「生理がきそうなのに、なかなか始らない…」「いつもと何となく体調が違う気がする…」
生理予定日が近づくと、ちょっとした体の変化に敏感になり、期待と不安で落ち着かない気持ちになりますよね。
実は、妊娠したごく初期にあらわれる「妊娠超初期症状」は、生理前に起こるPMS(月経前症候群)の症状と驚くほどよく似ています。これは、どちらの時期にも「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンが大きく関わっているためです。
この記事では、産婦人科医の監修のもと、妊娠初期症状と生理前の違いを徹底的に比較します。この記事を読めば、症状ごとの違いがわかり、今どう行動すればよいかが明確になります。あなたのその症状がどちらなのか、一緒に確かめていきましょう。
妊娠初期症状?それとも生理前?気になるサインをセルフチェック

まずは、気になる症状がどちらの可能性が高いのか、ひと目でわかる比較表でチェックしてみましょう。時間がない方は、ここだけでも確認してみてください。
症状 | 妊娠超初期のサイン | 生理前(PMS)のサイン | 見分けるワンポイント |
---|---|---|---|
基礎体温 | 高温期が続く(3週間以上) | 生理直前に体温が下がる | 生理予定日を過ぎても体温が下がらなければ可能性大 |
下腹部痛 | チクチク、ズキズキ、引っ張られる感じ | 重く鈍い痛み、絞られるような痛み | 痛みの「種類」が違うことが多い |
胸の張り | 痛みが続く、乳首が敏感になる | 生理が始まると痛みが和らぐ | 症状が「持続・悪化」するかどうかがカギ |
おりもの | 量が増え、水っぽくサラサラになる | 量が減り、ドロッと粘り気が強くなる | 「量」と「質感」の変化に注目 |
眠気 | 経験したことのない異常な眠気 | いつもの周期的な眠気 | 日常生活に支障が出るほどの眠気か |
吐き気 | 空腹時や特定の匂いで気持ち悪くなる | 胃のむかつき程度が多い | 吐き気を感じる「きっかけ」が違う |
イライラ | 涙もろくなるなど感情の起伏が激しい | イライラや落ち込みが中心 | 感情の振れ幅がいつもより大きいか |
出血 | ごく少量(ピンク・茶色)で1〜3日で終わる | 徐々に量が増え、鮮血になる | 「量」と「期間」が明らかに違う |
食欲 | 食べ物の好みが急に変わる、偏る | 食欲旺盛になることが多い | 「食べたいもの」が極端に変化するか |
頭痛 | ズキンズキンと続くことがある | 生理が始まると治まることが多い | 症状の「持続期間」が長引く傾向 |
めまい | ふわふわするような感覚、立ちくらみ | 同じく立ちくらみなどが起こる | 貧血のような症状を伴うことが多い |
寒気・ほてり | 寒気とほてりを交互に感じる | ほてりを感じることが多い | 寒暖差を激しく感じるか |
げっぷ・おなら | 普段より回数が増えることがある | お腹の張りに伴って出やすくなる | 消化不良のような感覚が続くか |
頻尿 | トイレに行く回数が明らかに増える | 膀胱が圧迫される感覚がある | 「回数」が顕著に増えるのが特徴 |
※ここで紹介する症状の違いは、あくまで「一般的な傾向」です。最終的な判断は妊娠検査薬の使用や医療機関での受診が必要です。
【症状別】妊娠初期と生理前のサイン、ここが違う!
それでは、多くの女性が経験する症状について、妊娠のサインと生理前のサインの違いをさらに詳しく見ていきましょう。

大前提として、これからお話しする症状はあくまで一般的な傾向であり、すべての人に当てはまるわけではありません。症状の有無や強さには本当に個人差がありますから、「自分はこれに当てはまらないから違う」と決めつけず、一つの目安として落ち着いて読んでみてくださいね。
基礎体温・熱っぽさ:「高温期が続くか、下がるか」が大きな違い
基礎体温を測っている方にとって、体温の変化は最も客観的な判断材料になります。 通常、女性の体温は排卵後に上昇して「高温期」に入り、生理が始まる1〜2日前にガクッと下がって「低温期」に移行します。

