【医師監修】疥癬(かいせん)とは?原因から症状、予防策を徹底解説!

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

皮膚感染症の1つである疥癬(かいせん)。身近な方で「疥癬(かいせん)」の疑いがあったら、感染を広げないためにどうしたらよいのか。また、自分自身が「疥癬」かどうか、そして家族にうつしてしまったらどうしようか心配になりますよね。

本記事では、疥癬の原因から症状そして予防策まで解説いたします。

疥癬(かいせん)とは?

疥癬とは、ヒゼンダニという小さなダニが皮膚に寄生することが原因で起こるアレルギー反応のことです。主な症状は皮疹などの皮膚症状とかゆみです。年間の患者数は8万〜15万人と予想されています。また、一口に疥癬といっても「通常疥癬(つうじょうかいせん)」と「角化型疥癬(かくかがたかいせん)」の2つに分かれています。

ヒゼンダニは皮膚の表面や角質層に生息

ヒゼンダニは成虫でも0.3〜0.4 mmと非常に小さい卵形のダニで、肉眼では見ることはできません。人の皮膚はこのヒゼンダニにとって非常に過ごしやすい環境です。人に寄生すると、メスの成虫は皮膚の最も表面である角質層にトンネルを掘り、そこで卵を産みます。卵は3〜5日程度で孵化します。

卵からかえった幼虫は脱皮を行いながら10〜14日間で成虫となって皮膚の表面を歩き回ります。成虫のヒゼンダニの寿命は4〜6日程度ですが、その間に更なる繁殖を行います。このようにヒゼンダニは皮膚の表面だけでなく、角質層という皮膚の表層内にも生息しています。

なお、ヒゼンダニは温度変化に弱い生き物です。人肌温度以下では動きが緩やかになり、16℃以下ではほとんど動きません。さらに熱にも弱いため、10分間程度50℃の高熱による加熱を行うとヒゼンダニは死滅します。またに乾燥にも弱いため、皮膚から離れると2-3時間で死んでしまいます。

疥癬のかゆみの原因と潜伏期間

ダニが皮膚の表面を歩き回っていると聞くだけで、なんだかかゆくなってしまいますよね。疥癬はかゆみが主症状の病気ですが、かゆみの原因はヒゼンダニが表面を歩くことではありません。感染によりヒゼンダニが増殖すると、ヒゼンダニの脱皮した殻や、排泄物、そしてヒゼンダニそのものに対して身体がアレルギー反応を起こします。このアレルギー反応によって、夜間特に強く感じるかゆみが出現します。

疥癬ではどんな症状が出るの

疥癬には主に2種類の分類があります。「通常疥癬」と「角化型疥癬」です。角化型疥癬はノルウェー型疥癬、痂皮型疥癬などとも呼ばれることがあります。それぞれの特徴と症状を解説します。

通常疥癬の症状

通常型疥癬はヒゼンダニの感染数が比較的少ない疥癬の型です。健康な成人の場合、メスの成虫ヒゼンダニの寄生数が5 匹以下の方が多いとされています。なお、ステロイドや免疫抑制剤投与中の患者や悪性腫瘍や糖尿病、透析中の患者、高齢者などの免疫力が低下している方は、通常型疥癬であっても比較的寄生数が多いといわれています。

通常疥癬でみられる皮疹は3つに大別されます。

  • 疥癬トンネル:
    指の関節の曲げる側、手のひら、指の間、指の側面などにみられる、疥癬特有の皮疹です。メスのヒゼンダニが産卵しながら、表皮の角質層という部分を掘り進んでいる道筋そのものです。白っぽく見える線状の皮疹として見えます。
  • 激しいかゆみを伴った紅斑性丘疹:
    臍部や腹部、胸部、脇の下、太ももの内側、上腕の曲げる側などに散財する赤く盛り上がった皮疹です。アレルギー反応による症状として出現するため、この皮疹の部分からヒゼンダニが検出することは稀です。かゆみは夜間に特に強く、寝れないこともあります。
  • 主に男性の外陰部にみられる小豆程度の大きさのできもの:
    脇の下や肘の先、お尻にも見られることがあります。色は赤褐色で、激しいかゆみを伴います。アレルギー反応の症状のため、ヒゼンダニが見つかることは少ないものの、できもの(結節)ができたばかりの時にはヒゼンダニがみつかることもあります。

そのほかにも水膨れや膿が入った皮疹が出現することもあります。

角化型疥癬の症状

角化型疥癬は感染しているヒゼンダニの数が非常に多いタイプの疥癬です。全身衰弱者や重篤な基礎疾患を有する方、ステロイドや免疫抑制剤を投与しており、免疫力が低下している方や高齢者に発症します。

角化型疥癬は、

  • 皮膚が灰色から黄白色でざらざらと厚くなることがある
  • 全身の皮膚が赤く腫れることもある
  • 通常型疥癬では発症しない頭や首、耳などの部位を含む全身に発症する

