マイコプラズマはいつの間にか感染し、体をむしばむ病原体です。クラミジアや淋菌と見分けをつけることが難しく、薬剤耐性を持っているため治療効率が悪くなる可能性があり、注意が必要です。またマイコプラズマは不妊の原因ともなるため、正しい知識をつけて検査や治療を受ける必要があります。
本記事ではマイコプラズマについて、感染経路や検査、治療、予防方法を記載しています。少しでも思い当たる節がある方は、まずは検査を受けてみることをおすすめします。
マイコプラズマになる原因とは
マイコプラズマと聞くと、マイコプラズマ肺炎を連想させる方も多いのではないでしょうか。しかし性病におけるマイコプラズマは、マイコプラズマ肺炎を引き起こす原因菌とは別の菌となります。感染経路にも違いがありますので、以下の表で違いをまとめました。
原因菌 | 感染経路 | |
性病 | マイコプラズマ・ジェニタリウムマイコプラズマ・ホミニス | 性行為やキスなどの接触感染 |
肺炎 | マイコプラズマ・ニューモニエ | くしゃみなどの飛沫感染感染した手で鼻や口に触れる接触感染 |
潜伏期間は1〜5週間と他の性感染症と比べると少し長い潜伏期間があります。また性感染症で発生する尿道炎はクラミジアや淋菌に次いで、尿道炎の約20%がマイコプラズマの影響とされています。
本記事では、単に「マイコプラズマ」と表記しますが、これは性病のマイコプラズマのことを指します。
\マイコプラズマの陽性結果が分かる/
マイコプラズマはどのような症状がでるのか
性行為やキスなどによりマイコプラズマに感染すると、接触した性器や泌尿器、咽頭にさまざまな症状が現れます。男女別に症状が異なり、そのまま放置すると悪化して合併症や不妊の原因ともなるため、できる限り早期に検査する必要があります。早期に発見することで、症状が比較的軽い早期に治療できます。
以下ではマイコプラズマに感染した際に現れる症状について男女別と共通するものに分けて紹介します。
男性の場合
男性がマイコプラズマに感染した場合には、以下のような症状が見られます。
- 陰部のかゆみ
- 陰部の不快感
- 排尿時痛
- 下着に排膿のシミができる
- 性器の異臭
マイコプラズマは尿道に炎症を起こして尿道炎となるため、排尿時にズキズキとした痛みやかゆみなどの炎症がみられます。また膿が出るようになり、下着に膿が付着して染みになる場合もあります。しっかりと洗っているのに性器の異臭が気になるという方は注意しましょう。
尿道炎をそのままにしているとマイコプラズマの菌が尿道を通り、精巣上体まで行きつくことがあります。精巣上体の上にあるコイル状の管に感染し炎症反応が起こると精巣上体炎となり、発熱や陰嚢の腫れ、押すと痛みを感じるといった症状が現れます。少しでも気になる症状がある場合、すぐに泌尿器科のあるクリニックや医院を受診しましょう。
女性の場合
女性がマイコプラズマに感染しても軽度か無症状であることが多く、見過ごしてしまう方が多いようです。帯下の量が多少増えたり、外陰部に軽い痒みがあったりしますが、すぐに消失するためなかなか受診につながりません。以下のような症状が見られたら、まずは受診して検査を受けましょう。
- おりものが少し増加した
- 外陰部の軽い痒み
- 排尿時にずきずきとした痛みがある
少しの異変で気が付くことができれば、卵管炎や腹膜炎、子宮外妊娠、不妊など重症化を防げます。予防の観点からも不安があれば早めに受診することで自分を守りましょう。
男女共通
マイコプラズマの感染で男女共通で見られる症状は主に以下の2つがあります。
- 性器のかゆみ
- 性器の異臭
これらについて自覚症状があった場合には、マイコプラズマだけでなく他の病気である可能性もあるため、早期に検査しておきましょう。
マイコプラズマと似た症状の病気とは
マイコプラズマはクラミジアや淋病と症状がよく似ています。クラミジアや淋病でも男性であれば尿道炎や精巣上体炎、女性の場合は骨盤内炎症性疾患などを発症する可能性が高く、それぞれ軽度の症状または無症状のため気づきにくい点が特徴です。以下の表では、マイコプラズマとクラミジア、淋病の原因菌と症状、検査法、治療法についてまとめました。
