いつもより生理の量が多い原因とは?過多月経の適切な対処法

いつもより生理の量が多いと感じたとき、不安になる方は多いのではないでしょうか。

実は、生理の量が異常に多い「過多月経」は、多くの女性が経験する症状であり、背景にはホルモンバランスの乱れや子宮筋腫、子宮内膜症などさまざまな原因が隠れている可能性があります。

過多月経を放置すると、貧血の悪化や重大な病気の発見が遅れる恐れもあるため、早期発見と適切な対処が重要です。

本記事では、いつもより生理の量が多い原因や日常生活でできる対処法をわかりやすく解説します。

いつもより生理の量が多い原因とは?

正常な経血量は1回の生理で20〜140mLとされており、140mLを超える場合は「過多月経」と診断される可能性があります。

いつもより生理の量が多いと感じる場合、その背景にはさまざまな原因が考えられます。

ホルモンバランスの乱れ

ホルモンバランスの乱れは、生理の量が増える最も一般的な原因の一つです。

女性の体は、月経周期に合わせてエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンの分泌量が変化しています。

このバランスが崩れると、子宮内膜が過剰に厚くなり、剥がれ落ちる際の出血量が増加することがあります。

ホルモンバランスの乱れを引き起こす主な要因には、以下のようなものがあります。

  • 強いストレスや精神的な負担
  • 不規則な生活習慣や睡眠不足
  • 過度なダイエットや急激な体重変化
  • 過剰な運動や運動不足
  • 更年期に伴うホルモン変動

思春期や更年期など、ホルモンの分泌が安定しにくい時期には、生理の量が多くなることがあります。

また、排卵が起こらない「無排卵性月経」の場合も、生理の量が増える傾向があります。

ストレスは、脳下垂体や視床下部の機能に影響を与え、卵巣ホルモンの分泌リズムを乱す可能性があります。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の筋肉層にできる良性の腫瘍です。

30〜40代の女性に多く見られ、女性の約3人に1人は有する疾患とされています。

子宮筋腫ができると子宮内膜の表面積が広がるため、生理の量が増えることがあります。

また、筋腫の位置によっては子宮の収縮が妨げられ、出血が長引く場合もあります。

子宮筋腫の主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 生理の量が異常に多い(過多月経)
  • 強い生理痛や下腹部痛
  • 貧血による立ちくらみや倦怠感
  • 頻尿や残尿感
  • 腰痛や下腹部の圧迫感

多くの場合は無症状ですが、筋腫が大きくなると上記のような症状が現れることがあります。

不正出血や下腹部痛がある場合には、子宮筋腫の関与が考えられるため、婦人科での検査をおすすめします。

子宮内膜症

子宮内膜症は、本来子宮の内側にあるはずの子宮内膜組織が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。

月経周期に合わせて増殖と剥離を繰り返すため、以下のような症状が現れることがあります。

  • 生理の量が増加する(過多月経)
  • 強い生理痛や慢性的な骨盤痛
  • 性交時の痛み(性交痛)
  • 排便時の痛みや違和感

症状がある場合は、早期に診断・治療することで進行を抑えられる可能性があるため、気になる症状がある方は婦人科を受診しましょう。

子宮腺筋症

子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉層に入り込んで増殖する病気です。

子宮が大きく固くなるため、生理のたびに増殖と剥離を繰り返し、激しい生理痛や過多月経を引き起こします。

主な症状は以下の通りです。

  • 生理の量が徐々に増える
  • 激しい生理痛
  • 下腹部、腰、下半身全体の痛み
  • 貧血による体調不良

子宮腺筋症は、子宮内膜症と合併することが多く、40〜50代の女性に多く見られます。

症状が重い場合は、鎮痛剤やホルモン療法、場合によっては手術療法を検討する必要があります。

子宮ポリープ

子宮ポリープは、子宮内膜や子宮頸管にできる良性の突起物(腫瘍)です。

子宮内膜の表面積が増えるため、生理の量が増えたり、生理と生理の間に不正出血が見られたりすることがあります。

子宮ポリープの主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 生理の量が多くなる
  • 不正出血(生理以外の出血)
  • 生理周期の乱れ
  • おりものの増加

多くの場合、自覚症状がないため、不正出血や検診をきっかけに発見されることが多いです。

子宮ポリープは放置すると内膜癌のリスクを高める可能性があるため、定期的な検診と必要に応じた治療が大切です。

その他の疾患

甲状腺機能の異常など、内科系の疾患も生理の量に影響を与える可能性があります。

甲状腺疾患は、女性ホルモンのバランス調整に関与しているため、生理不順や生理の量の増減が起こることがあります。

生理の量が多いと感じたら、原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。

自己判断せず、早めに医療機関を受診して相談するようにしましょう。

いつもより生理の量が多いときに受診すべき目安

生理の量が多いと感じても、どのタイミングで婦人科を受診すべきか迷う方は多いのではないでしょうか。

以下のような症状がある場合は、過多月経の可能性が高いため、早めに婦人科を受診することをおすすめします。

受診すべき症状
  • 昼用ナプキンを2時間に1回以上交換しないと間に合わない
  • 夜用ナプキンでも朝まで持たず、漏れてしまう
  • 2.5cm以上のレバー状の血の塊が頻繁に混じる
  • 立ちくらみ、めまい、動悸、息切れなど貧血の症状がある
  • 生理痛が強く、鎮痛剤を飲んでも日常生活に支障がある
  • 下腹部にしこりや腫れを感じる
  • 妊娠の可能性がある状態で大量の出血がある
  • 生理の出血が8日以上続く(過長月経)

