エイズ(HIV)の初期症状とは?エイズ患者は男性が多い理由についても併せて解説

エイズ(AIDS)は1970年代において確認されていない病気でしたが、現在では知らない人はいないほど患者が増加しました。日本でのエイズ患者は、女性よりも男性が非常に多い傾向があります。

この記事では、エイズ患者に男性が多い理由やエイズの症状、予防方法について解説します。HIVに感染していないか心配されている方や、どのように予防したらよいかお悩みの方はぜひ参考にしてください。

エイズ(AIDS)とは

エイズ(AIDS)とは「Acquired Immunodeficiency Syndrome」の頭文字をとったもので、日本語では「後天性免疫不全症候群」といいます。

よくHIV感染と混同されますが、エイズとHIV感染は同じではありません。エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、免疫機能が破壊されてさまざまな感染症(日和見感染症)を発症する状態を指します。

HIVは潜伏期が長く、10年経過しても発病しないケースもあります。近年、薬を使用すれば発病を遅らせられるようになりました。感染の予防はもちろん大切ですが、HIV感染を早期発見し、少しでも早く治療を開始することも大切です。

エイズ患者数の推移

日本では、1985年に初めてHIV感染者がいることが報告されました。これ以降、徐々にHIV感染者報告は増え、2007年までは増加傾向にありました。

しかし、近年では減少傾向となり、2020年には前年よりも153件減少しています。HIV新規感染者の減少に伴い、エイズの新規患者報告も同様に減少傾向となっています。

【HIV感染者年間新規報告数の推移】

調査対象期間報告数
1987年55
1990年66
1995年277
2000年462
2005年832
2010年1075
2015年1006
2020年750
2021年742

エイズ患者は男性が多い

HIV新規感染者報告やエイズ患者報告の男女比を見ると、圧倒的に男性が多い傾向です。

エイズ動向委員会の報告によると、2020年の新規報告は、HIV感染者の94.9%、エイズ患者の95.1%と、HIV感染者・エイズ患者の大半を男性が占めました。異性間の感染は横ばいであり、同性間による性感染が増加傾向です。特に、10代におけるHIV感染報告は、ほとんどが男性同士となっています。

では、男性同士のリスクはなぜ高いのでしょうか。これは、「同性間であれば避妊する必要がない」という認識があり、コンドームを使用せずに性交渉するケースが多いためと考えられています。そのため、HIV感染者やエイズ患者は男性が圧倒的に高くなっているのでしょう。

エイズの症状

エイズは、HIVに感染してから厚生労働省が定める「エイズ指標疾患」のいずれか一つに罹患した場合に診断されます。エイズ指定疾患である合併症については、以下を参考にしてください。

