低用量ピルの使用を検討しているけれど、「種類が多すぎてどれを選べばいいのかわからない」「自分に合ったピルはどれ?」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
低用量ピルには世代別、相性別、使用目的別など、さまざまな分類があり、それぞれに特徴や効果が異なります。
本記事では、低用量ピルの種類とその違いについてわかりやすく解説します。

低用量ピルとOC・LEPの違い

低用量ピルには、使用目的によって「OC(経口避妊薬)」と「LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)」という2つの分類があります。
含まれている成分はほぼ同じですが、以下のような重要な違いがあります。
| 比較項目 | OC(経口避妊薬) | LEP(低用量ピル) |
|---|---|---|
| 主な使用目的 | 避妊 | 月経困難症・子宮内膜症の治療 |
| 保険適用 | 適用外(自費診療) | 適用(3割負担) |
| 処方条件 | 避妊目的で医師の判断により処方 | 月経困難症や子宮内膜症の診断が必要 |
| 費用の目安 | 月額2,000〜3,000円程度 | 月額600〜2,000円程度(3割負担) |
OCは避妊を主目的とするため全額自己負担となりますが、LEPは治療目的のため保険が適用されます。
ただし、保険適用のLEPを処方してもらうには、医師による診察で月経困難症や子宮内膜症と診断される必要があります。
避妊目的だけでLEPを処方してもらうことはできませんので注意しましょう。
低用量ピルの種類:世代・相性・タイプ別に詳しく解説