もし妊娠していれば、生理予定日を過ぎても体温が下がらず、高温期が続きます。一般的に、高温期が3週間以上続いた場合は妊娠の可能性がかなり高いと言えるでしょう。
下腹部痛・お腹の違和感:「生理痛」と「着床痛」の違い
お腹の痛みは、その「種類」や「場所」に違いが出ることがあります。 いつもの生理痛は、子宮が経血を押し出そうと収縮するために起こる、下腹部全体の重く鈍い痛みや、キューッと絞られるような痛みが特徴です。
一方、妊娠初期の腹痛は、受精卵が子宮内膜に着床する際の「着床痛」や、これから大きくなる子宮を支える靭帯が引っ張られる痛みである可能性があります。チクチク、ズキズキとした部分的な痛みや、足の付け根あたりが引っ張られるような違和感として感じることが多いようです。
おりもの:「量・色・粘り気」に変化はあった?
おりものの変化も、気づきやすいサインの一つです。 生理前は、排卵期に比べておりものの量は減り、粘り気が強く白濁した状態になるのが一般的です。
一方で妊娠すると、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が続くため、量は増え、水っぽくサラサラした状態に変化することがあります。色は透明から乳白色で、においもあまりないのが特徴です。ただし、おりものの状態は体調によっても変わるため、これだけで妊娠を判断するのは難しいと覚えておいてください。
妊娠のサインとは別に、おりものの色やにおい、かゆみなどが気になる場合、性感染症(STD)などが隠れている可能性もあります。
病院に行く時間がない、あるいは少し抵抗があるという方でも、ご自宅で誰にも知られずにチェックできる検査キットがあります。まずはご自身の体の状態を正確に把握することが、安心への第一歩です。

出血:「着床出血」と生理の見分け方
生理予定日頃に少量の出血があると、「生理が始まってしまった…」とがっかりしてしまいますよね。でも、それは「着床出血」かもしれません。 着床出血は、受精卵が子宮内膜にもぐり込む際にごく少量の出血が起こる現象で、すべての妊婦さんに起こるわけではありません。
生理との一番の違いは、出血の量と期間です。着床出血は、おりものにピンクや茶色の血が混じる程度で、1〜3日で終わることがほとんどです。レバー状の塊が混じることもありません。
【注意】普段の生理と明らかに違う出血や、強い腹痛を伴う出血は、子宮外妊娠などの可能性も考えられます。自己判断せず、早めに産婦人科を受診してください。

これは非常に大切なポイントです。特に「いつもの生理痛とは違う、刺すような強い腹痛」を伴う出血が見られた場合は、ためらわずに医療機関に連絡してください。クリニックの現場でも、子宮外妊娠の早期発見は母体の安全のために最も重要視しています。
「考えすぎかな?」と遠慮する必要は全くありません。私たち専門家は、そういったご相談にいつでも対応できるよう準備しています。

眠気・だるさ:「抗えないほどの眠気」は妊娠のサインかも
生理前も眠くなる方は多いですが、妊娠初期の眠気は「質が違う」と感じる方が多いです。
私のクリニックに来られる患者さんからも、「仕事中に意識が飛びそうになった」「休日は一日中寝て過ごしてしまった」という声をよく聞きます。これは、妊娠を維持するために働くプロゲステロンが、強い眠気を引き起こす作用を持つためです。日常生活に支障が出るほどの、抗えない眠気を感じたら、それは妊娠のサインかもしれません。
吐き気・食欲の変化:「つわり」の始まり?
吐き気は、妊娠初期症状として最もよく知られています。生理前にもホルモンバランスの変化で胃がムカムカすることはありますが、妊娠初期の「つわり」はより特徴的です。例えば、空腹になると気持ち悪くなる「食べつわり」や、特定の匂いが全くダメになる「においつわり」などが現れます。
今まで大好きだったコーヒーが飲めなくなったり、無性に酸っぱいものが食べたくなったりと、食の好みが180度変わってしまうことも珍しくありません。
その他の違い(胸の張り・イライラ・寒気・げっぷ等)
他にも、多くの女性が「いつもと違う」と感じる細かいサインがあります。胸の張りは、生理前は生理が始まると楽になりますが、妊娠初期は生理予定日を過ぎても張りや痛みが続いたり、むしろ強くなったりします。乳首が下着に触れるだけで痛い、乳輪の色が濃くなった、というのも特徴です。
精神状態では、生理前のイライラだけでなく、理由もなく涙が出たり、ささいなことで感動したりと、感情のアップダウンが激しくなる傾向があります。
また、高温期が続くため体は熱っぽいのに、ゾクゾクと悪寒がするといった不思議な感覚や、ホルモンの影響で消化器官の動きが鈍くなり、げっぷやおならが増えるといった変化を感じる方もいます。
なぜ症状が似ているの?妊娠初期と生理前で働く「ホルモン」の話

