妊娠によるつわり・妊娠悪阻の点滴が受けられるのはどんな人?治療法や吐き気を和らげる方法を紹介

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

「つわりが酷くて何も食べられないので、点滴治療を受けたい」
「点滴治療の対象になるのはどんな人?」

このようなお悩みや疑問をかかえていないでしょうか。
つわりがひどくて何も食べられず、脱水や栄養不足が懸念される場合は、点滴治療を施される場合があります。

この記事では、つわり・妊娠悪阻(にんしんおそ)に対して点滴治療を受けられる方の特徴や、治療法について解説します。

吐き気を和らげる方法についても紹介するので、辛いつわりでお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。

妊婦がつわりがひどい時に受ける点滴とは

つわりがひどい場合、食事が摂れないことによる極端な体重減少や脱水などを防ぐために、点滴をおこなうケースがあります。
この点滴に含まれる成分は、ブドウ糖や電解質、ビタミンB1やB6などです。

つわりに対して使われる点滴は、からだに足りない水分や栄養素などを補うものであり、治療薬ではありません。
そのため、お腹のなかの赤ちゃんへの影響もほとんどないと考えられます。

つわりで吐き気がひどい場合は点滴してもらえる?

つわりで吐き気がひどい場合は、失われた水分や電解質などを補充するために、点滴を受けることがあります。
つわりは妊婦の70~90%が経験するといわれていますが、つわりの程度には個人差があります。

つわりが起こる時期は妊娠初期の5~6週ごろからであり、たいていの場合は12~16週ごろまでに自然におさまるでしょう。
つわりの症状には吐き気以外にも、食欲不振や気もち悪さなどのさまざまなものがあります。
つわりが非常に重い方では、体重減少や脱水症状を引き起こすケースもみられます。

つわりで点滴するケースとは

つわりが重症化した状態は「妊娠悪阻(にんしんおそ)」呼ばれ、点滴の対象です。
妊娠悪阻の状態では、極めて強い吐き気や嘔吐、脱水、体重減少などがみられます。

「妊娠悪阻でないと点滴してもらえないの?」と不安な方もいるかもしれませんが、妊婦悪阻と診断されなくても点滴を受けられるケースがあります。
たとえば「1日中嘔吐している」「つわりで水分摂取が難しい」といった場合は、点滴を受けられる可能性があるでしょう。
つわりで点滴をおこなう判断基準は医療施設によって異なるため、かかりつけの産婦人科に確認してみてください。

入院が必要となるケースもある

つわりによる脱水や体重減少がみられる「妊娠悪阻」と診断された場合、基本的には入院して、食事療法や点滴などの治療がおこなわれます。

妊娠悪が重症化すると意識障害や肝機能障害などが起こる可能性があり、最悪の場合は死産や妊婦の死亡につながるためです。

つわりで受診すべき目安

吐き気を感じている妊婦さんは辛いことには変わりありませんが、つわりで受診する目安としては次のようなものが挙げられます。

【つわりで受診する目安】

  • 1日に何度も吐いて食べられない
  • 水分も摂れない
  • 体重が妊娠前に比べて5%以上または1~2kg減少している
  • 立っているとフラフラしてしまう
  • トイレの回数が減った

上記の症状のうち1つでもあてはまるものがあれば、早めに産婦人科を受診しましょう。

妊娠悪阻と診断される基準

つわりの影響で食事や水分補給が困難になり、脱水や体重減少などがみられる場合に妊娠悪阻と診断されることがあります。 妊娠悪阻の症状は段階的に悪化していく傾向にあり、具体的な症状の推移は次の表のとおりです。

妊娠悪阻の段階症状の特徴
  第一期・嘔吐で食事や水分摂取が困難な状態。
・脱水症状や体重減少、口の渇き、皮膚の乾燥などがみられる。
  第二期・水分さえも摂取不能で極度な脱水状態におちいる。
・頻繁な嘔吐や、著しい体重減少、尿量減少、発熱などが生じるようになる。
  第三期・ビタミンB1不足により「ウェルニッケ脳症」を発症すると、記憶や運動機能に異常が生じる。
・記憶障害(コルサコフ症候群)の後遺症が残る場合もある。
・最悪の場合、胎児死亡や母体死亡に至るケースもある。