【エイズ指標疾患(厚生労働省が定めるエイズ発症の基準となる23の合併症)】

病名具体的な症状
カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)食道:嚥下痛、嚥下困難、胸焼け、胸骨下痛など呼吸器:咳、痰を伴う慢性気管支炎など
クリプトコッカス症(肺以外)頚部硬直や羞明、傾眠や精神作用の変容、人格変化、記憶喪失など
ニューモシスチス肺炎体動時の息切れ、咳嗽、発熱、呼吸困難など
コクシジオイデス症(1:全身に播種したもの 2:肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの).全身リンパ節腫脹、肝障害、骨・関節炎、咳嗽、発熱、胸痛など
ヒストプラズマ症(1:全身に播種したもの 2:肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの)発熱、疲労感、体重減少、肝脾腫、リンパ節症、咳、呼吸困難など
クリプトスポリジウム症長期間の下痢、吸収不全による低栄養、消耗、体重減少など
トキソプラズマ脳症(生後1ヵ月以後)頭痛、意識障害および発熱、片麻痺、小脳性運動失調、脳神経麻痺など
イソスポラ症(1ヵ月以上続く下痢を伴ったもの)重篤かつ持続性の下痢など
非結核性抗酸菌症(1:全身に播種したもの 2:肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの)持続する発熱、咳嗽、喀痰、下痢、腹痛など
化膿性細菌感染症(13歳未満でヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの。1:敗血症 2:肺炎 3:髄膜炎 4:骨関節炎)1.発熱、頻脈、発汗など2.発熱、咳、痰、呼吸困難、胸痛など3.発熱・頭痛・嘔吐など4.痛みや腫れ、骨の過剰な増殖など
活動性結核(肺結核又は肺外結核)持続する発熱、咳嗽、喀痰など
サルモネラ菌血症(再発を繰り返すものでチフス菌によるものを除く)持続する発熱など
サイトメガロウイルス感染症(生後1ヵ月以後で肝、脾、リンパ節以外)消化器感染:下痢、発熱、食欲不振、大量出血など肺炎:発熱、頻呼吸、呼吸困難など脳炎:神経障害、知能低下など網膜炎:暗点、市や欠損、視力低下など
単純ヘルペスウイルス感染症(1:1ヵ月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を形成するもの 2:生後1ヵ月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの)皮膚、口、唇、眼、性器に、液体で満たされた、痛みを伴う小さな水疱の発生など
進行性多巣性白質脳症片麻痺、認知機能障害、言語障害、歩行障害、意識障害、精神症状、頭痛など
カポジ肉腫
原発性脳リンパ腫頭痛、痙攣発作、神経脱落症状、脳神経麻痺、精神状態の変化など
非ホジキンリンパ腫(LSG分類による。1:大細胞型・免疫芽球型 2:Burkitt型)リンパ節の急激な増大又は節外腫瘤や体重減少、盗汗、発熱など
浸潤性子宮頸癌(HIVによる免疫不全を示唆する症状又は所見がみられる場合に限る)腰痛、背中の痛み、腹痛など
反復性肺炎急性肺炎の1年以内の反復
リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)咳、 ばち状指、低酸素血症など
HIV脳症(痴呆又は亜急性脳炎)注意力や集中力の低下、動作や言葉遣いの 緩慢化、認知機能障害や行動障害など
HIV消耗症候群(全身衰弱又はスリム病)10%以上の不自然な体重減少、30日以上続く慢性の発 熱、30日以上続く 1日2 回以上の下痢症状

いきなりエイズとは

HIV感染の診断がされておらず、エイズを発症してから病院を訪れ感染が判明するケースを「いきなりエイズ」と呼ぶことがあります。

要するに、エイズを発症するまでHIV感染に気づかなかったということです。HIV感染は症状が出ない期間が長いため、このようなことが起きます。

また、新規HIV感染者およびエイズ患者の合計数のうち、新規エイズ患者が占める割合を「いきなりエイズ率」と呼びます。いきなりエイズ率が低いほど「エイズを発症するまでHIV感染を自覚しなかった人」の割合が低く、早期に診断できている人が多いこととなります。

日本での「いきなりエイズ率」は2005年辺りから30%前後で推移しているものの、明らかな減少傾向とはなっていません。今後の対策として、HIV感染の早期診断の推進が求められています。

エイズになる前のHIVでみられる症状

HIVに感染してからエイズ発症までの期間は、6か月~10年以上といわれています。エイズには潜伏期間があり、発症前に感染に気づくのは簡単ではありません。

では、エイズが発症する前にHIV感染に気づくにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、HIV感染からの症状を期間ごとに説明します。

