妊娠検査薬でくっきりと陽性反応が出た後に出血した場合、自己判断はせず、産婦人科を受診することが最も重要です。その出血には、様子を見ても良いものから、命に関わる危険なサインまで、様々な可能性が考えられるからです。
この記事では、産婦人科医の監修のもと、陽性後に出血が起こる原因と、今すぐ病院へ行くべき危険な兆候の見分け方を具体的に解説します。
最後まで読めば、あなたの身に起きていることを正しく理解し、ご自身の体を守るために、冷静に次の行動を判断できるようになります。
【まずはチェック】すぐに病院へ行くべき危険なサイン

もし以下のサインが一つでも当てはまれば、産婦人科を受診してください。ご自身の体の安全を、何よりも最優先してください。
- 今まで経験したことのないような、冷や汗が出るほどの激しい腹痛がある
- 出血量が非常に多く、大きなレバー状の塊が出る
- 意識が遠のく、めまいや立ちくらみがひどい
- 肩に痛みを感じる

このチェックリストを見て、さらに不安になった方もいるかもしれません。ですが、大切なのはパニックにならず、ご自身の体を守るための正しい情報を得ることです。この記事では、一つずつ丁寧に解説していきますので、まずは深呼吸をして、一緒に確認していきましょう。

妊娠検査薬で陽性後に出血する4つの主な原因
妊娠検査薬で陽性が出た後に出血する理由は、一つではありません。まずは全体像を把握するために、考えられる主な4つの原因を見ていきましょう。
1.化学流産(生化学的妊娠)
陽性後の出血で、よく見られる原因の一つが「化学流産」です。これは、受精はしたものの、子宮内膜への着床が継続しなかった、ごく初期段階での流産を指します。
近年の妊娠検査薬は非常に高感度になったため、以前なら気づかれずに「少し遅れた生理」として捉えられていた現象がわかるようになりました。全妊娠の30〜40%に起こるとも言われ、決して珍しいことではありません。
そして何より、これは誰のせいでもなく、染色体異常など、赤ちゃん側の原因がほとんどです。

クリニックの現場で「化学流産」のお話をすると、多くの方が「私の何がいけなかったのでしょうか?」とご自身を責めてしまいます。ですが、決してあなたのせいではありません。
これは妊娠のごく初期に起こる自然な現象で、誰にでも起こりうることなのです。どうか一人で抱え込まず、「そういうこともあるんだな」と、まずは事実を受け止めてあげてください。
参考元:日本産婦人科医会「生化学的妊娠(Biochemical pregnancy)の扱い方」
2.子宮外妊娠
子宮外妊娠は、命に関わる可能性がある、最も注意すべき状態です。これは、受精卵が子宮の中ではなく、卵管などに着床してしまう異常妊娠です。放置すると卵管が破裂し、大出血を起こす危険があります。
激しい下腹部痛や肩の痛み、少量の出血がだらだら続くなどの特徴的な症状が見られます。冒頭のチェックリストに当てはまる症状があれば、迷わず救急を受診してください。
3.切迫流産
切迫流産は、流産しかけている状態ですが、妊娠が継続できる可能性が残されている状態です。赤ちゃんは子宮の中にいて、心拍も確認できるかもしれません。
腹痛を伴う出血が見られ、対処法は絶対安静と、場合によっては薬物療法となります。すぐに産婦人科を受診し、医師の指示を仰ぎましょう。
4.着床出血
着床出血は、受精卵が子宮内膜に着床する際に起こる、少量の出血です。これは病的なものではなく、妊娠のサインの一つです。
生理予定日ごろに、ピンクや茶色のおりものが1〜2日続く程度で、生理のような本格的な出血とは異なります。
ここまで、陽性後に出血が起こる4つの医学的な原因について解説しました。しかし、実際に皆さんが目にしているのは、検査薬の線の濃さや出血の色といった、より具体的な状況でしょう。
次に、そうした個別の状況が、原因を探る上でどのように関係してくるのかを見ていきましょう。
【状況別】線の濃さや出血の特徴で、原因は変わる?

「私の場合はどれに当てはまるの?」という疑問に、もう少し詳しくお答えします。
「くっきり陽性」と「うっすら陽性」で、その後の出血の意味は変わる
線の濃さだけで原因を特定することはできませんが、考えられる可能性の重み付けは変わることがあります。大切なのは、線の濃さに一喜一憂しすぎず、体全体のサインを冷静に観察することです。
「くっきり陽性」の後に出血した場合、一度はhCGホルモンが十分に分泌された後に、何らかのトラブル(化学流産、切迫流産、子宮外妊娠など)が起きた可能性が考えられます。
一方、「うっすら陽性」の後に出血した場合は、hCGがまだ少ないごく初期の段階での化学流産や、妊娠のサインでもある着床出血の可能性も視野に入ります。
出血の色や量で、自己判断せずにすぐに病院を受診
出血の色や量も一つの目安にはなりますが、それだけで自己判断するのは非常に危険です。鮮血は活動的な出血、茶色い出血は古い出血のサインですが、どちらの場合も安心はできません。
特に、生理の時より明らかに量が多い場合や、レバーのような血の塊が出る場合は、すぐに病院を受診してください。

「陽性後の出血」は、私たち産婦人科医にとって「必ず診察が必要なサイン」です。「こんなことで病院に行って大袈裟だと思われないか」などと、ためらう必要は全くありません。
あなたの不安を解消するのが私たちの仕事ですから、安心して頼ってくださいね。

「必ず受診」を前提としたうえで、緊急度の目安を以下に示します。
- 今すぐ救急へ
冒頭のチェックリストに該当する症状がある場合 - 今日・明日中に受診
出血が続いていたり、腹痛はあるが我慢できる程度の場合 - 数日以内に受診
少量の出血で、他に特に症状がない場合(ただし、出血が続くなら早めに受診を)
妊娠検査薬がくっきり陽性後の出血に関するよくある質問
最後に、皆さんからよくいただくご質問にお答えします。
Q. これは流産ですか?次の妊娠はできますか?
陽性後の出血は、残念ながら化学流産であるケースが少なくありません。しかし、化学流産は次の妊娠の妨げになるものではなく、多くの場合、次の月経周期からすぐに妊活を再開できます。
これを乗り越えて無事に出産される方は、本当にたくさんいらっしゃいますよ。
Q. 病院ではどんな検査をするのですか?
まずは超音波(エコー)検査で、子宮の中に赤ちゃんの袋(胎嚢)が見えるか、子宮外に異常がないかを確認します。必要に応じて、血中のhCGホルモンの値を測る血液検査を行うこともあります。不安なことは、何でも医師に質問してくださいね。
まとめ
最後に、この記事の最も大切なポイントをまとめます。
- くっきり陽性後の出血は、化学流産、子宮外妊娠など様々な原因が考えられます。
- 激しい腹痛や大量出血など、危険なサインがあれば迷わず救急へ向かってください。
- 原因が何であれ、自己判断せずに一度は産婦人科を受診し、正確な診断を受けることが最も重要です。
- たとえ悲しい結果であったとしても、決してあなたのせいではありません。
あなたの心と体が一日も早く回復し、また前向きな気持ちになれるよう、心から願っています。

