中絶で強いストレスを感じ、心身共に現れる症状に悩む方もいるでしょう。心のケアをおこなわないままでいると、深刻な問題が発生する可能性もあるため注意が必要です。
本記事では、中絶のストレスで生じる症状と対策法を具体的に解説します。対処法を知り、ストレスや症状の軽減に向けた行動を取りたい方は、ぜひ参考にしてください。
中絶手術後に起こるストレスとは?
ストレスとは、環境の変化や外部からの刺激に、心身が適応しようとするとき生まれる反応をさします。ストレスの要因となるものを「ストレッサー」、ストレッサーの影響を受けた心身の状態を「ストレス反応」と呼びます。
中絶手術後は、以下の要因によって心と体の両面にストレスを感じるものです。
精神的ストレス | ・罪悪感 ・後悔 ・孤独感 など |
身体的ストレス | ・体内の変化 ・ホルモンバランスの乱れ ・中絶手術の痛み など |
精神的なストレスは、中絶手術を選択した罪悪感や後悔、孤独感など、さまざまな感情が湧き上がることで生じます。
加えて、手術に対する不安や恐怖もあるため、心に強いストレスを感じる方が多くいます。身体的なストレスは、中絶手術による体内の変化やホルモンバランスの乱れが原因です。手術によってともなう痛みを苦痛に感じる方もいるでしょう。
中絶手術は、身体的な負担に加え、精神面においても強いストレスをともなうため、周囲の理解や適切なサポートが不可欠です。ストレスのメカニズムを理解して適切なケアを受け、心身の回復を促すことが重要です。
中絶手術後のストレスが引き起こす症状
中絶手術後のストレスは、心身共にあらゆる症状を引き起こします。
ここからは、ストレスによって現れる症状を具体的に解説します。
中絶手術が心に与える影響
個人差はありますが、中絶手術によって受ける精神的影響は以下のとおりです。
- 精神不安定(イライラ、無気力など)
- トラウマ、悪夢、不眠などの症状
日常生活に影響を与えたりうつ状態に陥ったりする危険性があるため、注意が必要です。
1つずつ解説します。
精神不安定(イライラ、無気力など)
中絶手術後は情緒不安定になり、イライラしたり無気力になったりするケースが多い傾向にあります。気持ちが落ち着かなくなり、小さなことで感情が爆発するときがあるでしょう。感情の制限ができず、さらにストレスを感じてしまうことも少なくありません。
また、無気力感に襲われ、仕事や家事が手につかない日が続くといった変化も見られます。中絶手術前は問題なくこなせていたことが思いどおりにできなくなるため、日常生活の質の低下を招く可能性もあるでしょう。
トラウマ、悪夢、不眠などの症状
中絶がトラウマとなり、悪夢や不眠などの症状が現れる場合もあります。「侵害行為」とも呼ばれ、中絶手術がフラッシュバックしたり子どもに関する悪夢を見たりします。症状が強く出て不眠が続くと「うつ状態」になるおそれもあるため、注意が必要です。
とくに、悪夢や不眠などは自身でコントロールできるものではありません。睡眠は心身の回復に重要な要素であるため、医療機関で適切なケアを受けることが重要です。
中絶手術が体に与える影響
中絶手術によって受ける身体的影響は以下のとおりです。
- 吐き気、頭痛、腹痛などの身体症状
- ホルモンバランスの乱れによる影響
1つずつ解説します。
吐き気、頭痛、腹痛などの身体症状
中絶手術後は、以下のような身体症状が現れます。
症状 | 持続期間 |
---|---|
生理痛のような痛み | ~1週間 |
出血 | 1~2週間 |
頭痛・めまい | 術後30分間 |
吐き気・嘔吐 | 術後30分間 |
中絶手術後、子宮が元の大きさに戻ろうと収縮を起こすことによって、生理痛のような鈍痛が生じるケースが多い傾向にあります。少量の出血もよく見られる症状で、2週間程度続くのも珍しくありません。
また、術後30分は麻酔の副作用として頭痛や吐き気などが生じます。いずれも症状が長く続く場合は、なんらかのトラブルが発生している可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。中絶は体に負担がかかるため、医師の指示に従い一定期間は安静に過ごすことが大切です。
ホルモンバランスの乱れによる影響
中絶手術後はホルモンバランスが乱れるため、生理周期や経血量の変化が見られます。中絶手術後は1~2ヵ月で再開する生理が3ヵ月以上かかったり、これまでの経血量とは差が生じたりするケースもあります。一時的な肌荒れも現れるでしょう。
ストレスや不安を感じるとホルモンバランスも安定しにくいので、可能な限りリラックスできるよう心がけましょう。生理周期や経血量に関して心配事がある場合は、医療機関で適切なケアを受けるのをおすすめします。
中絶後ストレス症候群(PASS)とは?
