生理不順でお悩みの方は、病院を受診のうえでホルモン剤の内服をおすすめします。ホルモン剤の内服により、生理周期が整うほか、生理痛や生理の量が多いなど、生理にまつわる悩みの大半が解消されるからです。
今回は、「生理不順でホルモン剤を内服してみたいけどホルモン剤の副作用が心配」という方に向けて、ホルモン剤の効果や副作用、服用方法などをわかりやすくまとめました。
生理不順とは
生理不順とは、生理が正常な周期で来ないことを言います。女性の生理周期は、個人差があるものの、だいたい1か月で繰り返します。
正常な生理(月経)
月経周期 | 25~38日 |
周期の変動 | プラス・マイナス6日 |
月経の持続期間(何日続くか) | 3~7日 |
経血量 | 20~140ml |
生理周期が正常より長いもの(前の生理から39日経っても次の生理が始まらない状態)を稀発(きはつ)月経、生理周期が正常より短いもの(前の生理から24日以内に生理が始まる状態)を頻発(ひんぱつ)月経といいます。ちなみに3ヶ月以上生理が来ないものを無月経と呼びます。
また生理の期間の異常も生理不順の一つです。生理の出血が8日以上続く状態を過長月経、2日以内に生理が終わってしまう状態を過短月経といいます。
さらに生理の量が多いもの(出血量が150ml以上のもの)を過多月経、生理の量が少ないもの(出血量が20ml以下のもの)を過少月経と呼びます。
生理不順の受診の目安
生理不順で病院の受診を考える目安をご紹介します。
- 生理が一週間遅れている
妊娠の可能性が考えられる場合は、市販の妊娠検査薬を使用するとよいでしょう。妊娠検査薬に陽性反応が出た場合は、妊娠している可能性があります。
- 3か月以上生理が来ない
3か月以上生理が来ていないときは、正常に排卵が行われていない可能性があります。半年以上生理が来ていない場合は、ホルモンの分泌に異常があることも。初潮を迎えてから2~3年の間は、周期が安定していないので様子を見てもよいですが、それ以外の方は早めに受診してください。
- アスリートなど激しい運動や急なダイエットで生理が来なくなった
競技のために激しい運動を日常的に行っている場合や、急なダイエットで生理が来なくなった場合は、できるだけ早く受診しましょう。大切な競技大会やイベントなどが、生理と重ならないように生理日を移動することもできます。
生理不順の原因
生理不順のもっとも多い原因は、ホルモンバランスの乱れです。
ホルモンバランスが乱れる原因として多いものを以下に挙げておきます。
- ストレス・疲労
- 急激なダイエット(体重減少)・激しい運動
- 更年期
- 多のう胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)
卵巣で男性ホルモンが多く作られていまい、排卵しにくくなる病気。月経周期が35日以上、不規則な生理、にきびや毛深さ、肥満など。 - 高プロラクチン血症
授乳期間以外でもプロラクチン値が高い状態。原因は、下垂体腺腫や甲状腺機能低下症、ストレスなど。 - 甲状腺機能障害
甲状腺から分泌されるホルモンが少なくなり全身の代謝が低下している状態。生理不順、疲労感や体重増加、便秘、むくみ、無気力など。 - 黄体機能不全
排卵後の黄体期が10日以下になっている状態。不妊の原因の一つ。原因は、脳視床下部下垂体系や卵巣・子宮内膜の異常など。 - 機能性子宮出血
ホルモンバランスの異常が原因で起こる出血。
生理不順の治療方法
生理不順の治療方法は、原因によって異なります。原因となる明らかな病気がある場合には、その治療を行います。過度なダイエットや激しい運動、ストレスの場合は原因を除去し、生活習慣改善を優先します。
生理不順で処方されるホルモン剤の種類
生理不順で処方されるホルモン剤は、LEPと呼ばれる薬です。経口避妊薬として知られるピルと同じものです。
ピルの中でも、ホルモン配合量が比較的少ない低用量ピルを用いることが多いです。
生理不順で処方されるホルモン剤の副作用
ピルの副作用として最も気をつけたいのは、血栓症です。足の静脈に血の塊ができる病気です。血の塊が血液の流れに乗って心臓から肺に到達すると、肺塞栓症という命に関わる重大な病気を引き起こします。
ラベルフィーユを内服している間に激しい胸痛や腹痛・頭痛、息切れ、ふくらはぎの痛みやむくみなどの症状が出た場合は、すぐに処方された医師にご相談ください。
血栓症以外の主な副作用としては、息切れ、頭痛、視力障害、過敏症、発疹、蕁麻疹、網膜血流障害、肝機能異常、黄疸、浮腫、体重増加などがあります。
生理不順で処方されるホルモン剤の効果
ホルモン剤(LEP)は経口避妊薬であり、第一の効果は避妊効果です。
