中絶後の生理はいつ来る?手術後の症状や医療機関受診の目安を解説!

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

人工妊娠中絶を受けたあとに「次の生理はいつくるんだろう」「生理周期っていつ戻るの?」といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

中絶後はホルモンバランスの影響もあり、一時的に生理周期が乱れてしまうことも少なくありません。この記事では、中絶後ならではの注意点や妊娠との関係について解説します。

中絶手術を受ける予定があり不安に思われている方も、まずは中絶後の生理や妊娠について知ることが大切です。

中絶後の生理は30〜50日後に始まることが多い

中絶後の生理は30〜50日後に始まることが多い

中絶後の生理は、初期中絶の場合は30〜50日後、中期中絶の場合は個人差が大きく2ヶ月以上こないこともあります。

また中絶手術後の最初の生理は、普段と異なる場合があります。「経血量が多い、少ない」「生理期間が長い、短い」「痛みが強い」といった状態になることも。

中絶手術後に不正出血が起こることもあり、生理の出血と区別がつかない場合もあります。中絶後の生理や出血について不安がある場合は、クリニックに相談しましょう。

初期中絶手術の場合は30〜50日前後が目安

初期中絶手術(妊娠12週未満)の場合、多くの方は30〜50日ほどで生理が再開します。ただし、体調やホルモンの回復スピードには個人差があります。

最初の生理は普段と違って、経血量が多い・少ない、生理痛が強いなど変化が見られることがありますが、数回の生理を経て徐々に落ち着いていくのが一般的です。

初期中絶の方法
  • 手術方法:吸引法・掻爬法(子宮に優しい手動真空吸引法MVAを採用するクリニックも)
  • 痛み:静脈麻酔で眠っている間に終了するため、痛みはほとんどない
  • 体への負担:比較的少なく、日帰り手術が可能

中期中絶手術の場合は2ヶ月以上こないことも

妊娠12週以降に行う中期中絶手術では、子宮やホルモンへの負担が大きいため、2ヶ月以上生理が再開しないケースも珍しくありません体が回復するまでに時間がかかるため、初期中絶よりも生理が遅れる傾向があります。

初期中絶の方法
  • 手術方法:人工的に陣痛を誘発し、出産と同じ形式で行う
  • 痛み:陣痛や術前処置に伴う強い痛みを伴うことが多い
  • 体への負担:入院が必要で、精神的・肉体的な負担も大きい

また中期中絶の場合は、死産届の提出や火葬といった法的手続きも必要になります。精神的負担も大きく、それも生理が遅れる原因になることがあります。

2ヶ月以上生理がこない場合は医療機関を受診

もし2ヶ月以上経っても生理が来ない、不正出血が長引くなどの場合には、医療機関を受診してください。

生理が来ない主な原因は、以下のようなケースが考えられます。

  • ホルモンバランスの乱れによる月経不順がある
  • 子宮内容物の遺残(いざん)がある
    ※子宮内容物の遺残とは、中絶手術後の子宮内に胎児や胎盤など、その他の組織が残っていることを指します。

中絶後は、心身ともに不安定になりやすい時期です。ホルモンバランスの変化により、吐き気などの体調不良を感じることもありますが、ホルモンバランスが整うと徐々に回復するでしょう。

受診の際には、中絶手術後の基礎体温を記録して持参すると診断の参考になります。

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中絶後の生理の出血量は個人差がある

中絶後の生理の出血量は個人差がある

中絶後の生理の出血量は個人差があり、普段より多い方もいれば少ない方もいます。

中絶手術後は、子宮内膜が傷ついた状態なので修復するのに時間がかかります。手術の際に子宮の中にあった血液の残りが一緒に出てくることもあります。そのため、いつもの出血量との違いに驚いてしまう方も少なくありません。

他にも、生理痛を強く感じたり、経血の色が違ったりする場合もあります。これらの変化は、何度か生理が来るにつれて元に戻ることが多いです。

さらにホルモンバランスの状態が安定せず、出血量や期間に違いが出ることもありますが、あくまでも一時的なものです。ただし、出血量が多いときは貧血の心配もあるため、病院を受診してもいいでしょう。

中絶後に起こる可能性がある症状・リスク

中絶後に起こる可能性がある症状・リスク

中絶手術後は、体の回復過程でさまざまな症状が現れることがあります。ほとんどは一時的なものですが、症状が強い・長引く場合は、医療機関の受診が必要です。ここでは、代表的な症状やリスクについて解説します。

出血

中絶後は、子宮内膜が修復される過程で手術直後から数週間が続くことがあります。少量の出血であれば、経過観察で問題ないことが多いです。

ただし出血が急に増えたり、大きな血の塊が出たりする場合は、子宮内容物の遺残や感染の可能性があるため受診してください。

生理痛のような痛み

手術後は子宮の収縮によって、下腹部に生理痛のような痛みを感じることがあります。1週間程度続くことがありますが、鎮痛剤で鎮痛薬で改善することが多いです。

ほとんどの場合軽度な痛みであることが多いですが、この時期はできる限り安静に過ごしましょう。

発熱

中絶手術のあとには、一時的に微熱が出ることがあります。これは、ホルモンの変化や体が回復する過程で見られる反応で、多くの場合は数日で落ち着きます

しかし、38度以上の高熱が数日続く、悪寒や下腹部の痛みを伴う場合は注意が必要です。子宮内に組織が残っていたり、感染症を起こしていたりする可能性があります。

放置すると子宮内膜炎や腹膜炎に進行する恐れがあるため、38度以上の熱が3日以上続く場合は医療機関を受診してください。

中絶後遺症候群(PAS)