マイコプラズマ | クラミジア | 淋病 | |
病原菌 | マイコプラズマ・ジェニタリウムマイコプラズマ・ホミニス | クラミジア | 淋菌 |
症状 | 男性:尿道炎、精巣上体炎 排尿時痛、尿道不快感、陰嚢の腫脹、圧痛、発熱女性:子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患 帯下の増加、性器のかゆみ、不正出血、下腹部痛、肝周囲炎 ※ほとんど無症状咽頭:咽頭痛、喉の違和感、咳が出やすくなる | ||
検査 | 尿検査、綿棒で拭い液を取る顕微鏡での確認不可 | TMA法、イムノクロマト法、PCR法顕微鏡での病原体確認が可能 | |
治療 | 抗菌剤を内服※薬剤耐性を持っていることが多く、効果が得られにくい | 抗菌剤を1日~7日間の内服 重症化の場合は点滴 |
検査をせずに症状だけでマイコプラズマかクラミジアか、淋菌かを見分けるのは極めて困難です。感染経路も症状もほぼ同じであるため、まずは検査をして病原菌を判明させたのちに適切な治療を受けましょう。
マイコプラズマはどうやってうつるのか
マイコプラズマの主な感染経路を断つことで、感染の予防が可能です。そのために、感染経路について理解しておきましょう。また、ピンポン感染といってパートナーがいる方の場合、パートナーとお互いにうつしたりうつされたりを繰り返す状態になる危険性があるため、もしパートナーが感染した場合にはお互いに検査を受け、治療する必要があります。
主な感染経路
マイコプラズマの主な感染経路としては性行為による接触や口腔行為による咽頭粘膜との接触、キスによる唾液での媒介、直腸性交による直腸と性器の接触です。
1回の性行為で感染する確率は約30%とされており、4回の行為でほぼ確実に感染している状態といえるでしょう。また無症状が多く、いつ感染したかはっきりとわからないこともあります。
マイコプラズマはお風呂やトイレで感染する可能性は極めて低く、あくまで直接的な接触が原因となります。性器同士の感染だけではなく、咽頭から性器、直腸から性器など、検尿での検査は陰性でも直腸の拭い液から検出されることもあります。
妊婦中に感染すると早産や死産のリスクが高まります。出産時に妊婦が感染していると新生児に感染が移る可能性もあり、新生児が感染すると肺炎や結膜炎を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
パートナーがかかったら要注意
パートナーが検査を受けてマイコプラズマが検出された場合、注意が必要です。マイコプラズマは1回の行為で約30%が感染するとされるため、無症状であっても自分も感染している可能性があります。
パートナーからマイコプラズマが検出された場合には自分も検査を受け、一緒に治療を進めましょう。パートナーがマイコプラズマの治療を行って完治した場合でも、もし自分自身が感染していると再度パートナーへ病原菌を感染させる危険性があります。
パートナーに伝えるのは抵抗があるかもしれませんが、このようなピンポン感染を防ぐためにも腹を割って話すことで早期に問題を解決しておきましょう。
マイコプラズマの検査や治療法とは
マイコプラズマの検査は主に検尿と直腸の拭い液となります。また治療方法は抗菌剤の投与を基本的には1週間行いますが、薬剤耐性菌に注意が必要です。必ず完治するとは限らず、治癒判定を行ってマイコプラズマの消滅を確認する必要があります。
以下では検査や治療の方法について解説し、治療せずに放置するとどうなるかという点も紹介します。
検査について
マイコプラズマの検査については、保険適応のものと自由診療のものとに分かれます。どちらも検体の採取方法は同じでPCR法による検査を実施しますが、男性と女性では検体の採取方法が異なります。
性器の場合
- 男性:尿検査
- 女性:膣分泌液の拭い液
- 直腸:直腸拭い液
