近年、梅毒をはじめとする性感染症の報告数が急激に増加しています。性感染症のひとつ、「性器ヘルペス」について耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。自分の身を守るだけでなく、大切なパートナーに感染さないためにも正しい知識を身に付けておくことが大切です。
ヘルペスが陰部に発生する「性器ヘルペス」とは
ヘルペスとは、ヘルペスウイルスが皮膚や粘膜に感染し、小さい水ぶくれがたくさん現れる急性炎症性皮膚疾患のことです。性器ヘルペスと口唇ヘルペスに分かれます。
性器ヘルペスとは
性器ヘルペスとは、ヘルペスウイルスが陰部に感染することで発症するヘルペスです。性行為やオーラスセックスだけでなく、タオルやコップの共用でも感染することがあります。ヘルペスウイルスに感染してもすぐに症状が出ないあるいは症状が軽いケースがあり、免疫力が落ちた時に活性化します。ウイルスの潜伏期間は約3〜7日程度です。
【男女別】ヘルペスが陰部にできた場合の症状
ヘルペスが陰部にできると、男女別で以下のような症状が現れます。
【男性の場合】
- 全身に強い痛みや倦怠感が出る
- 陰茎に水ぶくれが多発する
- 発熱や頭痛、排尿痛がある
- 太ももやリンパ節に腫れや痛みがあり、尿道分泌物が出る
【女性の場合】
- 全身に強い痛みや倦怠感が出る
- 大陰唇や小陰唇から、膣前庭部、会陰部にかけて、水ぶくれやただれができる
- 発熱や頭痛、排尿痛がある
- 太もものリンパ節に腫れや痛みが出る
男女ともに、症状はおおむね共通していますが、女性の方が男性より症状が強く出る傾向にあります。
男性の場合
性器ヘルペスを発症しているパートナーとの性的接触から、3~7日の潜伏期間を経て発症します。パートナーの自覚症状の有無は関係ありません。包皮や冠状溝、亀頭、陰茎にかゆみや違和感を伴う小さな水ぶくれが多発し、3~5日後に水ぶくれが破けて強い痛みを伴うただれができ、1週間後に最も重症化します。
初めて感染した場合に強く症状が出ることが特徴です。全身に強い痛みや倦怠感、リンパの腫れなどが現れ、発熱や頭痛、排尿痛を伴うこともあります。
発症後は2~4週間程度で症状がなくなりますが、一度感染すると体内にウイルスが残っているため、免疫力が低下すると再発しやすくなります。再発の場合は初感染よりも軽度の症状で済むことが多いものの、病変の間は性交渉でパートナーに移す可能性が非常に高いので注意しなければなりません。
女性の場合
性的接触後、3~7日の潜伏期間のあとに比較的突発的に発症します。38℃以上の熱が出ることもあります。大陰唇や小陰唇から、膣前庭部、会陰部にかけて、水ぶくれやただれが多発します。感染は外陰部だけでなく、子宮頚管や膀胱に及ぶことも少なくありません。症状が突発的かつ強いことから急性型とも呼ばれています。
女性の症状は男性より重く、重度の痛みにより排尿が困難になり、歩行すらできない状態になることもあるのです。ほとんどの症例でリンパの腫れが見られ、ときには強い頭痛や項部硬直、便秘の症状を伴うこともあります。男性と同様に、初感染よりも再発の方が軽症で済み、治癒までの期間が短い傾向です。
一度感染すると再発しやすく、頻繁に再発する場合は心身ともに多大なストレスがかかります。
陰部のヘルペス「性器ヘルペス」の検査方法と治療法
性感染症が疑われたら速やかに検査し、治療する必要があります。とはいえ、何科でどのような治療法を受けるべきかわからないという方も多いでしょう。
性器ヘルペスの検査方法
性感染症の検査は、内科や皮膚科、泌尿器科、婦人科でできます。
性器ヘルペスの検査方法は以下の2種類です。
・抗原検査
視診をして患部に水ぶくれの症状が見られる場合、患部を綿棒で拭ってウイルスそのもの(抗原)を採取して検査を行います。ウイルスを採取してから15分程度で確実な結果が得られるので、性器ヘルペスの検査では抗原検査が主流となっています。
・抗体検査
採血により抗体検査を行う血液検査です。皮膚症状が見られない場合にも検査が可能ですが、発症から日数が経たないうちに行うと偽陰性となる場合があります。また、抗体検査は性器ヘルペスと口唇ヘルペスの区別がつかないことに加え、過去に水ぼうそうや帯状疱疹に感染していた場合も陽性の結果が出る可能性もあるので、正しい結果が得られるとは限りません。
性器ヘルペスの治療法
性器ヘルペスは、2~4週間で自然治癒しますが、その間激しい痛みや不調に耐えなければなりません。悪化や再発を防ぐためにも、速やかに医療機関を受診して適切な治療を行いましょう。
塗り薬による治療
抗ヘルペスウイルス薬含有の塗り薬は、皮膚や粘膜の表面におけるウイルスの増殖の抑制が可能です。とはいえ、塗り薬は塗った箇所にしか効果がなく、膣部や子宮頸部など内部の治療は困難なため、塗り薬のみでの治療はおすすめしません。再発時かつ軽症時の治療法となります。
塗り薬による治療法は以下です。
- 3%ビタラビン軟膏または5%アシクロビル軟膏を1日数回、5~10日間塗布
