HIV(ヒト免疫不全ウイルス)って何?AIDS(エイズ)との関係性は?

「HIVに感染するとどうなるの?」「HIVとエイズって同じ?」

HIVやエイズ、なんとなく怖いイメージはあっても、予防方法や治療については知らない方も多いでしょう。HIVへの感染は、エイズを発症する原因になります。現状では完治は難しく、生涯治療が必要な病気です。

本記事では、HIVやエイズについての基礎知識や検査方法、予防方法について解説します。ぜひ最後までご覧ください。

HIVって一体何?

HIVはウイルスの名前であり、エイズは病気の名前です。HIVに感染するとエイズを発症するリスクが高まりますが、感染したからといって必ずエイズになるわけではありません。

ここでは、HIVとエイズについて解説します。

HIVとは「ヒト免疫不全ウイルス」のこと

「HIV」は、Human Immunodeficiency Virusの略で、日本語だと「ヒト免疫不全ウイルス」と呼ばれます。

人間にはカビや細菌から体を守る免疫機能がありますが、この機能を低下させるのがHIVです。HIVは感染すると体の中で増殖し、徐々に免疫機能を低下させます。

「HIV=AIDS(エイズ)」ではない!

「AIDS(エイズ)」は、Acquired Immunodeficiency Syndromeの略称で、日本語では「後天性免疫不全症候群」と呼ばれます。HIVに感染し、免疫力が著しく低下した状態がエイズです。

エイズは免疫力の低下により、健康な人ではかからないような感染力の弱いウイルスにも感染しやすい状態です。厚生労働省が定めた、感染力が弱い23個の病気のいずれかを発症すると、エイズと診断されます。

なお、HIVにかかったからといって、必ずエイズを発症するとは限りません。治療法の発達により、エイズの発症を食い止める・遅らせることも可能になっています。

HIVの主な感染経路3つ

HIVは、感染者の血液や精液、膣分泌液などが粘膜に触れることで感染します。その種類別に、感染経路は大きく3つに分けられるのです。

ここでは、HIVに感染する可能性がある経路・場面について、詳しく解説します。

その1:性行為による感染

HIVの感染経路で最も多いのは、HIVに感染している人との性行為です。性行為は精液や膣分泌液との接触が多く、ウイルスが性器や口から体内に侵入します。

また、HIVは傷口や肛門からも感染する可能性があるため、どこに性液が触れるか分からないHIV感染者との性行為は、とても危険です。

コンドームなどを使用することで接触範囲を減らすことは可能ですが、未治療のHIV感染者との性行為は感染リスクが極めて高いことを理解しておきましょう。

原因となる状況・相手の性器が自身の口や性器などに直接触れる・精液や膣分泌液が付着した口でキスをするなど

その2:血液からの感染

HIVは、血液からも感染します。例えば、覚醒剤などといった違法薬物を注射器で回し打ちした場合や、医療従事者の針刺し事故などがあるでしょう。

加えて、気をつけたいのが「傷口からの感染」です。HIVが含まれている血液が傷口や粘膜に大量に付着した場合、感染する恐れがあります。

傷口というと、血が大量に流れているような大きな傷口を想像しがちですが、髭剃りで付けてしまったような小さな傷も感染リスクを伴います。頻度は低い感染経路ですが、注意する必要があるでしょう。

原因となる状況・違法薬物使用時の注射器の回し打ち・医療現場での針刺し事故・ケガの手当ての際に血液が自分の傷口に触れたなど

その3:母から子への感染

HIVは、母から子への感染も見られ、ウイルスに感染した女性の妊娠中や出産時に感染する場合が多いです。

母親の体内にあるウイルスが子に移らなければ母子間の感染は防げるのですが、ウイルスが移る原因は「胎盤からへその緒を経て子に移る」「出産時産道を通る際、母親の血液・体液に子が触れて移る」「母乳から子へ移る」などさまざまです。

