【医師監修】B型肝炎とはどんな病気?症状や潜伏期間をわかりやすく解説!

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することで起こる肝臓の病気です。B型肝炎は自然治癒することが多い病気ですが、稀に「劇症肝炎」となって命に関わることもある怖い病気です。今回は成人のB型肝炎の症状について、わかりやすく解説していきます。

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスによる肝臓の病気

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって起こる肝臓の炎症のことで、感染経路はB型肝炎ウイルスの感染が持続している感染者(キャリア)の血液や体液が体内に入ることで感染する「水平感染」と、キャリアである母親から乳児に感染する「垂直感染」の2つです。

昔は垂直感染が多かったB型肝炎ですが、現在では母子感染予防策やワクチン投与によって、母子感染はほとんどなくなっています。現代の日本で1番多いのは、キャリアとの性行為による水平感染です。血液や精液だけではなく、唾液などの唾液の接触でも感染します。その他、髭剃りや歯ブラシの共用、刺青やピアスの穴あけ、輸血、覚醒剤や麻薬の回し打ちなどでも感染することがあります。

B型肝炎の症状はいつから表れる?

B型肝炎は、感染後すぐに発症する急性肝炎と急性肝炎が慢性化した後に発症する慢性肝炎で症状が異なります。B型肝炎の症状を詳しく解説します。

急性肝炎の症状

B型肝炎ウイルスが感染してから3〜8週間ほど経った後に急性肝炎の症状が出現することが一般的です。B型肝炎ウイルスに感染した方のうち、20〜30%の方が急性肝炎を発症します。残りの70〜80%はウイルスが自然に除去され、症状は出現しません。

急性肝炎を発症した場合には以下のような症状が出現します:

  • 感冒様症状(発熱、咽頭痛、頭痛など)
  • 黄疸、褐色尿
  • 食欲不振
  • 全身倦怠感
  • 嘔気、嘔吐
  • 腹痛
  • その他(関節痛、発疹)

急性肝炎は最初にいわゆる感冒様症状(発熱、咽頭痛、頭痛)が出現します。この段階では急性肝炎と診断することは難しく、ただの風邪と診断されることが大半です。

肝臓の機能が障害され始めると黄疸と呼ばれる目や皮膚の黄染や烏龍茶のような色をした褐色尿が出現します。黄疸の出現とほぼ同じ時期に食欲不振、全身倦怠感、嘔気、嘔吐などの症状も出現します。

急性肝炎は自然に治ることがほとんどのため症状も自然と消失します。

劇症肝炎の症状

劇症肝炎は急性肝炎が急速に悪化して肝臓が働かなくなる肝不全の状態となることです。急性肝炎を発症した方のうち、1~2%程度しか劇症肝炎となりませんが、劇症肝炎になった方の半数以上が死亡するといわれているほど危険な状態です。劇症肝炎の症状は急性肝炎の症状に加え、昏睡や羽ばたき振戦と呼ばれる手の震えなどです。

慢性肝炎の症状

B型肝炎は急性肝炎になった後、自然治癒する場合がほとんどですが、急性肝炎を発症された方のうち約10%はB型肝炎ウイルス感染による炎症が持続し、慢性肝炎となります。慢性肝炎が持続すると「肝硬変」や「肝細胞癌」になる可能性もあります。

肝硬変とは、肝臓の炎症が続くことで肝臓が繊維化し小さく硬くなってしまう状態のことで、肝臓の機能が低下します。基本的には肝臓は『沈黙の臓器』といわれており、慢性肝炎から肝硬変や肝細胞癌になっても病状が進行しなければほとんど症状が出現しません

慢性肝炎はほとんど症状がないため、発見されにくく、肝硬変や肝細胞癌まで進行してしまいます。重症な肝硬変や肝細胞癌に進行するまで自覚症状に乏しい点がB型慢性肝炎の恐ろしいところの一つだといえます。

