ピルと薬は併用してもいい?飲み合わせ例と副作用についても解説

避妊目的で内服されることの多いピルは、最近では生理にまつわる不快な症状の治療にも使われます。毎日1錠の内服を継続するため、風邪などで体調を崩したときの飲み合わせが心配な方もいるでしょう。

結論、市販の頭痛薬や風邪薬などは問題なく内服できるものがほとんどです。しかし、なかには併用に注意が必要な場合もあります。

本記事では、ピルとほかの薬の併用やピルの種類について紹介します。避妊や生理で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

ピルとほかの薬は併用をしてもいい?

ピルとほかの薬は併用をしてもいい?

内服するピルの種類によっては、毎日飲み続ける場合があります。そうなると、風邪をひいたときや頭が痛いときなど、ほかの薬との飲み合わせが気になるでしょう。

多くの薬は併用できますが、薬の種類によっては注意が必要な場合もあります。ここでは、ピルとほかの薬の併用について解説します。

市販の薬は基本的に併用OK

市販薬とは、医師の処方箋なしで購入できる薬です。薬局やドラッグストアで購入でき、頭痛薬や風邪薬などは利用する方も多いでしょう。

市販薬は病院で処方される薬よりも作用が弱く副作用が少ないため、ピルと併用できる薬がほとんどです。

併用に注意が必要な薬もある

市販薬であれば、すべての薬が絶対OKというわけではありません。市販薬でも、なかには併用に注意が必要な場合があります。

例えば、便秘がひどいときに内服する下剤。下剤が効きすぎて下痢になってしまうと、ピルの成分が吸収されずに体外に排出されてしまいます。

ピルを飲んでから、4時間以上空けて下剤を内服すると良いでしょう。

ピルとの併用に注意が必要な薬とは?

ピルとの併用に注意が必要な薬とは?

市販薬では、ピルとの併用が可能なものがほとんどですが、注意が必要な薬はどのようなものがあるのでしょうか。病院で処方される薬は併用できないのでしょうか。

ここでは、ピルとの併用に注意が必要な薬について解説します。

併用しないほうがいい薬

ピルとの飲み合わせが禁止されている薬に、C型肝炎の薬である「ヴィキラックス配合錠」があります。併用はもちろん、中止後2週間が経過するまでピルの内服は禁止です。

ヴィキラックス配合錠と低用量ピルを併用すると、肝臓の機能が低下する可能性があります。C型肝炎の治療中やピルの内服中にC型肝炎の治療が必要になった場合は、必ず医師に相談してください。

併用するとピルの効果を弱める薬

薬の中には、併用することでピルの効果を弱める薬があります。

・結核の治療薬

・てんかんの治療薬

・HIV感染症の治療薬

・モダフィニル(睡眠障害の治療薬)、ボセンタン(肺高血圧症の薬)

これらの薬は、薬の吸収に関与する腸内の環境が変わることで、ピルの効果が弱くなる場合があります。ピルの効果が弱まるということは、避妊効果や治療効果も弱まるということです。

飲む時間をずらしたり、医師に相談したりなどの対策が必要と言えるでしょう。

併用するとピルの作用が強くなる薬

ピルと併用すると、ピルの効果を強めてしまう薬もあります。

・抗真菌薬

・解熱鎮痛薬:アセトアミノフェン

抗真菌薬は、身体に菌による症状が見られる場合に使用する薬です。解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンは、熱が出たときに処方されるカロナールや市販のバファリンなどにも含まれているため、箱裏の成分表示に含まれているものは避けましょう。

病院の受診時やドラッグストアで薬を購入するときは、ピルを飲んでいることを必ず伝えて、飲み方を聞いた上で内服する必要があります。

ピルによって効果が弱まる薬

ピルとの併用で、併用した薬の効果が弱くなる場合があります。

・解熱鎮痛薬:アセトアミノフェン

・糖尿病の薬

・子宮内膜症の薬

・モルヒネ

解熱鎮痛剤以外は、ほとんど医師の処方箋がなければ購入ができない薬です。ピルによって効果が弱まるため、処方されたときや治療を始めるときは必ず医師に相談してください。治療がうまく進まない可能性があります。

ピルによって効果が強まる薬

ピルと併用すると、薬が効きすぎてしまうものもあります。

・うつ病の薬

・ステロイド(内服薬)

・免疫抑制剤

・パーキンソン病の治療薬

・ぜんそくの治療薬

・胃酸分泌を抑える薬

これらの薬は、ピルと併用することで薬の血中濃度が上がり、効きすぎて副作用が出現することも。ただし、かゆみや皮膚の炎症で使われるステロイド配合の塗り薬は、身体に吸収される道順が異なるため、併用が可能です。

ピルの種類と期待できる効果は?

ピルの種類と期待できる効果は?

