ピルを飲み忘れたときにコンドームが破けてしまったときなど、妊娠の可能性があるときに処方されるものがアフターピル。
緊急避妊薬とはいえ使用方法を間違えると避妊に失敗することもあり、また副作用や注意点、場合によっては使用できないこともあるため、必ずしも安心はしきれません。
ここではアフターピルの仕組みや効果、副作用・注意点、費用や処方までの流れについて説明します。
アフターピル(緊急避妊薬)とは
アフターピル(緊急避妊薬)とは避妊ができなかった性行為後に服用するピルのことです。
アフターピルの種類によって時間は異なりますが、性交渉後から一定の時間内に飲むことで避妊効果が期待できます。
望まない妊娠につながりそうで不安なときや、事故、性的な暴力があった場合に使用されます。
アフターピルの仕組み
アフターピルには多くの女性ホルモンが含まれているため、強制的に妊娠できない体にすることができます。
具体的には、受精卵の着床を防ぐことや排卵を遅らせる作用があり、精子を侵入させにくくする作用や受精を防ぐ作用もあります。
アフターピルの効果
ではアフターピルの効果はどのように得られるのでしょうか。
アフターピルの種類にもよりますが、性行為後72時間以内に飲む必要があるレボノルゲストレルや、エラという性行為後120時間以内のアフターピルがあります。
レボノルゲストレルの場合、72時間以内の服用でも85%の避妊効果が期待できますが、24時間以内では95%の避妊効果があるといわれているため、早めの服用がすすめられています。
アフターピルの失敗談として多いのが、避妊に失敗してから服用までの時間を間違って認識されていることです。望まない妊娠を避けるためにも、服用のタイミングについてはしっかり理解しておきましょう。
アフターピルの副作用
アフターピルの副作用には、吐き気、頭痛、腹痛、下痢、乳房の張り、眠気などが挙げられますが、多くは服用後24時間以内におさまることが多いでしょう。
服用後2時間以内に嘔吐してしまうと薬が体に吸収されていない可能性があるため、再度服用しなければいけません。
また、消退出血といってアフターピル服用から2日〜21日の間に性器から出血が起こることもあります。
消退出血は避妊がうまくいったことを知らせるものですが、排卵後にアフターピルを服用した方や妊娠した方では起こらないこともあります。
消退出血は、妊娠したときに起こる着床出血と外見は似ていますが、着床出血は妊娠から4週間後に起こります。消退出血は基本的に3週間後までに起こりますので出血の時期から判断しましょう。
また、消退出血では茶色のおりもののような出血がみられます。出血量が多いときや止まらない場合は別の原因が考えられますので、一度医師に相談しましょう。
アフターピルの種類
次にアフターピルの種類について紹介します。
ここでは、現在日本で多いレボノルゲストレル法、以前から行なわれているヤッペ法、海外で主流になっているウリプリスタール法の3つについて説明します。
レボノルゲストレル法
レボノルゲストレル法(LNG法)はレボノルゲストレルという黄体ホルモンを摂取する方法で、現在一般的に使用されているアフターピルです。
性交渉後24時間以内に1錠服用することで高い避妊効果が期待できますが、48時間や72時間の時点でも効果が期待できます。
従来の方法のヤッペ法よりも避妊できる確率が高く副作用もおさえられた方法であり、WHOからも緊急避妊のために推奨されているアフターピルです。
ヤッペ法
ヤッペ法は、プラノバールという卵胞ホルモンと黄体ホルモンからできた中容量ピルを使って避妊する方法です。
妊娠の可能性がある性行為から72時間以内に処方し、すぐに2錠とその12時間後に2錠、合計4錠を飲みます。
副作用には悪心や嘔吐が起こりやすいため、吐き気止めと一緒に処方されます。
レボノルゲストレル法より避妊率が下がるものの、少し安価なことが特徴です。
ウリプリスタール法
ウリプリスタール法は、ウリプリスタール酢酸エステルが主成分となったエラというアフターピルを1錠服用する方法です。
レボノルゲストレル法やヤッペ法と同じくできるだけ早くに飲むことが推奨されていますが、ウリプリスタール法は最長で120時間以内に服用することで避妊効果が期待されるアフターピルです。
日本ではまだ承認されていないものの、海外では一般的に使用されています。
エラは子宮筋腫の治療や、月経量が多い方(過多月経)の治療にも使われているので、これらの診断を受けている方で気になる方は医師に相談してみるとよいでしょう。
アフターピルの費用
アフターピルの費用は保険適用がされず自由診療となります。そのため、医療機関によって異なり、種類によっても値段に差があります。
全体的には5,000円台〜20,000円の範囲であることが多いでしょう。
レボノルゲストレル法のアフターピルであれば、1錠10,000円〜20,000円が相場となりますが7,000円〜9,000円で販売されていることもあります。