肝硬変まで症状が進行すると以下の症状があらわれることがあります。

  • 体のむくみが以前よりも気になる
  • 肌や白目が以前より黄色っぽくなっている
  • 顔に浮いた血管が目立ってくる
  • 足がつるようになった

慢性肝炎から肝硬変まで進行するとむくみがでたり、体が黄色くなる黄疸という症状があらわれたりすることがあります。さらに症状が進行するとお腹に水がたまる、腹水という状態があらわれます。

「気が付いたら症状が進んでいた」ということがないよう、定期的に検査をするようにしましょう。

無症状でもパートナーに移す可能性はある

B型肝炎に感染しても大半が自然に治癒するか、急性肝炎となった後に自然に治癒します。しかし、慢性的に感染が持続し、「キャリア」となる方もいます

キャリアの方は無症状であっても性交渉や体液を介してパートナーや家族などにうつす可能性があります。B型肝炎は、B型肝炎ウイルスが慢性的に感染していても症状が表れないことがあります。

特に最近では外国から持ち込まれたタイプの異なるB型肝炎ウイルス(欧米型A)の感染が増加しており、このタイプのB型肝炎ウイルスは一度感染すると慢性化の割合が高いことが問題となっています。B型肝炎が治ったかどうか判断する際は、必ず抗体や抗原の検査をうけるようにしましょう

子供のB型肝炎

母親がB型肝炎ウイルスのキャリアである場合、一番心配なのは子供への感染です。出産や授乳によって新生児や乳幼児に感染することがあります。現在は全ての乳児がB型肝炎ワクチンを接種できるなど、母子感染対策がされていますが、万が一子供に感染した場合はどんな症状が表れるのでしょうか。

乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染した場合、思春期に入るまでは無症状のキャリアの状態が続きます。これは、思春期に入るまでは免疫が発達しておらず、自身の身体がウイルスを攻撃できないないためです。その後、大半が思春期以降に慢性肝炎へと移行します。大切な子供を守るためにも必ずB型肝炎ワクチンを接種するようにしましょう。

あなたは大丈夫?B型肝炎の症状チェックリスト

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、B型肝炎の初期では症状が表れないことがほとんどです。自分がB型肝炎かどうか心配な方は、ぜひ以下のチェックリストを確認してみてください:

  1. 性的な関係を持っている人が複数いる
  2. B型肝炎ウイルスのキャリアの方と性行為をした
  3. 最近体がだるい状態が続いている
  4. 食欲があまりない
  5. 吐き気がある(嘔吐をしている)
  6. 茶色の尿が出る
  7. 肌や白目が黄色っぽくなっている

該当する症状が3~5だけであればまだ風邪の可能性もありますが、6や7は肝炎に特徴的な症状です。また、1や2に心当たりがある場合は性交渉によるB型肝炎ウイルスに感染しているリスクが高い方です。早めに医療機関を受診するなど定期的な検査をしましょう。

B型肝炎に感染していたらどうしたらいいの?

B型肝炎には、特効薬のような治療薬は存在しないのが現状です。B型肝炎に感染した場合、感染後に抗体ができて、ウイルスを排除してくれるのを待つことで自然治癒を待ちます。

もしも慢性肝炎に進行してしまった場合、ウイルス自体は排除できず、慢性肝炎の進行を抑えることしかできません。ウイルスの活動を抑えることで肝硬変や肝がんへの進行を抑えます。一度ウイルスの活動性が落ち着き、肝炎の進行が抑えられても化学療法などで免疫が低下するとウイルスが再活性化することがあります。

慢性肝炎に移行すると完治は非常に困難となりますので、よく知らない相手との性行為を避け、感染を防ぐことはもちろん、ワクチンを接種しておくという対策も非常に重要です

まとめ

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することで起こる肝臓の炎症のことです。感染から数ヶ月間は潜伏期間が続いた後に倦怠感や食欲不振、吐き気、黄疸などの症状が表れ始めます。

多くの場合は抗体ができることで自然治癒しますが、約1%の方はうまく抗体が作られず、慢性肝炎に移行してしまいます。現状では、慢性肝炎は根治できません。

肝硬変や肝細胞癌になることもあり、命に関わることもあるので、感染を予防したり、ワクチンを接種するといった対策を取るようにしましょう

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