尿道炎の治療方法とは?市販薬でも治療はできる?治し方についても解説

尿道炎は感染症の一種で、主に性行為の際、尿道に細菌やウィルスなどが侵入することで起こります。「排尿時に痛みがある」「尿道から膿が排出される」などの症状が見られる場合、尿道炎の可能性が高いです。市販薬では適切な効果が期待できないため、早めに泌尿器科を受診することをおすすめします。

ここでは、尿道炎の種類や原因、主な症状などに加え、正しい治療方法や予防について解説します。本記事を最後までご覧いただければ、尿道炎に対する理解が深まり、今するべきことが明確になるでしょう。「尿道炎かもしれない…」と感じている人はぜひ、参考にしてみてください。

尿道炎とは?

尿道炎とは、細菌やウィルスなどが尿道から侵入することで引き起こされる感染症です。主な症状や特徴、治療法の概要を簡潔にまとめます。

症状・頻尿・痛みやかゆみ・排尿時の違和感・膿や分泌物が出る・無症状のケースもある
特徴・性行為によって発症するのが一般的・不妊症や膿瘍などの合併症を引き起こすリスクがある・原因菌やウィルスによって症状や痛みを感じる部位が異なる
治療法・注射や点滴・抗生物質の内服

無症状のケースもありますが、放置しておくと合併症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。次項では感染を疑った場合に確認するポイントに加え、尿道炎になりやすい人や年代について解説します。

感染を疑った場合に確認するポイント

感染を疑った場合のチェックポイントは以下のとおりです。

  • 頻尿気味になっていないか
  • 尿道に痛みやかゆみがあるか
  • 排尿時に膿や分泌物が出るか
  • 排尿時に違和感や痛みを伴うか

いずれか一つでも該当する項目があるなら、早急に泌尿器科を受診しましょう。性行為によって発生した尿道炎の場合、パートナーへの対応も視野に入れてください。

なりやすい人や年代

尿道炎になりやすい人や年代の特徴は以下のとおりです。

  • 男性に発症しやすい
  • 20代〜40代に多くみられる
  • 性器周辺の衛生状態がよくない

尿道炎は男性に起こりやすいですが、女性も油断はできません。女性は男性と比較して尿道が短く、膀胱炎も同時に発症しやすい点に注意が必要です。

性行為を原因としていることが多く、オーラルセックスによって喉や目などの部位に症状が現れる事例も確認されています。性器周辺が清潔に保たれていない場合は感染リスクが高まるため、衛生状態は常にチェックしておきましょう。

尿道炎の種類と原因とは?

尿道炎は大きく、以下の3種類に分類されます。

  • クラミジア性尿道炎
  • 淋菌性尿道炎
  • 非クラミジア性非淋菌性尿道炎

それぞれに「原因や初期症状、潜伏する期間」などが異なります。具体的な特徴を順に見ていきましょう。

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クラミジア性尿道炎

原因菌・ウィルスクラミジア
初期症状・薄黄色の透明な分泌物が尿道から出る・自覚症状があまり出ない・無症状で発症していることに気づかない人もいる
潜伏期間1〜3週間
特徴・オーラルセックスやディープキスなどで喉に発症する場合がある・前立腺炎により腰などの他部位にも痛みが出るケースがある

クラミジア性尿道炎はその名のとおり、クラミジアと呼ばれる細菌によって引き起こされます。症状がはっきりと表れないケースがあり、発症していることに気づかない人もいます。

ただし、放置していると前立腺炎を誘発するリスクがあるため、少しでも違和感があれば検査だけでも受けたほうが安心です。

淋菌性尿道炎

原因菌・ウィルス淋菌
初期症状・初期尿道痛・濃厚な膿の排出・外尿道口の腫れ
潜伏期間数日〜1週間
特徴・強い痛みを伴うことが多い・不妊症の原因になるケースがある・前立腺炎や精巣上体炎を起こすことがある

