避妊効果を得ることや生理周期をコントロールするためには、ピルを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
しかし、飲み忘れやすい人や数年間は妊娠を望まない方、喫煙者、肝機能が低下している方など人によっては避妊リングのほうがよりメリットを感じられるかもしれません。
ここでは避妊リングの仕組みや種類、避妊リングの一つであるミレーナについて説明します。
避妊リングとは
避妊リングとは子宮内に挿入するものであり、ピルを服用できない人であってもピルに近い確率で避妊ができるようになる小さな器具です。
ここでは避妊リングが避妊に役立つ仕組み、ISUやIUDという言葉の違い、ピルとの違いについて説明します。
避妊リングの仕組み
子宮内で受精卵の着床を防ぐことが避妊リングの役割です。
詳細な仕組みは明らかになっていないものの、子宮内に異物があると妊娠が起こりにくいことが以前からわかっていました。
現在では、銅により精子の働きを弱める作用を持つものや、黄体ホルモンが分泌されるタイプの避妊リングなどが存在します。
IUSとIUDの違い
IUSとは子宮内避妊システム、IUDは子宮内避妊用具のことを指します。
ホルモンを放出することにより避妊効果を得られるものがIUSです。
黄体ホルモンの作用により、子宮内膜の増殖を抑えて着床を防ぎます。
IUDは精子の運動を阻害することや、受精を妨げることにより妊娠を防ぎます。
銅が付加された避妊リングはIUDに含まれます。
IUSもIUDも子宮内に挿入することで長期間にわたって避妊効果が期待できる方法です。
避妊リングとピルの違い
ピルと避妊リングはどちらも高い避妊効果が期待できる点は共通しています。
しかし、ピルの場合は毎日服用する必要があるため、飲み忘れると効果が得られにくくなります。避妊リングは挿入すると抜去するまで効果が期待できる避妊方法です。
また、ピルには血栓症のリスクがあるため日常的に喫煙をしている人には簡単には処方できないことや、肝臓に負担がかかることから肝機能が低下している人への処方にも注意が必要となります。
これらのことから、育児・家事が忙しくて飲み忘れやすい人や、喫煙者、肝機能が低下している人にピルは向かないため、避妊リングのほうがよりメリットを感じられる可能性があります。
避妊リング(ミレーナ)の効果
ここで説明するのはミレーナという避妊リングです。
リングとは以前までの形状の名残であり、実際のミレーナは細いT字型に近い形をしています。
避妊効果
ミレーナはレボノルゲストレルと呼ばれる黄体ホルモンが付加されたタイプの避妊リングでIUSに該当します。
子宮内膜が薄くなることにより受精を防ぐこと、子宮の入り口の粘液を変性させて精子の侵入を妨げることが期待されます。避妊効果はミレーナを挿入してからすぐに得られます。
脱出や挿入後のズレなどがなく正しく使用できている場合は、ピルに近い避妊効果が期待でき、避妊効果の持続期間は挿入から約5年間です。
月経困難症や過多月経の改善
ミレーナには子宮内膜を薄くする効果があるため、月経時の経血量を少なくする効果や月経痛を抑える作用があります。
そのため、月経困難症や経血量が多い過多月経の改善に対して保険が適用される治療法となっています。
避妊リング(ミレーナ)の副作用
ミレーナの副作用には月経中の出血日数の延長、月経時以外の出血、月経周期の変化、腹痛、卵巣のう胞などが挙げられます。
重大な副作用には、卵巣や子宮に炎症が起こる骨盤炎症性疾患や子宮外妊娠、ミレーナが子宮の壁に入り込むことで子宮穿孔が起こることがあります。
また、体重やデリケートゾーンの臭いへの影響などの情報を見かけることあるかもしれませんが、根拠はありません。
避妊リング(ミレーナ)の費用
避妊目的でミレーナを挿入する場合は自費診療となるため、費用は医療機関やクリニックによって異なります。
費用の幅は4万円台〜8万円台のところが多いでしょう。
挿入の費用だけでなく、挿入前の検査や抜去時にも費用がかかるため、留意しておく必要があります。
しかし、過多月経や月経困難症の方は保険が適用されるため、検診料や抜去時費用を別にすると1万円代の場合が多いです。
避妊リング(ミレーナ)のメリット
ミレーナのメリットは下記の通りです。
- ピルと同じくらいかそれ以上に避妊効果が高い
- 挿入すれば毎日服用するなどの手間がない
- 効果が挿入後5年間続く
- 過多月経や月経困難症など避妊以外にも効果がある
- 喫煙者や肝機能が低下している人も使用できる
- 長期にわたって使用する場合はピルより安価になる可能性がある
