近年、日本国内では性病(性感染症)の1つである梅毒患者が増加していることから、厚生労働省や政府が梅毒に関して警鐘を鳴らしていることをご存じでしょうか。梅毒はかつて治らない病気とされた歴史もあるため、何かと不安に思うことがあるかもしれません。
今回は梅毒治療に焦点をあて、梅毒の検査や治療法から症例まで解説します。梅毒について正しい知識を身につけられる内容となっているので、ぜひ参考にしてください。
梅毒は「自然」には治らない病気
結論として、梅毒は自然治癒しません。
梅毒の感染初期にできる赤色のしこりやできものは自然消失しますが、感染は治療しない限り続くことを覚えておきましょう。
梅毒の治療を行わない場合、脳や心臓、目などの神経に致死的な合併症を起こすリスクがあります。治療が遅れるほど治療期間が長引くうえ、治療費などの費用負担も増すことになります。
梅毒が「治らない病気」といわれていたのは過去の話
梅毒は「治らない病気」とされていましたが、それは過去の話です。現代でもHIVとの重複感染など例外的に治りにくい症例はありますが、基本的には医師の指示通りの投薬治療を行えば治ります。
梅毒の歴史を振り返ると、1493年頃に梅毒感染が確認されて以降、以下のような治療が試されてきましたが、効果はなかったとされています。
【歴史上の主な梅毒治療法】
・瀉血や下剤、ワインやハーブ、オリーブ油への入浴
・水銀
・グアヤク脂 (ユソウボクの樹脂)
・中国の根(サルトリイバラ の根)
・サンシキスミレ(野生のパンジー)
・土茯苓(ドブクリョウ、落葉低木の根茎)
・ネオサルバルサン(有機ヒ素化合物の抗菌薬)
・マラリア(マラリア原虫をもった蚊)
江戸時代の頃には重症の梅毒患者は山に捨てる風習もあったといわれるほど、治療が困難だったそうです。しかし、1928年にフレミングがペニシリンを発見して以降、梅毒の治療は大幅に向上し、現代では完治が可能になりました。
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梅毒の抗菌薬を飲み続けているけど治らない?
梅毒に感染すると、梅毒の検査方法であるRPR法の測定値が上がります。
治療するにあたり抗菌薬を飲み続けたとしても、RPR法の測定値がゼロにならないケースも少なくありません。そのため、「抗菌薬を飲み続けているけど、梅毒が治らない」と誤解する方も多いのではないでしょうか。これは患者だけでなく、主治医が誤解している場合もあります。
ただし、梅毒の治療において、RPR法の測定値をゼロにする必要はありません。何年間も抗菌薬を飲み続けてもゼロにならないことはよくあります。
梅毒が治癒したかどうかは、基本的に「RPR法の測定値が8以下になったこと」と「症状が消失したこと」が確認できればよいとされています。
梅毒の検査方法
梅毒の検査方法は、医師による診察と血液検査による「脂質抗原法(RPR)」と「TP抗原法(TPHA)」を行います。
検査のタイミングとしては、感染が疑われる機会から約1ヶ月経過した頃に受けましょう。
2つの検査結果の解釈は、以下のパターンに分かれます。
抗原検査法(RPR) | TP抗原法(TPHA) | 結果の解釈 |
(+) | (+) | ・梅毒に感染・旧陳性梅毒(梅毒治癒後抗体保有者) |
(+) | (-) | ・梅毒感染初期・擬陽性(感染していない) |
(-) | (+) | ・梅毒治療中・梅毒治癒後(完治後)・擬陽性 |
(-) | (-) | ・梅毒陰性 |
梅毒の診断方法
上記の検査を踏まえ、梅毒の診断方法や治癒判定の規定値を見ていきましょう。
まず、治療を要する梅毒(活動性梅毒)の診断基準は、以下の通りです。
【活動性梅毒の診断基準】1. 症状がある症例のうち、以下のいずれかを満たすもの① PCR 陽性のもの② 梅毒トレポネーマ抗体・RPR のいずれかが陽性であって、病歴(感染機会・梅毒治療歴など)や梅毒トレポネーマ抗体・RPR の値の推移から活動性と判断されるもの 2. 症状がない症例のうち、梅毒トレポネーマ抗体陽性で、病歴や梅毒トレポネーマ抗体・RPR の値の推移から潜伏梅毒と判断されるもの |
また、完治と見なされる基準は、以下の通りです。
【治癒の確定基準(いずれも満たすこと)】症状の消失PRP検査値≦8 |
