「生理中に中出しをしても妊娠しない」と考えている方もいるかもしれません。
結論を言うと、生理中の性行為であっても、妊娠の可能性はゼロではありません。 それどころか、性感染症や婦人科系の病気などのリスクが潜んでいます。
この記事では、生理中の性行為にまつわる正しい知識を解説します。皆さんの不安を解消し、ご自身の身体を大切にするための一助となれば幸いです。
【結論】生理中でも妊娠の可能性はゼロではない
先述した通り、生理中の性行為でも妊娠する可能性はあります。 「生理中だから安全」という考えは、非常に危険な誤解です。
一般社団法人日本生殖医学会によると、「精子の女性体内での寿命は72時間といわれる」とされており、生理中でも受精の可能性があることが示されています。
精子の女性体内での寿命は72時間といわれますので、この寿命期間の間に運良く卵管膨大部にいる卵子と出会って初めて受精が成立します。
一般社団法人日本生殖医学会「Q1. 妊娠はどのように成立するのですか?」
特に以下の要因により妊娠リスクが生じます:
- 精子の長期生存:女性体内で最大72時間生存
- 排卵タイミングの個人差:ストレスや体調により排卵日が変動
- 短い生理周期:21-24日周期の場合、生理終了直後に排卵する可能性
「もしかして…」と不安を感じた場合、早めのチェックが大切です。ルナレディースクリニックは妊娠検査を実施しています。

生理中の性行為で妊娠する理由を解説

生理中でも妊娠する可能性がある理由は、主に2つあります。
それは、排卵のタイミングがずれる可能性があることと、精子が女性の体内で長く生きられることです。
排卵タイミングの個人差
一般的に生理周期は28日前後とされますが、これはあくまで平均値です。ストレスや体調、生活習慣の変化により、排卵日が前後することは珍しくありません。
特に、生理周期が短い方や不順な方は、生理が終わった直後に排卵することもあります。その結果、「排卵期出血」と生理を混同し、自覚がないまま排卵期に性行為をしてしまうケースもあります。
精子の高い生存力
精子は非常に生命力が強く、女性の体内(子宮や卵管)で約3日、長ければ5〜7日間生き続けるといわれています。
たとえば、生理の終わりかけに性行為をして、その数日後に排卵が起きた場合でも、体内に残った精子が卵子と出会い、妊娠する可能性があるのです。
私が患者さんに説明する際には「精子はマラソンランナーのような存在」と表現しています。ゴールである卵子にたどり着くまで、1週間も走り続けることができるのです。
生理中の性行為が招くリスク
生理中の性行為は、妊娠リスクだけでなく、感染症や体調悪化など複数の健康リスクを伴うことがあります。
性感染症の感染リスクの増加
生理中は、性感染症にかかるリスクが普段よりも高まります。生理中は子宮頚管(子宮の入口)がわずかに開いている状態になり、外部からの細菌やウイルスが子宮内部に侵入しやすくなります。また、経血で性器周りが湿った状態なので、細菌が繁殖しやすい環境になっています。
- 子宮頚管(子宮の入口)が開いている状態
- 月経血の存在により血液感染のリスク増加
- 性行為に伴う微細な傷からの感染経路拡大
- 経血により細菌が繁殖しやすい環境
特に、HIVやB型・C型肝炎など血液感染する性感染症のリスクは、月経中に著しく上昇します。月経血中にはウイルスが高濃度で含まれている可能性があり、微細な傷からの感染リスクが増大します。
参照元:厚生労働省「性感染症」
子宮内膜症の発症
生理中の性行為は、子宮内膜症のリスクを高める可能性があります。子宮内膜症は、本来子宮の内側にあるべき子宮内膜に似た組織が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所で増殖する病気です。
性行為による子宮への刺激が、経血の逆流(卵管を通じて腹腔内へ流れる現象)を引き起こし、子宮内膜症の一因となる可能性が指摘されています。
尿路感染症のリスク
生理中は、経血によってデリケートゾーンが普段より清潔に保ちにくい状態になりがちです。この状態で性行為を行うと、尿道に細菌が入り込み、膀胱炎などの尿路感染症を発症するリスクが高まります。
感染予防の観点から、普段以上にデリケートゾーンを清潔に保つことが重要です。尿路感染症を防ぐためには、以下の対策が有効とされています。
- 前後の洗浄:ぬるま湯で優しく洗い流す
- 性行為後の排尿:30分以内に必ず排尿する
- 水分摂取:1日1.5-2リットルの水分補給
免疫力の低下
生理中は、ホルモンバランスの変化により免疫機能が一時的に低下し、感染症への抵抗力が弱まることがあります。とくに、生理中の性行為では、通常であれば防げる細菌やウイルスへの感染リスクが高まりやすくなります。
この免疫力の変化には、女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」の減少が大きく関与しています。エストロゲンは免疫細胞の働きをサポートする役割を持つため、生理開始前〜生理中にかけて分泌量が低下すると、感染防御機能が一時的に低下するのです。
加えて、生理周期に伴って自律神経が不安定になったり、ストレスホルモン(コルチゾール)が増加したりすることも、免疫抑制の一因とされています。
- エストロゲンの分泌低下により、免疫細胞(T細胞・B細胞)の反応が低下
- 自律神経の乱れによる免疫系の調整機能の低下
- コルチゾールの上昇による免疫抑制作用
生理痛の悪化
生理中の性行為によって子宮が刺激されると、子宮が収縮しやすくなり、それによって生理痛が悪化する可能性があります。これは医学的にも確認されている反応であり、特にもともと生理痛が強い方は注意が必要です。
性行為中のオルガスムによって子宮が収縮することで、経血の排出が促進される一方で、痛みを強く感じる方も少なくありません。実際、私の患者さんの中には「生理中に性行為をしたら痛みがいつもよりひどくなった」と訴える方が複数いらっしゃいます。
また、生理中は子宮内膜が剥がれ落ちている状態で、子宮内は敏感かつ炎症反応が起こりやすいため、外部からの刺激に対して過敏に反応してしまうことがあります。これにより痛みが強く感じられるケースもあります。
- もともと生理痛が重い方
- 下腹部に強い圧痛を感じる方
- 子宮内膜症や子宮筋腫の既往がある方
無理をせず、自分の体調と相談して行動することが大切です。不安がある場合や痛みが強い場合は、性行為は控えるか、事前に婦人科で相談することをおすすめします。
生理中の性行為で避妊に失敗した場合、アフターピルの処方を検討しよう

