梅毒は自然治癒しない性感染症ですが、適切な治療を行えば完治します。自分やパートナーの身を守るためにも、梅毒の正しい知識や対策が必要です。この記事を読めば、梅毒の感染経路および初期症状、治療や予防法がわかります。梅毒の感染に心当たりがある人や、今後の感染に不安を感じる人はぜひ参考にしてください。
梅毒とは?
梅毒とは、いったいどのような病気なのでしょうか。まずは梅毒の概要を知り、感染経路を把握しましょう。
梅毒とは、世界的に広がっている性感染症の一種です。症状として赤い発疹がみられ、その様子が楊梅に似ていることから梅毒と名付けられました。以前は不治の病とされていましたが、現在では薬物療法にて完治が可能です。
治療を行わず放置すると、長期に渡って心臓や脳などに深刻な病変が起き、命に関わってきます。無自覚のまま症状が進行し、周囲へも広まりやすいため、早期発見が重要です。
梅毒に感染する原因
梅毒の原因は、梅毒トレポネーマ(学名:Treponema pallidum)というらせん状の細菌です。
梅毒トレポネーマが粘膜や傷口から入り込むことによって、梅毒に感染します。
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梅毒の感染状況
梅毒の感染者数は近年急激に増えており、厚生労働省より注意喚起がなされています。過去にはたびたび減少した時期もありましたが、2022年は10年前の約12倍の感染者数が確認されました。2021年以降から大幅な増加がみられ、2022年10月下旬には男女総計で1万以上の感染報告が上がっています。
参考:厚生労働省
2021年・・・第1~52週2022年10月8日時点集計値(暫定値)
2022年・・・第1~44週2022年11月9日時点集計値
急増している感染者の内訳は、特に20代の若い世代が中心です。各自が梅毒への理解を深め、感染予防や対策を意識する必要があります。
梅毒の感染経路
梅毒の主な感染経路は、性交渉やそれに近い性的接触です。病原体である梅毒トレポネーマを含んだ感染者の体液が、粘膜および皮膚を介して他者へ侵入することで感染します。
具体的には、以下のような性的接触が梅毒の感染経路となります。
- 膣性交…性器と性器
- 口腔性交…口と性器
- 肛門性交…肛門と性器
- 飲精行為…精液を口に含む、および嚥下
梅毒トレポネーマの自然宿主はヒトが唯一であるため、感染経路は基本他者との接触のみと限定的です。精液や腟分泌液といった体液が傷口に触れることでも、梅毒の感染が広がります。
梅毒の感染確率
わずかな性的接触でも感染してしまうほど、梅毒トレポネーマは感染力が強い菌です。1回の性行為における梅毒の感染確率は約15~30%と言われています。
多数の相手と性行為に及べば、梅毒の感染確率もそのぶん上がります。しかし、たとえパートナーが1人のみであっても、感染の可能性があることには変わりません。性的接触を行うのなら誰にでも、梅毒に感染するリスクが生じます。
感染経路に心当たりがない場合
梅毒の主な感染経路は性行為ですが、パートナーがいないときなど、心当たりがない人も発症することがあります。ごく稀なケースとして、多数の梅毒トレポネーマが繁殖した物へと、傷のある手で触れたことによる感染報告が実際に見られました。
たとえ心当たりがなくても、性行為以外の場面でも梅毒に感染する可能性があることを知っておきましょう。他にも感染経路としては稀なケースを紹介していきます。
唇や口内が梅毒に感染しているケース
唇や口内が梅毒に感染している場合、キスも感染経路になりえます。
以下のような口周辺にも、梅毒トレポネーマが含まれている可能性があるためです。
- 口内の粘膜
- 唇
- 唾液
しこりが発生していても、大半は痛みを伴いません。口付近の感染だと、無症状でのキスで相手へ病原体を移してしまいがちです。梅毒は、くしゃみや咳による飛沫感染はほぼありません。ただし、傷口や粘膜へ至近距離で感染者の飛沫がかかった場合などは、ごく低確率ながらも感染が警戒されます。