淋菌性尿道炎は感染してから早ければ数日ほどで初期症状が表れます。尿道の痛みや濃厚な膿の排出など、分かりやすく症状が出るため、ほとんどの人が感染していることに気づくでしょう。

非クラミジア性非淋菌性尿道炎

原因菌・ウィルス・大腸菌・マイコプラズマ・ウレアプラズマ・アデノウイルス・インフルエンザ菌・ヘルペスウイルス・膣トリコモナス原虫
初期症状・軽度なかゆみ・尿道の軽い痛み・無症状のケースもある
潜伏期間1〜3週間
特徴便座や浴室が原因菌の感染経路になり得る

マイコプラズマやウレアプラズマは無症状であることも多いため注意が必要です。また、原因菌の種類によっては、便座や浴室が感染経路になり得ます。衛生管理への意識を高めておきましょう。

尿道炎の感染経路とは?

主な感染経路は以下の2パターンです。

性感染症性行為をきっかけにしてパートナーから移る
異所性感染腸や肛門に潜む細菌が尿道口から侵入する

近年では、オーラルセックスによって原因菌が喉に感染するケースも多く見られます。異所性感染は、性器周辺や肛門を不衛生にしていると起こりやすいため、衛生面に注意が必要です。

尿道炎の主な症状は?

発症を疑った場合、以下のポイントを確認していきましょう。

  • 潜伏期間
  • 主な症状
  • 発症後から治るまでの期間

尿道炎の潜伏期間は原因菌の種類によって大きく異なります。また、主な症状は性別によって細かな違いもあるため、しっかり理解しておきましょう。

潜伏期間

潜伏期間は以下のとおりです。

  • 淋菌感染:2~7日間
  • クラミジア感染:1〜3週間

淋菌の場合、感染から数日程度で尿道の痛みや尿道口から濃い膿を出したり、腫れたりするなどの症状が見られます。クラミジア感染よりも症状が激しいのが特徴です。

一方、クラミジア感染は潜伏期間が1〜3週間と長く、症状も穏やかであるため、気づかない人もいます。ただし、放置していると排尿時の痛みや発熱など、別の病気へと発展した後にさまざまな症状につながる危険性が高くなります。

主な症状

主な症状は以下のとおりです。

  • 頻尿
  • かゆみ
  • 痛がゆい
  • ヒリヒリする
  • ムズムズする
  • 排尿時の痛み
  • 排尿時の違和感

基本的には、男女ともに似たような症状が見られますが、性別ごとの細かい違いについても見ていきましょう。

男性

男性が感染した場合の主な症状は以下のとおりです。

  • かゆみ
  • 性器の赤み
  • 排尿時の痛み
  • 排尿時に膿が出る
  • 精巣(睾丸)の腫れ

上記のほか、ディープキスなどの粘膜接触が原因で淋菌やクラミジアが喉に感染すると、喉の奥の痛みや風邪に近い症状、扁桃腺炎などをきたすこともあります。

いずれの症状も感染した場合に見た目だけでは判断できません。20~30%の確率で、同時に感染しているケースも見られます。正しく判別するには泌尿器科を受診し、尿や分泌物による検査が必要です。

女性

女性ならではの症状として、トリコモナス腟炎が挙げられます。腟トリコモナス原虫が寄生することによって起こる炎症です。感染経路は主に性行為ですが、衣類やタオル、浴槽、便器などを介して感染するケースもあります。

20~50%が無症状と言われる一方、以下の症状が見られる点に注意が必要です。

  • 痛み
  • かゆみ
  • 泡状で悪臭の強いおりもの

トリコモナス腟炎は尿道や膀胱などにも感染し、尿道炎や膀胱炎、外陰炎などの合併症を引き起こすこともあります。膣周辺やおりものに違和感を覚えたら、すぐに泌尿器科を受診しましょう。

