低用量ピルの主な副作用は、飲み初めの吐き気や頭痛ですが、頻度の低いマイナートラブルとして便秘も報告されています。低用量ピルの作用や、低用量ピルの副作用で便秘になった場合の対処法について解説します。
低用量ピルとは
低用量ピルとは、「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」の2種類の女性ホルモンが混ざったホルモン剤です。含まれている「卵胞ホルモン」の量によって、高用量・中用量・低用量・超低用量の4段階に分類されており、「低用量ピル」は含まれている卵胞ホルモンの量が30~40マイクログラムのピルのことを指します。
低用量ピルの主な作用は、「排卵抑制」と「内膜の菲薄化」です。毎日一定の時刻に1錠ずつホルモン剤を服用することによって、脳からの排卵刺激が出なくなり、排卵を抑えることができます。また、含まれている黄体ホルモンの作用で、子宮内膜の厚みを薄く保つ効果もあります。排卵抑制と内膜を薄く保つという作用により、99.7%という高い避妊効果が得られます。
日本で発売されている低用量ピルには、避妊目的で使用する自費のピルと月経困難症治療目的で使用する保険適用のピルがあります。いずれも、作用や副作用はほぼ同じですが、保険適用のピルを避妊のみの目的で服用することはできません。
低用量ピルの服用で便秘になる場合がある
低用量ピルの副作用として、便秘はかなりマイナーなトラブルです。各種低用量ピルの添付文書には、どのような副作用がどの程度の頻度で出たのかも記載されています。添付文書にある頻度を参考にすると、便秘は0.1~5%未満となっています。
頭痛や吐き気の15%前後に比べると、ピルのせいで便秘になるケースは少なく、便秘が「頻度不明」の副作用として記載されている薬剤もあります。
ピルが直接便秘の原因になるというよりは、含まれている黄体ホルモンの種類が合っていないと、腸の動きが抑えられた状態になり、便秘傾向になると考えられます
低用量ピルの服用で便秘になった場合の対処法
低用量ピル服用中でも、便秘薬や漢方薬を併用することは可能です。便秘が気になる場合は、生活改善や便秘薬の服用によって、症状を楽にすることもできます。
便秘薬や下剤を併用する
ひとまず、早く症状を改善させたい場合は、便秘薬を服用して問題ありません。便秘薬や下剤はいずれもピルとの飲み合わせは問題なく、便通の状態によって自己調整が可能です。
いわゆる「下剤」ではなくても、腸の動きを改善したりむくみをとる作用の漢方を併用してみてもよいでしょう。
生活習慣を見直す
まずは、ピル以外の要因で便秘になっていないかをチェックしてみましょう。食事の摂取量が少なすぎる・水分の摂取量が少ない・運動不足・寝不足・過度の緊張状態などは、いずれも便秘の原因になりえます。バランスのよい食事をしっかり嚙んで食べる・水分をこまめに摂取する・ウォーキング等の軽い運動をコンスタントにする・十分な睡眠をとるなど、腸内環境や自律神経の働きを整える工夫をしてみるとよいでしょう。
低用量ピルの種類を変更する
低用量ピルに含まれる「黄体ホルモン」の種類が影響して、腸がむくんだり腸の動きが鈍くなっていることがあります。どの黄体ホルモンが合うのかは個人差が大きく、服用した種類の黄体ホルモンがたまたま合わなかったという可能性もあります。
一つの種類で不快な症状が出たから、どの種類のピルも飲めないというわけではありません。ほかの種類に変更することで、気になっているマイナートラブルが改善する可能性もあります。生活習慣を見直しても、2シート目以降も便秘傾向が続く場合は、ピルの種類を変えてみるとよいかもしれません。
便秘以外で起こりうる低用量ピル服用の副作用
低用量ピルの主な副作用は、吐き気・頭痛・不正出血です。便秘以外にも、これらのマイナートラブルが起こることがあります。
また、頻度は非常に低いのですが、注意が必要な副作用が血栓症です。各副作用の原因や改善方法について説明していきます。
血栓症
