生理があっても排卵してない無排卵月経とは?長く続く場合は放置せずに治療が重要!

「無排卵月経って何?」
「そのままにしたら何か悪いことが起きるの?」
「治療法があれば教えて」
このような不安を抱えていませんか?

無排卵月経は見た目では判断がつかず、ただの生理不順として見過ごされてしまいがち。しかし放置してしまうと不妊や癌のリスクを高めるため適切に治療することが大切です。

そこでこの記事では以下のことを解説します。

【この記事を読んで分かること】

  • 無排卵月経の特徴
  • 原因
  • 放置することによるリスク
  • 治療法

自宅で簡単にセルフチェックする方法もお伝えしているため、ぜひ最後まで読んでお役立てくださいね。

生理があっても排卵していない無排卵月経とは

無排卵月経とは、月経のような出血はあるのに排卵がうまくできない状態をいいます。正常であれば子宮内膜は約1ヵ月のサイクルで剥離・脱落・再生を繰り返しますが、この剥離・脱落による子宮内膜の排出が月経(いわゆる生理)と呼ばれます。

排卵のためには卵胞に保存された卵子がホルモンの働きによって発育し、十分に成熟することが必要ですが、何らかの要因で卵胞が成熟できないと排卵障害が起こります。

排卵障害が起こると卵胞は黄体に変化できないため、黄体ホルモンが分泌されず体内のホルモンバランスを適切に保つことができません。したがって月経サイクルも乱れ、生理不順などが生じます。

無排卵月経が起きている時の特徴

無排卵月経が起こっているときの特徴は以下の4つです。

【無排卵月経の特徴】

  • 生理不順気味
  • 生理期間がバラバラ
  • 出血量がいつもと違う
  • 基礎体温に変化がない

前述のとおり、卵胞は排卵が起こると黄体へと変化し、十分な黄体ホルモンを分泌します。黄体ホルモンは子宮内膜を厚くさせ、妊娠のための準備をさせる役割があります。

体内のホルモンバランスが正常に保たれた状態であれば、妊娠しなかった場合は子宮内膜が剥がれ落ちるため周期的なリズムで生理をむかえます。しかし、排卵がないと黄体ホルモンによる子宮内膜の変化が生じず、またホルモンバランスも乱れるため、生理が遅れたり生理期間がバラバラとなったりしてしまいます。

また、排卵障害があると体温を上昇させる働きをもつプロゲステロンが分泌されないため基礎体温も一定となります。

無排卵月経が起こる原因

無排卵月経となる原因には脳から出るホルモン分泌の異常や女性器そのものの異常が挙げられます。ここでは無排卵月経となる主な原因となる以下の3つを解説します。

【無排卵月経が起こる原因】

  • ストレスや無理なダイエット
  • 視床下部や下垂体の異常
  • 卵巣の病気

ストレスや無理なダイエット

ストレスや無理なダイエットは無排卵月経の原因の1つです。ストレスがかかった状態が続くと脳内のゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌が乱れることが報告されています。

GnRHは卵胞の発育を促す作用があるため、ストレスによりGnRHが減少すると卵胞の発育が上手くいかず無排卵月経や無月経を起こします。また、無理な食事制限や運動は体内のエネルギー不足につながり、脳下垂体からの黄体化ホルモン(LH)の分泌が抑制されてしまいます。

LHがないと卵胞からのエストロゲンも分泌されないため、結果として排卵障害を起こします。

視床下部や下垂体の異常

視床下部や下垂体に問題が生じるとホルモン分泌に異常をきたし、無排卵月経となることがあります。例えば下垂体腫瘍では、本来出産後の授乳期に分泌される乳汁ホルモン(プロラクチン)が増え、排卵の分泌を抑制します。

また、視床下部の異常に伴うドーパミンの低下や抗うつ薬の服用でもプロラクチンが増加することが報告されており、無排卵月経の要因となります。

卵巣の病気

代表的な卵巣の病気として、多のう胞性卵巣症候群(PCOS)があります。卵巣内に数㎜の多数の卵胞が存在し、それ以上成熟が起こらず排卵できない病気です。

典型的な症状として月経異常や不妊、多毛、肥満などが挙げられ、妊娠可能な年齢の女性のうち3~5%に認められます。ホルモン検査や超音波検査を使って診断し、治療するときには後述する排卵誘発治療を行います。

しかし、PCOSに対してクロミフェン治療は効果が出にくいことが報告されており、またゴナドトロピン治療では多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群が発生しやすいという問題点があるため、治療経過を慎重に見ながら進めていく必要があります。

無排卵月経を放置するリスク

無排卵月経は月経不順などの目に見える症状はあるものの、妊娠したいと考えてなければそれほど大きな問題だと思わない方もいるでしょう。しかし、無排卵月経を治療せずそのままにしておくと、排卵がないため不妊になる可能性は高くなります。