発症後から治るまでの期間

発症後から治るまでの期間は1週間程度ですが、治療薬によって異なります。治療に有効とされる抗菌薬の成分と目安の服用期間は下表のとおりです。

抗菌薬の成分主な商品名目安の服用期間
アジスロマイシンジスロマック錠1日
・レボフロキサシン・シタフロキサシン・クラビット錠・グレースビット錠3日
・ミサイクリン・ドキシサイクリン・ミノマイシン・ビブラマイシン7日
セフトリアキソンロセフィン注(点滴)1日(点滴)

処方した薬で効果がない場合、治療薬の変更を検討します。薬の服用だけでなく、コンドームの重要性や、オーラルセックスによる感染リスクをパートナーに理解してもらうことも大切です。

尿道炎の治療方法

治療方法について、以下の項目ごとに解説します。

  • 抗生物質の服用
  • 注射や点滴による治療

どちらの治療方法が適切かは原因菌によって異なるため、まずは診察を受けると明確になるでしょう。基本は抗生物質の治療ですが、何らかの原因で効かない場合は注射や点滴の治療へ切り替えるのが一般的です。

抗生物質の服用

クリニックで尿道炎の検査を受け、原因菌が判明したら適切な抗生物質を処方してもらいます。抗生物質の服用に関する注意点は以下のとおりです。

  • 症状が治った後も服用をやめない
  • 抗生物質の服用後は再検査を行い、完治したことを確認する
  • 服用期間中は水を多めに飲む

抗生物質の服用後も各種原因菌はしぶとく体内に残っているケースがあるため、油断は禁物です。医師の指示に従って、抗生物質の服用を継続しましょう。

投薬期間中は水を多めに飲むことで尿量を増やし、尿道内の菌を洗い流すことができます。完治までの期間が早まる可能性があるため、ぜひ実践してみてください。

注射や点滴による治療

原因菌が抗生物質への耐性がある場合、内服薬で治療することはできません。次の手段として、抗菌薬の筋肉注射や点滴による治療が行われます。原因菌と使用される主な治療薬の組み合わせは以下のとおりです。

  • 淋菌:セフトリアキソンの注射
  • クラミジア:アジスロマイシンやドキシサイクリンなどの点滴

注射・点滴ともに1回で診療が完了するため、時間や労力はそこまでかからないでしょう。

尿道炎の自己治療について

尿道炎の自己治療について、次の項目ごとに解説します。

  • 放置するとほかの病気を併発する可能性がある
  • 市販薬では症状に適切な効果が期待できない

結論、尿道炎の自己治療はNGです。市販薬では適切な治療になりません。放置することのリスクや、正しい治療に対する理解をしっかり深めておきましょう。

放置するとほかの病気を併発する可能性がある

大きな痛みや症状はありませんが、放置することで以下のような病気を併発するリスクがあります。

  • 精巣上体炎
  • 不妊症
  • 膿瘍

精巣上体炎は、精子を蓄えたり運んだりする役目を担う精巣上体が炎症を起こしてしまう症状です。女性の場合、子宮付属器炎や骨盤腹膜炎などの合併症により、不妊症を併発する可能性があります。

また、淋菌に起因する尿道炎を放置すると、尿道周辺に膿瘍ができる危険性も高まる傾向です。いずれにせよ、放置して良いことは一つもありません。自己治療で済ませようとせず、必ず医師のサポートに従って治療を進めてください。

市販薬では症状に適切な効果が期待できない

結論として、市販薬による尿道炎の治療はおすすめできません。理由は以下のとおりです。

  • 市販薬では症状に適切な効果が期待できない
  • 原因菌が多岐にわたり、治療方法や適切な治療薬が異なる
  • 市販薬が症状に合っているかどうかは医師の診断でないと分からない

また、性行為を原因とする感染であればパートナーにも検査や治療の必要性が出てきます。以上をふまえると、早急に泌尿器科で医師の診療を受け、パートナーと共に最善の治療を選択するべきでしょう。