生理中の性行為で避妊に失敗してしまった、あるいは「妊娠しているかも」と不安に感じる場合は、アフターピルの処方を検討してください。アフターピルは性行為後に服用することで、高い確率で妊娠を防ぐことができる緊急避妊薬です。生理中でも妊娠の可能性はゼロではありませんので、自己判断せずに早めの対応が大切です。
アフターピルは、性行為からの経過時間が短いほど効果が高まるとされています。
- 72時間以内の服用で約95%
- 120時間以内の服用で約85%
避妊に不安がある場合は、できるだけ早く婦人科を受診するか、オンライン診療などで処方を受けましょう。

アフターピルの効果とタイミング
ルナレディースクリニックでは「レボノルゲストレル」「エラ(エラワン)」「ジョセイ」の3つのアフターピルを取り扱っています。
それぞれのアフターピルの特徴は以下の通りです。
薬剤名 | 服用できる時間 | 避妊成功率 | 価格 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
レボノルゲストレル | 性行為後72時間以内 | 最大約95%(24時間以内) | 15,000円~ | ・国内承認 ・価格が比較的安い ・72時間以内に服用必要 |
エラ(エラワン) | 性行為後120時間以内 | 約98~99% | 17,000円~ | ・時間が経っても効果持続 ・排卵直前にも有効 ・未承認薬 |
ジョセイ | 性行為後120時間以内 | 約98~99% | 17,000円~ | ・エラのジェネリック ・効果は同等 ・やや安価 ・日本未承認薬 |
※ 価格は診療料・処方料込み。診察内容により前後する場合があります。
※ジョセイは日本国内では未承認薬です。医師の判断と説明のもとで、患者さまの同意を得たうえで処方されます。
生理中であっても、前述の理由で妊娠リスクがあるため、通常と同様にアフターピルの効果が期待できます。
生理中の性行為に関するよくある質問
私のもとによく寄せられる質問をいくつかピックアップしました。皆さんの疑問解消のお役に立てれば幸いです。
生理中に性行為をするとき、コンドームは必要?
はい、生理中の性行為であってもコンドームは必ず使用してください。
妊娠のリスクを減らすことはもちろんですが、性感染症やその他の感染症から身体を守るためにも非常に重要です。コンドームは、最も手軽で効果的な避妊方法の一つであり、多くの性感染症の予防にも役立ちます。
出血が多くなった。病院に行くべきですか?
生理中の性行為後に出血が増えた場合は、婦人科での診察を推奨します。 特に以下のような症状がある場合は、速やかに受診してください。
- 通常の2倍以上の出血量がある
- 500円玉以上の大きさの血の塊が出る
- 強い腹痛や発熱を伴う
- 出血が10日以上続く
性感染症や子宮の異常の可能性もあるため、早期対応が大切です。

妊娠していたら、生理は止まるはずでは?
確かに、一般的には妊娠すると生理は止まります。しかし、妊娠初期にごく少量の出血があるケースも稀にあります。 これは「着床出血」と呼ばれるもので、受精卵が子宮内膜に着床する際に起こるもので、生理と間違えてしまう方もいらっしゃいます。
もし「もしかして?」と感じたら、安易に生理だと決めつけず、まずは妊娠検査薬を試すか、念のため婦人科を受診することをおすすめします。
正常な生理 | 妊娠関連の出血 |
---|---|
3〜7日間持続 | 1〜3日で終わる |
だんだん軽くなる | 量が一定 |
鮮紅色 | 茶褐色が多い |
血塊あり | 血塊なし |
心当たりがある場合は、生理予定日の1週間後に妊娠検査薬を使用することをおすすめします。
まとめ
「生理中だから大丈夫」という誤解は、予期せぬ妊娠や、性感染症、婦人科疾患のリスクを高めることにつながります。
性行為はお互いの身体と心を尊重し、安全を確保したうえで行われるべきです。正しい知識を身につけ、適切な避妊を心がけ、少しでも異変を感じたら、ためらわずに私たち専門医に相談してください。
診療を通じて実感するのは、正しい知識を持つことで防げるトラブルがとても多いということです。恥ずかしがらずに、分からないことは遠慮なく医師に相談してください。