性病の検査は周囲の目も気になるため市販の検査薬を購入して検査を実施する方もいますが、医療機関での検査をおすすめします。市販の検査薬で陽性反応が出た場合には再度、医療機関での検査が必要です。
病院によっては自由診療として、初診と再診無料、匿名での検査を行っている病院もあります。陽性となった場合には早期に治療が開始できるため、市販の検査を実施する前に問い合わせてみるとよいでしょう。
マイコプラズマはクラミジアや淋病によく似た症状が出現するため、検査結果によって判断するしかありません。またクラミジアや淋菌の検査をしたものの、どちらも陰性だったために見過ごされることも少なくないのが現状です。
治療方法について
マイコプラズマの治療方法は抗菌剤の使用による薬物療法がメインです。抗菌剤は数種類ありますが、マイコプラズマの治療で使用する薬物に耐性があるかどうかが問題となってきます。もしも耐性があるのであれば、その薬剤を使用しても効果がないため使用できません。
治療で使われる薬剤としては以下のようなものがあります。
- マクロライド系
- フルオロキノロン系
- テトラサイクリン系
- ニューキノロン系
基本的な流れでは1週間の内服をし、2週間後に再度検査を実施してマイコプラズマの検出がないかを確認します。ここでもしも再度、菌が検出された場合には再度抗菌剤の内服が開始となります。
治療開始後において、ピンポン感染を起こす可能性があるため性行為は医師が許可するまでは控えるようにしましょう。
治療しないとどうなるのか
マイコプラズマが検出されたまま治療せずに放置しておくと、身体へさまざまな影響が生じます。自然治癒はほぼなく、そのまま菌が増殖します。さらに悪化すると精巣上体炎や卵管炎になってしまいます。さらに男性であれば無精子症、女性であれば卵管狭窄や閉塞により不妊の原因に直結します。
知らないうちに感染して状態が悪化し、不妊に悩む方も少なくありません。また妊娠中にマイコプラズマに感染することによって、胎児への影響があることも知られています。子宮頸管炎や骨盤腹膜炎などになると流産や早産のリスク要因となります。そのため、感染がわかった時点で産科医や性病科の医師と相談して治療しましょう。
性病と聞くと抵抗があるかもしれませんし、パートナーとの仲を悪くさせるイメージがありますが、これらは誤解です。浮気の証拠にはならないため、医師の指示のもと、しっかりと協力し合ってマイコプラズマの治療を行っていきましょう。
マイコプラズマにならないための予防法について
マイコプラズマの予防方法としては、粘膜同士を接触させないことです。性行為や性交類似行為(口腔性交や肛門性交など)のときにはコンドームの使用を忘れずに行いましょう。
コンドームをきちんと使用するだけで、自分自身も相手も守ることができます。また感染の疑いがある方との性行為や性交類似行為は行わないようにしましょう。また不特定多数と性行為や性交類似行為を行わず、もしも感染がわかった場合に連絡を取りあい、一緒に受診できるようにしておきましょう。
まとめ
マイコプラズマはクラミジアや淋菌と同様、無症状のことが多く発見に気づきにくい性感染症です。1回の性行為で約30%が感染すると言われており、パートナー同士での感染拡大が大きな問題となります。
感染経路としては性行為や性交類似行為で性器や咽頭、直腸の粘膜同士が触れることで感染します。無症状のため、自分自身が感染している危険性や相手が感染している危険性が目に見えません。少しでも感染を防ぐため、コンドームの利用が推奨されています。
治療としては抗菌剤の服用が一般的ですが、マイコプラズマは薬剤耐性を持っていることがあるため服用した抗菌剤の効果が期待できないこともあります。また1回で100%治癒するわけではないため、必ずマイコプラズマが消滅しているか確認する再診は受けましょう。
検査や治療に抵抗がある方は自由診療として、匿名で検査を受けることが可能な医療機関もあります。自分自身で症状を自覚した場合は、一度病院やクリニックなど医療機関に問い合わせて確認してみましょう。
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