また、母乳からの感染リスクもあるため、出産前は感染しておらず出産後に感染した場合でも、そこから子どもに感染するケースが見られます。

原因となる状況・HIVに感染している母親が出産した(帝王切開ではなく自然分娩)・HIV感染者の母乳を飲むなど

「HIV感染の心配はない行為」一覧

HIVは、血液や精液などの「体液」との接触によって感染する可能性が高いです。

しかし、ウイルスが含まれる体液は限られており、「他人の体液・体に触れる機会には全て感染リスクが伴うのか」というと、そうではありません。例えば、咳やくしゃみなどでは、HIVには感染しません。

【HIV感染は起こらない行為例】
咳・くしゃみを受ける蚊に刺される食べ物の共有
ハグ飲み物の回し飲みをする握手
汗を拭いたタオルを共有する同じお風呂に入る電車のつり革に触れる

【最新版】日本におけるHIV感染者数

実際今の日本では、どのくらいの人がHIVに感染しているのでしょうか。以下に、2023年6月時点で確認できる最新情報を参考にした感染者数をまとめました。

HIV感染者日本国籍外国国籍合計
男性女性男性女性
感染経路\合計1242301157
異性間の性的接触1424020
同性間の性的接触930220115
静注薬物使用00000
母子感染00000
その他50308
不明1201114

参考:公益財団法人 エイズ予防財団|エイズ予防情報ネット「四半期報告 2023年[令和5年]」「HIV感染者及びAIDS患者の国籍別、性別、感染経路別、年齢別、感染地域別報告数(表1)」

こちらは、エイズ予防情報ネットで公開されている、「令和4年(2022年)9月26日~令和4年12月25日の日本国内のHIV感染者の統計」です。ほぼ3ヶ月分の感染者数のため、1年間ではこの約4倍の人が感染しているとも考えられます。

日本在住の外国国籍の方の感染も見られますが、日本人男性の感染が多いです。また、異性間の性交渉よりも、同性間の性交渉による感染が多いことが分かるでしょう。

HIV感染を疑う症状は?

HIVに感染すると、どのような症状がみられるのでしょうか。HIVの特徴として、風邪のように「症状が出て収まったら治っていた」ということではなく、感染はしているが症状が出ない「無症状期間」が存在します。

ここでは、HIV感染を疑う症状について解説します。

感染初期|インフルエンザに似たような症状が出ることも

HIVに感染して2~4週目は、熱やのどの痛み、だるさ、下痢などといった、風邪やインフルエンザのような症状が出る場合があります。人によっては筋肉痛や皮膚症状なども発生します。

これは、体の中に入り込んできたウイルスが体内で急激に増えて、白血球の一種である「CD4陽性リンパ球」を破壊するために起こります。白血球は侵入してきたウイルスと戦い、体を守る作用を持つ細胞です。

症状は徐々に収まっていきますが、HIVによるCD4陽性リンパ球の破壊は続きます。

無症候期|10年以上続くこともある

感染初期の症状が収まると、症状がない「無症候(むしょうこう)期」に入ります。

無症候期は症状こそありませんが、体の中ではHIVが増殖。CD4陽性リンパ球は破壊され、免疫機能は落ちていきます。この期間は個人差が大きく、数年から長いと10年以上続くこともあるのです。

免疫力が著しく低下すると、寝汗や下痢、体重減少などの症状が起こりやすくなります。病気に対する抵抗力も低くなるため、他の病気の発症にも注意が必要です。

エイズ発症期|免疫不全によりいずれかの指標疾患の症状が出る

無症候期を過ぎると、HIVによって免疫力が著しく低下し、「エイズ発症期」に入ります。体の抵抗力が無くなるため、健康な人では感染しないようなウイルスへの感染、がんや神経障害のリスクが高くなるのが特徴です。

厚生労働省では、以下の通り23個のエイズの診断基準を設けています。「これらの病気の発症」と「HIVの検査で陽性が出た」という2つが組み合わさった場合、「エイズを発症している」と確定されます。

