「生理前になると、イライラが止まらない」「気分が落ち込んで涙が出てしまう」「頭痛や腹痛がつらくて仕事に集中できない」
このような悩みを抱えていませんか。
PMS(月経前症候群)の症状に悩む女性は非常に多く、いざ病院を受診しようと思っても「婦人科と心療内科、どっちに行けばいいの?」と迷ってしまう方も少なくありません。
この記事では、PMS治療において婦人科と心療内科のどちらを受診すべきか、それぞれの治療内容の違いやPMS症状を軽減するセルフケアなど、わかりやすく解説します。
PMS治療で婦人科と心療内科どっちを選ぶべき?

PMS治療において、婦人科と心療内科のどちらを受診すべきかという問いに「絶対的な正解」はありません。
なぜなら、PMSの症状は人によって大きく異なり、身体的な症状が強い人もいれば、精神的な症状が中心となる人もいるからです。
PMS治療における婦人科の役割
婦人科では、主にホルモンバランスの調整を目的とした治療が行われます。
月経周期に伴うホルモンの変動を安定させることで、PMS症状の軽減を目指します。
具体的には、低用量ピルによるホルモン療法や漢方薬の処方、さらには生理周期の乱れや子宮内膜症など、他の婦人科疾患の有無を確認する検査も実施されます。
婦人科での治療は、身体的な症状が中心の方や、ホルモンバランスの乱れが原因と考えられる場合に特に効果的です。
PMS治療における心療内科の役割
一方、心療内科では、PMSに伴う精神的な症状に焦点を当てた治療が中心となります。
気分の落ち込みやイライラ、不安感などの症状に対して、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬や抗不安薬が処方されることがあります。
また、認知行動療法やカウンセリングを通じて、ストレスへの対処法や感情のコントロール方法を学ぶことも重要な治療の一環です。
心療内科での治療は、精神的な症状が強く、日常生活や人間関係に支障をきたしている場合に適しています。
PMS治療で婦人科を受診すべき症状と治療内容

婦人科でのPMS治療は、ホルモンバランスの調整と身体的症状の緩和を中心に行われます。
婦人科での受診が適しているPMS症状
婦人科の受診をおすすめするのは、以下のような身体的な症状が中心の場合です。
- 生理前に現れる頭痛や腹痛、腰痛
- むくみ
- 乳房の張り
- 体重増加
- 倦怠感や疲労感
生理前に現れる頭痛や腹痛、腰痛などの痛みは、婦人科で適切な鎮痛剤の処方を受けることができます。
むくみや乳房の張り、体重増加といった症状も、ホルモンの変動が原因であることが多く、婦人科での治療が効果的です。
また、生理周期が不規則である、月経痛が特に強い、出血量が異常に多いまたは少ないといった症状がある場合は、他の婦人科疾患の可能性も考えられます。
婦人科でのPMS治療法
婦人科での主な治療法は以下の通りです。
低用量ピルとホルモン療法
婦人科でのPMS治療の中心となるのが、低用量ピルによるホルモン療法です。
低用量ピルは、月経周期に伴うホルモンの急激な変動を抑制することで、PMS症状の軽減を目指します。
特にエストロゲンとプロゲステロンのバランスを安定させることで、身体的症状だけでなく、気分の変動も和らげる効果が期待できます。
漢方薬による体質改善
婦人科では、漢方薬を用いた治療も積極的に行われています。
漢方薬は、症状を一時的に抑えるのではなく、体質そのものを改善することで、PMS症状の根本的な解決を目指します。
PMSの治療によく使われる漢方薬には、以下のようなものがあります。
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…血流を改善する効果があり、手足の冷えや肩こり、のぼせ、頭痛などの症状に効果的
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…血行を良くし、体を温める
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)…気分の落ち込みやイライラ、不安感などの精神症状に効果がある
- 抑肝散(よくかんさん)…イライラや易怒性など、感情のコントロールが難しい症状に有効
漢方薬の効果は緩やかで、通常2週間から1か月程度の服用で効果が現れ始めることが多いです。
低用量ピルと併用することも可能で、ピルで症状を抑えながら、漢方薬でゆっくりと体質を整えていくという治療法もあります。