感染者と物を共有しているケース
食器やタオルなどを感染者と共有する際の梅毒の感染確率は、極めて低いといえます。梅毒トレポネーマは体外に出ると数時間で死滅することから、触った物を介しての他者への感染はほぼ起こらないためです。
しかし、物からの感染の可能性がまったくないとはいえません。手指や口内に傷のある時期は、他者の唾液や体液が付着した物の共有は避けるべきです。
共用の施設などを利用しているケース
物の共有と同様に、梅毒はこれらの共用施設の利用による感染リスクも非常に低いです。
- サウナ
- プール
- 温泉
- トイレ
梅毒トレポネーマは熱に弱い菌であり、日常生活ではまず感染することがないとされています。ただし、他者の感染箇所が触れたばかりのバスチェアやトイレの便座へそのまま座ってしまうと、感染リスクはゼロとは言い切れません。
公共の入浴施設やトイレを利用する際には、椅子の座面を洗い流すなりシートで拭くなりの予防対策をしましょう。
番外編:母子感染
妊娠中の女性は、梅毒に感染すると特に危険です。出産時のリスクに加えて、胎盤を通して胎児にも梅毒が感染する「先天梅毒」も起こりうるためです。
- 出産時のリスク
- 早産
- 低出生体重児
- 流産
- 死産
先天梅毒は、乳児に発症する時期によって早期と晩期に分類されます。無症状な乳児も多いものの、発生する可能性のある症状は多岐に渡ります。
発症する時期 | 症状 |
早期先天梅毒 (生後3ヶ月以内) | 水疱性発疹斑状発疹丘疹状の皮膚症状全身性リンパ節腫脹肝脾腫鼻閉知的障害 |
早期先天梅毒 (生後8ヶ月以内) | 骨軟骨炎四肢の仮性麻痺 |
晩期先天梅毒 (生後約2年以降) | ゴム腫性潰瘍脛骨のサーベル状変形骨膜病変角膜実質炎内耳性難聴歯の形成異常 |
胎児への梅毒の感染を防ぐには、妊娠初期での検査と治療がとても大切です。
母子感染の確率
梅毒の母子感染の確率は、妊娠中の早期治療で下げることが可能です。未治療のまま出産する場合の母子感染の確率は、母親の症状ステージによって変動します。
母親の症状段階 | 母子感染の確率 |
第1期または第2期梅毒 | 約60~80% |
潜伏期間または第3期梅毒以降 | 約20% |
妊娠中の女性が早期に梅毒の治療を行えば、母子感染は避けられます。ただし、出産の4週間前までに治療をしていないと、胎児への感染を確実に防ぐことはできません。母子ともに身を守るため、妊娠初期での早期発見および治療が大切です。
梅毒の症状
梅毒には第1期から第4期までの、進行状況に応じた症状のステージがあります。まず梅毒の潜伏期間は、約3~6週間、平均21日程度です。そこから早期顕症梅毒として、第1期梅毒と第2期梅毒があります。
さらに晩期顕症梅毒には、第3期梅毒と第4期梅毒になり、第4期まで到達してしまうと、梅毒の末期症状です。発症後の経過によって、以下のような症状が順に現れます。
第1期梅毒(感染後から約3週間~3か月)
初期硬結として、陰部や口唇など、感染した箇所に小豆~指先大ほどのしこりができます。中心部が硬く、不自然に盛り上がっていることが特徴です。
また、硬性下疳(こうせいげかん)と言われる初期硬結の中心部に出現する浅い潰瘍が発生します。これは赤く硬い丘疹が、急速に潰瘍となったものです。他にも鼠径部や頸部など、感染部位周辺のリンパ節の腫れが現れます。また、この腫れに痛みはありません。
これらの症状は治療をせずとも自然に軽快しますが、水面下では病気が進行していきます。痛みを伴わない場合が多く、自覚症状が薄いため、他人にも感染させてしまいやすい時期です。
第2期梅毒(感染後から約3か月以上経過)
第2期梅毒では梅毒トレポネーマが血液に流れ、全身へ移行してはあらゆる症状が出現します。
第2期梅毒でよくみられる主な症状は以下です。
名称 | 症状 |