ピルは、女性ホルモンに似た成分が配合された薬で、ホルモンバランスを整え高い避妊効果や生理にまつわる症状の治療に使用されます。さまざまな種類があり、目的に合ったピルを選ぶことが可能です。

ここでは、ピルの種類について解説します。

アフターピル

アフターピルは、緊急避妊薬として使われる薬です。

薬名アフターピル
避妊効果妊娠の可能性がある性交後、72時間以内に内服することで、約99%と高い避妊効果を発揮します。
避妊以外の効果なし
副作用気持ち悪さ、吐き気、頭痛、下腹部痛、眠気
飲み方妊娠の可能性がある性交後、72時間以内になるべく早く内服する
特徴・内服するのが早ければ早いほど避妊効果が高い・72時間タイプと120時間タイプがある

性行為で避妊に失敗した場合、なるべく早く飲むことで高い避妊効果を発揮します。時間が経つごとに避妊率は下がっていくため、なるべく早く内服することが大切です。

しかし高い避妊率の反面、副作用が出やすいのが難点。気持ち悪くなったり眠気を感じたりといった症状が出る方もいます。いずれも24時間以内におさまることが多いですが、アフターピルの内服はそれだけ負担がかかることを覚えておきましょう。

低用量ピル

低用量ピルは、主にPMSや月経困難症の治療や避妊目的で使われるピルです。

薬名低用量ピル
避妊効果正しく内服することで99.7%の避妊効果
避妊以外の効果・PMSや生理痛、月経不順の改善・肌荒れの改善
副作用気持ちわるさ、吐き気、めまい、ふらつき、頭痛、体重増加、ニキビ、血栓症
飲み方1日1錠を毎日決まった時間に内服(種類によっては休薬期間あり)
特徴・毎日飲み続ける必要がある・飲み始めて1ヶ月程度は副作用が多い

生理前〜生理中、どうしても体調が悪くなってしまう女性はとても多く、低用量ピルは治療目的で内服する方も多いです。避妊目的での内服は保険適用外ですが、治療目的の場合は保険適用内で購入できます。

「低用量」とは、薬に配合されている女性ホルモンの量が少ないことを意味しており、比較的副作用が少ないです。生理にまつわる症状を治療しながら、避妊や肌荒れ改善などの効果も期待できます。

中用量ピル

中用量ピルは、避妊や生理日移動の目的で内服することの多い薬です。

薬名中用量ピル
避妊効果正しく内服することで約100%の避妊効果
避妊以外の効果生理日移動
副作用吐き気、胸の張り、むくみ、ふらつき、頭痛、体重増加、血栓症
飲み方生理をずらしたい日に合わせて、毎日同じ時間に10日間ほど1錠内服
特徴・副作用が強く出やすい・生理日の移動が可能

中用量ピルは、低用量ピルよりも女性ホルモンの成分が多く配合されています。高い治療効果や避妊効果が得られますが、副作用が強く出やすいのが難点です。

そのため、生理不順の改善や避妊目的では低用量ピルが使われる場合が多く、中用量ピルは生理日移動での使用が多い傾向があります。

超低用量ピル

超低用量ピルは、低用量ピルよりもさらに女性ホルモンの量が少ないピルです。

薬名超低用量ピル
避妊効果避妊目的では使用しない
避妊以外の効果子宮内膜症や月経困難症、PMSの治療
副作用気持ちわるさ、吐き気、めまい、ふらつき、頭痛、体重増加、ニキビ、血栓症
飲み方1日1錠を毎日決まった時間に内服(種類によっては休薬期間あり)
特徴・副作用が少ない・避妊効果がない

超低用量ピルは配合される女性ホルモンの量が少ないため、副作用が出にくい特徴があります。報告されている副作用は低用量ピルとほぼ同じですが、発生の頻度が低いです。

避妊目的での使用ができないため、保険適用内で購入ができます。

ミニピル

ミニピルは、女性ホルモンの成分をまったく含まない薬です。

薬名ミニピル
避妊効果正しく飲んだ場合は99%以上の避妊効果(一部避妊効果の試験が行われていないものがある)
避妊以外の効果子宮内膜症や月経困難症、PMSの治療
副作用不正出血が起こりやすい
飲み方1日1錠を毎日決まった時間に内服(休薬期間なし)
特徴・女性ホルモンを配合しないため、血栓症のリスクがほぼない・毎日決まった時間に内服しなければならない(ズレは3時間以内に留める)・内服中は生理がこない

ミニピルには女性ホルモンの成分が入っていないため、ピルの重大な副作用である血栓症が起こりにくい特徴があります。

その代わり、ほかのピルと比較すると、不正出血という不定期の少量出血が起こりやすいです。ミニピルには休薬期間がなく、内服中は生理が止まりますが、体への影響はありません。

低用量ピルの分類

ピルにはアフターピルや低用量ピルなど、さまざまな種類があります。特に低用量ピルは、配合されるホルモンの種類によってさらに細かく種類が分けられており、合うものを選ぶことが可能です。