血栓症は、血の塊ができて血管に詰まってしまうものです。1万人に3~9人と、頻度はとても低いのですが、起きてしまうと命にかかわることもあるので注意が必要です。ピルを服用している時は、水分をこまめにとったり、長時間同じ姿勢でじっとすることがないように、自分でできる血栓症予防を行いましょう。
また、激しい頭痛・目のカスミや急激な視力の低下・ふくらはぎの痛みや腫れや変色・胸の痛みや息苦しさ・強くて持続的な腹痛、など、血栓症を疑う症状が出た場合は、すぐに病院を受診しましょう。
頭痛
頭痛は、ピルに含まれる「卵胞ホルモン」によって引き起こされるマイナートラブルのひとつです。飲み初めに出現することが多く、継続していくうちに治まってくることもあります。
もともと頭痛が出やすい人の場合は、ピルの服用によって頭痛が悪化するケースもありますので、普段の頭痛より痛みがひどい場合や頻度が増えた場合は、服用の継続について相談した方が安心です。
卵胞ホルモンの量に比例して出やすい症状ですので、低用量ピルで頭痛が気になる場合は、超低用量ピルに変更することで改善する可能性があります。
吐き気
吐き気も、「卵胞ホルモン」によって引き起こされるマイナートラブルのひとつです。頭痛と同様に、飲み初めに出現することが多く、継続していくうちに治まってきます。
吐き気も、卵胞ホルモンの量に比例して出やすい症状ですので、低用量ピルで吐き気が気になる場合も、超低用量ピルに変更することで改善する可能性があります。
不正出血
初めてピルを服用する場合に、生理の初日や2日目から服用を開始すると、その周期の出血が長引いたり、いったん止血した後に再度出血したりすることがあります。これらの、飲み初めの不正出血は、2シート目以降に起きにくくなりますので、飲み初めに不正出血が続いてもあせらず継続してみましょう。
含まれているホルモンの種類との相性によって、2シート目以降も不正出血が起きる場合があります。この場合は、ピルの種類を変更することで、不正出血が起きにくくなる場合もありますので、種類について相談してみるとよいでしょう。
低用量ピルに関するよくある質問
低用量ピルに関するよくある質問をまとめました。低用量ピルの使用に不安を感じている方は、ぜひ確認していきましょう。
低用量ピルの副作用に便秘はある?
添付文書上は、0.1〜5%未満の頻度で、便秘が副作用のひとつとして記載されています。5%以上の頻度で見られる吐き気や頭痛に比べると、マイナーな副作用と言えます。
また、ピル以外の要因でも引き起こされやすい症状なので、ピルの服用との因果関係がわからないケースもあります。
便秘薬は併用してよい?
市販薬、処方薬ともに、便秘薬とピルは一緒に服用しても大丈夫です。飲み合わせとして、注意が必要な便秘薬はありません。
数日便が出ないようなひどい便秘の時には、まずは便秘薬を使用して、排便のリズムを取り戻す方がよいでしょう。
併用してはいけない薬には何かある?
低用量ピルとの飲み合わせに注意が必要な薬剤がいくつかあります。
【一緒に服用するとピルの効果を下げてしまう可能性があるもの】
- リファンピシン
- バルビツール酸系製剤
- ヒダントイン系製剤
- カルバマゼピン
- ボセンタン
- モダフィニル
- トピラマート
- セイヨウオトギリソウ
【一緒に服用するとピルの作用を強めてしまう可能性があるもの】
- フルコナゾール
- ボリコナゾール
- アセトアミノフェン
【一緒に服用した薬の作用をピルが強めてしまう可能性があるもの】
- 副腎皮質ホルモン
- 三環系抗うつ剤
- セレギリン塩酸塩
- シクロスポリン
- オメプラゾール
- テオフィリン
【一緒に服用した薬の作用をピルが弱めてしまう可能性があるもの】
- Gn-RH誘導体
- 血糖降下薬
まとめ
低用量ピルの副作用としての便秘は、頻度の低いマイナートラブルです。たとえ便秘になっても、便秘薬で改善させることも可能ですので、食事や運動などの生活習慣を見直しても便秘が続く場合は、我慢せずピルの処方医に相談してみましょう。