「最近鼠径部が痛い」「鼠径部の痛みって何か病気なの?」とお悩みの方はいませんか?
本記事では、女性の鼠径部に痛みが生じる際に考えられる8つの病気と、よくある質問【Q&A】を徹底解説していきます。
鼠径部とは
鼠径部とは、脚の付け根のややくぼんでいる線より上にある三角状の部分のことです。
解剖学的に言うと、恥骨の左右の外側、股関節の前方部あたりで、鼠経靭帯や動脈、静脈、リンパ管、そして神経などが走っており、股間を構成する重要な部位でもあります。
女性で言うと、お腹の下にある恥骨の左右外側にある部位が鼠径部で、リンパマッサージなどでもよく耳にする部位ですね。
なぜ鼠径部(ネズミ)なのか
解剖学書によると、男性が産まれる直前に睾丸が腹部から陰嚢(男性の睾丸が入った袋)に移動する様子がネズミの移動を連想させることから由来されていると記されています。
そこから、名前にネズミ(鼠)が入ったということで、鼠径部の部位とネズミ自体に直接的な関連性はありません。
女性と鼠径部ヘルニア
私たち人間の鼠径部を支えるための筋肉は「外腹斜筋」「横筋筋膜」「腹膜前筋膜」の3つで、これは男女ともに同じです。
しかし、女性の場合は子宮を固定する繊維組織である子宮円索と呼ばれるものが鼠径部の中にある鼠径管を通っており、男性の鼠経管と比べてとても細くなっています。
そのため、男性と比較して女性が鼠径ヘルニアになる確率は低いとされていますが、女性の方が鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアを同時に発症しやすいというデータがあるため、注意が必要です。
鼠径部が痛む原因
次は、鼠径部が痛む原因を徹底解説していきます。
鼠径部への過度なストレス
鼠径部を過度に使用したり、反復動作を繰り返したりすると、鼠径部へ過度なストレスが加わり、痛みを感じやすくなります。
例えば、頻繁に筋肉トレーニングやランニングをする方や、サッカーなどのスポーツで何度もボールを蹴る動作を行う方などは、股関節周囲の筋力低下や柔軟性の低下を引き起こし、これにより鼠径部周辺が痛みを感じることにつながると考えられます。
股関節周囲筋が硬い
毎日デスクワークで座っている時間が長い場合や、体の冷えによって股関節周囲筋が硬くなった場合、鼠径部への過度なストレスによって痛みを引き起こす原因に繋がります。
また、股関節周辺筋が硬くなると老廃物がうまく排出されなくなったり、むくみが起こりやすくなったりと体全体の不調にも繋がります。
病気
鼠径部に痛みを感じる場合、何らかの病気が隠れている可能性も考えられるでしょう。
その場合、病状を自己判断で済ませず、一度病院を受診することをおすすめします。
女性で鼠径部へ痛みが生じる際に考えられる8つの病気
次は、女性で鼠径部への痛みが生じる際に考えられる8つの病気を徹底解説していきます。
①鼠径ヘルニア
鼠経ヘルニアとは脱腸とも呼ばれ、本来ならお腹の中にあるはずの腸管や腹膜の一部が筋肉の隙間から皮膚の下に出てくる病気です。
鼠経ヘルニアの原因は、先天性と後天性があり、先天性の場合は乳児期から鼠経ヘルニアを発症します。また後天性の場合、立ったときやお腹に力をいれたときの鼠径部への圧力で、鼠径部の皮膚の下に柔らかい膨らみを感じるようになります。
女性の鼠経ヘルニアの場合、20代~40代までの女性の多くが外鼠経ヘルニアと呼ばれる病気で、このヘルニアは生理周期に合わせて膨らみの大きさや痛みが変化する場合があります。
また、加齢による腹壁の脆弱化によっても鼠経ヘルニアを発症しやすく、普通は指で膨らみを抑えたり横になったりすると膨らみは引っ込みますが、そのまま放置していると膨らみが硬くなったり吐き気を伴ったりする「嵌頓状態」になることもあります。その場合は命に関わるため、注意が必要です。