感染後の初期症状

HIV感染後の初期症状の特徴は、風邪やインフルエンザに似ています。具体的には、「発熱」「のどの痛み」「だるさ」「下痢」などの症状が挙げられます。

風邪やインフルエンザと異なる点は、皮疹などが出る場合があることです。この場合、直径5〜10mm程度の小さく赤い発疹が胸や背中に現れます。

このような症状は、通常数日から数週間で自然に消失します。そのため、風邪やインフルエンザに感染したと勘違いし、HIVに感染したと気づかないことが多くあります。

無症候期

初期症状が消失した後は、なにも症状が現れない期間が半年から10年ほど続きます。この時期が無症候期と呼ばれる時期です。

しかし、症状がないとはいっても、体内ではHIVが増殖を続けています。そのため、徐々に免疫力は低下していき、下痢や帯状疱疹などになりやすくなります。

この時期は自覚症状がないため、検査を受けない限り感染に気づくきっかけはほとんどありません。そのため、HIVに感染した可能性がある場合は、すみやかに検査を受けることが大切です。

エイズの感染経路

エイズの感染経路は、以下の3種類です。

  • 性的感染
  • 母子感染
  • 血液感染

エイズにおいては、この3つの方法以外では感染しません。エイズ予防のため、そして万が一感染した場合のためにも正しい知識を持ち、理解を深めることが大切です。

性的感染

日本国内での感染経路で圧倒的に多いのは、性行為による感染です。

エイズ動向委員会の報告によると、2021年新規報告の感染経路別内訳は、HIV感染者で83.9%(同性間71.6%)、AIDS患者で68.2%(同性間51.4%)を占めました。

HIVは主に血液や精液、膣内分泌液に多く含まれているため、性行為中に粘膜や傷口を通って感染します。また、オーラルセックス(口腔性交)のみでもHIVに感染する可能性があります。

感染を防止するには、正しいコンドームの着用が必要です。

母子感染

母親がHIVに感染している場合、赤ちゃんにもHIV感染する可能性があります。母子感染は、主に3つの感染経路があります。

  • 胎内感染

妊娠中に赤ちゃんに感染してしまうケースです。母体血中HIVが胎盤に侵入し、臍帯を経て胎児に感染します。

  • 経産道感染

母子感染の中で最も危険性の高い感染経路が出産時の感染です。母子感染の約50%を占めています。出産時に赤ちゃんが母体の産道を通過する際に、母体血液や体液にまみれ、血液を飲み込んでしまうことなどが原因となります。

  • 経母乳感染

HIVに感染している母体から母乳を接種することにより、母乳中のHIVが赤ちゃんに感染するケースです。

現在の日本では「妊娠中の投薬」「帝王切開」「粉ミルクの使用」などしっかり対策を行えば、赤ちゃんへの感染は0.6%まで抑制可能となりました。

なお、感染対策を行わない場合の母子感染確率は、15%~30%といわれています。

血液感染

血液感染は、HIVが存在する血液の輸血や、依存性薬物の使用における注射器の使いまわしが原因で感染します。

日本国内で献血された血液は厳重な検査で高い安全性が確保されていますが、HIV感染を完全にゼロにすることは不可能です。

なお、過去に問題となっていた血液凝固因子製剤は、現在は加熱処理が行われているため、感染の心配がなくなりました。

エイズの検査方法

HIV検査は、全国の保健所などで簡単に受けられます。保健所では無料かつ匿名で検査可能です。保健所などでの検査には、「通常検査」と「即日検査」の2つの方法があります。

  • 通常検査

通常検査は、保健所などで従来行われてきたHIV検査です。検査は、「一次検査」と「二次検査(確認検査)」の二段階に分かれています。検査結果は1〜2週間程度でわかります。

  • 即日検査

即日検査では「陰性」の場合のみ、当日結果が出ます。陰性と確認できなかった場合、確認検査が必要になります。この場合、通常検査と同様に検査結果が出るまでに1~2週間ほどかかります。

