性病は、気が付かないうちに感染していることが多い病気です。加えて、複数の性病に感染する「重複感染」が起こり得る可能性もあります。
今回は、重複感染が起こりやすい梅毒とエイズについて解説します。それぞれの関係性や感染経路についても解説しているので、感染の疑いがある方だけでなく、感染の心当たりがない方も、自身とパートナーの将来の健康を守るためにぜひ参考にしてください。
「梅毒」「エイズ」といった性病の重複感染について
重複感染とは、複数の性病に同時感染することをいいます。「性病」とは性感染症のことであり、膣性交・アナルセックス・オーラルセックスなど、あらゆる性行為を通して感染する病気のことを指します。代表的なものは、以下の通りです。
・梅毒
・HIV(エイズ)
・クラミジア
・淋病
・トリコモナス
・マイコプラズマ
・A/B/C型肝炎
・ヘルペス
・カンジダ
・赤痢アメーバ
・尖圭コンジローマ
性病は感染経路が同じであったり、感染率が高かったりすることから、重複感染は珍しくありません。
ただし、空気感染はしないため、通常の日常生活で感染することや家族に感染することはほとんどないといえます。
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梅毒とエイズは重複感染が起こりやすい
梅毒とエイズはどちらも感染経路が似ていることから、重複感染は起こりやすいといわれています。米国の健康保護機関であるCDCの発表によると、梅毒感染者の60%以上がHIVに感染しており、HIV感染者の50%が梅毒に感染しているという結果もあるほどです。
特に梅毒に感染すると潰瘍を伴った病変が症状としてみられることがあるため、傷口からHIVに感染するリスクが高くなっています。また、異性間と比べ粘膜に傷がつきやすいMSM(男性間性交渉者)の場合、よりHIVへ感染する確率が高く、HIVに感染したMSMの梅毒重複感染のリスクは5倍にもなるといわれています。
梅毒とは
ここでは、「梅毒」について解説します。梅毒はかつて「死に至る病」とされていましたが、現在は適切な治療をすれば治る病気です。感染経路や症状をチェックしてみましょう。
梅毒の感染経路
梅毒の感染経路は、次の通りです。
・性交渉(膣性交・アナルセックス・オーラルセックス・キスなど)
・母子感染
・梅毒陽性者の新鮮血輸血
感染経路として最も多いのが性交渉であり、輸血での感染は極めて稀になっています。梅毒の原因菌である「梅毒トレポネーマ」は温度や湿度の変化に弱く、低酸素状態だとすぐ死滅するためです。
また、母子感染は、国立感染症研究所の発表によると2023年の第2四半期の梅毒感染者数3,750人のうち、先天性梅毒(母子感染)は13人となっています。基本的に妊婦健診などで梅毒に感染しているかどうかがわかるため、適切な対処を行えば母子感染のリスクは低くなります。
ただし、健診などを受けていなかったり、治療が遅くなったりした場合は母子感染が起こり得ます。
梅毒にみられる症状
梅毒にみられる主な症状は、以下の通りです。感染初期の段階ではいずれも症状の消失と発現を繰り返すため、「治った」と勘違いしてしまう方も多い傾向にあります。
・リンパ節の腫れ
・潰瘍を伴う硬いしこり(初期硬結・硬性下疳)
・全身に赤い斑点(バラ疹)
・発熱
・倦怠感
・大動脈瘤
・大動脈弁逆流症
・髄膜炎
・脳梗塞
感染が進行すると徐々に症状が悪化し、大動脈瘤や脳梗塞といった致死的な症状が現れる可能性があるため、早期治療を心掛けましょう。
エイズとは
エイズとHIVの区別がつかない方も多いかもしれません。それぞれの違いを把握しておきましょう。
エイズとHIVの違い
「エイズ」は病気、「HIV」はウイルスを指します。
梅毒が「梅毒トレポネーマ」に感染して発症する病気であるのと同様に、エイズは「HIV」に感染することで発症する病気です。
「HIV」は、「ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)」といって、体を病気から守ってくれる免疫細胞に感染し、少しずつ感染者の免疫を弱めてしまうウイルスです。HIVに感染すると、正常な体であれば罹らないような病気になったり、エイズを発症したりします。
またエイズ(AIDS)とは、「Acquired Immuno-Deficiency Syndrome」の略称で、「後天性免疫不全症候群」と訳されます。HIVに感染した後、少しずつ免疫細胞が減った結果発症する病気です。
HIVの感染経路
HIVの感染経路は、以下の通りです。
・性交渉(膣性交・アナルセックス・オーラルセックスなど)
・血液感染(輸血や注射器の使いまわしなど)
・母子感染
感染経路の中でも輸血による感染確率は約90%と非常に高くなっています。
また、現在の感染者数は減少傾向にありますが、男性の感染は増加傾向です。男性の感染は、同性間での性交渉による感染が半数を占めます。
エイズにみられる症状
基本的にエイズは、特定の病原体を検査で判別した上で診断されるのではなく、特定の病気に罹患した際にエイズを発症したと診断されます。エイズであると診断する基準としては、以下の23種類の疾患のうちいずれかを罹患した場合と定められています。
ただし、以下の特定の疾患に罹患した場合でも、症状の具合によってはエイズであると診断されないケースもあります。
真菌症 | 1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)2.クリプトコッカス症(肺以外)3.コクシジオイデス症※全身に播種した場合※肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に発症した場合4.ヒストプラズマ症※全身に播種した場合※肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に発症した場合5.ニューモシスチス肺炎 |
