- 川原正行
- ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医
1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構（PMDA）にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。
出産後は、悪露（おろ）といって出産時の出血や胎盤の名残が子宮から生理のように排出されます。だいたい1ヶ月ほど経つと通常のおりものになることが多いのですが、「いつまでたってもおりものが正常にならない」と心配で来院される方が一定数おられます。
この記事では、産後のおりものはいつまで黄色いのか、また産後のおりものが黄色いのは問題ないかなど、産後のおりものの基礎知識について解説します。
おりものとは
おりものとは、子宮や膣・外陰部から出る分泌物のことです。成熟した女性であれば誰にでもあるもので、古い細胞や老廃物と分泌物が混ざりあってできています。
おりものの役割は2つあります。一つめは、膣内部に雑菌の侵入を防いだり、膣内部をうるおして粘膜を守ったり、老廃物を輩出することで女性の体を守る役割です。もう一つは、妊娠しやすくするために精子を受け入れやすくする働きです。
一般的なおりものは透明～白っぽい液体ですが、おりものは女性の生理周期にあわせて量・色・状態が変化するのが通常であり、個人差も大きいです。
産後のおりものはいつまで黄色い？
産後のおりものが一時的に黄色くなるのは、一般的には産後2〜３週間くらいの時期が多いです。それを過ぎるとお産の前のような白っぽいおりものに戻ります。
産後のおりものは「悪露」
産後のおりものは「悪露（おろ）」と呼ばれ、通常のおりものとは異なる点が多いです。悪露とは、出産後の産褥期に子宮から出てくる分泌物のことで、出産時に残った血液や胎盤の一部が一緒に出てくることもあります。
悪露が見られる時期
悪露が見られるのは、産後1ヶ月程度が一般的です。生理と見分けがつきにくいこともありますが、一般的には産後1ヶ月以内の出血は悪露のことが多く、産後2ヶ月目以降の出血は生理のことが多いです。
悪露の変化
悪露は、時間経過とともにどんどん変化していきます。出産直後の悪露は生理のような赤い色をしていますが、およそ4、5日経つとくすんだ血の色へ、そして薄まった血の色（薄ピンク）を経て２週間を過ぎるころには黄色くなります。最終的には通常のおりもののような白色に戻ります。
もしも生理のような真っ赤な悪露が１週間以上続き、色が薄くなる感じが全くない場合は病院を受診しましょう。
悪露の対処法
悪露は、見かけは生理と同じように見えますが、中身は生理の出血とは全く異なります。悪露が長い時間会陰部（特に会陰切開部）につかないように、生理ナプキンは頻繁に取り替えましょう。最初は量が多いので、産褥パッドを利用しましょう。
また、悪露は雑菌が繁殖しやすいので、排便や排尿の後は前から後ろにふくようにしましょう。
産後のおりもので注意が必要な症状
産後のおりもので注意が必要な場合は、「おりものから異臭がする（おりものが臭い）」「おりものの色や形状がいつもと違う」「黄色いおりものがずっと続く」場合の3つです。
ここでは、それぞれについて詳しく説明します。
おりものから異臭がする
産後の悪露は、いつものおりものとはちょっと違う臭いがすることはあり得ます。明らかにすごく強い臭いがするおりものや、今まで嗅いだことがないような臭いのおりものの場合、膣や子宮の中で炎症を起こしている可能性があります。
また、イヤなにおいのするおりもので最も心配なのは、子宮頸がんや体がんなどの悪性腫瘍です。出産直後にがんが見つかることはそれほど多くありませんが、食欲が全然なくどんどん痩せるなど、おりもの以外の症状がある場合には念のため病院を受診しましょう。
おりものの色や形状がいつもと違う
悪露がいつまで続くかは、個人差が非常に大きいです。
早い方だと３週間程度で収まりますし、長い方だと2ヶ月くらい悪露が続くことがあります。したがって、産後のおりものが妊娠前と同じような感じにならなくても必ずしも異常ではないのですが、産後数ヶ月たっても明らかに妊娠前と違う、という場合は一度病院を受診しましょう。
特に、赤〜赤褐色のおりものが産後6週以上続いている場合は、産婦人科での診察が必要です。
黄色いおりものが続く場合
産後、悪露の時期が終わった後に黄色いおりものが続く場合には、膣または子宮に細菌などの感染が起こった可能性があります。デリケートゾーンのかゆみや排尿時の違和感など、黄色いおりもの以外の症状があれば、早めに病院を受診しましょう。
おりものが黄色くなる病気
産後の悪露以外におりものが黄色くなる病気としては、何らかの原因による膣炎が多いです。大腸菌などによる細菌性膣炎、閉経後の高齢者に多い萎縮性膣炎のほか、性感染症であるトリコモナス膣炎、淋菌感染症などが挙げられます。
膣炎のほか、子宮頸管炎や子宮内膜炎、卵管炎など女性器の炎症でもおりものが黄色くなります。性感染症であるクラミジアや淋菌が原因となることが多いです。これらの病気は不妊の原因となり得ますので、注意が必要です。
産後のおりものに違和感があれば病院へ相談
産後は、女性の身体が大きく変わる時期です。お産の疲れが取れないまま新生児の育児が始まり、疲労困憊となることも少なくありません。過労や授乳のための睡眠不足などにより免疫力が低下し、細菌性膣炎をはじめとした病気にかかりやすくなる時期でもあります。
産後、おりものに違和感があれば、病院に相談してみましょう。産後早期のうちは助産師さんにも色々と相談しやすい時期ですので、1ヶ月検診まで経過をみて良いのかどうかも含め、気軽に相談してみることをおすすめします。
まとめ
以上、産後のおりもの、悪露についての基礎知識を簡単にまとめるとともに、産後のおりものの異常や黄色いおりものについての解説を加えました。
産後1ヶ月以内の黄色いおりものは、他の症状がなければ心配ないことも多いですが、膣炎など別の病気にかかってしまった可能性も否定できません。自己判断せずに、病院に相談してみましょう。
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