梅毒性バラ疹 | バラの花に似た赤色の発疹が全身に発生発生箇所は手のひら・足の裏・体幹部など痛みはない |
梅毒性粘膜疹 | 口唇や口腔内の粘膜が炎症 |
梅毒性脱毛 | 頭髪や眉毛・まつ毛が抜ける |
扁平コンジローマ | 陰部などに平らなイボが発生 |
梅毒性アンギーナ | 喉や扁桃腺の腫れ・赤らみ・ふやけ |
梅毒性爪炎(そうえん)・爪囲炎(そういえん) | 爪やその周囲に白斑発生・不透明化 |
梅毒性白斑(はくはん) | 皮膚の一部が白くなり、網目状化 |
膿疱(のうほう)性梅毒 | 手の甲や足裏・体幹に膿んだイボが発生 |
梅毒性乾癬(かんせん) | 湿り気を帯びた発疹が足裏や手掌に発生 |
丘疹(きゅうしん)性梅毒疹 | かゆみのない赤褐色の丘疹が全身に発生 |
また、他の病気と間違えやすい症状がいくつかあるため、注意が必要です。
第2期梅毒での風邪に似た諸症状
第2期梅毒ではそのほかにも、風邪のような以下の症状が全身にみられることがあります。
- 発熱
- 倦怠感
- 頭痛
- 喉の痛み
- 筋肉痛
- 全身リンパ節の腫れ
- 食欲減退
- 体重減少
第1期梅毒と同様に、これらの第2期の症状も自然に消失しますが、完治したと誤認するのは危険です。ここまでの時点で治療をせず放置してしまうと、梅毒の症状は次の第3期へ移行します。
第3期梅毒(感染後から約3年~10年以上経過)
第3期梅毒の症状は、感染から10年以内に適切な治療を受けていない3分の1程度の人が発生するといわれています。第2期までのものとは様相が異なり、ゴムのような腫れものが皮膚のみならず粘膜、骨、臓器など全身に出現するようになります。ゴム腫は周辺の組織を破壊し、深い潰瘍となるため注意が必要です。
適切な治療を受けていれば、重い病気にはかかりません。しかし、放置してしまうことで目や脳、神経などにも悪影響を及ぼします。また、鼻の骨付近にできたゴム腫は「鞍鼻(あんび)」と呼ばれ、鼻の欠損を引き起こす恐れがあるため、第3期まで進行させないようにしましょう。
第4期梅毒(感染後から約10年以上経過)
第4期までステージが進行してしまうと、日常生活も困難なほど末期の状態です。
心臓血管系や中枢神経系がおかされ、以下のような深刻な症状に陥ります。
症状 | ||
心血管梅毒 | 冠状動脈の狭窄 | 心臓へ血液を送る血管が狭まってしまう |
大動脈瘤の発生および大動脈破裂 | 心臓発作や心不全を引き起こし、死に至る危険がある | |
晩期神経梅毒 | 進行麻痺 | 精神や認知機能に下記のような障害が起こる発音の不明瞭痴呆記憶障害思考力の低下妄想 |
脊髄癆(せきずいろう) | 歩行障害排尿障害 |
梅毒は早期に治療を行えば無事に完治しますが、第4期まで進行してしまうと、脳や大動脈などに後遺症が残ります。
損傷してしまった臓器を元通りに治すことは不可能なため、末期へ至る前にすみやかに治療を受けるべきです。
末期症状について
梅毒は、かつては「感染したら死に至る病」と恐れられていた病気でした。しかし現在では医療が進歩し、抗菌薬であるペニシリンが普及したおかげで、薬物治療で完治させることが可能です。
現代における梅毒は、1期・2期の時点で治療されるケースが大半となっています。また、3期・4期まで症状が進行する事態はほぼないのが現状です。
しかし、長年梅毒の症状がみられない「無症候性梅毒」の場合は、感染に気が付かないまま末期症状まで進行してしまっている危険性があります。梅毒への感染に少しでも心当たりや不安がある人は、早めに検査を受けましょう。
梅毒を治療するには?
梅毒に感染した場合、早急な治療が何よりも必要不可欠です。早い段階で治療を終えれば、後遺症を残さずに完治させることができるためです。まずは検査を行い、治療法については医師の診断を仰ぎましょう。早期発見のためにも、梅毒の検査および治療への積極的な姿勢が各自に求められます。
梅毒の検査はいつから?
