不正出血の原因は病気の可能性もある?病院に行く目安を解説

この記事を監修した医師
近都真侑
近都 真侑 
産婦人科医・産業医

近畿大学医学部卒業し、その後名戸ヶ谷病院で初期研修を経て千葉西総合病院と昭和大学の産婦人科にて勤務。ヤフー株式会社にて専属産業医を経て、JR東日本や株式会社ココナラなど述べ20社の産業医を歴任。

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川原正行
ルナレディースクリニック院長 / 産婦人科専門医・母体保護指定医

1998年岡山大学医学部卒業。岡山大学病院、広島中電病院、福山医療センターでの産婦人科研修を経て、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて医薬品・医療機器の承認審査に従事。こうのとりレディースクリニック、新宿レディースクリニックにて勤務の後、2021年よりルナレディースクリニック院長。

「生理以外の出血が止まらない」「おりものの量が増えた気がする」など、女性にとって悩ましいのが原因不明の「不正出血」です。
本記事では不正出血で悩む方へ向けて、病気の可能性も含めた具体的に考えられる原因を解説します。
具体的な病名とそれにともなう症状なども詳しく説明しますので、自分にあてはまるポイントがないかぜひ確認してみてください。

【この記事で分かること】
・ そもそも不正出血とは
・ 不正出血の原因として考えられること
・ 不正出血で病院に行く目安

そもそも不正出血とは

不正出血は「月経以外で性器から出血がみられる状態」です。

何かの病気を疑う方も多いですが、不正出血は妊娠やホルモンバランスの乱れなどで不正出血することがあり、必ずしも病気によって起こるわけではありません。

不正出血は原因や出血部位によって量や色が異なります。新しい出血なら赤色、古いと茶褐色、少量の場合は黄色く見えるケースもあり、原因を考える上での判断材料となるでしょう。

また、不正出血はかならず病気で起こらないといいましたが、病気のリスクが100%ないともいえません。出血が長期的に続いたり、出血量が異常な場合は病気の可能性もあるでしょう。

不安な場合は自己判断せず必ず専門の医療機関を受診してください。

生理の出血との違い

「生理」とは剥がれ落ちた子宮内の組織が血液とともに排出される状態です。

一方で不正出血は「生理以外の原因による出血」をさします。原因によって出血量や血液の状態は異なりますが、一見した出血の違いで不正出血と生理の違いを見分けるのは難しいでしょう。

「生理前に出血が起こる」「長期的に出血が続く」「腹痛、性器の痛みなどの症状をともなう」など、普段と様子が違う場合は生理による出血ではない可能性があります。

また、生理の場合は25日〜28日に周期で基礎体温に変化がみられます。日常的に基礎体温をつけておくと不正出血と生理を見分けるきっかけができるでしょう。

不正出血の原因として考えられること

では、不正出血はどのようなきっかけで起きるでしょうか。不正出血が起こる原因は大きく分けて下記の5つが考えられます。

【不正出血の原因として考えられること】

  • ホルモンバランスの乱れ
  • 子宮の病気の可能性
  • 卵巣の病気の可能性
  • 膣の病気の可能性
  • 妊娠の可能性

不正出血は「子宮」「卵巣」「膣」などの病気によって起こるケースもあります。詳しい症状も解説しますが、当てはまれば必ずしも病気であるとはいえません。もし不安があるようなら精密な検査を受けるため専門の医療機関を受診しましょう。

ホルモンバランスの乱れ

生理周期や排卵期は脳の指令で分泌される「エストロゲン」「プロゲステロン」などのホルモンによってバランスを保っています。

そのため、何らかの原因でホルモンバランスが乱れると本来の生理周期以外で不正出血を起こすケースがあり、これを「機能性不正出血」とよびます。

ホルモンバランスが乱れるきっかけは「ストレス」「加齢」「生活習慣の乱れ」などです。特に思春期はホルモンバランスが乱れやすく機能性不正出血を起こしやすいため注意が必要です。

子宮の病気の可能性

不正出血が起こる原因として注意したいのが「子宮の病気」です。具体的な例は下記の通りです。

  • 子宮筋腫
  • 子宮内膜ポリープ
  • 子宮腺筋症
  • 子宮体がん

これらの病気の中には無症状なら治療を必要ない場合もありますが、不正出血や、それ以外の症状を起こすケースもあります。

子宮筋腫

「子宮筋腫」は「子宮内に発生する良性の腫瘍」です。筋腫は女性ホルモンによって大きくなり、閉経による女性ホルモン分泌量の低下により小さくなります。主な症状の例は下記です。

