赤痢アメーバ症という感染症をご存知でしょうか。赤痢アメーバ症は、かつては日本でも猛威を奮っていた感染症ですが、現代の日本では衛生環境も向上しているため感染者数が少なくなっています。しかし、日本から撲滅されているわけではないため、油断をしていると感染する可能性があるので注意が必要です。
今回は、赤痢アメーバ症の症状や感染経路、潜伏期間を解説します。
赤痢アメーバ症とは
赤痢アメーバ症は、赤痢アメーバ原虫という病原体に感染することで起きる感染症です。赤痢アメーバ症の感染者の多くは衛生環境が整っていない発展途上国に分布しており、全世界での死亡者数は毎年4〜7万人とされています。全世界では1%程度(約5000万人)が病気を発症する可能性のある原虫に感染しているといわれています。
日本での赤痢アメーバの感染者は1980年ごろから徐々に増えてきています。2001年には400人、2006年には700人を超え、2013〜2017年には1000人を超えるなど年々と増えているため油断ができない病気です。感染症法では赤痢アメーバ症は5類に分類され、診断をした医師は7日以内に保健所への届出が義務付けられています。
赤痢アメーバ症の症状
赤痢アメーバという原虫は、シストと呼ばれる卵のような状態で水や食物の中に数週間は生き延び、胃酸のような強酸でも死滅することはありません。胃から腸に達するとシストからトロフォゾイトという成虫のような状態へと変化し、腸粘膜を攻撃します。主に粘血便や下痢、しぶり腹、腹痛などの消化管症状だけでなく、消化管外の肝臓や心臓、肺など様々な臓器にも症状を引き起こすことが知られています。
こちらでは、赤痢アメーバ症が引き起こす主な症状について解説します。
赤痢アメーバ症による大腸炎では、下痢やイチゴゼリーのような粘血便、便が出たい感じがするのに少量の便しか出ないしぶり腹(テネスムス)、排便時の下腹部疼痛などの症状が出現します。潜伏期間としては2〜3週間とされていますが、数ヶ月〜数年と長期間になることもあります。
このような症状が悪くなったり、よくなったりを数ヶ月から数年間にわたって繰り返しますことも特徴的です。赤痢アメーバと似た名前の感染症として細菌性赤痢がありますが、発熱や下痢などの全身症状があらわれて歩行が困難になるほど衰弱するのに比べると赤痢アメーバ症は歩行可能であったり、日常生活を営むことができるほど軽症であることが多いです。そのため、赤痢アメーバ症の診断が遅れることがあります。
赤痢アメーバは腸粘膜を攻撃し、血流に乗って肝臓などの臓器にたどり着くことがあります。そして肝臓で増殖し、肝臓の中に膿瘍と呼ばれる膿の塊を形成することがあります。それによって発熱や上腹部痛、肝腫大、盗汗と呼ばれる大量の寝汗などの症状が起きます。
発症初期は風邪やインフルエンザのような症状であるため誤診されることが多いですが、上腹部痛が起きてCT検査などの画像診断で肝膿瘍が発見されることがあります。肝膿瘍の原因は赤痢アメーバ以外にも細菌などでも起こるため、治療が難渋することもあります。
赤痢アメーバ症の感染経路
赤痢アメーバ症を予防するためには感染経路を理解しておく必要があります。赤痢アメーバは、経口摂取によって体内に入って腸管で増殖し、一部が糞便と一緒に体外へ排出されます。そのため、衛生環境が整っていない発展途上国での感染者数が多い傾向です。しかし、先進国でも赤痢アメーバに感染することがあるため注意が必要です。こちらでは、赤痢アメーバ症の感染経路を解説します。
赤痢アメーバ症の患者さんからは糞便とともに赤痢アメーバが排泄されています。そのため、上下水道のインフラが十分に整っていない地域では赤痢アメーバに汚染された水や食事によって感染することがあります。日本などの先進国で感染者数が少なく抑えられているのは衛生管理が整っていることが要因です。
糞便として排泄された赤痢アメーバは、肛門付近に付着していることがあります。そのため、肛門を介した性行為が赤痢アメーバ症の感染経路となることがあるので注意が必要です。日本やアメリカなどの先進国での赤痢アメーバ症の感染者は、発展途上国からの帰国者よりも男性同性愛者に多いため、赤痢アメーバ症は性感染症というイメージが定着しています。
赤痢アメーバ症の注意点
赤痢アメーバ症は、糞便が感染源になるため手洗い、消毒などの基本的な感染予防法が有効です。赤痢アメーバのシストは乾燥に弱く、1分以上の煮沸によって死滅します。
こちらでは、手洗い、消毒などの基本的な感染症予防法だけではない赤痢アメーバ症の注意点を解説します。
上下水道などのインフラや衛生管理が整っていない発展途上国へ旅行する場合には、飲食に注意してください。火が十分に通っていない食べ物や生水などは赤痢アメーバに汚染されている可能性があるので避けた方がいいでしょう。
赤痢アメーバ症は、性行為によって感染することがあるため注意が必要です。特に、糞便中に赤痢アメーバが排泄されるため肛門に触れたり、肛門を介した性行為をしたりすると感染リスクが高くなります。不特定多数の相手との性行為を避けたり、コンドームの着用をしたりすることも重要です。
赤痢アメーバ症は、診断までに時間がかかり、肝膿瘍などでは長期の治療が必要になることもあります。また、家族やパートナーを感染させることもあるので早めの治療が重要です。赤痢アメーバ症は、適切な治療を行うことで治る病気なので海外旅行や性行為などのあとで粘血便や下痢症状などこの記事を読んで思い当たる節がある場合には医療機関を受診してください。
まとめ
赤痢アメーバ症は、日本での感染者数が1000人にも満たないため知らない人も多い感染症です。しかし、全世界でも5万人程度が死亡し、日本でも感染者数が増えてきているので油断できない感染症でもあります。赤痢症状、下痢症状などの消化器症状だけでなく肝膿瘍などを起こすことがありますが、症状としては軽症で済むことが多いです。
感染経路としては、赤痢アメーバに汚染された水や食物を摂取、性行為があり、衛生管理が整っていない発展途上国や男性同性愛者で感染者数が多い傾向です。そのため、発展途上国へと旅行する場合には火が十分に通っていない食事や生水は避け、食器等の洗浄にも気をつけてください。性行為についてもコンドームの使用や肛門付近には触れないようにした方がいいでしょう。
気になることがあれば医療機関へ受診してください。
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参考文献
- NIID 国立感染症研究所 アメーバ赤痢とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/315-amoeba-intro.html - 厚生労働省 アメーバ赤痢
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-01.html - 赤痢アメーバ症:日本感染症学会
http://jssti.umin.jp/pdf/guideline2008/02-17.pdf - 感染症治療ガイドライン2015–腸管感染症-
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_JAID-JSC_2015_intestinal-tract.pdf