妊娠悪阻の診断基準は、明確にはありません。
妊娠悪阻は「脱水気味」や「5%程度の体重減少」などの症状がある場合に、複合的に診断されます。

妊娠悪阻の治療方法

妊娠悪阻になった場合は、点滴だけでなく入院となることもあります。
妊娠悪阻の治療方法は次のとおりです。

【妊娠悪阻の治療方法】

  • しっかり休養する
  • 栄養バランスを考えた食事を摂る
  • 点滴による輸液療法をおこなう

それぞれの治療法について詳しくみていきましょう。

しっかり休養することが基本

つわりには精神的ストレスが関係しているとされているため、まずはしっかり休養することが大切です。

たとえば、仕事でのストレスが大きい場合は、休業について検討する必要があるでしょう。

つわりがひどいことで出勤が困難であれば、医師に相談し、母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)を書いてもらうことも可能です。

母健連絡カードに基づき、症状に応じた措置について事業主に相談しましょう。

栄養バランスを考えた食事

つわりがひどい時は、食べられるものを食べ、そのなかでなるべく栄養バランスを考えた食事を摂れるといいでしょう。

【バランスよく取り入れたい食材】

  • 主食(米やパンなど)
  • 主菜(肉や魚など)
  • 副菜(野菜やキノコなど)
  • 果物
  • 乳製品

吐き気がひどい時は、少しずつ複数回に分けて食事をすることもひとつの方法です。
食べ物のにおいが辛い場合は、冷やしたおにぎりや飲料タイプのゼリーなどを試してみるといいでしょう。

点滴による輸液療法

妊娠悪阻を根本的に治す治療法はないため、失われた水分や電解質を補う目的で点滴による輸液療法がおこなわれます。
妊娠悪阻の発症時期は胎児奇形の臨界期と重なるため、吐き気止めをはじめとする薬は極力処方されません。

ひどいつわりによって栄養が取れない状態が続く場合には、カロリーや栄養素が豊富な「中心静脈栄養(TPN)」と呼ばれる輸液を投与される場合もあります。

中心静脈栄養では、首や鎖骨の下にある太い血管の中に管を入れることでカロリーや栄養素を補給します。

つわりの辛い症状を少しでも和らげるポイント

ここでは、つわりの辛い症状をやわらげるポイントを、つわりの種類ごとに紹介します。

  • 食べづわりの人向け
  • においづわりの人向け
  • 眠りつわりの人向け

それぞれのポイントについて、詳しくみていきましょう。

食べづわり の人向けのアドバイス

食べづわりとは、空腹になると吐き気がするつわりのことです。
食べづわりでお悩みの場合は、空腹になる時間をつくらないために、食事を複数回に分けて摂るようにしましょう。
ただし、食べ過ぎて太ってしまうと妊娠糖尿病や巨大児などの原因となるため、カロリーが低めの食材を選ぶことがおすすめです。

においづわり の人向け

においづわりとは、特定のにおいで気分が悪くなるつわりです。
たとえば、今まで使っていた柔軟剤や歯磨き粉などのにおいを受けつけなくなることがあります。においづわりにお悩み方は、マスクやハンカチなどを使ってにおいを軽減するといいでしょう。
調理した食事を摂る場合、温度が低いとにおいを感じにくくなるため、冷ましてから食べるといいでしょう。

眠りつわり の人向けのアドバイス

眠りつわりでは全身のだるさや強い眠気があり、いくら睡眠をとっても寝足りない感じが続くことがあります。
眠い時は我慢せず、できるだけ横になったり、昼寝をしたりするといいでしょう。

どうしても起きなくてはいけない場合は、ガムを噛んだり、散歩やストレッチで適度にからだを動かしたりすることがおすすめです。

まとめ

つわりが重症化した状態である「妊娠悪阻」になった場合、脱水や体重減少などを改善する目的で点滴治療を施されることがあります。

点滴治療は基本的に、妊娠悪阻と診断された場合におこなわれますが、1日中嘔吐している場合や、水分摂取が難しい場合にも適用されるケースがあります。

つわりで水分摂取すら難しい、短期間で体重が減っているといった場合には、早めに産婦人科を受診しましょう。