梅毒は稀に血液感染する?感染経路や症状についても解説

2022年には日本国内の梅毒感染者が1999年の感染症法改正以降最大となり、大きく報道されました。梅毒はかつて死に至らしめる病として恐れられていましたが、現在では有効な薬剤が普及し、治療可能な感染症となっています。そんな梅毒ですが、血液感染するのかという疑問を抱いたことはないでしょうか。

今回は梅毒の感染のメカニズム、血液感染に関する実態を解説します。自分とパートナーの健康に役立つ内容なのでぜひ参考にしてください。

梅毒とは

時折メディアでも報じられる「梅毒」とは、どのようなものでしょうか。ここでは、性感染症である梅毒について原因や感染経路、潜伏期間、主な症状を解説します。

原因

梅毒の原因は、梅毒トレポネ−マ(学名:Treponema pallidum)という螺旋状の細菌によるものです。直径が0.1〜0.2μm、長さ6〜20μmほどで、試験管での培養はできません。この病原体は粘膜や皮膚によって感染、血液を介して全身に広がっていきます。

「梅毒トレポネーマ」は湿度や温度の変化に弱く、低酸素の状態ではすぐ死滅する細菌です。空気感染はせず、ヒトのような宿主となるものに潜伏し、粘膜が接触するとヒトからヒトへと感染が拡大します。梅毒は、社会に影響を及ぼすものとして感染症法の5類に定められており、梅毒患者を診察したすべての医療機関の医師は1週間以内に保健所への届け出が義務付けられています。

感染経路

梅毒への感染経路としては、次のようなものが挙げられます。

・性交渉(性器と肛門、性器と口を含む)

・母子感染

・梅毒陽性者の新鮮血輸血

上記に加えて、性行為に準じた行為(オーラルセックス、キス、アナルセックスなど)でも感染する可能性があります。なお性交渉では、男性が梅毒の陽性者だった場合でも、女性が陽性者だった場合でも、発症の確率は約30%といわれています。また、オーラルセックスの発症確率は、約15〜20%です。

潜伏期間

梅毒は感染後、約1週間から13週間の潜伏期間を経て発症します。感染初期は感染力も強く、梅毒陽性者との性交渉では、約30%の確率で相手に梅毒がうつる恐れがあります。放置すると死に至る恐れがある感染症であるため、早期から治療を開始することが大切です。初期症状が現れた際には、できる限り早く病院を受診するようにしましょう。

症状

梅毒は時期ごとに臨床症状が異なり、4段階に分けて名称が決められています。何も治療を行わなかった場合、最悪死を招く恐れのある病気です。それぞれの段階について見ていきましょう。

第Ⅰ期(初期症状)

梅毒を発症すると、平均して3週間ほどで症状が現れます。感染から3週間~3ヶ月は第Ⅰ期と呼び、初期硬結といわれる硬いしこりが陰部や口腔内に生じます。性別ごとの具体的な症状は、以下の通りです。

・男性

亀頭や陰茎、冠状溝(亀頭と陰茎の間の部分)、性器周辺の皮膚に硬いしこり(初期硬結)が生じる。

・女性

膣内、大陰唇・小陰唇周辺の皮膚に初期硬結を生じる。

・男女共通

鼠径部や首の頸部リンパ節の腫れ(無痛性横痃)、唇・口腔内に初期硬結が現れる。

しこりは痛みを伴わない場合があるため、目立たない部位にできると気づかないこともあります。硬性下疳やリンパ節の腫れは放置した場合でもやがて軽快に至りますが、梅毒自体は治っていません。この時期に性行為を行えば、相手の方に梅毒をうつす確率が高まります。

第Ⅱ期(感染後3ヵ月~3年)

感染から1~3ヶ月が経過すると、梅毒の原因である梅毒トレポネーマ菌が血液を介して全身に広がっていきます。ほとんどの症例はこの第Ⅱ期までに治療が開始され、後述の第Ⅲ期へと悪化することはほぼありません。