なお、性器ヘルペスの塗り薬はドラッグストアでは販売されていません。医療機関で処方してもらいましょう。
飲み薬による治療
性器ヘルペスの飲み薬による治療は、「抗ヘルペスウイルス薬」を使用します。現在の抗ヘルペスウイルス薬では、潜伏感染しているウイルスを完全に排除することはできません。しかし、初感染時に薬で治療してウイルスの遺伝子数を減らしておくことで、再発頻度の低減が期待できます。
初発例の治療は以下のいずれかになります。
- バラシクロビル錠(バルトレックス®500㎎)1回1錠1日2回
- ファムシクロビル錠(ファムビル®250㎎)1回1錠1日3回
- アシクロビル錠(ゾビラックス®200㎎)1回1錠1日5回
いずれも5~10日間服用
いずれの薬剤も治療効果は同程度なので、1日の服用回数が少ないバラシクロビルによる治療が望ましいと言われています。痛みの強い方には鎮痛剤も併用します。
重症例では、注射用アシクロビル5㎎/kg/回を1日3回、8時間ごとに1時間かけて7~10日間点滴しなければなりません。歩行困難や排尿困難の場合は、入院が必要です。
再発抑制療法
世界では、年6回以上再発を繰り返す患者に対して、抗ヘルペスウイルス薬の継続投与による再発抑制療法が推奨されています。日本では、再発頻度が1年に3回以上で、再発の初期症状を正確に判断できる方が健康保険の適用対象者です。
治療法は以下のとおりです。
- ファムシクロビル(ファムビル®)を初期症状発現後6時間以内に4錠服用し、その12時間後に4錠服用
あらかじめ飲み薬を処方してもらっておいて、ピリピリ・ムズムズなどの再発の初期症状を感じたら自己判断で2回服用するという治療法です。この治療によって、病変の出現を予防できたり、治癒までの期間を早められたりします。服用を終えたら、次回の再発時用の飲み薬を処方してもらいます。身体に再発の初期症状を感じたらすぐに服用できるように備えておくことがこの治療法のポイントです。
\別の性病・混合感染の疑いがある場合は郵送検査/
ヘルペスが陰部にできた「性器ヘルペス」によくある質問
ここでは、性器ヘルペスに関するよくある質問をまとめています。不安や疑問があれば、参考にしてください。
性器ヘルペスでも問題なくお風呂に入れる?
お風呂のお湯では感染しないので問題ありません。
ただし、他の人への感染を防ぐためにいくつか注意点があります。
- 他の人とタオルを共有しない
- お風呂用のイスを使用した場合は、使用後にお湯をかけておく
- 患部を触ったあとはよく手を洗う
性器ヘルペスは市販薬で治療できる?
市販薬では治療できません。
ドラッグストアで販売されているものは口唇ヘルペスの塗り薬のみで、性器ヘルペス用の治療薬は個人輸入でなければ入手できません。個人輸入の治療薬は、厚生労働省の承認が下りていないものも多く、効果を得られなかったり、副作用が出たりするなどのリスクがあります。陰部に違和感があるときは自己判断せず、速やかに医療機関を受診しましょう。
性器ヘルペスを1日でも早く治す方法は?
抗ヘルペスウイルス薬をすぐに服用することです。
抗ヘルペスウイルス薬はウイルスが増殖しているときに効果を発揮します。ピリピリ・ムズムズなどの違和感がある段階ですぐに服用することで、水ぶくれの症状の軽減や、症状が出なくて済むなどの効果を得られます。1日でも早く治すためにも、できるだけ早く医療機関を受診してください。
性器ヘルペスの予防法は?
性器ヘルペスを要望するには、まずコンドームを使用することです。ただし、コンドームの使用で感染のリスクは減らせるものの、100%防げるわけではありません。症状が出ているときや、ピリピリ・ムズムズなど違和感があるときは性交渉を控えましょう。口唇ヘルペスができているときは、キスやオーラルセックスを控えてください。
感染したり、感染させたりするリスクが高まるので、不特定多数の相手との性的接触を持たないようにすることも大切です。また、免疫力を低下させないためにもバランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。
まとめ
性器ヘルペスは、陰部に水ぶくれやただれがたくさん現れ、発熱や倦怠感、痛みなど全身にも影響を及ぼす性感染症です。感染している相手との性交渉やオーラルセックスなどで感染する場合があります。感染しても無症状の人がほとんどなので、すべての人に必ずしも症状が出るわけではありません。ただし、陰部にピリピリ・ムズムズなどの違和感があれば速やかに内科や皮膚科、泌尿器科、婦人科などの医療機関を受診してください。
性感染症を予防するためにも性交渉の際は必ずコンドームを着用しましょう。日頃から規則正しい生活を送って免疫力を高めておくことも大切です。万が一、感染して再発を繰り返すようであれば、再発抑制療法を検討してください。
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