  • 月経量の増加
  • 不正出血
  • 月経痛
  • 腰痛
  • 頻尿

子宮筋腫は大きさが異なり複数できることもあります。また「子宮内」といってもその中で発生場所は異なり症状もさまざまです。

正確な統計データはありませんが、小さなものを含めると30代以上の女性の20〜30%みられるといわれています。

無症状の場合、治療は必要ありませんが、症状があり治療する場合は「薬剤で筋腫を小さくする」「手術で筋腫を摘出する」「子宮全体を摘出する」などの治療が施されます。

子宮内膜ポリープ

「子宮内膜ポリープ」とは、子宮内膜(子宮の内側の膜)が突起上に発育した状態です。

基本的には良性ですが、ポリープの一部に悪性の病変が見つかることもあります。不正出血以外の症状で注意したいのがポリープによって受精卵の着床がさまたげられて起こる不妊症です。

症状がない場合は経過観察するケースもありますが、症状がある場合や病変が悪性ならポリープの切除が行われます。

子宮腺筋症

子宮は内側から「子宮内膜」「子宮筋層」「漿膜」の3層に分かれています。「子宮腺筋症」は、子宮筋層に子宮内膜に似た組織(病変)ができる病気です。

この病変は女性ホルモンの影響を受けて子宮筋層内で増殖と剥離を繰り返して大きくなり症状を引き起こします。主な症状は下記の通りです。

  • 月経量の増加
  • 不正出血
  • 月経痛
  • 骨盤痛
  • 不妊

子宮腺筋症は、子宮筋層内の病変から出血が起こるため不正出血や月経量の増加につながります。

「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020」によると、子宮腺筋症は、性成熟期(18歳〜40歳代)から更年期に多く40歳代をピークとする経産婦に多いといわれています。

治療は子宮の肥大に対するホルモン療法や、病変を摘出する手術療法などです。

子宮体がん

「子宮がん」には、子宮の入口である子宮頸部にできる「子宮頸がん」と、子宮の奥側である子宮体部にできる「子宮体がん」に分けられます。

子宮体がんは進行により子宮頸部、膣、卵巣、リンパ節などに広がり膀胱や直腸、肺などの離れた臓器にも転移するケースもあります。

自覚症状として多いのが不正出血をはじめとした出血です。閉経後や更年期に出血がある場合は注意しましょう。また、進行すると下腹部痛、腰痛、下半身の痛みにつながるケースがあります。

主な治療方法はがんを摘出するための手術療法です。摘出が困難な場合には抗がん剤や放射線療法も検討されます。

卵巣の病気の可能性

卵巣は子宮の両側にある臓器で、排卵をうながしたり女性ホルモンを分泌により生理周期をコントロールする役割があります。子宮ともつながっており卵巣の病気によって不正出血が見られるケースもあるでしょう。

  • 卵巣腫瘍
  • 卵巣機能不全

上記は具体的な病気の例です。それぞれ詳しくみていきましょう。

卵巣腫瘍

「卵巣腫瘍」は一般的にがんとよばれる「悪性腫瘍」と、転移せず症状もでない「良性腫瘍」、悪性と良性の中間的な性質を持つ「境界悪性腫瘍」があります。

悪性腫瘍が進行した場合、腹部の臓器をおおっている膜状の組織や、大腸、小腸などの腹部の臓器に広がるケースもあるため注意が必要です。

症状は腫瘍の大きさや場所によっても異なりますが、膀胱や直腸の圧迫よる頻尿や便秘、お腹に水がたまる腹水などがあげられます。初期では自覚症状がない場合もあるでしょう。