なお、検査のタイミングによっては、治療後の方が高い数値になる場合もあります。
先天性梅毒(母子感染)は完璧には治らない可能性がある
妊娠中の女性が梅毒に感染した場合、胎盤を通じて胎児に梅毒を感染させる恐れがあります。
先天性梅毒の治療は、抗体が作られても重篤な後遺症を残すこともあるため注意が必要です。
そもそも先天性梅毒とは
妊娠中の女性が梅毒を発症した場合、適切な投薬治療を受けても胎盤を介して胎児に先天性梅毒を感染させる恐れがあります。
経胎盤感染のリスクは約60~80%もあり、妊娠後期ほどリスクが高まります。
なお先天性梅毒は、治療により胎児が持つ菌の数は減らせるものの、口唇裂や鞍鼻、難聴などの後遺症リスクは下げられません。
【先天性梅毒の臨床像】
早期先天梅毒(出生から2歳まで) | ・発育不全・水疱性発疹や斑状発疹、丘疹状などの皮膚症状・全身性リンパ節腫脹・肝脾腫・骨軟骨炎・鼻閉・知的障害など |
晩期先天梅毒(2歳以降) | ・Hutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinson歯)・「ブルドッグ様」顔貌 |
先天性梅毒の事例
近年、20代女性を中心に梅毒患者が増加しており、同時に先天性梅毒の報告、症例数も増加しています。
先天性梅毒の事例について、2016年~2017年にまとめた13例の臨床像の一部抜粋を紹介します。
月齢1ヶ月の診断例 | 出生時は早産、低出生体重児(36週、 2,120g)として出生。1ヶ月健診で体重増加不良や活気、肝腫大、 膿性鼻汁、 口唇周囲の放射状の亀裂等の症状が確認されたため精査、診断に至る。 |
月齢2ヶ月の診断例 | 正期産で出生後、生後2ヶ月の時点で 肝脾腫や 貧血、 血小板減少、白血球増多が確認され白血病の疑いから精査、診断に至る。 |
13例のうち12例はベンジルペニシリン(PCG)経静脈的投与が中心で、残り1例はアンピシリン(ABPC)治療で再燃したため、10日間の追加治療が行われました。長期的予後に関しは、13例のうち2例に慢性肺疾患や発達遅滞などの後遺症が確認されています。なお、梅毒に感染している母親の年齢中央値は25歳となっています。
梅毒の治療方法について
現在臨床で行われている梅毒治療は、患者の症状や進行度、アレルギー、妊娠の有無などによって異なる治療法が行われています。ここでは、梅毒治療に用いられる方法や薬剤を解説します。
ペニシリンのアレルギー体質である場合
検査により梅毒陽性が確認された場合、ペニシリン系の抗菌薬(抗生物質)が第一選択です。ただし、体質によってペニシリン系の薬剤にアレルギーがある場合、次のような薬剤が用いられることになります。治療期間は内服の場合第1期梅毒で2〜4週間、第2期梅毒で4〜8週間と長期間服薬し続けることになります。
確実に治療成果を得るためにも、意識的に療養に向かう姿勢も大切です。
【ペニシリンアレルギーの場合の選択薬】
・ミノサイクリン(テトラサイクリン系抗菌薬)
・スピラマイシン(マクロライド系抗菌薬)
なお、米国など諸外国のガイドラインでは、ペニシリンアレルギーの患者についても減感作によるペニシリンの投与が推奨されています。しかし、日本では副作用の観点からペニシリン以外の薬剤が用いられます。
妊婦の場合
妊婦の梅毒女性患者の場合、治療方法の種類としては以下の通りです。
【妊婦の梅毒女性患者の治療法】
・アモキシシリン、アンピシリン(ペニシリン系抗菌薬)
・アセチルスピラマイシン(マクロライド系抗菌薬)
なお、妊婦検診では梅毒のスクリーニングが実施されるため、この時点で陽性が確認された場合、速やかに治療が開始されることになります。治療効果の判定は「妊娠28~32週」「分娩時」に行われます。
まとめ
今回は、梅毒治療について梅毒治療の歴史や検査、治療法や症例まで解説してきました。現在はペニシリンをはじめ有効な治療方法が確立されています。早期発見に加え、治療判定までの治療を徹底することも重要です。
自分と大切なパートナーの将来的な健康を守るためにも、梅毒に対する正しい知識と予防方法を身につけることが大切です。今回の記事を参考に、自身の健康管理や性生活、病気の予防について一度見直してみてはいかがでしょうか。
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