中絶は痛い?痛みの理由や痛くない手術方法・手術後の痛みはいつまで続くか

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

「中絶の痛みはどのくらい?」と中絶手術を考えている方の多くが「痛み」について不安を抱いているでしょう。

実際には、中絶手術中の痛みはありませんが、術前処置や術後の経過途中に痛みを感じる場合があります。

本記事では、中絶手術における痛みについて、手術方法による違いや妊娠周期による影響、術後の痛みなど気になる情報を詳しく解説します。

中絶手術に関する不安を軽減し、自分に合った選択をするために、ぜひこの記事をお読みください。

中絶手術は痛い?

中絶手術自体は、静脈麻酔を用いるため、手術中の痛みはありません。

「中絶は痛かった」という声を耳にするかもしれませんが、中絶手術の痛みは、術前処置や術後の経過における痛みを指している場合が多いのです。

静脈麻酔をすると、眠ってしまうため痛みを感じませんが、術前の子宮口拡張処置や術後の子宮収縮によって痛みが生じる可能性があります。

静脈麻酔を使用するため術中は痛くない


中絶手術では、一般的に静脈麻酔が使用されます。

静脈麻酔は、点滴を通じて麻酔薬を投与し、患者を眠らせる方法です。局所麻酔と異なり、全身に作用するため、手術中の痛みを完全に遮断します。

また、静脈麻酔は覚醒が早く、術後の回復も比較的速やかです。そのため、中絶の手術中における痛みの心配は不要です。

中絶手術が「痛かった」と言われる理由


中絶手術が痛かったといわれる理由は、前述でもお伝えしたように、手術自体ではなく、術前処置や術後の経過の痛みにあります。

中絶の術前処置で、子宮口を広げるためにラミナリアやダイラパンという棒状の器具を挿入する際、不快感や痛みが生じます。

また、中絶手術後の子宮の収縮により下腹部が痛む場合があり、人によっては「中絶の痛み」として強く印象に残る可能性があるでしょう。

手術方法による中絶の痛みの違い

おもな中絶手術の方法には「掻爬(ソウハ)法」と「吸引法」の2種類があり、それぞれ痛みの程度や原因が異なります。

以下の表で各方法の概要と痛みについて比較してみましょう。

種類概要痛み
掻爬法スプーン状やピンセットのような器具で子宮内容物を掻き出す術前処置で痛みを感じやすい
吸引法筒状の器具を子宮内に挿入し、子宮内容物を吸い取る掻爬法と比べて痛みが少ない

吸引法は、基本的には術前処置が不要です。ただし、当クリニックでは、安全性を確保するために吸引法の手術前にも頸管拡張を行っています。(経産婦で子宮口が十分に開いている場合を除く)

日本産婦人科医会の調査によると、吸引法のみの場合に比べ、掻爬法を用いた場合(吸引法+掻爬法を含む)のほうが、人工中絶時の合併症発生率は高いことがわかります。

さらに、子宮の壁に穴が開く「子宮穿孔」の発生率が高くなっているのも、掻爬法です。

画像引用:日本産婦人科医会

中絶手術の痛みを最小限に抑えるためには、適切な手術方法の選択と経験豊富な医師による施術が重要です。

出典:日本産婦人科医会「妊娠12 週未満の人工妊娠中絶手術による合併症(日本産婦人科医会調 査結果より)」

掻爬法の痛み

掻爬(ソウハ)法は、スプーン状やピンセットのような器具を使用し、子宮内容物を掻き出す手術方法です。

掻爬法では、手術前日に子宮口を広げる術前処置が必要なため、棒状の器具を挿入する際に、痛みを感じるケースが多くあります。また、生理痛のような痛みを感じる場合もあります。

掻爬(ソウハ)法は、昔から日本で主流として行われてきた中絶手術の方法です。しかし、WHO(世界保健機構)が、ガイドラインで吸引法を推奨したことにより、近年では、吸引法を行う医療機関の割合が増えています。

吸引法の痛み

吸引法は、筒状の器具を子宮内に挿入し子宮内容物を吸い取る方法で、WHO(世界保健機構)や世界産婦人科連合が推奨している中絶手術です。

吸引法は、掻爬法に比べて出血や炎症、痛みが少なく、母体への負担も軽減されます。掻爬法のような術前処置は必要ありません。

ただし、当クリニックでは、経産婦で子宮口が十分に開いている場合を除き、吸引法の手術前にも頸管拡張を行い安全性を高めています。

吸引法の種類は、以下の2種類です。

種類特徴
電動式(EVA)機器の洗浄・滅菌に手間がかかり、感染リスクがある
手動式(MVA)使い捨ての滅菌製品を使用するため、感染リスクが低い

EVAは、使用する用具の洗浄と滅菌に手間がかかることから、機器に血液や組織が残りやすく、感染症のリスクがあります。

一方、MVAに用いる道具は、滅菌された製品を1セット使用し、使用後は破棄するため、感染リスクが低いのが特徴です。

当クリニックでは、安全性の高いMVAを採用しています。

妊娠周期による中絶の痛みの違い

中絶手術は、おもに「初期中絶」と「中期中絶」の2つに分類され、それぞれ異なる手術方法が用いられます。

妊娠周期による中絶の分類は、以下の表を参考にしてください。

種類妊娠周期
初期中絶妊娠6週~妊娠12週(11週6日)
中期中絶妊娠12週~妊娠22週(21週6日)