中絶後遺症候群(PAS)とは、中絶の経験をきっかけにPTSD(心的外傷後ストレス障害)のような心理的症状が続く状態を指します。一般的には、以下のような症状が見られます。

  • 罪悪感や不安
  • 気分の落ち込み
  • 不眠
  • 過去の体験を思い出してつらくなる

PASは必ず起こるものではありませんが、心身に強い負担がかかる中絶後にはリスクがあります。特に周囲からのサポート不足や、手術前後の不安が大きい場合に発症しやすいといわれています。

症状が長引くと日常生活に支障をきたすこともあるため、心療内科やカウンセリングなどの専門機関でのサポートが重要です。早めに相談することで、気持ちの整理や回復につながります。

川原正行先生
川原正行先生

心の症状について相談することに抵抗を感じる方も多いのですが、これは決して「弱い」ことではありません。産婦人科医として多くの女性を診てきた経験上、心のケアは体のケアと同じくらい大切だと実感しています。

つらい気持ちを抱え込まず、まずは信頼できる人やカウンセラーに話してみてください。適切なサポートを受けることで、必ず回復への道筋が見えてきます。

中絶後と妊娠の関係

結論をいうと、中絶後は排卵が早まる場合があるため、妊娠しやすい状態です。そのため、避妊をして子宮を休ませてあげることが大切です。特に手術後の1週間は、できるだけ安静に過ごし、激しい運動や長時間の立ち仕事は避けましょう。

中絶後に妊娠を希望する場合も、まずは体の回復を最優先に考えて、適切な時期に計画を立てることが大切です。

妊娠を望んでいない場合は避妊をする

先述した通り、中絶後は妊娠しやすい状態になります。これは、中絶後の排卵が早く再開することがあり、性交渉のタイミングと重なる可能性があるためです。そのため、妊娠を望んでいない場合は避妊を必ずしましょう。

中絶後の性交渉は、経過に問題がなければ1週間後から可能です。ただし、2週間後は排卵と重なる可能性があるため、妊娠しやすい時期なので注意が必要です。

妊娠を希望している場合、生理が3回来たら計画を立てる

中絶後に妊娠を希望する場合は、生理が3回来たら計画を立てましょう。中絶手術後の子宮は、小さな傷が出来ている可能性があります。生理を何度か繰り返すことで、自然と回復します。

また、中絶後は心身ともに大きな負担がかかり、体調が戻るまでに時間がかかります。まずは、身体を休ませて、体調を整えてから妊娠できるようにしていきましょう。

中絶後の生理に関するよくある質問

中絶後の生理に関するよくある質問

最後に、中絶後の生理に関するよくある質問を解説します。

中絶手術を受けると、不妊になる可能性はありますか?

中絶手術を受けたからといって、不妊になることはほとんどありません。

ただし、中絶後に子宮内膜の機能が低下してしまったり、合併症が発生したりと妊娠が成立しにくくなってしまう方もいます。とはいえ、実際に中絶手術を受けた後に妊娠されている方も多くいます。

中絶後になかなか妊娠しないと悩んでいる場合、まずは不妊の原因を調べるために医師の診察を受けることをおすすめします。

妊娠を避けたいのですが、どのような避妊方法がありますか?

具体的な避妊方法には、以下のようなものがあります。

  • ミレーナを挿入する
  • 低用量ピルを服用する

ミレーナは、子宮内に挿入し最長5年の避妊効果が期待できます。中絶手術と一緒にミレーナの装着を希望する人もいるため、相談してみてください。

低用量ピルは、毎日服用することで排卵を抑えられます。自分に合った避妊方法は個人によって異なるため、医師に相談することをおすすめします。

未成年が中絶手術を受ける場合は、同意書が必要ですか?

未成年が人工妊娠中絶を受ける場合、多くの医療機関では保護者(親権者)の同意書が必要とされています。これは、未成年の場合は法律的に十分な判断能力を持たないと考えられているため、保護者の同意を得て手術を行うことが望ましいとされているからです。

中絶手術は身体的にも心理的にも負担が大きいため、信頼できる大人や専門機関に相談し、サポートを受けながら進めましょう。

まとめ

中絶後に生理が再開する時期は個人差が大きく、手術方法によっても異なります。

  • 初期中絶の場合:30〜50日程度が目安
    2ヶ月以上こない場合は医療機関を受診
  • 中期中絶の場合:2ヶ月以上こないこともある

もともとの生理周期によっても変動し、最初の生理は出血量も多く期間が長くなってしまいがちです。中絶手術後は様子を見つつ、安静に過ごすようにしてください。

妊娠を希望する場合、生理周期が安定してから計画を立てることが重要です。妊娠を望まない場合は、医師に相談して自分に合った避妊方法を選び、対策をとることが大切です。

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