その他の対症療法
ホルモン療法や漢方薬以外にも、婦人科では症状に応じて様々な薬が処方されます。
頭痛や腹痛には鎮痛剤(NSAIDs)が処方され、症状が現れた時に服用します。
むくみが強い場合には利尿剤が使われることもあります。
PMS治療で心療内科を受診すべき症状と治療内容

心療内科でのPMS治療は、精神的な症状へのアプローチを中心に行われます。
心療内科での受診が適しているPMS症状
心療内科の受診をおすすめするのは、以下のような精神的な症状が中心の場合です。
- イライラや怒り
- 気分の落ち込みが激しい
- 強い不安感や緊張感
- 集中力の低下や意欲の減退
生理前に現れる強いイライラや怒りで、家族や同僚に対して感情的になってしまい、後悔することが多い方は、心療内科での治療が効果的です。
また、集中力の低下や意欲の減退で、仕事や家事がまったく手につかない状態も、心療内科での治療が適しています。
このような精神症状が、月経前の特定の時期に繰り返し現れ、月経が始まると軽快するという周期性がある場合、PMSまたはPMDD(月経前不快気分障害)の可能性が高いです。
心療内科でのPMS治療法
心療内科での主な治療法は以下の通りです。
SSRI(抗うつ薬)による薬物療法
心療内科でのPMS治療において、特に精神症状が強い場合に用いられるのが「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」です。
SSRIは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの濃度を高めることで、気分の落ち込みやイライラ、不安感を改善する効果があります。
毎日継続して服用する方法だけでなく、症状が現れる黄体期(月経前の約2週間)だけ服用する方法や、症状が特に強まる月経直前の6日間程度だけ服用する方法も効果的です。
ただし、SSRIには吐き気、眠気、性機能障害などの副作用が現れることもあるため、医師と相談しながら適切な薬剤と用量を決定します。
カウンセリングと認知行動療法
薬物療法と並んで重要なのが「カウンセリングや認知行動療法(CBT)」などの心理療法です。
カウンセリングでは、PMSの症状によって生じる悩みや不安について、専門家に話を聞いてもらうことができます。
また、認知行動療法ではストレスへの対処法や、ネガティブな思考パターンを見直す方法を学びます。
心療内科では、患者一人ひとりの生活背景やストレス要因にも配慮した治療が行われるため、単に症状を抑えるだけでなく、根本的なストレス対処能力を高めることができます。
PMSとPMDDの違い
PMDD(月経前不快気分障害)は、PMSの中でも特に精神症状が重度で、日常生活に著しい支障をきたす状態を指します。
PMSとPMDDの最も大きな違いは、症状の重さと、特に精神症状の強さです。
| 比較項目 | PMS(月経前症候群) | PMDD(月経前不快気分障害) |
|---|---|---|
| 主な症状 | 身体症状と精神症状の両方、または身体症状が主 | 精神症状が中心で非常に重度 |
| 日常生活への影響 | 軽度〜中等度の影響 | 著しい支障をきたす |
| 治療の中心 | 婦人科での治療が一般的 | 心療内科・精神科での治療が中心 |
| 主な治療法 | 低用量ピル、漢方薬、生活習慣の改善 | SSRI、認知行動療法、ホルモン療法の併用 |
PMSは比較的軽度の症状が多く、生活習慣の改善やホルモン治療で症状が緩和されることが多いです。
一方、PMDDは精神症状が非常に重く、専門的な精神科治療が不可欠です。
PMSとPMDDは関連のある疾患ですが、PMSが必ずPMDDへ“移行する”というわけではありません。
ただし、ホルモン変動に対する感受性が高い方では、PMSと似た周期性を持ちながら、精神症状が強く出るケースがあり、結果としてPMDDとして診断されることがあります。
症状が強い場合や日常生活に支障が出ている場合は、重症化を防ぐためにも早めに医療機関へ相談することが大切です。
そのため、PMSの段階で適切な治療を受けることが、重症化を防ぐために重要です。
PMS症状を軽減するセルフケア方法

医療機関での治療と並行して、日常生活の中でできるセルフケアもPMS症状の軽減に非常に効果的です。
適度な運動でホルモンバランスを整える
適度な運動は、自律神経のバランスを整え、血行を促進する効果があり、PMS症状の緩和に非常に有効です。