第Ⅱ期の具体的な症状として、バラ疹(ばらしん)というバラの花に似た淡い赤い色の発疹が手のひらや足裏などに出てきます。この発疹自体は、数週間程で自然消滅することも第Ⅱ期の特徴です。この時期には扁平コンジローマや脱毛も生じ発熱や倦怠感、筋肉痛なども起こします。

第Ⅲ期(感染後約10年以上)

感染から10年以上経過すると、第Ⅲ期へと進み全身に多彩な異常をきたします。第Ⅲ期梅毒の病態には以下の3種類があり、普通の生活がほぼ困難な時期といわれています。最悪の場合死にいたります。

・良性の第三期梅毒

感染から3~10年で「ゴム種」と呼ばれる柔らかいゴム状のゴム状の腫瘤(こぶ、固まり)が頭皮や顔面、体幹の上部、脚などにできます。ゴム腫は、周囲の細胞を破壊するほか、骨にできると激しい痛みを伴うのが特徴です。

・心血管梅毒

感染から10~25年ほどで大動脈など心臓へつながる血管に感染が広がります。心臓に血液を供給する血管が細くなり、心不全を起こして死亡することもあります。

・神経梅毒

神経梅毒は、脳や脊髄を侵し、「進行麻痺」「脊髄ろう」といった症状を引き起こします。加えて、髄膜炎や麻痺、排尿障害錯乱といった深刻な精神障害も生じます。

梅毒はどのように血液感染するのか

梅毒の血液感染は、「妊娠中女性による胎児感染(先天梅毒)」や「輸血」のいずれかで起こる可能性があるといえます。

・妊娠中女性による胎児感染(先天梅毒)

妊娠中の女性が梅毒を発症した場合、適切な投薬治療を受けても、母体の血液を介して母子感染する恐れがあります。母子感染の確率は約14%とされており、梅毒を治療せず、妊婦検診も受けなかった場合は約40%の確率で感染するといわれています。

有効な予防策としては、妊娠8~12週の妊婦検診を必ず受け、検診後も気になることがあれば速やかに医療機関に相談しましょう。

・輸血

過去に、東大病院の婦人科で梅毒陽性者から輸血を受けた女性が梅毒を発症した事例があったため、輸血でも感染する可能性はゼロではないとされています。しかし、日本国内の医療体制は患者が感染性疾患を患っているかによらず、徹底した安全対策が講じられています。

梅毒の検査はどこで受けられるのか

梅毒を含む性感染症への感染が疑われる場合には、どこで検査できるのかを分かっておくと安心です。自覚症状の有無によらず、心当たりがある場合は一度相談しておくようにしましょう。

梅毒の検査を受けるには

梅毒を含む性感染症への心当たりがある場合、検査を受ける先の選択肢は次の通りです。

・保健所(各自治体)

・婦人科

・泌尿器科

・性病科

保健所は、無料かつ匿名での検査が可能です。しかし、保健所では梅毒や淋菌、クラミジア、HIVに検査項目が限られます。また、検査が受けられる日も少ないのが難点です。医療機関は有料ですが、さまざまな検査をまとめて受けられ、治療が必要な場合もスムーズに対応してもらえます。

梅毒の検査の流れ

梅毒が疑われる場合、パターン別に以下のような流れで検査、治療が開始されます。

(1)粘膜、粘膜皮膚移行部、皮膚に発疹(びらん・潰瘍・硬結・粘膜斑など)を認める場合

浸出液のPCR検査を行い、陽性の場合活動性梅毒として治療開始

(2)粘膜、粘膜皮膚移行部、皮膚に発疹(びらん・潰瘍・硬結・粘膜斑など)を認める場合/皮膚の発疹(紅斑、丘疹)がある場合/皮膚以外の臓器に病変が疑われる場合

梅毒トレポネーマ抗体検査もしくはRPR検査を実施。病歴や梅毒トレポネーマ抗体、RPRから活動性梅毒とされる場合に治療開始

(3)各種検査やルーチン検査(健康な患者に対するほかの病態との鑑別目的で行う)で梅毒トレポネーマ抗体陽性の場合

病歴や梅毒トレポネーマ抗体、RPRから活動性梅毒とされる場合に治療開始

梅毒の検査方法

梅毒の検査方法には、次のようなものがあります。

・非トレポネーマ脂質抗体(RPR)、梅毒トレポネーマ抗体(TPHA)の定性検査

・STS(梅毒血清検査)