などの症状を伴い、通常型疥癬と区別されます。

角化型疥癬に感染していると他の細菌に感染したり、腎不全を起こしたりして、命に関わることもあるため、早期の治療が必要です

疥癬の感染経路と対策

疥癬の感染経路は肌と肌との直接の接触です。通常疥癬の場合は感染力が高くないため、過度の対策で疲弊しないことが重要です。角化型疥癬の場合は、寄生しているヒゼンダニが多いことから特別な対策が必要となります。

通常疥癬の感染経路

通常疥癬の場合は、患者さんに寄生するヒゼンダニの数は少なく、また人から離れたヒゼンダニは長時間生きられないことから、感染する可能性がある経路は主に下記の通りです。

  • 一緒に寝る
  • 長時間手をつなぐ
  • 感染者が使用した布団を使用する

このような通常疥癬は濃厚な接触をしなければ感染しません。なお、衣服等から感染することもありますが稀です。犬や猫などの動物からの感染も報告されていますが、こちらも滅多にありません。

角化型疥癬の感染経路

角化型疥癬では多くのヒゼンダニが患者に存在しているため、直接的な接触をしなくても感染することがあります。そのため、短時間の接触や衣類、リネンなどの間接的接触を解して感染が拡大し、集団感染を引き起こすことがあります。

同じ集団内に数ヶ月以内に2人以上疥癬感染者が出た場合は、角化型疥癬を感染源とした集団感染を疑う必要があります。集団感染の場合は、角化型疥癬の患者さんを探し、治療を開始する必要があります。

各疥癬への対策法について

通常疥癬と角化型疥癬では対策方法が大きく異なります。

通常疥癬角化型疥癬
入浴同居人より後に入る 同居人より後に入る
浴槽を流す
脱衣所は掃除機をかける
殺虫剤の散布不要必要(ピレスロイド系殺虫剤)
掃除通常通りモップや粘着シートの後に掃除機
布団の消毒不要必要
シーツ・寝具・衣服の交換通常通り治療のたびに交換
洗濯通常通り以下のいずれかを行う:
乾燥機の使用
熱湯消毒後に洗濯
殺虫剤噴霧後に洗濯
予防治療同室で雑魚寝状態の場合は要検討同室者は予防治療が必要。その他は接触頻度と密度に応じて要検討

※疥癬診療ガイドライン2015を基に記載

疥癬の検査方法

疥癬の診断は主に疥癬トンネルや赤いブツブツ(丘疹)からヒゼンダニを採取し、顕微鏡で観察する顕微鏡検査で行います。通常疥癬の場合は、ヒゼンダニが必ずしも検出できるとは限らないので、数回検査をする場合があります。角化型疥癬の場合は、ヒゼンダニが多数いるため、角質の顕微鏡検査ですぐに検出できます。

疥癬の治療法

疥癬の治療は原因であるヒゼンダニを殺虫することです。主な治療薬は飲み薬と塗り薬です。飲み薬ではイベルメクチンという薬を服用し、国民皆保険で治療が可能です。塗り薬は、フェノトリン(製品名:スミスリンローション)、クロタミトン(製品名:オイラックス)や、イオウ剤、安息香酸ベンジルなどを首から下の全身に塗ります。

患部以外にも塗る理由としてはヒゼンダニが移動するためです。症状が現れている部分の殺虫と、症状の範囲が広がることを防ぐ目的があります。イオウ剤、クロタミトン、安息香酸は全身に塗ってから24時間以上、フェノトリンは12時間以上経過してから入浴やシャワー等で洗浄します。

疥癬の治療薬を長期間投与し続けたり、過剰投与を行ったりしていると、薬剤に抵抗性のあるヒゼンダニが出現する可能性があるため、医師の指示を守ってお薬を使用してください

疥癬の予防法 

角化型疥癬が発見され、同じ施設で集団感染が発生している場合は、まだ感染が発覚していなくてもイベルメクチンを服用していただく場合もあります。疥癬は潜伏期間が長く、感染初期の検査では見落とすことも少なくないためです。

またご自身が疥癬の疑いがある場合は、感染していない家族と同じ寝室で寝るのは控えてください。家族への感染が疑われる場合は、皮膚科医に相談してください。

まとめ

  • 疥癬は、ヒゼンダニというダニが皮膚に住み着くことが原因で起こる感染症です。通常疥癬と角化型疥癬の2種類があります。
  • 通常疥癬の場合はあまり神経質にならず、過度の対策を行う必要はありません。しかし、角化型疥癬の場合は、集団感染が発生する可能性がありますので、徹底的に接触を防ぎ、即座に治療を開始してください。
  • 疥癬の治療にはイベルメクチンやフェノトリンなどの薬が有用です。

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参考文献

 国立感染症研究所

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/380-itch-intro.html

疥癬診療ガイドライン(第3版)

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/kaisenguideline.pdf

疥癬診療がイドライン(第3版追補)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/128/13/128_2791/_pdf/-char/ja