PMS症状の軽減に効果的な運動には、以下のようなものがあります。
- ウォーキング
- ストレッチ
- ヨガ
- ピラティス
- 水泳、アクアビクス
運動を行う際のポイントとして、無理のない範囲で継続することが最も重要です。
運動を習慣化することで、ホルモンバランスが安定し、PMS症状の予防にもつながります。
栄養バランスの取れた食事でPMS症状を和らげる
食事は、ホルモンバランスや精神状態に直接影響を与えるため、栄養バランスの取れた食事を心がけることがPMS症状の軽減に重要です。
特に以下の栄養素を意識的に摂取することをおすすめします。
| 栄養素 | 効果 | 主な食材 |
|---|---|---|
| ビタミンB6 | ホルモンバランスを整える、精神的安定 | かつお、まぐろ、バナナ、さつまいも |
| マグネシウム | 筋肉の緊張を緩和、リラックス効果 | アーモンド、ほうれん草、玄米 |
| カルシウム | イライラを抑える、神経を安定させる | 牛乳、チーズ、小魚、豆腐 |
| ビタミンE | 血行促進、ホルモンバランスを整える | アボカド、かぼちゃ、ナッツ類 |
| 鉄分 | 貧血予防、疲労回復 | レバー、ほうれん草、赤身肉 |
| オメガ3脂肪酸 | 炎症を抑える、精神安定 | サーモン、くるみ、亜麻仁油 |
食事は規則正しく3食摂ることも重要です。
食事を抜くと血糖値が不安定になり、イライラや疲労感が増すことがあります。
質の高い睡眠で心身をリセットする
睡眠は、心身の回復とホルモンバランスの維持に不可欠です。
質の高い睡眠を確保することで、PMS症状が大幅に軽減されることが多いです。
- 就寝時刻と起床時刻を一定にする
- 寝る1時間前からスマートフォンやパソコンの使用を控える
- カフェインは夕方以降摂取しない
- 温かいお風呂に入る
特に温かいお風呂に入るのがおすすめです。
就寝の1〜2時間前に38〜40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、体温の自然な低下とともに眠気が訪れやすくなります。
1日7〜8時間の睡眠を目標にしましょう。
ストレスを減らすリラクゼーション法
ストレスは、PMS症状を悪化させる大きな要因の一つです。
- 深呼吸
- 瞑想・マインドフルネス
- アロマテラピー
- 趣味の時間を確保する
日々の生活の中で意識的にリラクゼーション法を取り入れることで、心身の緊張をほぐし、症状の軽減が期待できます。
PMS治療に関するよくある質問
PMS治療に関するよくある疑問にお答えします。
婦人科で治療を受けているのに症状が改善しません。心療内科にも行くべきでしょうか?
婦人科での治療で改善しない症状がある場合は、心療内科の併用を検討しましょう。
低用量ピルや漢方薬で頭痛やむくみなどの身体症状は改善したものの、イライラや気分の落ち込みが残っている場合は心療内科での追加治療が有効です。
婦人科と心療内科を併用することで、身体と心の両面から包括的にPMSにアプローチでき、より高い治療効果が期待できます。
心療内科を受診するのは抵抗があります。PMSでも本当に行くべきですか?
精神症状が強いPMSやPMDD(月経前不快気分障害)の場合、心療内科での治療は非常に効果的です。
ストレスや心身の不調、月経周期に伴う気分変調など、幅広い症状を専門的に診る診療科です。
現在では、オンライン診療を行っている心療内科も増えており、自宅から気軽に相談できる環境も整っています。
PMSの症状は軽いですが毎月つらいです。市販薬で対応すべきでしょうか?
「病院に行くほどではない」と我慢している方が多いですが、適切な治療を受けることで、毎月のつらさから解放され、生活の質が大きく向上する可能性があります。
特に、症状が2〜3周期以上繰り返されている場合は、婦人科を受診して相談してみることをおすすめします。
まとめ:PMS治療は症状に合わせて診療科を選ぶことが重要
PMS(月経前症候群)は、多くの女性が経験する身近な不調ですが、適切な診療科を選び、専門的な治療を受けることで、症状は大きく改善できます。
毎月訪れるつらい症状から解放され、快適で充実した日常生活を取り戻すことができます。
一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、PMS症状と上手に付き合っていきましょう。