・TPHA(TP血球凝集反応)

・FTA-ABS(トレポネーマ蛍光抗体吸収検査と代表的なTP抗原法)

この他に遺伝子を増幅させて検出する検査方法であるPCR検査(保険適応外)なども行うケースがあります。梅毒の場合、感染が疑われる機会があった日から4週間以上経てば検査が可能です。医師の診察の上STS(梅毒血清検査)で「RPR(非トレポネーマ脂質抗体)」と「TPHA(梅毒トレポネーマ抗体)」の有無(定性検査)が行われます。検査結果の見方は次の通りです。

RPR(非トレポネーマ脂質抗体)TPHA(梅毒トレポネーマ抗体)判定
(+)(+)梅毒に感染
(+)(-)初期感染の疑い擬陽性の可能性
(-)(+)梅毒の治癒後擬陽性の可能性
(-)(-)感染していない

梅毒の治療方法

梅毒の治療法は、ペニシリン系の抗菌薬(抗生物質)が中心です。現時点では、以下のいずれかの方法で治療が行われます。

・アモキシシリン 1 回 500mg を1日3回、4週間投与

・ベンジルペニシリンベンザチン水和物(ステルイズ®)1回臀部筋注

※後期梅毒(感染から1年以上経過)の場合、毎週1回のペースで3回筋注

ベンジルペニシリンベンザチン水和物は、2022年1月26日に発売が開始された梅毒治療薬です。適応されるのは「早期梅毒」「後期梅毒」「早期先天梅毒」で神経梅毒には使えません。内服治療の場合、実際の投与量や期間は医師の判断に従いましょう。陽性患者は治療中の性行為は避けるほか、パートナーの梅毒陽性を考えてともに治療を受けるのが安全です。

また、薬剤投与後の効果判定も忘れず受けましょう。治療開始から約4週間おきに梅毒の指標であるRPRと梅毒トレポネーマ抗体を同時測定し、治療前に比べて優位に低下していれば治癒と見なします。また、経過が順調の場合でも、その後3ヶ月、6ヶ月後も検査を受けることが推奨されています。

梅毒の予防方法

梅毒の予防方法としては、性交渉時のコンドームの適正使用が推奨されています。しかし、コンドームを使えば100%予防できるわけではありません。皮膚や性器周辺に違和感がある場合は性交渉を控え、速やかに医療機関を受診しましょう。

また、先天梅毒による胎児の発症を防ぐためには、梅毒の検査も行う妊婦検診が最適です。ただし、検査後の性交渉で梅毒に感染する場合もあります。何か疑われるような症状があれば医師に相談しましょう。

一度梅毒にかかるとその後の健康診断などで梅毒の検査に引っかかることもあります。この場合は、適切な治療が終了しており、抗体価がある程度低下していれば問題ありません。

まとめ

今回は近年日本国内でも患者数が増加している梅毒に注目し、症状の進行や感染原因、有効な治療法を中心に解説しました。発症しても痛みや症状を感じない無症候性のケースもありますが、放置しても梅毒は治らないことは覚えておきましょう。必ず防止できる感染症ではありませんが、普段からコンドームの使用を徹底したり、違和感がある場合はすぐに検査したりすることが大切です。

医療機関へ行くのが難しい方は自宅で検査できる「FemCHECK」がおすすめ

医療機関へ行くのが恥ずかしい、忙しくて病院へ行く時間が確保できない方はFemCHECKで自宅で簡単に性病の検査ができます。

FemCHECKは婦人科医が作った、自宅で検査ができる郵送の性病検査キットです。

結果が陽性であった場合は、オンライン診療で診察からお薬の処方まで自宅で完結させることが可能です。

おりものの異常がある、性病の心配がある方は一度検査してみることをお勧めします。

以下のバナーから注文することができます。時期によっては品薄になる場合があるのでご注意ください。