原中症 | 6.トキソプラズマ症※生後1か月以後7.クリプトスポリジウム症※1か月以上下痢が続いた場合8.イソスポラ症※1か月以上下痢が続いた場合 |
細菌感染症 | 9.化膿性細菌感染症※13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌などの化膿性細菌が原因である「敗血症」「肺炎」「髄膜炎」「骨関節炎」「中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍」のいずれかが2年以内に2つ以上多発した場合、あるいは繰り返し起こった場合10.サルモネラ菌血症※再発を繰り返す場合※チフス菌によるものを除く11.活動性結核※肺結核・肺外結核肺(肺結核については、免疫不全による症状や所見がみられる場合に限る)12.非結核性抗酸菌症※全身に播種した場合※肺、皮膚、頚部、肺門リンパ節以外の部位に発症した場合 |
ウイルス感染症 | 13.サイトメガロウイルス感染症※生後1か月以後の場合で肝、脾、リンパ節以外に発症した場合14.単純ヘルペスウイルス感染症※1か月以上継続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈する場合※生後1か月以後に気管支炎、肺炎、食道炎を併発した場合15.進行性多巣性白質脳症 |
悪性腫瘍 | 16.カポジ肉腫17.原発性脳リンパ腫18.非ホジキンリンパ腫※大細胞型、免疫芽球型、Burkitt型の場合19.浸潤性子宮頚癌※免疫不全を示唆する症状や所見がみられる場合 |
【重複感染】梅毒とエイズそれぞれが与える影響について
梅毒とHIVの相互が与える影響としては、「梅毒の症状によってHIVに感染しやすくなる」「HIVの影響によって梅毒の症状が進行しやすくなる」ことが挙げられます。ここでは、梅毒とエイズに重複感染した場合、具体的にどのような影響があるのかについて解説します。
梅毒がエイズ(HIV)に与える影響
梅毒の症状の一つに潰瘍性の病変ができる場合があるため、梅毒に感染している場合はHIVに感染するリスクが高くなります。また、梅毒は初期症状が少ないことも多く、自覚がないまま感染している場合もあるでしょう。梅毒に感染していると知らないまま性行為をし、HIVの重複感染を引き起こす恐れがあります。
エイズ(HIV)が梅毒に与える影響
HIVと合併して発症した梅毒は、感染してすぐに神経梅毒に進行する場合があります。神経梅毒は、以下のような症状です。
・記憶障害
・思考力の低下
・痴呆
・歩行障害
・体の痛み
・瞳孔異常
上記の症状は通常梅毒の末期症状として挙げられるため、HIVの感染が梅毒の進行を早めるともいえるでしょう。また、HIV感染者は梅毒性眼病変を発症することも多く、網膜炎や間質性角膜炎・乳頭様結膜炎・視神経炎・虹彩炎などを発症する可能性も考えられます。
梅毒・エイズ以外によくある重複感染
性病の重複感染は、梅毒とエイズだけではありません。ここでは、よくみられる重複感染の例を3つ紹介します。
「クラミジア」×「淋病」
クラミジアと淋病は、ともに国内で感染者数の多い性病の一つであり、多いがゆえに重複感染しやすいです。加えて、クラミジアは自覚症状の乏しいことが多いため、感染に気付かないうちに淋病にも感染するケースがあります。
それぞれの症状は、以下の通りです。
【クラミジアによくみられる症状】
男性 | 尿道の痛み・かゆみ・不快感、少量の分泌液など |
女性 | 不正出血、おりものの増加、排尿痛など |
【淋病によくみられる症状】
男性 | 尿道炎、尿道にかゆみや違和感、性器から膿が出るなど |
女性 | 子宮頸管炎、卵管炎、肝周囲炎など不妊の原因になることも |
「クラミジア」×「トリコモナス」
「クラミジア」と「トリコモナス」も重複感染しやすいといわれています。そもそもトリコモナスとは、原虫というアメーバのような寄生虫によって発症する病気のことです。感染経路が多く、タオルや下着、トイレ、お風呂での感染も少なくありません。
【トリコモナスによくみられる症状】
男性 | 尿道の違和感・不快感・かゆみ、尿道分泌物が出てくるなど |
女性 | 臭いの強いおりものが増加、下腹部の痛み、膣のかゆみなど |
トリコモナスはクラミジアと症状が似ており、判別が困難な病気の一つです。
「クラミジア」×「マイコプラズマ」
「性感染症 診断・治療 ガイドライン2020」によると、マイコプラズマは性病として取り上げなくなっていますが、クラミジアと重複感染する可能性のある病気です。マイコプラズマは症状がクラミジアと類似しているほか、病気としての認知度が低いため、検査を受けておらず、重複感染に至るケースがあります。
【マイコプラズマによくみられる症状】
男性 | 尿道の違和感・かゆみ、排尿痛、性器の異臭、膿など |
女性 | おりものの増加や違和感など |
まとめ
どの性病も主に性行為によって感染する病気であるため、感染経路が同様である複数の性病に感染する恐れがあります。重複感染は、性病の症状に自覚がない(少ない)ケースが多いため、感染したことに気付かず新たに行為を重ねてしまうことによって起こり得ます。
性病は、自分だけの問題ではありません。パートナーにも関係してくるため、症状を放置せずに必ず受診しましょう。不妊の原因になる性病や死に至る性病もあるため、疑いがある場合は早急に受診してください。
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