低用量ピルは、第一世代から第三世代の3種類に分類され、それぞれ配合される女性ホルモンが異なります。

ここでは、低用量ピルについてさらに細かく見ていきましょう。

第一世代

1番初めに製造、承認された低用量ピルは、第一世代と呼ばれています。

  • フルウェルLD
  • シンフェーズ
  • ルナベルULD

低用量ピルの第一世代には、ノルエチステロンという女性ホルモンが配合されています。

生理による出血量が減りやすく月経困難症の治療に優れていますが、不正出血が起こりやすいのが難点です。

第二世代

低用量ピルの第二世代には、以下の3種類があります。

  • ラベルフィーユ
  • トリキュラー
  • ジェミニーナ

レボノルゲストレルと呼ばれる女性ホルモンを使用しており、不正出血が起こりにくいのが特徴です。生理周期を安定させやすく、月経不順の治療に向いています。

第三世代

低用量ピルの第三世代は、以下の2種類です。

  • マーベロン
  • ファボワール

男性ホルモンを抑制する効果が強く、避妊効果に加えてニキビや多毛症の予防効果が期待できます。しかし、長期の使用は抑うつ症状や性欲低下につながる可能性があるため、注意が必要です。

一相性や二相性とは?

低用量ピルについて調べていると、世代のほかに「一相性」「二相性」という言葉を見かけます。低用量ピルは、種類が多く分かりにくいと感じることもあるでしょう。

低用量ピルの世代は、配合されている女性ホルモンの種類による分け方です。対して、「一相性」「二相性」は、低用量ピルに配合されている、女性ホルモンの量で判別します。

低用量ピルは1ヶ月分が1シートになっており、継続して1日1錠内服する薬です。低用量ピルには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類が配合されています。

このうち、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの量が一定のものを一相性、2つのホルモンの配合量が異なるものを二相性と呼びます。また、配合の量が違う薬が3種類含まれるものを三相性と呼んでいます。

ピルと薬についてのよくある質問

ピルと薬についてのよくある質問

ピルは、女性ホルモンが配合された薬です。「ホルモン剤」と聞くと、少し怖いイメージがある方も多いのではないでしょうか。実際には、正しく内服することで高い避妊効果と、治療効果を得ることが可能です。

ここでは、ピルに関するよくある質問について答えていきます。

ピルに自費と保険適用があるのはなぜ?

ピルは、主に避妊目的と治療目的で内服することが多いです。

治療ということは、原因に病気があるということ。医師がPMSや月経困難症と診断し治療が必要と判断された場合は、医療行為となり保険適用での購入が可能です。

しかし、避妊や生理日移動の目的で内服する場合は、病気があるわけではありません。そのため、保険適用外での購入になります。

ピルの値段はいくらくらい?

ピルの価格は、内服する種類や病院によってもさまざまです。ピルの値段の目安を、下の表にまとめました。

薬名値段
低用量ピル約2,500円/月(自費)
中用量ピル約3,000〜5000円/月(自費)
ミニピル約2,500円/月(自費)
アフターピル約10,000〜12,000円程度(自費)

低用量ピルと中用量ピル、ミニピルは、毎日継続して内服します。治療目的であれば保険適用で購入できるため、さらに安くなるでしょう。アフターピルは保険適用外で、1錠で10,000円ほどかかります。

ピルは病院で処方されることがほとんどであるため、上記の金額に加えて診察料も必要です。また、病院によって取り扱う薬も異なります。あくまで金額は目安として、利用を検討しているクリニックに直接問い合わせてみましょう。

ピルと鎮痛剤(ロキソニン)を飲み合わせても大丈夫?

ロキソニンには、アセトアミノフェンという鎮痛成分が含まれます。

ピルとの併用が禁止されているわけではありませんが、ピルの作用が強くなったり、ロキソニンの効果が弱くなったりする可能性がある薬です。念の為、内服する際には医師や薬剤師に相談しておきましょう。

ピルの服用による副作用は何?

ピルには、さまざまな副作用があります。特に内服を始めて1ヶ月目は副作用が出やすく、徐々に体が慣れておさまっていくケースがほとんどです。

  • 吐き気
  • 胸が張る
  • 頭痛や下腹部痛
  • むくみ
  • 不正出血
  • 体重増加

これらは副作用の中でもよく見られますが、ピルの副作用で1番怖いのは血栓症です。血栓症は血管が詰まってしまう病気で、血の巡りが悪くなり、心筋梗塞や脳卒中など重要な病気の原因になります。

定期的に受診をし、自分でもセルフチェックをしながら内服する必要があるでしょう。

まとめ

ピルと薬は併用してもいい?のまとめ

ピルは、避妊目的のほかにも、月経困難症やPMSの治療での内服も増えています。

女性ホルモンを配合した薬であり、飲み始めは副作用が出ることもありますが、1ヶ月程度で消える方が多いです。

C型肝炎の薬を除き併用できない薬もほとんどありません。ですが、病院にかかったときや薬局で薬を購入するときは、必ずピルを内服していることを伝えましょう。

ピルは正しく内服すれば、高い効果が期待できます。生理で悩んでいる方や、しっかり避妊をしたい方は、ぜひピルの内服を検討してみてはいかがでしょうか。

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