中絶手術には保険が適用されないため、高額な費用を自費で支払う必要があります。
中絶手術にかかる費用の平均は、妊娠初期(12週まで)で7〜10万円程度、妊娠中期(13週以降)では40〜60万円程度です。
この記事では、中絶にかかる費用の相場や内訳、手術費用が払えない場合の対処法などについて詳しく解説します。
中絶費用に関する不安を解消したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
中絶手術の費用相場と内訳

中絶手術は原則保険適用外であり、かかる費用は医療機関ごとに異なります。
母体保護法に基づく中絶手術における、妊娠初期・中期の費用相場と、具体的な内訳は次の表のとおりです。
初期中絶(吸引法・掻爬法) | 中期中絶(陣痛促進剤) | |
初診料(問診・エコー検査など) | 1万円 | 1万円 |
術前検査(感染症検査など) | 1万円 | 1万円 |
手術(入院費・埋葬費を含む) | 7〜10万円 | 40〜60万円 |
※上記は一般的な相場価格です。受診する際には各医療機関の費用を必ず確認してください
中絶手術は基本的に保険適用されないため、全額自己負担です。
しかし、下記のような医療上の必要性があると判断されるケースでは、例外的に保険適用されるケースもあります。
<中絶手術に保険が適用されるケース>
稽留(けいりゅう)流産:母体内で赤ちゃんが亡くなる
母体保護:母体の生命に危険が及ぶと判断されるケース
初期中絶の費用相場(12週まで)
初期中絶(12週まで)の手術費用は平均7〜10万円程度で、吸引法を選択すると費用が高額になる傾向にあります。
手術費用については、「初期中絶(12週まで)なら一律いくら」のように決められている医療機関もあれば、妊娠週数が増えるにつれて費用が高くなるところもあります。
中絶手術を受けるには、初診料や術前査費用なども別途必要であり、相場はそれぞれ1万円程度です。
中期中絶の費用相場(13週以降)
「中期中絶(13週以降)」の手術費用は、入院費や埋葬費などを含めて平均40〜60万円程度です。
上記に加えて、初診料や術前査費用などが、それぞれ別途1万円程度かかります。
中期中絶では初期中絶とは異なり、子宮収縮剤で陣痛を起こして流産させる方法をとります。
通常は2〜3日程度の入院が必要になるため、その分、中絶にかかる費用も高額です。
また、中期中絶では一般的に、妊娠週数が進むにつれて中絶費用も高くなります。
中期中絶の費用は、初期中絶の費用と比べても高額ですが、「出産育児一時金」を受け取ることで大幅に負担を減らせる可能性があります。
「出産育児一時金」とは、一般的な出産に加えて、妊娠85日(約4ヶ月)以降の中絶や死産を対象として支給されるお金です。この制度を利用すれば、1児につき50万円が支給されます。
なお、初期中絶の場合は出産育児一時金の対象にならないためご注意ください。
追加で必要となる費用
「中絶手術にかかるのは手術費だけ」というイメージをもつ方も多いかもしれませんが、実際には手術費以外にもさまざまな費用がかかります。
手術費用以外に追加でかかる費用は、主に次のようなものです。
その他の費用項目 | 内容 |
---|---|
麻酔費 | 手術時の麻酔にかかる費用 |
薬剤費 | 子宮収縮を促す中絶薬や痛み止めなどの費用 |
術後検診費 | 術後の経過を確認するための費用 |
また、中絶希望者が多い傾向にある土日祝日に手術を行う場合の加算や、手術を即日行う場合にかかる加算などもあります。
オプション費用 | 内容 |
---|---|
土日祝日加算 | 希望者が多い分、特別料金のような意味合いで設けられている費用 |
当日手術加算 | 即日手術が可能な医療機関で、当日に手術を受ける場合の費用 |
リスク加算 | 麻酔や手術を行ううえで、リスクとなりうる病気がある場合にかかる費用 |
上記に加えて、胎児の埋葬費や供養費が別途かかるケースもあるため、受診予定のクリニックにあらかじめ費用総額の目安を確認しておくことがおすすめです。
中絶費用が払えない場合の対処法