A.真菌症カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)クリプトコッカス症(肺以外)コクシジオイデス症ヒストプラズマ症ニューモシスティス肺炎
B.原虫症トキソプラズマ脳症クリプトスポリジウム症イソスポラ症
C.細菌感染症化膿性細菌感染症サルモネラ菌血症活動性結核非結核性抗酸菌症
D.ウイルス感染症サイトメガロウイルス感染症単純ヘルペスウイルス感染症進行性多巣性白質脳症
E.腫瘍カポジ肉腫原発性脳リンパ腫非ホジキンリンパ腫浸潤性子宮頚癌
F.その他反復性肺炎リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成HIV脳症HIV消耗性症候群

参考:厚生労働省|9 後天性免疫不全症候群「指標疾患(Indicator Disease)」

難しい病名が並んでいますが、これらは健康な人なら感染しないような感染力の弱い病気です。エイズ発症期になると免疫力の低下により、感染力が弱い病気も簡単に発症するのです。

HIV感染有無の確認方法

HIVの感染初期は風邪のような症状しか出ず、感染が分かりにくい特徴があります。誰でも感染する可能性があり、「知らない間に他人に移していたら」と考えると心配になるでしょう。そのため、新しい恋人ができたときや風邪のような症状が出た場合は、検査を受けることをおすすめします。

HIVの検査は、「スクリーニング検査」と「確認検査」の2つです。スクリーニング検査で陽性の場合、確認検査を行います。

スクリーニング検査は、HIV感染の疑いがある場合に行う簡易検査です。スクリーニング検査は検査時間が早い代わりに、実際は陰性なのに陽性と判定されてしまう「偽陽性」が出る可能性もあります。そこで、陽性の場合は「確認検査」を追加で行い、間違った診断が起きないようにしているのです。

ここでは、これら2パターンのHIV検査を受ける方法について、無料・有料に分けて紹介します。

【無料】各保健所や自治体が行っている検査

HIVやエイズの診断は、保健所や自治体などのさまざまな公的機関で検査が可能です。

検査は主に保健所で受けられることが多く、無料・匿名で受けることができます。住所を提出する必要もないため、自分が住んでいる自治体以外でも検査が可能です。

自治体ごとに異なりますが、各保健所で検査ができる日が1ヶ月に1日ほど設けられています。日中と夜間で検査が受けられるため、近くの保健所の検査日を確認するとよいでしょう。

スクリーニング検査の場合は即日、確認検査まで行った場合は1週間ほどで結果の確認が可能です。

【有料】各医療機関が行っている検査

HIVやエイズの検査は、有料にはなるものの医療機関でも行うことができます。全ての病院で検査が受けられるわけではないため、県のホームページなどで受けられる病院を調べるとよいでしょう。

検査にかかる費用は病院によって異なりますが、5,000~6,000円ほどかかる場合が多いです。

医療機関では、なるべく即日で検査が受けられるような取り組みが進んでいます。そのため、病院が営業していれば、即日予約でその日に確認検査まで受けられる病院も多いです。確認検査を行う場合は、検査結果が分かるまで1週間ほどかかります。

HIVは完治するの?感染した場合の治療方法は?

HIVの怖いところは、免疫力が著しく低下することで、他の病気にかかりやすくなること。ウイルスに感染したことで、結果的に結核やがんなどを発症するケースも多くあります。

「死に至る」とも言われていたHIV感染ですが、感染してしまった場合完治は可能なのでしょうか。ここでは、HIV感染後の治療法について解説します。

現時点での医療技術では完全な除去は不可能

残念なことに、現在の医療技術では、HIVの完治は難しいのが現状です。研究は進んでいますが、現在行われている薬物治療では、ウイルスを完全に体内から消すことはできません。

ただ、治療薬を飲み続けることで、体の中でHIVが増殖するのを防いだり、エイズの発症を遅らせたりすることができます。

基本は「抗HIV薬」による薬物療法がメイン

現在のHIV治療は、「抗HIV薬による薬物療法」がメインです。

抗HIV薬にはたくさんの種類があり、血液検査などの結果から合うものを組み合わせて内服します。何種類もの薬を飲まなくてはならないわけではなく、最近では1日1錠でよいように、2~3種類の薬の成分がまとめられているものが主流です。