国内か海外か、ジェネリックかそうでないかによって値段が変わります。
ヤッペ法では一回あたり(合計4錠)で5,000円台のところが多く、安価なところでは約3,000円です。
他の方法より安価ではありますが、副作用が出やすいことや避妊確率を考慮し、医師に相談したうえで決定しましょう。
ウリプリスタール法であるエラは1錠あたり10,000円〜20,000円であることが多く、平均は15,000円くらいといわれています。
アフターピルの処方から服用までの流れ
ここでは実際にアフターピルが処方されるまでの流れについて説明します。
基本的には問診、処方の説明、服用後の確認となります。
アフターピルの処方の流れ
まずは問診によって、妊娠の可能性がある性行為の日時を聞かれます。
採血や検査などはされない場合が多いですが、なかにはアフターピルを服用できない方もいるため、診察ではその確認もされます。
問題がなければ注意点・副作用について説明がされた後、アフターピルが処方されるでしょう。
アフターピルにより避妊ができた場合は、今後の避妊方法について相談を受けるまでを一連の流れとしている医療機関もあります。
アフターピルの服用方法
レボノルゲストレル法、ウリプリスタール法ではお薬を1錠服用します。
ヤッペ法の場合は、処方時に2錠を飲み、その12時間後に追加で2錠を服用します。
もし服用から2時間以内に嘔吐してしまった場合はアフターピルの効き目が十分ではない可能性がありますので、再度費用を支払って同量のアフターピルを服用する必要があります。
副作用による嘔吐が心配な方は、吐き気止めも一緒に処方してもらえるよう医師に相談しておきましょう。
服用後の確認方法
アフターピルを服用したとしても、必ず避妊ができるということではありません。消退出血か生理があるまでは油断しないようにしましょう。
消退出血は服用してから平均で4日〜7日頃や、7日前後に起こる方が多いです。
排卵前にアフターピルを服用した場合は、消退出血の後に排卵が起こる可能性があるため月に2回生理が起こることもあります。また排卵後にアフターピルを服用したとき、消退出血と生理が同時に起こった場合は1回で済みます。
避妊がうまくできたか確認するためにも、普段から基礎体温を記録して生理周期を把握しておくことが大切です。
服用から3週間以上になっても生理や消退出血が起こらない場合は妊娠の可能性があります。妊娠検査薬の使用や、医師への相談は早期に行ないましょう。
アフターピルを服用する際の注意点
緊急の避妊時に使用されるアフターピルですが、なかには服用できない方もいるため、注意が必要です。
- 血栓症のリスクが高くなるため、キラキラした光が見えるといった前兆をともなう偏頭痛がある方は服用できない
- 女性ホルモンと関連するがん(乳がんや子宮がんなど)と診断されたことがある方
- 肝障害がある方、授乳中・妊娠中の方、産後4週間以内の方
- 手術の予定がある方は服用できない可能性がある
- 抗てんかん薬や抗HIV薬などアフターピルと併用できないお薬を服用中の方
- セイヨウオトギリソウが含まれたハーブティーなどの食品を飲んでいる方
- 黄体ホルモンアレルギーを持つ方
アフターピルについてよくある質問
ここではアフターピルの効果についてよくある質問に回答します。
アフターピルを服用後、アルコールは禁止ですか?
副作用や避妊効果に影響するため、アフターピルを飲む前と服用後24時間はアルコールを控える必要があります。
高校生でもアフターピルは購入できますか?
医療機関によって異なります。処方してもらえるところはありますが、保護者同伴や同意書の記載などが必要になる場合もあります。アフターピルは保険適用外となるため保険証がなくても処方してもらうことが可能です。
通販や個人輸入で販売されているアフターピルもありますが、製造元が明らかでなく効果・副作用が不明なことも多いため、必ず医療機関で処方を受けましょう。
アフターピルを飲んだ後はいつから避妊する必要がありますか?
次の生理が来て避妊が確認できるまでは続けましょう。ただし、アフターピル服用後に低容量ピルで避妊すると、妊娠していた場合に気付けないことがあるため、低容量ピルによる避妊は推奨されていません。
まとめ
ここではアフターピルの仕組みや副作用、種類、服用時のことなどについて説明しました。
アフターピルは妊娠を望まないときに避妊に失敗した場合や、性暴力にあったときなど緊急時の手段として使用されるものです。しかし、その効果には性行為から数時間と限られている点や、副作用・注意点があること、また普段から避妊の手段として使用するものではないことに注意が必要です。
なかには体の状態や服用しているお薬によっては使用できない方もいるため、低容量ピルやコンドームによる避妊を普段から徹底しましょう。
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