淋菌感染症とは、淋菌に感染して発症する性病のことです。しかし、性病についてはわからないことも多いため、どのように対処すべきか迷ってしまうこともあるでしょう。
この記事では淋菌感染症の概要や原因、検査方法などを詳しく解説します。淋菌感染症について知りたい方に役立つ情報を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
淋菌感染症とは
淋菌感染症とは、淋菌を要因として発症する性感染症のことです。感染すると、2〜7日ほどの潜伏期間を経て、男性は淋菌性尿道炎、女性は淋菌性子宮頸管炎を発症します。
また、男女に限らず咽頭や喉に咽頭淋病を発症することがあるのに加え、直腸や目に症状が現れるケースも少なくありません。ここでは主な淋菌感染症の症状について紹介します。
淋菌性尿道炎
淋病性尿道炎の主な症状は、排尿時の痛みや尿道の分泌物です。
特に排尿時の痛みが強く、痛みに耐えきれずに医療機関を受診するケースも珍しくありません。分泌物の場合、排尿から30分ほど後に黄色みを帯びた白い膿が多量に出てくるようになります。
稀に症状が現れないこともありますが、気がつかないうちに前立腺へ淋菌の感染が広がる可能性があります。前立腺にまで感染が及ぶと、排尿が困難になり、発熱する場合もあるため注意が必要です。
淋菌性子宮頸管炎
淋菌性子宮頸管炎の代表的な症状は、おりものの増加、異臭、性行為時の出血などです。
腹部に痛みを伴う症状は稀ですが、症状が進行して骨盤内炎症性疾患や肝周囲炎、子宮内膜炎になると下腹部や右上腹部痛が発症することがあります。重症になると、耐えきれないほどの腹痛に発展する場合もあるでしょう。
また、淋菌性子宮頸管炎の治療を行わず放置していると、不妊症になる恐れもあるため注意が必要です。症状が現れたら速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしてください。
咽頭淋病
咽頭淋病は、扁桃腺の痛みや腫れ、喉の違和感、咳、発熱など風邪に似た症状が出ます。しかし、自覚症状がほとんど現れず、咽頭の検査が行われない場合も少なくありません。
また、風邪と勘違いして風邪薬を飲んだまま放置し、扁桃腺炎や咽頭炎といった病気に発展するケースもあります。性器の淋菌感染症を患った人の1割〜3割は、咽頭から淋菌が発見されるともいわれているため、強い症状が出ていなくても検査を受けることが大切です。
淋菌性結膜炎
淋菌性結膜炎は、粘膜上皮に淋菌が接着することで発症します。主に、クリーム状の膿性眼脂(目やに)が多量に出るのが特徴です。他には、結膜の充血や眼瞼腫脹、浮腫を伴う偽膜の形成といった症状も現れます。
稀ではありますが、潰瘍の出現により角膜に穴が空く角膜穿孔が起きることもあるでしょう。角膜穿孔になると眼内炎になり、最悪の場合は失明に至るケースもあります。大切な目を守るためにも、早期の段階できちんとした治療方法を取り入れることが大切です。
淋菌性直腸炎
淋菌性直腸炎は、淋菌が直腸に付着し、感染することによって発症します。主に、肛門の痛みや痒み、血便、下痢、肛門性交時の痛みなど、直腸に関連した症状が現れるでしょう。
しかし、無症状のまま感染に気づかず、知らない間にパートナーにうつしてしまうケースも多いため注意が必要です。男性同士の肛門性交だけでなく女性も感染する可能性があるため、感染が疑われる場面があったときにはすぐに医療機関を受診してください。
淋菌感染症に感染する原因
淋菌感染症は、性行為や性行為に類似した行為の際に粘膜や分泌液に接触することで感染します。一般的に淋菌は弱い菌といわれており、粘膜を離れると数時間で感染性を失い、乾燥や日光、消毒液などで簡単に死滅するのが特徴です。
そのため、性行為以外で淋菌感染症に感染するのは稀ですが、タオルや手指を媒介して感染することもあり得ます。また、妊娠中の母親が淋病に感染した場合、出産時に赤ちゃんに病気がうつるリスクもあります。
淋菌感染症の検査方法
ここでは、淋菌感染症の検査方法について解説します。
Taqman PCR法
Taqman PCR法は、淋菌感染病以外にもさまざまな病気の検査で用いられていることで知られています。
淋菌感染病の検査においては、病原菌の遺伝子を増幅させて感染の有無を調べるのが基本です。症状が現れている部位に応じて、尿や膣分泌液、肛門分泌液、うがい液を検体として採取します。
TMA法
TMA法とは、1の細胞に対して1つしかないDNAではなく、1つの細胞に数千個存在するRNAの遺伝子をターゲットにした検査方法です。RNAに酵素が付着することでDNAの合成・分解を繰り返し、RNAを増幅させていくのが特徴です。
Taqman PCR法と同様に、尿や膣分泌液、肛門分泌液、うがい液などによって検査が行われます。他の検査法と比べて感度に優れており、欧米で一般的に使われている検査キットもTMA法が用いられています。
SDA法
SDA法は、PCR法の欠点を補うために開発された検査法です。