なお、抗HIV薬は、不定期に内服したり内服を中断したりすると、効果が無くなってしまいます。ウイルスが、薬に対し耐性を獲得してしまうためです。

抗HIV薬にはさまざまな種類がありますが、耐性が付いてしまうと薬の選択肢が少なくなってしまうため、治療がうまく進みません。HIV治療は、薬の内服を習慣化して継続することが必須です。

HIVを予防するには?

HIVの治療は、薬を生涯飲み続ける必要があります。完治は現段階では難しく、感染する前の予防が大切な病気です。最後に、HIVの予防法について紹介します。

一番重要なのは「性行為時にコンドームを正しく使用すること」

HIVの感染経路として最も多いものは、性行為です。

ウイルスは血液や精液、膣分泌液に多いため、それらが傷口や粘膜に接触しないようにする必要があります。そのため、性行為をするときには必ずコンドームを装着しましょう。

オーラルセックスの場合でも、精液が口に触れるのを防げるため、コンドームの装着は有効です。

加えて、コンドームを正しく使用することも大切。適切なサイズを選ぶことや、精子を溜める部分の空気抜きなど、使用方法を守って使いましょう。

血液から・母子間の感染予防も十分に可能

HIVは、血液によっても感染します。特に、他人の血液に触れる機会の多い医療従事者は、注射針の扱いには注意しましょう。また、違法薬物などの回し打ちはHIV感染以外のリスクも高い行為です。絶対にやめましょう。

さらに、母子感染を防ぐためには、「妊娠初期のHIV検査」や「抗HIV薬の内服開始」などが有効です。確実に対処をすることで、子どもに悪影響を及ぼすこともなく、HIVの感染を防げます。生まれてくる子どものため、妊娠が分かった段階で検査を受けておくとよいでしょう。

HIVリスクに曝される直前・曝された直後でも予防はできる

HIV感染は、治療だけではなく、抗HIV薬の内服で「予防」することも可能です。

「PrEP(プレップ)療法」と「PEP(ペップ)療法」の2種類があり、HIV感染リスクの「前」から薬を飲むのがPrEP療法、リスクに「曝された後」に薬を飲むのがPEP療法です。

実施タイミング適用
PrEP(プレップ)療法HIV感染リスクがある行為の前・風俗で働いている人・パートナーがHIV治療中で、感染のリスクが高い人・性行為の機会が多い人など
PEP(ペップ)療法HIV感染リスクに曝された後・性行為後に相手が感染者だと判明した人・性的被害にあった人・医療従事者で、針刺し事故にあった人など

PrEP療法は、性行為のありなしに関わらず、毎日薬の内服を継続します。PEP療法は緊急の予防方法で、性行為後、72時間以内に抗HIV薬の内服を開始し、約28日間内服を続けなければなりません。

これら予防法によって確実に感染を防げるわけではありませんが、正しく行うことによって高い予防効果を得ることができるでしょう。

まとめ

一度感染してしまうと、HIVは、現在の医療法では完全に体内から除去できません。そしてHIV治療を行わずにエイズを発症すると、免疫力の低下により死に至る恐れも十分あります。

ただ、以前は「死の病」とも呼ばれていたHIV感染ですが、現在では抗HIV薬を生涯服用し続けることで、免疫力の低下やエイズ発症を防げるようになりました。

とはいえ、HIV感染は未然に防ぐことが重要です。コンドームの着用や事前に検査を受けるなど、対策はたくさんあります。保健所では、HIVの検査を匿名・無料で受けることが可能です。少しでも不安を感じる場合は、まずは検査を受けるとよいでしょう。

HIVは予防と早期発見が大切です。生涯健康でいること、そしてパートナーのためにも、正しい知識を身につけ、適切な予防や治療を行いましょう。

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