妊娠初期症状と生理前の症状がなぜこんなに似ているのか、不思議に思いませんか? その答えは、どちらの時期にも「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンが深く関わっているからです。
プロゲステロンは、排卵後から生理前にかけて分泌量が増えるホルモンで、「妊娠の準備」をするために働きます。具体的には、基礎体温を上げたり、子宮内膜を厚くしたり、水分を体に溜め込んだりします。これが、生理前の眠気やだるさ、胸の張りといったPMSの症状を引き起こす原因の一つです。
妊娠が成立しなかった場合は、生理が近づくとプロゲステロンは急激に減少し、子宮内膜が剥がれ落ちて生理が始まります。
一方で妊娠が成立した場合は、プロゲステロンは分泌され続け、厚くなった子宮内膜を維持して妊娠を継続させるために働きます。さらに、妊娠しないと分泌されない「hCGホルモン」という特別なホルモンも出始め、これがつわりなどの妊娠初期症状を引き起こしていくのです。
つまり、生理予定日前後はどちらのケースでもプロゲステロンの分泌量が多い状態のため、非常によく似た症状が現れるというわけです。
生理がこない…でも妊娠じゃない?考えられる他の理由
「生理予定日を過ぎたのに、生理がこない。でも妊娠検査薬は陰性だった…」そんな時、妊娠以外にもいくつか原因が考えられます。
最も多いのは、過度なストレスや疲労、睡眠不足です。これらはホルモンバランスを司る脳の司令塔に影響を与え、排卵が遅れたり、一時的に生理が止まったりすることがあります。また、急激なダイエットや体重の変化も、体が生命維持を優先するため、生理不順の原因になります。まれに、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や甲状腺機能の異常といった病気が隠れていることもあります。
もし生理予定日から2週間以上たっても生理が来ない場合は、妊娠の有無にかかわらず、一度産婦人科で相談することをおすすめします。

多くの女性が、ストレスや少しした環境の変化で生理周期が乱れることを経験します。ですから、少し遅れたからといって、すぐに「何か重い病気では?」と心配しすぎる必要はありませんよ。
ただ、生理は女性の健康のバロメーターです。もし2週間以上遅れるようなら、ホルモンバランスの状態を確認するためにも、気軽に婦人科を受診してください。「妊娠ではないなら、まあいいか」と放置せず、ご自身の体を大切にするきっかけにしていただけたらと思います。

妊娠しているか最終的に判断する方法
ここまで様々な症状の違いを解説してきましたが、これらはあくまで目安です。最終的に白黒つけるには、客観的な方法で確認することが何よりも大切です。
1.まずは妊娠検査薬を試しましょう

一番確実で手軽な確認方法は、市販の妊娠検査薬を使うことです。これは、妊娠した時にだけ尿中に出る「hCGホルモン」を検出する仕組みです。
一般的な検査薬は「生理予定日の1週間後」からの使用が推奨されています。それより早く検査する「フライング検査」は、まだホルモンの量が少なく、妊娠していても陰性と出てしまう可能性があります。正確な結果を得るためにも、指定された時期まで待ってから検査しましょう。