中絶後ストレス症候群(PASS)とは、中絶手術後に現れるストレス反応をさします。心と体の両面に影響を及ぼし、強い負担がのしかかります。
ここからは、中絶後ストレス症候群の症状と対処法を見ていきましょう。
中絶後ストレス症候群の症状
中絶後ストレス症候群の代表的な症状は、以下のとおりです。
症状 | 特徴 |
---|---|
抑圧 | 中絶に関する感情考えを否定する |
過剰反応 | イライラしやすく過剰な警戒心を抱く |
フラッシュバック | 手術の記憶が突如よみがえる |
抑圧は、中絶自体を否定しようする心が働きます。自殺願望が湧き上がる場合もあるため、抑圧の症状を感じた際には細心の注意を払いましょう。過剰反応が現れると、些細なことでイライラしたり強い警戒心を抱いたりして、集中力の低下や睡眠障害につながる可能性があります。
中絶手術の記憶が突然鮮明によみがえるフラッシュバックが起こると、強い不安感に襲われるでしょう。中絶後ストレス症候群が長期的に続くと、ストレスや心の負担がさらに増していくケースも少なくありません。
中絶後ストレス症候群と診断された場合の対処法
中絶後ストレス症候群と診断された場合、専門家のサポートを受けるのを優先的に検討しましょう。医療機関でのカウンセリングや十分な経過観察を通じて、自分の感情を整理することが重要です。
また、家族や信頼できる友人に相談することも有効的な方法です。孤独感を和らげ、ストレスの軽減や症状の改善が期待できます。必要に応じて認知行動療法や薬物療法を併用すれば、心の安定を取り戻していけるでしょう。
中絶後の不安や苦痛などのストレスを一人で抱え込まず、早めに適切なケアをおこなうことが、心身の健康を回復させるポイントです。
中絶手術後の心のケアに必要なこと
中絶手術後の心のケアは、心身の回復において重要な役割を担っています。
取り入れたい具体的な方法は、以下のとおりです。
- 十分な休息・睡眠時間を確保する
- アルコール摂取はなるべく控える
- 認知行動療法を実践する
- 信頼できる人や専門家に相談する
体を休ませ適切なサポートを受けることで、早期的な回復が期待できます。
具体的に解説します。
十分な休息・睡眠時間を確保する
中絶手術後は、心身ともに疲労がたまりやすく、重い負担がのしかかっている状態です。十分な休息と睡眠を取り、心の安定を保つことを優先しましょう。無理に普段どおりの生活に戻ろうとせず、自分のペースで過ごす心がけが大切です。
疲れを感じたら十分な休息を取ってください。質のよい睡眠を得るために、寝る前にリラックスできる時間を確保したり、適切な室温や環境を整えたりするのも有効です。
アルコール摂取はなるべく控える
手術後にアルコールを摂取すると、身体の回復を妨げるだけでなく、ストレスや不安感などを悪化させる可能性があります。お酒を飲むと不安な気分が和らぐと感じる方もいますが、一時的なものです。アルコールが抜けたときの現実のギャップと悩む方も少なくないでしょう。
長期的にアルコールを摂取すると、うつ症状や睡眠障害を引き起こす可能性があるため注意が必要です。術後数週間は身体がデリケートな状態にあるため、アルコールを控えるよう心がけましょう。
認知行動療法を実践する
認知行動療法は、自分の思考や行動を理解し、ポジティブな方向に置き換えるための心理療法です。うつ病やパニック障害などの精神的疾患の改善に用いられます。中絶手術後の心のケアとして認知行動療法を取り入れることで、不安や孤独感などのネガティブな感情をコントロールしやすくなります。
専門家のサポートを受けながら実践するのが理想的ですが、ネガティブな感情を書きだしたり日記をつけたりと、簡単な方法から始めるのも効果的といわれています。認知行動療法には即効性がないため、焦らず長期的な目線で続けるようにしましょう。
信頼できる人や専門家に相談する
中絶したことを誰にもいえず一人で悩みを抱え込むことは、心の負担をさらに増大させる原因となります。信頼できる家族や友人に気持ちを打ち明け、孤独感を和らげましょう。
身近な人に話すのが不安な方は、専門家や医療機関に相談するのがおすすめです。専門的にアプローチしてくれるため、ストレスの軽減によい影響を与えるでしょう。周囲からのサポートを受け、ゆっくりと心のケアをしていくことが大切です。
まとめ
中絶手術は、ストレスにより心身共に大きな傷を負いやすいものです。
イライラや睡眠障害に陥ったり、生理痛のような痛みや出血が生じたりします。とくに、精神的な症状が長期間続くとうつ状態や中絶後ストレス症候群になる可能性が高くなるため、適切な対処法を取る必要があります。
専門家によるケアを受けたり、十分な休息を取ったりなど、心の回復を優先的におこないましょう。
中絶は自身の体や心を守るために必要だった選択です。1人で背負い込まず、身近な人や専門家を頼りながら心のケアをおこなってください。