予防するためにできること

尿道炎の感染予防に有効な手段は大きく3種類です。

  • 性行為の際のコンドーム使用
  • 健康管理による免疫力向上
  • 発症する可能性がある部位を清潔にする

コンドームを使用するだけでも効果がありますが、日頃からの健康管理や衛生管理も非常に重要と言えます。それぞれの予防法について、詳しく見ていきましょう。

性行為の際のコンドーム着用

性行為の際のコンドーム使用は必須と言っても過言ではありません。尿道炎は性行為が感染源になるのがほとんどです。基本中の基本とも言えるコンドームの使用に加え、性行為に関して以下の注意事項を理解しておいてください。

  • 性風俗店の利用は避ける
  • 不特定多数と性行為をしない
  • 強い刺激を伴う性行為をしない

コンドームを着用していても、強い刺激が加わると粘膜に傷がつき、細菌が侵入する恐れがあります。なお、性行為の後は排尿することで、細菌の侵入を防げることも覚えておきましょう。

健康管理による免疫力向上

日々の健康管理で免疫力を鍛えておけば、感染するリスクは低下します。免疫力を高めるうえでおすすめの方法は以下のとおりです。

  • 禁煙をする
  • 睡眠をしっかりとる
  • 運動習慣を身につける
  • 健康的な体重を維持する
  • 栄養バランスの良い食事を取り入れる

まずはできることから始めて、徐々に健康的な習慣を増やしていくのがポイントです。あれもこれも一気にやろうとすると、挫折する可能性が高くなります。長期的に継続するために、最初は小さく始めてみてください。

発症する可能性がある部位を清潔にする

肛門や性器周辺など、発症する可能性がある部位は清潔にしておきましょう。ただし、該当の部位を洗いすぎるのは逆効果です。皮膚のバリア機能が落ちてしまい、細胞が侵入しやすくなってしまいます。肛門や性器周辺を清潔に保つうえでのポイントは以下のとおりです。

  • 下着をこまめに交換する
  • 優しく洗い流すイメージを持つ
  • シャワーではなく入浴の習慣を身につける

ゴシゴシ洗うより、優しく洗い流すことや、入浴の習慣を身につけることを意識してください。下着はこまめに交換し、常に清潔な状態を保っておくとより安心です。

尿道炎と似ている病気

似ている病気には、「クラミジア感染症」や「淋病」が挙げられます。共通している主な症状は以下のとおりです。

  • かゆみが生じる
  • 尿から膿が出る
  • 排尿時に痛みを伴う
  • 性器が少し赤くなる

クラミジア感染症は症状が穏やかで、気づかない人もいます。しかし、油断して放置してはいけません。悪化して前立腺炎・精巣上体炎などを引き起こしてしまう可能性があるからです。

いずれも外見では判断できず、症状によって治療法は異なるため、尿や分泌物を検査してもらうことをおすすめします。検査や診察は原則として同じ科で問題ありません。少しでも違和感を覚えた場合は、速やかに医師の診療を受けましょう。

まとめ

尿道炎についてさまざまな切り口から解説しました。最後に重要なポイントを簡潔にまとめます。

  • 痛みやかゆみを伴うほか、排尿時に膿や分泌物などが出る感染症
  • 男性や20〜40代の人が発症しやすい
  • 性行為が原因となるのが一般的
  • 潜伏期間は数日〜3週間程度(原因菌によって異なる)
  • 抗生物質の服用か、注射・点滴によって治療するのが適切
  • 市販薬で治療できないため、自己治療はNG
  • 予防はコンドームの使用や健康管理、衛生管理などが有効

尿道炎が疑われる場合、まずは泌尿器科で医師の診断を受けることが大切です。パートナーに感染しているケースもあるため、あなただけの問題ではありません。ぜひ速やかに病院に足を運んでいただき、適切な治療方法で完治を目指してください。

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