淋菌はナイセリア属の一種ですが、ナイセリア属には喉や口腔内に寄生する無毒の常在菌も存在するため、咽頭淋病でPCR法を用いると、ナイセリア属の偽陽性が出やすいという欠点がありました。
SDA法ならナイセリア属の偽陽性が出にくいため、咽頭淋病の検査ではPCR法の代わりに用いられることがよくあります。他の検査と同じように、うがい液や尿、膣分泌液、肛門分泌液といったように症状が出ている部位に合わせて検体を採取します。
IDEIA PCEChlamydia法
IDEIA PCEChlamydia法は、イムノクロマトグラフィー法を用いて行う抗原検査の一種です。
即日対応可能な簡易検査であり、すぐに結果がわかります。特に、性器に強い症状が出ている場合に用いられますが、肛門や咽頭の検査には使えません。
他の検査方法と比べるとやや精度が落ちるものの、膣や尿道の炎症が淋菌によるものか早期に検査し、迅速な治療を行うための役に立つでしょう。検査の際には、採取した尿や膣分泌液をテストデバイスに滴下し、感染の有無を目視で確認します。
Real time PCR 法
Real time PCR法は、遺伝子をターゲットにした検査方法です。淋菌がどの程度増殖しているのかも把握できる点がTaqman PCR法との違いです。また、TMA法と同様の遺伝子(RNA)をターゲットにしているため、高い精度で淋菌を検出できます。
Real time PCR 法でも尿や膣分泌液、肛門分泌液、うがい液で検体を検出し、検査を行います。IDEIA PCEChlamydia法のような即日検査と比べて結果が出るまで時間はかかりますが、高い精度が期待できるでしょう。
検査結果が出るまでの期間
結果が出るまでの期間は、検査方法によって異なります。簡易検査なら最短で即日、簡易検査以外は遅くとも1週間以内が目安です。
検査ができる場所
淋菌感染病の検査は、保健所、病院、検査キットの3パターンで行えます。それぞれのパターンについて紹介しますので、検査を検討する際に役立ててみてください。
保健所
淋菌感染病が疑われる場合は、各自治体の保健所で検査を受けられます。
保健所のメリットは、検査費が無料という点です。費用が足枷となって検査をためらっている方も安心して受けられます。また、名前の申告をせず、匿名で検査を受けられるのも保健所の利点です。
ただし、検査日時が限定されており、予約が必要な場合もあるため注意しましょう。また、検査で感染が確認されたときは、改めて病院を受診して治療を受けなければならない点にも気をつけてください。
病院
病院で検査を受ける場合は、性病科や泌尿器科、婦人科を受診することになります。
病院のメリットは、検査で陽性がわかったらすぐに治療できることです。淋菌感染症の可能性が高く、すぐに治療を受けたい場合に適しています。
また、病院によっては早朝や深夜の診療に対応しているところもあり、自分の予定に合わせて受診しやすいのも嬉しいポイントです。
ただし、保健所とは違って検査費用が発生し、匿名での受診ができない点がデメリットです。
検査キット
メーカーから検査キットを取り寄せ、自分で採取した検体を郵送することで感染の有無を調べてもらう方法もあります。結果は、メールや電話、郵送などで通知されるのが一般的です。
自宅で検体を採取できるため、保健所や病院へ行く時間が取れない場合や、絶対に他の人に知られたくない場合によいでしょう。
ただし、検査キットに加えて送料もかかるため、想定より費用が高くなる可能性があります。また、もし検査キットで陽性が出たら改めて病院を受診する必要があり、治療に至るまでに時間がかかる点にも注意が必要です。
淋菌感染症の注意点
淋菌感染症は主に性行為によって感染するため、感染がわかった場合はパートナーも検査を受ける必要があります。本人が治療を受けて完治したとしても、パートナーが感染状態では、性行為によって感染を繰り返すピンポン感染に陥る可能性が高まるでしょう。
たとえ無症状だとしても、パートナーも一緒に検査を受け、適切な治療をしなければなりません。
また、治療中に症状が改善しても自己判断で中断しないでください。途中で治療をやめると再び症状が悪化する恐れがあります。再検査で淋菌が消滅したことを医師が確認するまでは、治療を続けましょう。
完治後は性行為時に避妊具をつけるなど、予防も大切です。
まとめ
淋菌感染症は、淋菌が感染した部位によってさまざまな症状が現れます。軽度でも性行為によって他の人にうつしてしまうため、疑わしい症状が見られたら速やかに検査を受けてください。適切な治療を受ければ重症化することはなく、健康な状態へ戻れます。
また、淋菌感染症を患ったことをパートナーに伝えるのも重要なポイントです。自分の体だけでなく、大切な人の体を守るためにもパートナーと一緒に検査を受け、完治を目指しましょう。
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