「ピルをもらいに病院に行くと、毎回採血されるって本当?」
「採血では何がわかるの?」
このような疑問をもったことはないでしょうか。
低用量ピルの処方時に血液検査は必須ではありませんが、血栓症のリスクや肝機能への影響などを確認するため、実施される場合があります。
この記事では、低用量ピルの処方に関する検査項目や、検査に引っかかった場合の対応などについて解説します。
採血に関する不安を解消し、安心してピルを服用したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
低用量ピルの処方時に血液検査は必要か
結論から言うと、低用量ピルの処方において、血液検査は義務付けられていません。
公共社団法人 日本産婦人科学会の「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)」によると、血液検査は低用量ピルの処方時に「希望があれば」「必要に応じて」実施するものとされています。
ピルの処方時や服用中に血液検査が行われる場合があるのは、ピルを服用すると、服用していない方と比べて血栓症のリスクが2~3倍に上がるためです。
血栓症とは、いわゆる「エコノミークラス症候群」のことで、血の塊が血管に詰まる病気のことです。
血液検査の実施は義務ではないものの、医療機関によっては血栓症のリスクを確認するために、初診時や一定期間ごとに行われる場合があります。
血栓症リスクが高い人は処方前に必要
基本的に、低用量ピルの処方時の血液検査は必須ではありませんが、血栓症のリスクが高い人や肝臓に異常がある人では、処方前に血液検査が必要な場合があります。
もともと血栓症のリスクが高い人では、低用量ピルの服用により、さらに血栓症のリスクが高まると考えられるためです。
低用量ピルの服用において注意が必要な、血栓症のリスクが高い人や、肝臓に異常がある人の特徴は次のとおりです。
血栓症のリスクが高い人
- 35歳以上
- 肥満(BMIが30以上)
- 喫煙習慣がある
- 血圧が高い
- 心疾患がある など
肝臓に異常がある人
- AST、ALTなどの肝機能数値が基準を超えている
- 肝臓に重篤な障害がある
- 肝臓に腫瘍がある など
上記のような、血栓症のリスクが高い人や肝臓機能に問題のある人は、血液検査の結果によってはピルの処方を受けられないケースもあります。
服用中も定期検査を行う場合がある
低用量ピルによる副作用を確認するため、医療機関によっては、服用中も定期的に検査を実施する場合があります。
主な定期検査の内容は、半年~1年ごとに行う血圧測定や体重測定、血液検査などです。
血栓症のリスクが高い方に関しては、処方前に血液検査を受けてから、6か月ごとに受けることが推奨されています。
また、必要に応じて、マンモグラフィーや乳腺超音波検査などの乳房検査や、性感染症検査なども行うこともあります。
ピルの服用中に推奨される、定期検査の種類と頻度の目安は次のとおりです。
ピル服用中に推奨される定期検査
項目 | 頻度 |
---|---|
血圧測定 | 月に1度 |
体重測定 | 半年に1度 |
血液検査 | 半年に1度(血栓症のリスクが高い方のみ) |
乳房検診 | 半年に1度(任意) |
子宮頸部細胞診 | 年に1度(任意) |
性感染症検査 | 年に1度(任意) |
超音波検査 | 年に1度(任意) |
血算、生化学検査 | 年に1度(任意) |
参照元:日本産婦人科学会|低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)
表内の「血算・生化学検査」とは、健康診断でも行われる一般的な血液検査のことで、赤血球や白血球の数、コレステロール、中性脂肪などの状況を調べるものです。
実施する検査の内容や検査時期は、患者さんの症状や状況に応じて医師が判断します。
血栓症は、低用量ピルの服用を開始してから3ヶ月以内に起こることが多いとされています。
服用後に、手足のしびれや胸の痛み、片足の痛みや腫れなどの症状が見られた場合は、ピルの服用を中止してすみやかに医療機関を受診しましょう。
