き気

B型肝炎ワクチンに限らず、全てのお薬に共通する重大な副作用には、アナフィラキシーショックがあります。アナフィラキシーショックとは、薬特有の成分に免疫系が過剰に反応して、呼吸困難や血圧低下、意識レベルの低下といった症状が起こるものです。過去にワクチンでアレルギー反応が出たことがある場合などはB型肝炎ワクチンを接種できないことがあるので、事前に医師に相談しましょう。

まとめ

B型肝炎は、B型肝炎ワクチンの接種で予防ができます。

B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンで、3回以上の接種で免疫の獲得が可能です。

ワクチンのスケジュールや費用は年齢によって異なるので、本記事を参考にして接種スケジュールを立ててみてください。

過去にワクチンでアレルギー反応が出たことがある場合はB型肝炎ワクチンを接種できないことがあるので、必ず事前に医師に相談しましょう。

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