性病(性感染症)について、おおよそのイメージはあっても発症原因となる行為や症状に関して理解している方は多くないかもしれません。しかし、性生活の頻度や詳細によらず、将来的な自身やパートナーの健康面を考えても、性病に対する知識は必要です。
この記事では性病の感染経路や種類をまとめ、効果的な予防方法までご紹介します。性病は少しの意識で感染リスクを減らせるもあるため、ぜひ参考にしてください。
性病(性感染症)とは?
性病もしくは性感染症(STD)は、性行為全般によってうつる感染症を指します。病原体となる原因菌を含む保菌者の分泌液や血液が、他の方の粘膜や皮膚・傷に接触することで感染するのです。
万が一自覚がないまま性行為を行った場合、知らないうちに感染を広げてしまうだけでなく、症状が進行することになります。
性感染症の種類はいくつもあり、なかには発症しても自覚症状がないケースも少なくありません。性病が重症化した場合、生死を脅かす病気や男女とも不妊症のリスクとなる病気もあります。パートナーとの将来の健康を維持するためにも、性感染症の知識や感染予防、早期治療が重要です。
性病の感染経路
性病の感染経路は、膣性交に限りません。性病の感染経路について、発症する恐れのある主な性病でまとめました。
1.膣性交
すべての性病
2.口腔性交(オーラルセックス)
梅毒・ヘルペス・クラミジア (咽頭クラミジア)・(咽頭)淋病・(咽頭)マイコプラズマ
3.肛門性交(アナルセックス)
HIV/エイズ・梅毒・クラミジア・淋病(淋菌)・A/B/C型肝炎など
4.キスによる感染
梅毒・B型肝炎・咽頭クラミジア・咽頭淋病・咽頭マイコプラズマなど
5.血液や体液を介した感染
HIV/エイズ・梅毒・B/C型肝炎
6.母子感染
HIV/エイズ・梅毒・B/C型肝炎・クラミジア・淋病(淋菌)
7.性行為以外での感染
トリコモナスとヘルペス(大衆浴場)、A型肝炎と赤痢アメーバ(極端に不衛生な生水)、膣カンジタ(常在菌)
性病の感染率
性病の感染率は、性病の種類と感染経路によって異なります。主な性病の感染経路と感染確率は以下のとおりです。
種類 | 感染経路 | 感染確率 |
性器クラミジア感染症 | 男性→女性 | 28~40% |
女性→男性 | 30~45% | |
淋菌感染症 | 男性→女性 | 22~30% |
女性→男性 | 20~47% | |
性器カンジタ症 | – | 約10% |
性器ヘルペス | – | 単純ヘルペスウイルス1型 約60%単純ヘルペスウイルス2型 約20% |
膣トリコモナス症 | – | ※有病率として男性 約3.7%女性 約5~10% |
HPV | – | ※有病率として性交渉経験のある女性の50~80% |
尖圭コンジローマ | ー | 10% |
梅毒 | 男性→女性 | 30% |
女性→男性 | 30% | |
オーラルセックス | 15~20% | |
HIV | 男性→女性 | 0.05% |
女性→男性 | 0.1% |
性病の種類
ここからは、主な性病の種類や原因、発症した時の主な症状を解説します。個々の性病の理解を深めるとともに、予防対策にお役立てください。
性器クラミジア感染症
性器クラミジア感染症は、5類感染症(定点把握対象疾患)に指定される日本で最も多い性感染症(STD)です。男性より女性に多く、自覚症状がないケースも多くあります。
クラミジアに感染した場合、HIVの発症リスクは3〜5倍に増加します。
原因 | クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis ) | |
主な症状 | 男性 | 尿道炎、尿道分泌物(うみ)、軽度の排尿痛など |
女性 | 子宮頚管炎、骨盤内付属器炎(PID)、おりもの増加、不正出血など | |
眼に感染した場合 | クラミジア結膜炎として目やにや充血、腫れ | |
咽頭に感染した場合 | のどの痛みや腫れ |
淋菌感染症
淋菌感染症は、20代を中心に女性より男性に多い病気です。
女性の場合、無症状のケースも少なくありません。感染した場合に、HIVの発症リスクが高まります。
原因 | 淋菌(Neisseria gonorrheae) | |
主な症状 | 男性 | 淋菌性尿道炎、尿道分泌物(うみ)、軽度の排尿痛など、潜伏期間約2~9日 |
女性 | 子宮頚管炎、おりものの増加、不正出血、下腹部痛、性交痛など | |
眼に感染した場合 | 淋菌性結膜炎として目やにや充血、腫れ | |
咽頭淋菌に感染した場合 | のどの痛みや腫れ |
性器カンジダ症
性器カンジダ症は、女性に多い病気ですが、男性の患者もいます。
カンジタ菌は、健康な方でも体内に存在する常在菌です。ストレスによる免疫力低下、膣内自己洗浄、糖分摂取過多で発症リスクが高まります。抗菌薬(抗生物質)や生理、妊娠による女性ホルモン量変化、糖尿病なども原因となるので注意しておきましょう。再発を繰り返す外陰膣カンジタ症例(RVVC)もあります。