梅毒の検査は、感染機会から4週間以上が経過すれば受けることができます。
感染の疑いがみられたら、検査が可能な時期を迎え次第すぐに申し込みましょう。
【検査の方法】
梅毒の検査は、下記のような形式にて実施します。
- 医療機関での検査
- 血液検査 (抗体検査)
- 採取した検体を顕微鏡で観察
- PCR検査
- 一部地域の保健所での検査 (匿名・無料)
- HIVとの同時検査が条件
- 郵送による検査 (匿名)
- 検査キットの取り寄せ
検査キットは自宅にいながら検査できるため、病院での検査に抵抗がある人でも利用しやすい方法です。いずれの検査もプライバシーに配慮されていますので、自身に合った方法をお選びください。
梅毒の治療方法
梅毒の治療には、主にペニシリン系の抗菌薬が用いられます。抗菌薬の投与の方法は、病期などから医師が判断したうえで、下記のいずれかに分かれます。
- 内服治療
国内で一般的に行われてきた治療法で2~12週間、抗生物質を1日3回服用します。
- 筋注製剤
世界標準の梅毒治療薬「ベンジルペニシリンベンザチン」を腰または臀部への筋肉注射を1回のみ実施します。
- 点滴
入院を伴う点滴による治療法で、下記の条件で用いられます。
- 神経梅毒の場合(筋注製剤が適応されないため)
- 感染者が妊婦の場合(母子感染を極力防ぐため)
梅毒を治療する際の注意点
梅毒に感染したら、完治するまでしっかりと治療を続ける必要があります。症状が消失したかのように見えても、梅毒トレポネーマは着実に感染者の身体を蝕んでいくためです。梅毒は通称「偽装の達人」といわれています。症状が多種多様で、他の病気と似た部分が多い病気です。医師でも判別が難しいため、自己判断をしないようにしましょう。早急な完治を目指すために、梅毒の治療にあたって注意すべき点をお伝えします。
梅毒は自然には治らない
梅毒には一時的に症状が治まる時期がありますが、自然治癒はしません。梅毒は進行性の病気であり、治療しなければ体内の病原体が消滅しないためです。
多彩な症状が現れては軽快を繰り返す特徴から、自己判断で治療をやめてしまう感染者も少なくありません。治療をせずに放置すると、次のステージまで症状が進行するうえ、周りの人々へも感染を拡大させてしまいます。
症状が消えたからといって治ったとは思い込まず、検査や治療を受けることが大切です。
自己判断で治療をやめない
梅毒の治療を始めて症状が緩和されたとしても、自己判断で治療をやめてはいけません。完了前に治療を中断してしまうと、以下のような危険な展開を招きます。
- 完治が遠のく
- 気付かないうちに梅毒が進行
- 末期症状へと到達
内服治療の場合は、各自の病期などを考慮したうえで医師が服用期間を定めています。医師の指示には必ず従い、完治するまでは通院や検査を続けましょう。
梅毒は一度感染しても免疫が付かないため、何度でも感染するリスクがあります。過去に梅毒に感染して完治した経験があっても、ふたたび疑わしい症状が出たならば再感染の可能性が濃厚です。「以前うつったからもうかからない」と決めつけずに、早めに検査を受けてください。
梅毒の感染予防とは
梅毒の感染予防策には、性行為におけるコンドームの適切な使用が挙げられます。梅毒を引き起こす梅毒トレポネーマは、梅毒感染者の体液に含まれているためです。
下記のような感染者の体液を粘膜や傷口と直接接触させないことが、感染予防に繋がります。
- 精液
- 腟分泌液
- 唾液
- 血液
- 傷口からの浸出液
避妊の必要がない口腔性交や肛門性交においても、コンドームの使用で梅毒の感染リスクを減らせます。ただし、コンドームでは覆われていない部分から感染することもあるため、感染予防の確率は100%ではありません。
それでも、性行為を行う相手の人数を一人に減らせば、感染確率は最低まで抑えられます。パートナーは特定の個人に絞り、不特定多数の相手との性的接触は控えましょう。
まとめ
現代社会で感染の勢いを強めている梅毒ですが、早めに治療を行えば軽症で完治します。梅毒に対する意識をしっかりと持ち、コンドームを使用するなど感染の予防や対策を心がけてみてください。
もし感染してしまっても、早期発見と適切な治療によって、あなたもパートナーも救われます。また治療の際も症状がないからといって、自己判断で「感染していない」「治った」とは決めつけてはいけません。
感染の心当たりや不安があれば、パートナーとともに早めに病院で梅毒の検査を受けましょう。
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