低用量ピルには、さまざまな分類方法があります。
ここでは、世代別、相性別、錠数タイプ別という3つの観点から、低用量ピルの種類を詳しく解説していきます。
世代別の分類:黄体ホルモンの種類による違い
低用量ピルは、含まれる黄体ホルモンの種類によって「第一世代」から「第四世代」まで分類されます。
世代が進むにつれて、副作用の軽減や新たな効果の追加など、改良が重ねられてきました。
第一世代:ノルエチステロン配合
第一世代の低用量ピルは、黄体ホルモンとして「ノルエチステロン(NET)」を使用しています。
日本で初めて承認された低用量ピルであり、長い使用実績があるため安全性のデータが豊富です。
- 生理痛の軽減効果が高く、経血量を減らす効果に優れている
- 月経困難症や子宮内膜症に対する高い治療効果も期待できる
第一世代の主なピルには、シンフェーズ(OC)、ルナベルLD/ULD(LEP)、フリウェルLD/ULD(LEP・ジェネリック)があります。
フリウェルはルナベルのジェネリック医薬品のため、同等の効果がありながら価格が抑えられているのが魅力です。
第二世代:レボノルゲストレル配合
第二世代の低用量ピルの黄体ホルモンは「レボノルゲストレル(LNG)」を使用しています。
- 不正出血が起こりにくく、子宮内膜を薄くする効果が強い
- 生理周期をコントロールしやすく、比較的副作用が少ない
- 血栓症のリスクが低い
第二世代の主なピルには、トリキュラー(OC)、アンジュ(OC)、ラベルフィーユ(OC・ジェネリック)、ジェミーナ(LEP)があります。
トリキュラーとアンジュは避妊目的で広く使用されており、ラベルフィーユはトリキュラーのジェネリック医薬品です。
第三世代:デソゲストレル配合
第三世代の低用量ピルは、「デソゲストレル(DSG)」を使用しており、主なピルには、マーベロン(OC)、ファボワール(OC・ジェネリック)があります。
- 男性ホルモンを抑制する効果が高く、ニキビや多毛症の改善に効果的
- 1相性のため服用管理が簡単
第三世代ピルはどの錠剤も同じホルモン量なので、飲む順番を間違えても避妊効果に影響がありません。
また、男性ホルモンの抑制効果が強いため、ニキビや肌荒れに悩んでいる方、多毛症の改善を希望する方に特におすすめです。
第四世代:ドロスピレノン配合
第四世代の低用量ピルは、黄体ホルモンとしてドロスピレノン(DRSP)を使用しています。
この世代の多くはエストロゲン量が少なく“超低用量ピル”に分類されるものもあります。
- エストロゲン量が最も少ない(超低用量)ため、副作用が起こりにくい
- 利尿作用があるためむくみにくく、ニキビ改善効果が高い
- PMS・PMDD症状に特に効果的で、保険適用(月経困難症の治療)での処方も可能
第四世代の主なピルには、ヤーズ(LEP)、ドロエチ(LEP・ジェネリック)、ヤーズフレックス(LEP)があります。
第四世代ピルは、従来のピルと異なり利尿ホルモンを主要成分としているため、むくみが起こりにくいのが大きな特徴です。
第四世代ピルは現在、保険適用での処方のみとなっており、避妊目的だけでは処方されませんので注意してください。
相性による分類:ホルモン量のパターンによる違い
低用量ピルは、1シート(28日分)に含まれるホルモン量のパターンによって「1相性」と「3相性」に分類されます。
この分類は、ピルがどのように女性の自然な月経周期をコントロールするかを示しています。
1相性ピル:ホルモン量が一定
1相性ピルは、1シート内のすべての実薬(有効成分を含む錠剤)において、ホルモン配合量が一定です。
1相性ピルのメリットとして、飲む順番を間違えても問題なく、服用管理が簡単であることが挙げられます。
生理日の調整がしやすく、体調が安定しやすいという特徴もあります。
1相性の主なピル
マーベロン、ファボワール、ルナベル、フリウェル、ジェミーナ、ヤーズ、ヤーズフレックス
3相性ピル:ホルモン量が段階的に変化
3相性ピルは、自然な月経周期に近いホルモン変動を再現しているため、体への負担が少ないとされています。
3相性ピルのメリットは、自然なホルモン分泌に近く、不正出血が起こりにくいことです。
ただし、錠剤の色が異なり、決められた順番で服用する必要があるため、飲む順番を間違えないよう注意が必要です。
3相性の主なピル
トリキュラー、アンジュ、ラベルフィーユ、シンフェーズ
飲み忘れが心配な方や、生理日の調整を頻繁に行いたい方には1相性ピル、より自然なホルモンバランスを希望する方には3相性ピルがおすすめです。
錠数タイプによる分類:21錠と28錠の違い
低用量ピルには、1シートが21錠のタイプと28錠のタイプがあります。
21錠タイプ:休薬期間あり
21錠タイプは、21日間ホルモンを含む錠剤を服用した後、7日間は薬を飲まない「休薬期間」を設けます。
休薬期間中に生理様出血が起こり、休薬期間後に新しいシートを開始します。
偽薬を飲まなくて済むため、薬の量が少なくて済みます。
28錠タイプ:毎日服用
28錠タイプは、21錠の有効成分を含む錠剤と、7錠の偽薬(プラセボ)が1シートに入っています。
毎日欠かさず服用を続けるため、飲み忘れを防ぎやすくなります。
現在は飲み忘れ防止の観点から、28錠タイプを処方するクリニックが増えています。
目的別おすすめの低用量ピル