HIV検査の結果が陽性だった場合は、HIV専門の医療機関で精密検査をしっかり受けることが大切です。

なお、感染の有無をしっかり確認したい場合は、感染の可能性のある行為や出来事があってから3か月以上経過してから検査を受けると正確性の高い結果が得られます。

エイズの治療方法

エイズの治療目的は、体の中のウイルス量を抑え続け、免疫力を回復・維持することです。

治療開始のタイミングは、かつてはCD4陽性リンパ球が200/μL程度まで下がってからとされていました。しかし近年では、薬の副作用も少なくなり、早期治療のさまざまな利点も明らかになってきています。そのため、近年はすべてのHIV感染患者の方に対して、抗HIV薬の開始が推奨されています。

治療方法は、3~4種類の抗HIV薬を組み合わせ内服する「多剤併用療法」が基本となっています。近年では、2~3種類の成分が1錠に含まれた「合剤」も多くあり、1日1回1錠での治療も可能となりました。

多剤併用療法が開発されてからは、HIV感染者の予後は改善傾向です。

しかし、抗HIV薬は、身体からHIVを完全に排除できるものではありません。抗HIV薬を開始した後は、生涯継続が必要です。

エイズの予防方法

エイズの予防方法は、主に以下の二つの方法があります。

  • 正しくコンドームを着用する
  • エイズ予防薬を内服する

以下では、この2つの方法について詳しく解説します。

正しくコンドームを着用する

コンドームの使用は、粘膜と体液の接触を避ける最も有効な手段です。正しく使うことでエイズに感染する確率は100%近くまで下げられます。

以下はコンドームの正しい使用手順です。正しく使用し、エイズ感染を予防しましょう。

1.爪を立てないよう気を付け、精液だめの空気を抜く

2.勃起したペニスの皮を 根元までたぐりよせる

3.コンドームをペニスに付け、ゆっくり巻き下ろす

4.かぶせた部分を亀頭方向に動かし、根元であまっている皮が張るようにコンドームを根元まで下ろす

5.射精後、コンドームがはずれないように根元を押さえながらペニスを抜く

6.口をしばり捨てる

HIV感染を防ぐためには、お互いの協力が不可欠です。コンドームの使用について、日ごろからパートナーとよく話し合っておきましょう。

エイズ予防薬を内服する

コンドームの使用以外に、薬を内服することでも、エイズを予防できます。

内服薬によるエイズ予防方法には「PEP療法」と「PrEP療法」の2つがあります。ここでは、この2つの方法について解説します。

PEP療法

PEP療法では、HIV感染の可能性のある行為や出来事があった場合、緊急的に薬を服用し、HIV感染の成立を防ぎます。感染の可能性があったときから、72時間以内の服用が必要となります。なお、服用は早ければ早いほど予防効果が高いとされています。

主に医療従事者の針刺し事故の際、感染予防に使用されていますが、海外では性行為による感染予防にも使用されています。薬は1日1回同じ時間に30日間服用します。

PrEP療法

PrEP療法も、PEPと同様に薬服用しHIV感染を予防する方法の一つです。この療法は、性風俗で働いている方や、性行為を頻繁に行う方に勧められています。

PrEP療法は、薬の飲み方が以下の2通りあります。

  • デイリー PrEP

毎日継続して薬を服用する方法です。1日1回同じ時間に服用します。

  • オンデマンドPrEP

性行為の前後に薬を服用する方法です。性行為の24時間前に2錠服用し、その後は24時間ごとに1錠ずつ服用します。また、性行為が数日続く場合はその後も24時間ごとに服用を続け、最後の性行為の後に2回服用します。この方法は、男性と性交渉を持つ男性にのみ推奨されており、女性やトランスジェンダーには推奨されていません。

まとめ

エイズにならないためには、まずHIVに感染しないことが最も重要です。HIVの感染は、予防すればほとんど防げます。そのため、日ごろからHIV感染の確率が高い行為や仕事をしている場合は、しっかりと感染対策を行いましょう。

また、現在はエイズが発症したとしても有効な治療薬が多くあるため、しっかり検査を行って、早期に治療を開始しましょう。この記事がエイズに関する悩みや疑問を抱えている方の参考になれば幸いです。

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