正しく内服できていれば、妊娠回避率は99%以上です。ピルを内服することにより血液中の卵胞ホルモンと黄体ホルモンの量が増えると、脳が妊娠していると勘違いして排卵を止めてしまうのです。
そのほか、子宮内膜が厚くなるのを防ぐ働きや、精子が膣から子宮に入りにくくする働きを持っていると言われています。
このほか、ホルモン剤は生理不順のほか、PMSや生理痛・過多月経など月経困難症の症状を和らげる効果も持っています。通常は排卵や生理のたびに女性ホルモンのバランスが大きく変わり、PMSや月経困難症を引き起こします。ホルモン剤によりホルモンのバランスが整うため、それらの症状が出にくくなるのです。
また、ホルモンバランスの乱れがなくなるため、ニキビや肌荒れが良くなる人もいます。
生理不順で処方されるホルモン剤の飲み方
ピルは、1日1回1錠を、同じ時間に飲みます。これはどんなピルでも同じです。
1シート21錠のタイプと28錠のタイプの違いは、休薬する期間が必要かどうかです。休薬期間中に卵巣や子宮の働きが回復し、消退出血が起こります。28錠のタイプは休薬期間がない代わりに、ホルモンの含まれていない偽薬を内服しています。
1シート21錠のタイプには、ホルモンの含まれない偽薬(プラセボ)が含まれていません。21錠を飲み切った後は、7日間内服をお休みしたのち、8日目に次のシートの錠剤を飲み始めます。出血が終わっているかどうかに関わらず、お休み期間後の飲み忘れがないように気をつけましょう。
1シート28錠のタイプには、ホルモンの含まれない偽薬(プラセボ)が含まれています。28錠を飲み切った後は、出血が終わっているかどうかに関わらず、翌日から次のシートの錠剤を飲み始めます。
生理周期を遅らせる場合
生理を遅らせる方法には、低用量ピル、または中用量ピルを使う方法の二つがあります。
普段から低用量ピルを服用している人が生理を遅らせるには、卵胞ホルモンが多く含まれる錠剤を、生理を避けたいイベントの最終日まで服用し続けることです。ピルを服用し終えたあと2~3日で生理が始まります。普段のピルをそのまま使用できるので簡単ですが、イベント中にもピルを飲み続けなければならないのがデメリットです。
中用量ピルで生理を遅らせるには医師の診察が必要なため、ずらしたい生理予定日の2週間前には病院を受診されるのが望ましいです。予定生理の1~2週間前から生理を避けたい日まで、連続で中用量ピルを内服します。最大で14日間服用が可能です。ピルの内服を終了したのち2~3日で生理が始まります。生理予定日から1週間以内に中容量ピルを飲みだした場合は、調整ができないケースがあります。
生理周期を早める場合
生理は遅らせるだけでなく、早めることもできます。こちらも低用量ピルを用いる方法と中用量ピルを用いる方法の二つがあります。
普段から低用量ピルを服用している人が生理を早める方法は、生理を起こしたい日の2日前に服用をやめることです。その後、2~3日で生理が始まります。
中用量ピルで生理を早めるためには医師の診察が必要なため、早めたい生理の1回前の生理が来る前に、病院を受診していただきます。前回の生理開始3~7日目から服用を始め、飲み始めてから連続で10日以上服用します。ピルの服用をやめた後2~3日で生理が始まります。
中用量ピルで生理を早めるメリットは、生理を避けたい期間に服用しなくて良いことです。
一方、デメリットは、低用量ピルと比べて吐き気などの副作用が出る可能性が高いことです。
普段はピルを使っていない方は、服用方法をしっかりと医師に確認したうえで使用するようにしましょう。
ホルモン剤の処方の流れ
生理不順でホルモン剤を処方してもらう場合は、婦人科での診察が必要です。健康保険の適応となります。
問診では、ピルを処方できない、もしくは注意して飲む必要のある持病や体質などがないかも同時に確認しています。例えば40歳以上の方、現在タバコを吸っている方、肥満(BMIが30を超える)の方などです。
それとともに内診や血液検査などを行い、生理不順以外の婦人科の病気がないかどうかを調べます。
生理不順によるホルモン剤の服用がおすすめの人
生理不順によるホルモン剤の服用がおすすめの人は、以下の通りです。
- 婦人科の検査で生理不順の明らかな原因が見つからなかった人
- 生理周期を安定させたい人
- アスリートなどで生理周期をある程度自分でコントロールしたい人
まとめ
ここまで、生理不順とホルモン剤について説明してきました。
生理不順にはいろいろな原因があり、放置すると不妊の原因となりかねません。別の病気が隠れていることもありますので、生理周期が一定ではないとお感じの方は、ぜひ一度当クリニックまでお越しください。