中絶手術は同意書なしで受けられる?相手がわからない・未成年の場合も

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

「同意書なしでも病院で中絶手術を受けられる?」
「同意書なしで中絶できるケースがあるのか知りたい」

望まない妊娠をした女性のなかには、このように悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

結論、人工中絶手術する場合には基本的に本人と男性パートナーの同意書が必要です。母体保護法といわれる法律に則り、双方の署名と捺印がなければ原則として手術はおこなえません。

ただし、相手がわからなかったり性被害を受けたりして妊娠した場合には、本人の同意だけで中絶できるケースもあります。

本記事では中絶手術を受けるときに同意書が必要な理由を詳しく解説します。あわせて、同意書なしで中絶できる場合も紹介しているため、望まない妊娠で悩んでいる方は参考にしてください。

中絶手術を受けるには同意書が必要

中絶手術を受けるためには、原則として本人と男性パートナーの同意書が必要です。
母体保護法といわれる法律により定められているため、双方が同意書へ署名と捺印をしなければ基本的に手術ではきません。

また、18歳未満の未成年が中絶手術を受ける場合は、パートナーだけでなく親の同意書も求められます。中絶手術は心身に大きな負担がかかるほか金銭的な問題も生じるため、保護者のサポートが必須です。

ただし、妊娠の経緯によっては同意書が不要となるケースもあります。たとえば相手がわからない、すでに亡くなっているなどで同意を得られない場合は医療機関へ相談するとよいでしょう。

ここでは、中絶手術に同意書が必要な理由を詳しく解説します。

中絶手術の同意書とは

中絶手術の同意書とは、本人と男性パートナーが中絶に同意の意思を示す書面のことです。

双方および未成年の場合は保護者の住所や氏名、電話番号などを記載し捺印をして医療機関へ提出します。

同意書は中絶手術を受ける医療機関で用意されているため、不明点があれば医師や看護師に聞いておきましょう。

また、母体保護法によると中絶に同意するパートナーとは配偶者にあたります。

婚姻関係がなくて実質的に夫婦と同じ関係にある事実婚の場合は法律上、同意書は必須ではありません。しかし、子の父親にあたる男性パートナーの同意を求める医療機関もあります。

中絶手術に同意書が必要な理由


中絶手術を受けるのに同意書が必要なのは、母体保護法によって義務付けられているからです。

母体保護法 第三章 母性保護

引用:e-GOV法令検索|母体保護法(昭和二十三年法律第百五十六号)

妊娠により母体が健康被害を受ける可能性がある、拒絶できなかったことにより望まない妊娠をした場合、医師が中絶手術をできるとしています。

母体保護法には「本人及び配偶者の同意を得て」と記載があるため、双方の同意がなければ法律的に中絶手術できません。

ただし、例外的にパートナーの同意なしで手術できるケースがあります。

引用:e-GOV法令検索|母体保護法(昭和二十三年法律第百五十六号)

相手が誰かわからない、亡くなっているため同意の意思を示せない場合は、本人の同意書だけで中絶手術を受けられます。
何らかの事情によりパートナーの同意を得られない方は医師へ相談してみてください。

相手の同意書なしで中絶手術を受けられるケース

前述したように母体保護法の第百五十六号によると、パートナーの同意書なしでも中絶手術を受けられるケースがあります。

  • 相手がわからない場合
  • 相手と連絡が取れない場合
  • 相手がすでに亡くなっている場合
  • 性被害によって妊娠した場合

上記以外に、個別の事情によっては同意書が必要かどうか医師に相談できます。

もし性被害で妊娠したなら、警視庁が設置している相談窓口(#8103)の利用を検討してください。性別や年齢にかかわらず利用でき、秘密を守ってくれるため安心して相談できます。
参照元:警視庁|性犯罪被害相談電話(全国統一)「#8103(ハートさん)」

未成年の中絶手術は親の同意書が必要

中絶手術には本人と男性パートナーの同意書が必要ですが、18歳未満の未成年だと親の同意も求められます。

保険適用外の中絶手術はある程度の費用がかかることから、未成年だけで解決するのは困難です。さらに、心身ともに負担がかかる手術のため保護者のサポートが必要不可欠です。

ただし、親に言いたくないからと自分で同意書を書くと犯罪になります。下記にて理由を詳しく解説するため、参考にしてください。

親の同意書を自分で書くのはNG


親の同意書を自分で書いたり、偽名を使ったりすると有印私文書偽造罪にあたります。
中絶手術の同意書を偽造したとして罪に問われてしまうからです。

家族にバレたくない、1人で手術を受けたいなどの理由で親の同意書を自分で書こくことは絶対にしてはいけません。

また、中絶後は出血したり下腹部痛をともなったりする可能性もあり、安静に過ごす必要があります。手術当日はもちろん、手術したあともサポートが必要になるため親に相談して同意をもらいましょう。

親の同意を得るのが難しければ病院に相談を

親の同意を得るのが難しい、どうしても親に言いづらい方は1人で抱え込まずに医療機関へ相談するのがおすすめです。

中絶手術ができる基準は、通常妊娠満22週未満と母体保護法で定められています。22週以降になると、いかなる場合でも手術は受けられません。

最適な方法を医師と一緒に考え早めに決断するためにも、妊娠が判明したら医療機関へ相談しましょう。

中絶手術の同意書に関するよくある質問

中絶手術の同意書に関して、よくある質問を紹介します。

親の同意書が必要なのは何歳まで?


親の同意書が必要となるのは、成人年齢となる18歳未満の方です。

17歳までは必要で、19歳から親の同意書はいりません。

未成年の中絶で親にバレない方法はある?

通常、未成年の中絶は親の同意書が必要になるため隠し通すことは困難です。

バレたくないからと親の同意書を自分で書くと偽造と見なされ、罪に問われてしまいます。

さらに、未成年の中絶は金銭面や心身の負担を考えると保護者のサポートが必要不可欠です。同意書をもらうためにも親への相談は必須ですが、どうしても言いづらい場合は医療機関へ相談してみましょう。

まとめ

中絶手術を病院でするためには、原則として同意書が必要です。母体保護法に定められていることから、本人と男性パートナーの署名と捺印がなければ原則として手術はおこなえません。

未成年の場合は保護者の同意書も求められます。家族にバレたくないからと、親の同意書を自分で書くことは有印私文書偽造罪にあたるため、絶対にやめてください。

ただし、例外的に同意書なしでも中絶手術できるケースがあります。たとえば、相手がわからなかったり、すでに亡くなっていたりして連絡できないときは本人の同意だけで手術可能です。

望まない妊娠をしてしまった方は、中絶手術への不安や精神的ダメージが大きく、誰に話したらよいのかわからない場合もあるでしょう。

中絶手術は通常妊娠満22週未満と母体保護法で定められているため、早めの決断が重要です。1人で抱え込まずに周囲や病院の医師へ相談し、最適な方法を考えていきましょう。