鼠経ヘルニアの特徴
- 先天性と後天性がある
- 立ったときやお腹に力を入れたときの鼠径部への圧力で柔らかい膨らみが出てくる
- 女性の鼠径ヘルニアのほとんどが外鼠径ヘルニア
- 加齢によっても鼠径ヘルニアを発症しやすい
外科・消化器外科を受診
鼠経ヘルニアの疑いがある方は、外科や消化器外科を受診しましょう。
②子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮内膜症組織が子宮外で増加する病気です。
本来、子宮内膜は子宮の内壁の1番表面にあるものですが、子宮内膜症あると、卵巣や腸の腹膜で出血が起こり、卵巣や卵管、腸が癒着してチョコレート嚢腫と呼ばれる卵巣嚢腫ができます。
子宮内膜症は、病気が進行すると生理痛が段々と強くなり、生理時以外にも下腹部や腰が痛みを感じるようになります。特に、排便痛や性行為時の強い痛み、不妊は子宮内膜症特有の症状です。
また、子宮内膜症が発生した部位によって症状は異なり、鼠径部の場合はその部位の腫れや痛みが生じ、肺の場合は月経髄肺気胸、膀胱の場合は血尿などが挙げられます。
子宮内膜症の特徴
- 過長月経
- 鼠径部の腫れや痛み
- 不妊
- 月経髄肺気胸を伴う可能性がある
- 発症する部位によって症状が異なる
婦人科を受診
子宮内膜症の疑いがある方は、婦人科を受診しましょう。
③ リンパ管炎
リンパ管炎とは、主に感染症によってリンパ管に生じた炎症のことです。
脚や腕などの皮膚から病原体が侵入し、何らかの皮膚感染症に合併する形で発症します。
またリンパ管炎には急性と慢性があり、急性は細菌の溶血性連鎖球菌やブドウ球菌などが手脚の傷口から侵入し、慢性は真菌感染が原因となって発症することが多いです。
感染した腕や脚の皮膚に鼠径部や頸部、脇の下などのリンパ節に向かって数ミリ~数センチの不規則な赤い線が現れるのが特徴で、赤い線の周囲は熱を帯びており触れると痛みを伴うこともあります。その他にも、食欲不振や頭痛、発熱などの症状が生じます。
リンパ管炎の特徴
- 急性リンパ管炎と慢性リンパ管炎がある
- 急性は細菌、慢性は真菌感染が原因
- リンパ節に向かって不規則な赤い線が現れる
- 赤い線の周囲は熱を帯びており、触れると痛みを伴う
- 食欲不振や頭痛、発熱などの症状が生じる
泌尿器科・婦人科・内科・整形外科・血液内科を受診
リンパ管炎の場合、原因によって受診する科が異なるため注意が必要です。
- 性感染症「泌尿器科」「婦人科」
- 悪性リンパ腫「内科」「血液内科」
- 自己免疫疾患「内科」「整形外科」
ご自身の発症原因に当てはまる科がある病院を受診しましょう。
④変形性股関節症
変形性股関節症とは、関節の間にある軟骨が擦り減ることによって滑らかに動かすことができなくなり、関節の骨などが摩擦で炎症を起こす病気です。
変形性股関節症は、関節の痛みと機能障害が主な症状で、初期症状として立ち上がりや歩き始めるときに脚の付け根に痛みを感じるようになります。
この変形性股関節症は主に女性に多く、原因としてエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌量が減少することや、男性と比較して筋肉量が少ないため、軟骨に負担がかかりやすいことが原因だと考えられています。
変形性股関節症は、そのまま放置すると痛みが強くなり、常に痛んだり、夜寝ていても痛んだりするようになり、日常生活に支障が出ることもあるため注意が必要です。
変形性股関節症の特徴
- 軟骨のすり減りによって関節の骨などが摩擦で炎症を起こす
- 女性の場合、女性ホルモンの減少が原因として挙げられる