治療は腫瘍を取り除くための手術療法や、手術が困難な場合は薬物療法などが行われます。

卵巣機能不全

「卵巣機能不全」とは卵巣が正常な働きができず、生理周期が乱れたり、生理がとまる状態をさします。

卵巣の手術、抗がん剤治療、放射線治療などにより卵巣機能不全が起こることがあり、染色体異常などの遺伝も要因として考えられるでしょう。

主な症状は生理周期の異常や無月経(生理がこない状態)があげられ、不正出血の原因にもなります。ほかに考えられる症状は下記の通りです。

  • 生理周期の異常
  • 不正出血
  • 食欲不振
  • 不妊症
  • 抑うつ

卵巣の機能不全からホルモンバランスが乱れるため、抑うつや食欲不振など一見して卵巣とは関係ないと思われる症状が出る場合もあります。

治療方法として足りないホルモンを補うホルモン療法があげられます。また、子どもを希望される方に対しては「排卵誘発剤」などの薬物療法が行われます。

膣の病気の可能性

膣自体の外傷や炎症などを起こす病気も不正出血のきっかけとなります。

  • 子宮頸管ポリープ
  • 子宮頸がん
  • 子宮腟部びまん

今回は3つの病気をご紹介しますので、それぞれみていきましょう。

子宮頸管ポリープ

「子宮頸管ポリープ」は、子宮の入り口である子宮頸管にポリープができた状態を指します。ポリープはほとんどが良性ですが、ごくまれに悪性の場合もあるため検査による見極めが重要です。

無症状のケースが多いですが、性交渉や排卵などの刺激により不正出血につながることがあります。また、感染により膿のようなおりものがみられるケースもあるため注意が必要です。

治療はポリープの切除があげられます。状態にもよりますが入院を必要とせず外来にて対応が可能な場合がほとんどでしょう。

子宮頸がん

「子宮頸がん」とは子宮の入り口である子宮頸部に発生するがんです。子宮がんは「子宮頸がん」と「子宮体がん」の2種類に分類されますが子宮頸がんが7割を占めています。

罹患者は40代をピークに35歳から59歳までの割合が多く若い世代も注意が必要です。ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染が原因であり、男性にも感染するため性交渉をきっかけに広がります。

早期なら自覚症状はありませんが、進行に従い不正出血や異常なおりもの、下腹部の痛みなどがあらわれます。

治療はがんの進行度によって異なり、子宮を摘出する手術療法やがんに対する放射線療法、化学療法などが行われます。

子宮膣部びらん

女性ホルモンが活発に働くと「子宮膣部」と呼ばれる子宮の入口の部分がふくらむ場合があり、これを「子宮膣部びらん」といいます。性成熟期(10代の終わりから40歳代)に多くみられる状態で女性にはめずらしくありません。

ときおり不正出血やおりものの量が増えるといった症状が出ますが、ほとんどの場合が無症状で治療の必要もありません。

妊娠の可能性

不正出血で考えなければいけないのが妊娠の可能性です。

妊娠時に起こる出血は「着床出血」ともいわれ、受精卵が着床する前に受精卵から伸びた絨毛が子宮内を傷つけてしまい出血が起こります。妊娠後3〜4週間で起こるため生理と勘違いするケースもあります。

着床出血には個人差があり妊娠時に必ず起こるものではありません。症状がある場合も生理に比べて少量の出血で、血が混じったようなピンクや鮮血色の出血がみられる程度です。

なお、妊娠にともない下記のような症状がでる可能性もあります。

  • 腰痛
  • 胃のもたれに伴う吐き気やげっぷの増加
  • だるさや頭痛など風邪に近い症状
  • イライラなどの情緒不安定
  • 肌荒れ口内炎

症状は個人差があります。前述した病気の可能性も含めて体調に変化があれば早めに病院を受診しましょう。

不正出血で病院に行く目安

不正出血で病院に行く目安は「1度でも不正出血が起きたタイミング」です。
不正出血による出血と生理による出血は一見して区別がつきません。生理以外の出血の原因は自己での判断が難しく、前述した妊娠や重大な病気の可能性もあるため、早めの受診をお勧めします。

ストレスや、ホルモンバランスの変化など治療が必要ないケースも多いですが、安心して生活するためにも異常を感じたら早めに病院受診するように心がけましょう。

まとめ

本記事では「不正出血」について下記を解説しました。

● そもそも不正出血とは
● 不正出血の原因として考えられること
● 不正出血で病院に行く目安

基礎体温表をつけていれば異常に気づくきっかけになりますが、基本的には不正出血による出血と生理による出血は一見して区別がつきません。

治療が必要ないケースもありますが、一部で子宮、卵巣、膣などの病気による出血も考えられます。個人で原因を判断せず、異常を感じたときは必ず専門の医療機関を受診しましょう。