また卵巣機能が低下するとエストロゲンが減少してしまうため骨粗しょう症になることも。さらに、無排卵患者では子宮体癌発生のリスクが増加する可能性が指摘されているため(子宮体がん治療ガイドライン)、無排卵月経はそのままにせず早めに治療を受けることが大切です。

無排卵月経かどうかを知る方法

無排卵月経は生理のような出血があるため、見た目だけで無排卵かどうかは判断できません。そのためセルフチェックとして自宅でもできる方法を2つご紹介します。

  • 基礎体温をつける
  • 排卵検査キットを使う

それぞれ順番に解説します。

基礎体温をつける

基礎体温を計測し、体温が低い時期と高い時期があるかチェックしましょう。排卵後に分泌されるプロゲステロンには体温を上昇させる働きがあります。

正常に排卵されていれば普段より体温が高い時期を確認できるはずです。基礎体温を測るときは専用の婦人体温計を使用し、毎朝布団から出る前に舌の裏で測定します。

記録を毎日つけ、体温が二相性になっていれば排卵があると判断できます。

排卵検査キットを使う

排卵検査キットを使って排卵の有無を調べることもできます。排卵検査キットはドラッグストアやネットショップでも購入可能です。

一般的な測定方法は以下のとおりです。

  1. 生理開始予定日の17日前から検査を開始します。
  2. 毎日ほぼ同じ時間帯に1日1回検査をします。
  3. 検査キットを取り出し、採尿部を下に向け尿を直接約5秒間かける、もしくは容器に採尿したうえで採尿部を約20秒間浸します。
  4. 検査キットを平らな場所に静置し、判定結果が出るまで3分程度待ちます。

陽性反応が出た場合はまもなく排卵が起こることを示しています。自宅で簡単に確認できる方法なのでぜひ試してみてくださいね。

無排卵月経の治療法

無排卵月経の代表的な治療法は以下の3つです。

【無排卵月経の治療法】

  • クロミフェン治療
  • フェマーラ治療
  • ゴナドトロピン治療

いずれも排卵を誘発させる目的で使われるものの、その作用機序や副作用は異なるため個人の状況によって使い分けられています。医師と相談したうえで適切な治療を選びましょう。

クロミフェン治療

クロミフェンは脳からの卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の分泌を促進し、卵胞を発育させる薬です。卵胞からの卵胞ホルモンはある程度分泌されており、かつ下垂体から分泌されるFSHやLHの分泌が十分でない方に使用されます。

月経周期の5日目から5日間1~3錠内服すると、約2週間後に排卵が誘発されます。内服薬のため通院回数が少なく比較的簡便に治療できる方法で排卵率も良好です。

ただし、長期使用は不妊の可能性につながるため注意が必要です。副作用として子宮内膜が薄くなることや、子宮頚管からの粘液が減少することがあるため、医療機関で経過を見ながら治療を進めてください。

フェマーラ治療

フェマーラはもともと閉経後の乳がん治療薬として使われていましたが、卵胞刺激ホルモンの分泌を促進し卵胞を発育させる作用があるため排卵誘発剤としても使用されています。また、卵胞の感受性を高める作用もあります。

フェマーラは月経周期3~5日目から5日間内服します。クロミフェンと比較して子宮内膜を薄くしないという長所があり妊娠率も高いのが特徴です。

PCOSに対するフェマーラの治療成績は排卵率88.5%、妊娠率31.3%であり、クロミフェン治療(排卵率76.6%、妊娠率21.5%)より良い結果が示されています。

ゴナドトロピン治療

ゴナドトロピンはクロミフェン治療で妊娠できなかった方や、卵巣からの卵胞ホルモンの分泌が認められない方に使われます。卵胞を発育させるためのヒト閉経後ゴナドトロピン(hMG)を注射し、卵胞が一定の大きさに発育してから排卵作用のあるヒト絨毛制ゴナドトロピン(hCG)を注射して排卵を誘発させます。

月経周期の5日目頃から毎日注射する必要があり、また超音波検査や血液検査を行うため頻回な通院が必要です。治療効果が高い一方で、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群などの副作用も認められているため、医師と相談しながら慎重に進めていく必要があります。

まとめ

無排卵月経は排卵がないものの出血は認めるため、自分では気づきにくい病気です。そのため生理不順や生理の期間がバラバラになりやすい方は一度チェックしてみると良いでしょう。

基礎体温を計測したり、市販の検査キットで簡単にセルフチェックすることが可能です。未治療のまま放置すると妊娠しづらくなり、がんの発症リスクも高める原因にもなるため、一度チェックしてみることをおすすめします。

生理不順が続くようだったり、少しでも不安を感じたりするのであれば、ぜひ医療機関で相談してみてくださいね。