- 初期症状は立ち上がりや歩き始めに脚の付け根が痛むようになる
- そのまま放置すると日常生活に支障が出る
- 肥満の方は変形性股関節症になりやすい
整形外科を受診
変形性股関節症の疑いがある方は、整形外科を受診しましょう。
⑤性感染症
性感染症とは主に性行為が原因で起こる感染症のことで、「クラミジア」「トリコモナス症」「淋菌」などが知名度の高い性感染症です。
これらの性感染症はおりものの量が異常に増えたり、病状ごとに通常とは違うおりものの臭いがしたりすることが特徴で、そのまま放置すると何らかの病気を併発する可能性があります。
加えて、鼠径部のリンパ節に痛みや腫れを伴うこともあり、ときに直腸まで感染する性感染症もあります。このような感染症の罹患リスクを低くするためには、なるべく早く病院を受診して治療を開始することが大切です。
性感染症の特徴
- 黄緑色~黄色のおりものが出る
- 通常のおりものの臭いとは違う異臭がする(あまり臭いがしないケースもある)
- 激しいかゆみ
- 鼠径部のリンパ節に腫れや痛みを伴う
- 排尿時の痛み
性感染症内科(性病科)
性感染症の疑いがある方は、性感染症内科(性病科)を受診しましょう。
⑥悪性リンパ腫
悪性リンパ腫とは、白血球の中でリンパ球と呼ばれる細胞ががんになったものです。
主に、私たち人間のリンパ球は「リンパ節」「脾臓」「扁桃」など全身に存在しています。
悪性リンパ腫は首や脇の下、鼠径部などリンパ節の多いところにしこりとして現れ、数週間から数か月かけて持続的に増大し、縮小することはありません。
痛みはほとんどなく、症状が進行すると発熱や全身のだるさ、体重減少など様々な症状が出てくるため、このような症状が出てから病院を受診する方も多いです。
悪性リンパ腫の特徴
- リンパ球と呼ばれる細胞がんになったもの
- 首や脇の下、鼠径部などリンパ節の多いところにしこりとして現れる
- 痛みはほとんどない
- 侵攻すると発熱や全身のだるさ、体重減少など様々な症状を発症
- そのまま放置しても縮小することはない
内科・血液内科を受診
悪性リンパ腫の疑いがある方は、内科や血液内科を受診しましょう。
⑦卵管炎・卵巣炎
卵管炎・卵巣炎は、膣から細菌やクラミジアなどが入ることで、子宮頸管から卵管、卵巣に感染して炎症を起こす病気です。
卵管や卵巣は、どちらかが炎症を起こすと同時に炎症を起こすことが多く、細菌感染以外にも人工妊娠や中絶、タンポンの出し忘れなども原因として起こることがあります。
卵管炎・卵巣炎を起こすと、下腹部痛や38度の熱、鼠径部の痛みを感じたり出血や黄色い膿状のおりものが出ることもあり、放置すると不妊につながる可能性もあるため注意が必要です。
卵管炎・卵巣炎の特徴
- 原因は細菌感染や自己妊娠や中絶、タンポンの出し忘れなどが挙げられる
- どちらかが炎症起こすと同時に炎症を起こすことが多い
- 下腹部痛や38度の熱を伴う
- 鼠径部の痛み
- 出血や黄色い膿状のおりものが出る
婦人科を受診
卵管炎・卵管炎の疑いがある方は、婦人科を受診しましょう。
⑧卵巣嚢腫茎捻転(らんそうのうしゅけいねんてん)
卵巣嚢腫捻転とは、卵巣に良性腫瘍の嚢腫ができて、卵巣が根元からねじれてしまった状態のことです。
通常、卵巣は2~3センチ程度の大きさで骨盤内の左右に存在しており、体の動きや向きにあわせて動いています。加えて、重さが軽いため、動いたとしてもすぐに元の位置に戻ります。
しかし、卵巣嚢腫によって卵巣が腫れた状態だと、その重さで周囲の血管や組織をまきこむようにねじれてしまい、下腹部や骨盤部位に耐え難い強烈な痛みを感じます。