妊娠周期によって手術方法が異なるため、痛みの程度にも違いが生じます。また、初期中絶と中期中絶では、手術の複雑さや身体への負担も大きく異なります。

なお、母体保護法により、中絶手術を実施できる妊娠週数は妊娠21週6日までであり、手術を行えるのは、母体保護法指定医のみです。

人工妊娠中絶手術は、安全性の面でも、妊娠11週までに行うことが望ましいとされています。正確な妊娠数週がわからない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

初期中絶の場合

初期中絶は、妊娠12週未満の比較的早い段階で行われる手術です。

初期中絶の場合は、先に紹介した掻爬(ソウハ)法や吸引法という手術方法が用いられます。子宮内の胎児や胎盤を取り除く比較的シンプルな手術です。

初期中絶の場合、静脈麻酔により患者は眠っている状態で手術を受けるため、手術中の痛みや不快感はありません。

中期中絶の場合

中期中絶は、妊娠12週以降に行う中絶のことを指します。陣痛誘発剤を使用して人工的に陣痛を起こし、胎児を娩出する方法が一般的です。

当クリニックでは、初期中絶のみに対応しており、中期中絶は行っておりません。

妊娠12週以降の胎児は、すでにある程度の大きさに成長しているため、通常の出産の陣痛に近い痛みをともないます。

そのため、中期中絶では、硬膜外麻酔(無痛)や鎮痛剤の使用など、個々の状況に応じた痛み対策が重要です。また、1~3日程度入院する場合が多く、手術後は7日以内に胎児の死産届を役所に提出する必要があります。

中絶手術の痛みは、妊娠周期によって大きく異なります。中絶すると決まっている場合は、早めに医療機関を受診し、自身の状況に合った最適な方法を選ぶことが大切です。

中絶手術後の痛みはいつまで続くか

中絶手術後の痛みは、おもに子宮の収縮や手術による炎症反応によるものです。

一般的に、中絶手術後の痛みは、1週間程度で徐々に和らいでいきます。痛みの程度や持続期間には個人差がありますが、市販の鎮痛剤で対処できる程度のものがほとんどです。

早く回復するためには、以下の項目を心がけましょう。

  • 十分な休養をとる
  • 出血が完全に止まるまで飲酒は控える
  • 激しい運動や重い物の持ち上げを避ける
  • 医師の許可が出るまでは湯船に浸からない
  • ナプキンはこまめに取り替えて清潔に保つ
  • 出血や痛みが完全になくなるまでは性交を控える
  • 医師の指示に従い、処方された薬を適切に服用する

中絶手術後は、安静を心がけ、心身ともにしっかりと休めることが大切です。

痛み、出血が長期間続く場合や急激に悪化する場合は、手術を行った医療機関に相談しましょう。

中絶手術に関するよくある質問

中絶手術に関するよくある質問に回答します。

  • 中絶手術の流れは?
  • 中絶手術で赤ちゃんは痛みを感じている?

中絶手術の気になる疑問を少しでも解消しておきましょう。

中絶手術の流れは?

中絶手術を受ける際の流れがわからず、不安に感じてしまう方も多いでしょう。

例として、当クリニックの中絶手術の流れを紹介します。

手術を受けるにあたっての流れ

① 予約
② 初回診察
③ 手術当日
④ 術後診察1回目
⑤ 術後診察2回目

初回診察で、妊娠の経過や中絶が可能かどうかを判断し、中絶手術の具体的な内容をしっかり説明します。

手術後は、1週間後と2週間後を目安に検診を行い、子宮の状態や体調に異常がないか確認します。当クリニックでは、術後検診の費用は手術費用に含まれるため、追加の検診費用は必要ありません。

次に、中絶手術当日の流れを紹介します。

手術当日の流れ

① ご来院
② お会計
③ 点滴・麻酔
④ 手術(15分程度)
⑤ 手術後に2時間ほど休む
⑥ 術後検診の予約

中絶手術は、静脈麻酔を用いるため痛みの心配はなく、多くの場合15分程度で終了します。

手術後は、2時間ほど休憩してから帰宅となります。帰る前に、術後検診の予約を忘れずにしておきましょう。

中絶手術の流れや費用については、以下の記事でも詳しく解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。
人工妊娠中絶手術とは|手術の流れや費用について詳しく紹介

中絶手術で赤ちゃんは痛みを感じている?


中絶手術で胎児が痛みを感じているかどうかは、科学的にはっきりとした結論は出ていません。重要なのは、中絶を選択した方の心身の健康です。

過度な罪悪感は、心理的な負担となる可能性があります。中絶を選択するに至った理由や状況は人それぞれであり、その決断を尊重することが大切です。

もし、中絶後に心理的な不安や悩みがある場合は、専門のカウンセラーや医療機関に相談することをおすすめします。自分の心身のケアを優先し、将来に向けて前向きに進んでいきましょう。

まとめ

中絶手術の痛みは、手術方法や妊娠周期によって異なります。中期中絶になると、体への負担も大きくなり、通常の出産に近い痛みをともなうため、悩んでいる方は医療機関への早めの相談がおすすめです。

また、術後の痛みは、1週間程度で徐々に和らいでいきますが、早く回復するためには、医師の指示に従い無理しすぎないようにしましょう。

大切なのは、一人で抱え込まないことです。不安や疑問があれば、信頼できる医療機関や専門家に相談しましょう。適切な情報とサポートがあれば、よりよい決断と早期回復につながります。

中絶を選択する理由は人それぞれです。自分を責めたり、過度に悩んだりする必要はありません。まわりのサポートを受けながら、自分自身を大切にしてください。