気持ちが焦って、つい早く結果を知りたくなってしまうのは当然のことです。
検査薬はhCGというホルモンを検出するものですが、このホルモンが十分な量になるまでには少し時間が必要です。少しだけ、もどかしいかもしれませんが、正確な判断のために、どうか焦らずに待ってあげてください。
2.陽性反応が出たら産婦人科へ
検査薬で陽性が出たら、次は産婦人科を受診しましょう。検査薬では、残念ながら「子宮外妊娠(異所性妊娠)」かどうかまでは分かりません。これは放置すると母体に危険が及ぶ可能性があるため、超音波検査で子宮の中に赤ちゃんの袋(胎嚢)がきちんとあるかを確認することが非常に重要です。
慌てて行く必要はありませんが、妊娠5週目〜6週目頃(生理予定日の1〜2週間後)を目安に受診してください。

妊娠が必ずしも喜ばしいことばかりではないかもしれません。もし今後のことで悩んでいたり、誰にも相談できずに一人で抱え込んでいるのなら、専門のクリニックへご相談ください。
あなたの心と体の状態に寄り添い、未来のための選択肢を一緒に考えます。早い段階での相談が、あなたの負担を軽くすることに繋がります。

「妊娠したかも」と思ったら今日から気をつけたい3つのこと
妊娠の可能性があるこの時期は、赤ちゃんにとって脳や心臓など大切な器官が作られる非常に重要な時期です。もし「妊娠したかも」と思ったら、結果がはっきりする前から、ぜひご自身の体を大切にしてあげてください。
- 体を冷やさない
血行を良くするため、夏でも靴下を履いたり、温かい飲み物を飲んだりして、体を冷やさないように心がけましょう。 - 薬の服用は慎重に
風邪薬や頭痛薬など、市販薬であっても自己判断で飲むのは避けましょう。服用中の薬がある場合は、妊娠の可能性を医師や薬剤師に伝えて相談してください。 - 禁酒・禁煙、そして葉酸を
アルコールやタバコが赤ちゃんに与える影響は大きいことが分かっています。妊娠の可能性があるなら、すぐにやめましょう。パートナーの協力も不可欠です。また、赤ちゃんの先天性異常のリスクを減らすために、厚生労働省も推奨している「葉酸」をサプリメントなどで積極的に摂取することをおすすめします。
妊娠初期症状と生理前の違いに関するよくある質問
最後に、患者さんからよくいただく質問にお答えします。
Q. 妊娠初期症状がまったくない場合でも妊娠していますか?
はい、十分にありえます。症状の現れ方には本当に個人差が大きく、私が見てきた方の中にも、つわりなどを全く感じずに妊娠期間を過ごす方もいらっしゃいます。症状の有無だけで妊娠を判断せず、まずは「生理が遅れている」という事実を最も重要なサインとして捉えてください。
Q. 生理と同じくらいの出血がありましたが、妊娠の可能性はありますか?
非常に稀ですが、生理と見分けがつかない「妊娠月経」というケースも報告されています。
しかし、その多くは化学流産や、絨毛膜下血腫などの不正出血の可能性が考えられます。普段の生理と違う出血や、一度陽性反応が出た後の出血は、自己判断せずに必ず産婦人科を受診してください。
Q. 50代ですが、更年期の症状との違いはありますか?
ほてり、めまい、気分の浮き沈みなど、妊娠初期症状と更年期障害の症状は非常に似ていて、見分けるのは困難です。閉経前であれば妊娠の可能性はゼロではありませんので、まずは市販の妊娠検査薬を使用してみてください。
そして、結果がどちらであっても、一度婦人科でホルモンバランスの状態などを相談することをおすすめします。
まとめ
妊娠初期症状と生理前の症状の違いについて解説しました。ポイントをまとめます。
- 多くの症状は女性ホルモンの影響で起こるため、非常に似ている
- 「高温期が続く」「症状が持続・悪化する」などが妊娠を見分けるヒント
- 最終的な判断は妊娠検査薬と産婦人科の受診が不可欠
生理が遅れると、期待と不安で落ち着かない日々を過ごされることと思います。この記事で得た知識が、ご自身の体と向き合い、次にとるべき行動を明確にするための一助となれば幸いです。