これらの症状は、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症などの病気が隠れている可能性を示唆しています。

40代以降で生理の量や周期に変化が見られる場合は、子宮体がんなどのリスクも考慮し、早めの受診が重要です。

生理の量が多いときの治療法

過多月経と診断された場合、原因や症状の程度に応じてさまざまな治療法があります。

薬物療法

薬物療法は、薬を使って生理の量を調整したり、原因となっている病気を治療したりする方法です。

手術に比べて体への負担が少ないため、多くの場合、最初に検討される治療法となります。

主な薬物療法
  • トラネキサム酸:生理中に過剰に作られるプラスミンという酵素の働きを抑え、出血量を減らす
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):痛みや炎症を和らげる作用があり、生理痛を軽減
  • 低用量ピル(OC)やLEP製剤:子宮内膜を薄くすることで月経量を減らす
  • 黄体ホルモン放出子宮内システム(ミレーナ®):子宮内に装着することで、子宮内膜を薄くし、経血量を減らす
  • GnRHアゴニスト:女性ホルモンの分泌を抑えることで、子宮筋腫や子宮内膜症の症状を改善
  • 鉄剤・造血剤:貧血に対して処方され、鉄分を補給

薬の種類は、生理の量が多くなる原因や症状に合わせて選択されます。

薬物療法は、それぞれの薬によって効果や副作用が異なるため、医師とよく相談し、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。

手術療法

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、子宮筋腫・子宮内膜症など明確な原因がある場合には、手術療法が検討されます。

主な手術療法
  • 子宮筋腫核出術:子宮筋腫のみを取り除く手術
  • 子宮内膜焼灼術:子宮内膜を焼き切ることで、経血量を減らす
  • 子宮全摘術:子宮をすべて摘出する手術
  • 子宮動脈塞栓術(UAE):子宮筋腫に栄養を送る血管を塞ぐことで、筋腫を縮小させる方法
  • 腹腔鏡下手術:小さな傷で行う低侵襲な手術方法

手術の適応は、年齢、症状の重症度、将来の妊娠希望の有無などを総合的に判断して決定されます。

手術療法は体への負担が大きく、入院が必要になる場合もあるため、医師と十分に相談したうえで慎重に検討する必要があります。

生理の量が多いときに日常生活でできる対処法

医療機関での治療と並行して、日常生活でできる対処法を実践することも重要です。

鉄分を補って貧血を防ぐ

生理の量が多いと、体内の鉄分が不足しやすく、貧血のリスクが高まります。

過多月経の方は、鉄欠乏性による貧血を合併しているケースが多いため、鉄分を多く含む食品を積極的に摂取することが大切です。

鉄分を多く含む食品
  • 動物性食品:レバー、赤身の肉、カツオ、マグロ、イワシ、アサリ、シジミなど
  • 植物性食品:海藻類、ほうれん草、小松菜、大豆製品など

鉄分の推奨摂取量は、月経のある成人女性で1日あたり10.5〜11mgとされています。

食事だけで十分な鉄分を摂取するのが難しい場合は、鉄剤やサプリメントで補うことも検討しましょう。

体を冷やさない工夫をする

体が冷えると経血の量が増える場合があるため、体を冷やさないように心がけることが大切です。

体を温める工夫
  • 腹部や腰を温める(腹巻き、カイロ、湯たんぽの使用)
  • 温かい飲み物を飲む(白湯、生姜湯、ハーブティーなど)
  • 湯船にゆっくり浸かる(ぬるめのお湯で15〜20分程度)

ただし、マッサージやエステなど血流をよくする行為は、かえって経血量が増えることもあるため、生理中は控えめにすることをおすすめします。

生活習慣を見直す

規則正しい生活習慣を心がけることで、ホルモンバランスの改善が期待できます。

見直すべき生活習慣
  • バランスの取れた食事(主食、主菜、副菜を揃える)
  • 適切な体重管理(過度なダイエットを避ける)
  • 規則正しい生活リズムを保つ(起床・就寝時間を一定にする)

これらの対処法を試しても症状が改善しない場合や、症状が重い場合は、自己判断せずに医療機関を受診して相談しましょう。

まとめ:早めに受診して適切な対処を行うことが重要

いつもより生理の量が多い時はさまざまな要因が考えられます。

夜用ナプキンでも漏れてしまう、昼用ナプキンを2時間に1回以上交換する必要がある、2.5cm以上のレバー状の血の塊が頻繁に出る、貧血症状があるといった場合は、早めに婦人科を受診することが大切です。

過多月経を放置すると、貧血が悪化して日常生活に大きな支障が出たり、重大な病気の発見が遅れたりする可能性があります。

自己判断せず、早めに医療機関を受診して専門医に相談しましょう。