中絶手術は保険適用外であり、高額な費用がかかるため、用意が難しい方も多いでしょう。
中絶できる期間には制限があるため、経済的な負担の面で先送りにしていると、中絶ができなくなる可能性もあります。
中絶費用が払えない場合は、次のような対処法を検討してみてください。
- 医療費控除の適用
- 分割払いやローンの利用
- 公的支援制度の利用
- パートナーとの費用分担
それぞれの対処法について詳しく見てきましょう。
医療費控除の適用
医師が母体保護法の規定に基づいて行う中絶手術は、医療費控除の対象となります。
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が10万円(年間所得が200万円未満の方は年間所得の5%)を超えた場合に、確定申告によって一部のお金が戻ってくる制度です。
中絶費用自体は自身で用意する必要がありますが、一部のお金が還付金として戻ってくるため、中絶費用の負担を抑えられるメリットがあります。
医療費控除額の計算式は、次のとおりです。
① − ② − ③ = 医療費控除額(最高200万円)
①その年中に支払った医療費
②保険金などで補てんされる金額
③10万円又は所得金額の5% (どちらか少ない額)
医療費控除の対象となる費用には、中絶手術にかかる費用だけでなく、手術前の検査費用や薬剤費、通院費用なども含まれます。
医療費控除を利用する場合は、医療費控除の申請書や中絶手術に関する領収書などを、確定申告時に提出しましょう。
分割払いやローンの利用
クレジットカードの分割払いやローンなどを利用すれば、すぐに費用が用意できなくても、中絶手術を受けることが可能です。
分割手数料や利子がかかるため、一括で払う場合と比べると割高にはなりますが、「今手元にお金がない」という方には有用な選択肢だといえます。
クレジットカードでの分割払いに対応している医療機関は多くありますが、医療機関によって使用できるカードの種類は異なるため、事前にホームページや問い合わせなどで確認しておきましょう。
なお、医療機関では現金での分割払いは基本的にできないため、ご注意ください。
公的支援制度の利用
中絶費用がどうしても払えない場合は、「出産育児一時金」や「高額療養費制度」などの公的支援制度を活用する方法もあります。
出産育児一時金は主に出産時に利用される制度ですが、妊娠85日(約4ヶ月)が経過してから中絶手術を受けた場合でも利用可能です。
出産育児一時の支給金額は、1児につき50万円で、お住まいの市区町村の窓口で手続きができます。
また、まれなケースであるものの、稽留(けいりゅう)流産や母体保護などで中絶が必要になった場合には、「高額療養費制度」が使える場合があります。
高額療養費制度とは、1ヶ月(同じ月の1日~末日まで)の医療費が高額になって一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合、超えた分の金額があとで返ってくる制度です。
高額療養費制度は、ご自身が加入している公的医療保険(健康保険組合や国保など)に、高額療養費の支給申請書を提出することで利用できます。
パートナーとの費用分担
「中絶費用の支払いや分担についてパートナーと話しにくい」という方も多いのではないでしょうか。
費用の分担方法はそれぞれの収入や状況などよって異なりますが、妊娠には男女両方が関わっているため、共同で負担するのが一般的です。
話し合いが難しく、費用負担に納得がいかない場合は、弁護士をはじめとする専門家に相談する方法もあります。
個々の状況によっても大きく異なりますが、相手が費用分担を受け入れてくれないといった場合には、法的に請求できる可能性もあります。
無料相談を実施している弁護士事務所もあるため、お悩みの場合は一人で抱え込まずに相談してみましょう。
未成年・学生は保護者への相談が大切

未成年を含む学生が中絶手術を受ける場合には、保護者の同意が必要です。
なかなか相談できない方が多いかもしれませんが、中絶する場合は、経済的な面や手術後のケアといったさまざまな面で保護者の協力が必要です。
どうしても保護者に伝える勇気が出ない場合は、まずは学校の保健室の先生や産婦人科医などに相談し、保護者に伝えてもらう方法もあります。
親にバレたくないからといって、法外な金利で貸し付けを行う「闇金業者」を利用するのは絶対にやめましょう。
一度お金を借りると、借金返済から抜け出せずに、今後の人生を大きく左右する可能性もあります。
よりよい解決策を見つけるためにも、一人で抱え込まずに、まずは信頼できる身近な人に相談してみましょう。
犯罪被害にあった方は公費負担制度の対象に
性犯罪や性暴力による望まない妊娠によって中絶手術を受けることになった場合、「性犯罪被害者支援制度」といった公費負担制度の対象となります。
この制度には、「被害者の経済的負担を軽くすることで必要な医療を受けやすくする」という目的があり、中絶費用の一部、もしくは全額を公費で負担してもらえます。
負担金額については各都道府県によって異なるため、最寄りの警察署や市町村の窓口への相談がおすすめです。
相談窓口では、制度の詳細や申請方法についても確認できます。
参照:警視庁|犯罪被害者等に対する公費支出要領の制定について
まとめ
中絶にかかる平均的な金額は、初期中絶(12週まで)の場合で7〜10万円程度、中期中絶(13週以降)になると40〜60万円程度です。
手術費以外にも、麻酔費や検診費などの費用がかかるため、ご自身のケースでの合計金額がいくらになるかは、事前に受診予定の医療機関に確認することをおすすめします。
中絶費用が手元になくて払えない場合は、クレジットカードの分割払いやローンを利用する方法もあります。
中絶できる期間は「妊娠21週6日まで」と決まっているため、その時期を過ぎると中絶することはできません。
身心の負担や費用的な負担を少なくするためにも、手術の決断は早めにされることをおすすめします。