低用量ピルの処方時に行う血液検査の種類
低用量ピルの処方時に行う血液検査には、以下の種類があります。
- 血算・生化学検査
- 血液凝固検査
- Dダイマー検査
それぞれの検査項目について詳しく見ていきましょう。
血算・生化学検査
血算・生化学検査とは、赤血球や白血球の数や、肝臓機能、腎機能、コレステロール値などを調べる検査のことで、健康診断でも行われる一般的な血液検査です。
低用量ピルは肝臓で代謝されるため、肝機能に異常がある場合は服用の際のリスクが考えられます。
そのため、血算・生化学検査(血液検査)を行うことで、ピルの服用中に肝機能の異常がないかどうかを確認する目的があるのです。
また、ピルの摂取によってコレステロール値が上昇する可能性もあります。
脂質やコレステロールの値が高くなると、血栓症のリスクが高まることから、この点についても血液検査で確認します。
血液凝固検査
血液凝固検査は、血液の固まりやすさを評価する検査です。
主に「プロトロンビン時間」や「活性化部分トロンボプラスチン時間」「フィブリノーゲン」などの項目を調べることにより、血栓症のリスクを確認できます。
血栓症とはいわゆる「エコノミークラス症候群」のことで、血の塊が血管に詰まる病気です。
血液が固まると血流が悪くなり、体に十分な酸素や栄養が行き渡らず、脳梗塞や心筋梗塞、深部静脈血栓症などの重大な病気につながる可能性があります。
血液凝固検査で異常が認められた場合は、低用量ピルの摂取によって血栓症のリスクが増大する可能性があるため、処方できない場合があります。
Dダイマー検査
Dダイマー検査とは、血栓症になっていないかどうかを確認するために、血液中の「Dダイマー」と呼ばれる物質の量を調べる検査です。
Dダイマーとは、血液の塊である血栓が溶ける際に出てくる物質です。
Dダイマーの値が高すぎる場合は、血栓形成のリスクが高いと判断されるため、ピルの処方ができないこともあります。
低用量ピル処方時の血液検査に関するよくある質問
ここでは、低用量ピル処方時の血液検査に関するよくある質問を紹介します。
- 血液検査は何科で受けられる?
- 血液検査の前に食事をとるのはNG?
血液検査に関する疑問や不安を解消したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
血液検査は何科で受けられる?
血液検査はさまざま診療科で受けることができますが、なかでも産婦人科や婦人科にかかれば、ピルの処方と検査を一括して受けられます。
オンライン処方でピルを購入している方は、提携している病院や、お近くの病院で検査や検診を受けるといいでしょう。
健康診断や人間ドックの際に血液検査を受けることもできますが、ピルの処方に特化した検査項目が含まれていない可能性があります。
その場合、産婦人科での追加検査が必要になることもあるため、ピルを処方している産婦人科や婦人科で血液検査を受ける方法が最適でしょう。
血液検査の前に食事をとるのはNG?
婦人科の血液検査であれば、絶食は必要ないことが多いでしょう。
血液検査の前に食事をとってよいかどうかは、検査の目的や検査項目によって異なるため「血液検査=絶食が必要」というわけではありません。
一般的に、採血前の絶食が必要なのは、血糖値や中性脂肪といった食事の影響を受けやすい項目を測定するときです。
たとえば、空腹時血糖値の測定では、10時間程度の絶食が必要とされています。
血液検査を受ける際は、検査を受ける病院の医師や医療スタッフの指示に従いましょう。
まとめ
この記事では、低用量ピルの処方に関する検査項目や、引っかかった場合の対応などについて解説しました。
低用量ピルの処方時には、血液検査の実施は義務付けられていません。
ただし、低用量ピルの服用により、血栓症のリスクが増大したり、肝機能に影響したりする可能性があるため、副作用を確認する目的で血液検査が実施される場合もあります。
血液検査の内容や必要性について理解し、低用量ピルを安全に服用しましょう。