原因 | カンジタ菌(C.albicans、C.grabrataなど、カンジタ属の真菌の一種) | |
主な症状 | 男性 | 陰茎の発赤、皮膚のえぐれ、かゆみ、不快感など |
女性 | 膣や外陰部のかゆみ、カッテージチーズ状の白色おりもの、排尿痛、性交痛など |
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、性器周囲に赤色の水疱ができる病気です。性器、肛門、お尻、鼠径部(太ももの付け根)、太ももが高発部位となっています。
性行為の他、ウイルスが付着した食器やタオルを介した感染もあります。性器ヘルペスの場合、ウイルスに感染しても、症状を起こさないケースも少なくありません。
また、初感染時より症状は軽度ですが、再発症例もある病気です。
原因 | 単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)や1型(HSV-1) | |
主な症状 | 男女とも | 性器周囲に赤色水疱ができる、水疱が破れてただれる、強い痛み、発熱、太ももリンパの腫れや痛みなど |
膣トリコモナス症
膣トリコモナス症の感染経路は性行為の他、大衆浴場や便器を介することもあります。感染者の約20~50%は自覚症状がありません。膣トリコモナスの患者は他の性病を併発しているケースが多くみられます。
妊婦の感染は早産の原因となり、男性の感染は不妊症の原因となります。
原因 | 膣トリコモナス原虫(Trichomonas vaginalis) | |
主な症状 | 男性 | 排尿時痛、排尿時の違和感、尿道分泌物(うみ)、前立腺炎、亀頭包皮炎など |
女性 | 陰部のかゆみ、膣の発赤や圧痛、性交痛、排尿痛など |
HPV
HPVは、子宮頸がんの原因となるウイルスとして有名ですが、その他、肛門がんや膣がん・尖圭コンジローマの発症リスクも高めます。
性交渉を行う年齢の男女の50〜80%はHPVに感染しているといわれています。
なお現在では小学校6年~高校1年生相当の女子を対象に、予防接種(HPVワクチン)の定期接種が実施されています。
原因 | ヒトパピローマウイルス(HPV)16型(HPV-16)や18型(HPV-18)が中心 | |
主な症状 | 男性 | 陰茎包皮の下のイボや焼けるような痛み、不快感やかゆみなど |
女性 | 子宮頸部や膣、外陰部へのイボ、男性同様の症状を呈する | |
HPVに持続感染した場合 | 不正出血や倦怠感、膣周囲からの不快臭を伴う分泌物など |
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、性器周辺にイボができる病気です。初期はイボ自体に症状がみられないケースもありますが、放置するとイボは増えていきます。また、ウイルスの型によって、自然治癒するケースと悪性化するケースに分かれます。
ウイルスを持つ方との性交渉により感染する恐れは、約60〜80%です。性行為の他、医療従事者や両親の手指を介しても感染します。4人に1人程の確率で3ヶ月以内に再発する恐れのある病気です。男性症例が中心ですが、女性患者も増加傾向にあります。
原因 | ヒトパピローマウイルス(HPV)6型(HPV-6)や11型(HPV-11)が中心 | |
主な症状 | 男性 | 陰茎周囲にとさかやカリフラワー状のイボができ、痛みや熱感、かゆみなど |
女性 | 膣、肛門周囲にイボ、おりものの増加など |
性病の予防方法
性病(性感染症)は、自覚症状のないまま他の方へ感染を広げる恐れがあるため、予防が大切です。性病の主な予防方法は次のようなものが挙げられます。
・特定の相手以外と性行為をしない
・避妊具(コンドーム)を正しく使用する
・うがいをする
・定期的に性病の検査を受ける
キスや感染者と同じタオル等を使用することで感染する病気もあります。疑わしい症状があれば早めに病院を受診しましょう。早期発見が感染拡大を防ぎます。
また、母子感染を防止するためにも、妊婦の方であれば、妊婦検診を受けてください。
まとめ
性病の種類と主な感染経路を紹介しました。性病は年齢や性別に関係なく、誰でも感染する恐れがある病気です。性生活の頻度が高くない方でも、将来の自身及びパートナーの健康を考え、必要な知識は持っておくとよいでしょう。
性病に対する正しい知識を持っていれば、予防だけでなく、病気の早期発見にもつながります。本記事で紹介した性病の症状を参考に、気になる出来事や症状がある場合、速やかに病院を受診し検査を受けるようにしてください。
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