避妊効果については挿入後一年以内に妊娠する可能性を調べたところ、ピルでは0.3%なのに対しミレーナでは0.2%という結果もあります。
また、ミレーナの費用については自費診療で4万円台〜8万円台と一見高価に見えますが、5年間挿入した場合とピルを5年間服用し続けた場合(ピル代のみ1ヶ月分2,500〜3,000円だとすると5年間で150,000円〜180,000円)を比較すると、値段に倍近くの差が生まれます。
ミレーナは長期にわたって妊娠を希望されない方や、ピルを服用できない方、避妊の費用を少なくしたい方にとって検討する価値があるといえるでしょう。
避妊リング(ミレーナ)のデメリット
ミレーナのデメリットや注意点についても触れておきましょう。
- 5年以内に交換が必要
- 副作用がある
- 出産経験のない方は子宮頸管を拡張する可能性がある
- 性病の予防はできないためコンドームの着用が推奨される
- もし妊娠した場合は取り出す必要がある
- 挿入後に子宮口から出る糸を引くと位置のずれや脱出のおそれがある
- ミレーナの挿入が適さない場合もある
- 挿入後に脱出してしまった場合は挿入し直す必要がある(医療機関によりますが、その都度費用が発生する)
- 定期検診が必要
どのような治療法も、メリットだけでなくデメリットや注意点も理解したうえで受けることが大切です。
避妊リング(ミレーナ)を挿入するまでの流れ
ミレーナを使用する場合は、生理前の1週間や生理中に検査を行なう必要があります。
検査ではがんや性感染症、他に子宮筋腫や子宮内膜症などがないかを調べます。
検査結果や適応に問題がなかった場合、生理が終わる頃(生理4 日目〜7日目)や、生理中〜生理終了後1週間以内に挿入が可能です。挿入時期については医療機関によって多少の差があります。
生理の時期を選ぶ理由としては、妊娠していない時期を選ぶ必要があるため、また生理終了後1週間からは子宮内膜が厚くなって脱出が起こりやすくなるからです。子宮筋腫がある方も、筋腫の位置や大きさによっては脱出しやすくなる可能性があるため注意が必要です。
医療機関によっては問題がなければ初診時に挿入が可能な場合もありますので、早くミレーナを使用したい場合は事前に確認をしておきましょう。
挿入後は1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、半年後、1年後などの間隔で定期検診を行ないます。
避妊リング(ミレーナ)を挿入後の注意点
ミレーナ挿入後の注意点は下記の通りです。
- 挿入当日の入浴は湯船に浸からず、シャワーで済ませる
- 挿入から3日ほどは抗生物質を服用する
- 性行為はミレーナの挿入による出血が止まるまで控える
- 生理中にミレーナを挿入した場合、その生理中はタンポンを使用しない
- 挿入から数時間〜1日は下腹部に痛みや違和感がある
湯船の入浴は翌日から可能となり、タンポンに関しては以降の生理で使用が可能となります。挿入直後は子宮が収縮するため痛みを感じる方が多いですが、痛み止めなどを服用しても問題ありません。
避妊リング(ミレーナ)に関するよくある質問
ここではミレーナに関するよくある質問を紹介します。
ミレーナを挿入してから1ヶ月近く出血が起こるのはなぜ?
ミレーナに含まれている黄体ホルモンの作用により最初の数ヶ月は不正出血が起こる場合があります。しかし、子宮が高濃度の黄体ホルモンに慣れていないことが原因なので、慣れれば出血量や生理痛が減り、生理が来たときの出血量も少なくなる方が多いです。
挿入時に麻酔は行う?
ミレーナ挿入時は麻酔をせずに処置が可能です。医療機関によっては追加費用を支払うことで麻酔の使用に対応しているところもあります。
ミレーナ挿入後は性交渉に影響する?
基本的に影響はありません。ただし、性交渉中に違和感がある場合はミレーナの位置がずれている可能性があります。また、パートナーが間違って糸を触っている可能性もあります。
まとめ
避妊リングの仕組みや種類、そのうちの一つであるミレーナについて説明しました。
避妊リングは一度挿入すると、特にずれなどの不具合がなければ最長5年間にわたって効果が期待できる避妊方法です。
毎日服用などをすることがなくピルと同じくらいの避妊効果が期待でき、長期の場合はピルより費用が安くなる可能性もあります。忘れっぽい方や当分の間は妊娠を望まない方は一度検討してみるとよいでしょう。
一方でミレーナにも腹痛や装着から数ヶ月は不正出血が続くなどの副作用はあります。なかには根拠のない情報もあるため、その他の注意点などについても確認し、メリットとデメリットを理解したうえで治療を受けましょう。