一度ねじれた卵巣は嚢腫で腫れているため、自力では戻らないケースが多いです。そのため、早期に治療をしなければ巻き込まれた部分の組織が壊死する可能性もあるため、強烈な痛みを感じたらすぐに救急車やかかりつけの医師へ連絡してください。
卵巣嚢腫茎捻転(らんそうのうしゅうけいねんてん)の特徴
- 卵巣嚢腫によって腫れた卵巣に起こりやすい
- 卵巣がねじれると下腹部や骨盤部位に耐え難い痛みがある
- 痛みで吐き気を伴う場合も
- 一度ねじれた卵巣は自力では戻らない
- 放置すると組織が壊死する可能性があるための注意
婦人科を受診
卵巣嚢腫茎捻転の疑いがある方は、婦人科を受診しましょう。
病院の受診目安
次は、病院の受診目安をご紹介します。
鼠径部の痛みがひどくて歩くこともできない
鼠径部の痛みがひどくて歩くこともできない場合は、なるべく早く病院を受診してください。
また、何科に行けば良いかわからない場合は国の救急安心センターへ相談しましょう。
鼠径部の痛み以外に気になる症状がある
鼠径部の痛み以外にも吐き気や頭痛など、気になる症状がある場合は感染していたり病気を発症している可能性があるため、本記事で解説した受診すべき科を参考に、なるべく早く受診することをおすすめします。
鼠径部付近にしこりができた
鼠径部にしこりや痛みがある場合、鼠経ヘルニアやリンパ管炎、女性ですと子宮内膜症の可能性があります。かかりつけの婦人科やお近くの婦人科を受診しましょう。
鼠径部の痛みが段々悪化してきている
鼠径部の痛みが段々悪化してきている場合、何らかの病気が徐々に悪化している可能性があるため、なるべく早く病院を受診してください。
鼠径部の痛みが1週間以上持続している
鼠径部の痛み以外に症状がない場合でも、1週間以上痛みが継続する場合は一度病院を受診することをおすすめします。また、鼠径部の痛みの原因にある程度見当がついている場合は、症状と照らし合わせて受診する病院を選びましょう。
女性で鼠径部への痛みに関するよくある質問【Q&A】
次は、女性で鼠径部への痛みに関するよくある質問【Q&A】を解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
- 鼠径部の痛みを放置すると、どうなりますか?
- 鼠径部の痛みが何らかの病気である場合、症状が進行して手術が必要になります。
また、病気によっては組織の壊死や、命にかかわることもありますので、放置はせず病院を受診してください。
- どうして子宮の病気で鼠径部が痛むのですか?
- 子宮筋腫や腫瘍は、大きくなると骨盤内の神経を圧迫することもあります。
加えて、子宮内膜症やリンパ管炎のように様々な部位で発症する可能性がある病気の場合、子宮の病気であっても鼠径部が痛む可能性もあります。
- 鼠径部が痛いときは冷やしても良いですか?
- 鼠径部の痛みが急激に強くなったときは体を安静にしながら冷やし、痛みが和らいだら温めると良いでしょう。注意点として保冷剤や氷が肌に直接触れないように気を付けてくださいね。
- 鼠径部の痛みの原因は筋肉痛かもしれません。病院を受診しても良いですか?
- はい。特にランニングやスポーツをされている方は、何度も筋肉を酷使することで鼠経ヘルニアを発症する可能性も高くなります。筋肉痛だと感じても一度病院を受診してみてください。
鼠径部の痛みが心配な女性はルナレディースクリニックへ
今回は、女性の鼠径部に痛みが生じる際に考えられる8つの病気や、よくある質問【Q&A】などを徹底解説しました。
ルナレディースクリニックはお客様一人ひとりの悩みに寄り添い、ベストな対処法を提案させていただきます。今回の記事も、参考になれば幸いです。
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