低用量ピルは目的によって最適な種類が異なります。
避妊が目的の方におすすめのピル
避妊を主目的とする場合は、OC(経口避妊薬)を選びます。
- トリキュラー
- マーベロン
- ラベルフィーユ
- ファボワール
トリキュラーとマーベロンは日本で最も広く使用されている低用量ピルで、高い避妊効果と安全性が確認されています。
エストロゲン配合量が比較的少ないため、副作用が起こりにくく、日常生活に支障が出にくいでしょう。
コストを重視する方は、ジェネリック医薬品のラベルフィーユやファボワールがおすすめです。
生理痛を軽減したい方におすすめのピル
生理痛がひどい方は、月経困難症の治療に使用されるLEPを選びます。
- フリウェルLD/ULD
- ルナベルLD/ULD
- ジェミーナ
第一世代のフリウェルやルナベルは、生理痛の軽減効果が特に高く、経血量を減らす効果にも優れています。
ジェミーナは生理の回数自体を減らすことができ、生理痛が毎月つらい方には特におすすめです。
また、ULD(超低用量)タイプは血栓症のリスクが低いため、より安全に使用できます。
ニキビや肌荒れを改善したい方におすすめのピル
ニキビや肌荒れの改善を目的とする場合は、男性ホルモンを抑制する効果が高いピルを選びます。
- マーベロン
- ファボワール
- ヤーズ、ドロエチ
第三世代のマーベロン・ファボワールは、デソゲストレルという黄体ホルモンを使用しており、男性ホルモンの作用を強力に抑制します。
第四世代のヤーズ・ドロエチは、男性ホルモン様作用が最も少なく、ニキビ改善効果が高いとされています。
PMSを改善したい方におすすめのピル
PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)の改善には、ホルモン変動を最小限に抑えるピルが効果的です。
- ヤーズ
- ドロエチ
- 1相性のピル全般
ヤーズとドロエチは、PMSやPMDDの治療に保険適用される唯一のピルです。
基本的にどの低用量ピルでもPMSの改善効果は期待できますが、3相性よりも1相性のピルの方がホルモン量が一定のため、体調が安定しやすい傾向があります。
生理周期をコントロールしたい方におすすめのピル
生理周期をコントロールしたい方、生理の回数を減らしたい方には、連続服用が可能なピルがおすすめです。
- ジェミーナ
- ヤーズフレックス
- マーベロン
- ファボワール
ジェミーナは最大77日間(約3ヶ月)、ヤーズフレックスは最大120日間(約4ヶ月)の連続服用が可能です。
これにより、生理を年に4〜5回程度まで減らすことができます。
また、1相性のマーベロンやファボワールは、ホルモン量が一定のため生理日の調整がしやすく、旅行やイベントに合わせて生理日を移動させることができます。
むくみが気になる方におすすめのピル
むくみが気になる方には、第四世代のドロスピレノン配合のピルがおすすめです。
- ヤーズ
- ドロエチ
- ヤーズフレックス
ドロスピレノンには利尿作用があるため、他の世代のピルと比較してむくみにくいという大きな特徴があります。
従来のピルは男性ホルモンをベースに作られていましたが、第四世代ピルは利尿ホルモンを主要成分としているため、水分の体内蓄積を防ぎます。
低用量ピルに関するよくある質問

低用量ピルに関して寄せられる質問にお答えします。
ピルを飲むと太りますか?
低用量ピルそのもので体重が大幅に増加することは基本的にありません。
ただし、一部の方でむくみによる体重増加が見られることがあります。
むくみが気になる方は、利尿作用のある第四世代ピル(ヤーズ、ドロエチ、ヤーズフレックス)を選ぶとよいでしょう。
ピルを長期間飲み続けても大丈夫ですか?
定期的な検診を受けながらであれば、長期間の服用も安全です。
低用量ピルは長期服用による不妊のリスクはなく、服用を中止すれば通常1〜3ヶ月で排卵が再開します。
ピルを飲んでいればコンドームは不要ですか?
いいえ、性感染症予防のためにコンドームの併用をおすすめします。
低用量ピルは非常に高い避妊効果がありますが、性感染症(クラミジア、淋病、HIV、梅毒など)を防ぐ効果はありません。
性感染症予防のためには、ピルとコンドームの併用が最も確実です。
ピルの種類を変更することはできますか?
医師と相談の上で変更できます。
副作用が強い、効果が不十分、費用の問題などがある場合は、ピルの種類を変更することで改善する可能性があります。
相性のピルに変更したり、ジェネリック医薬品に切り替えたりすることも可能です。
保険適用のピルと自費のピルで効果に違いはありますか?
避妊効果に関しては、保険適用のLEPも自費のOCも同等です。
ただし、保険適用のピルは月経困難症などの治療を主目的としているため、避妊目的だけでは処方されません。
効果や安全性に違いはありませんので、自分の症状や目的に合わせて選びましょう。
まとめ:自分に最適な低用量ピルを見つけよう
低用量ピルは、正しく服用すれば非常に高い効果と安全性を持つ薬です。
しかし、どのピルが最適かは、個人の体質、生活スタイル、既往歴、使用目的などによって異なります。
本記事で紹介した情報を参考に、あなたに最適な低用量ピルを見つけてください。
ピル選びに関する具体的なご相談や処方は、ルナレディースクリニックがサポートいたします。




