性病予防薬とは?PrEPについて解説

性感染症は、性行為をするときのリスクとして、とても大きな要素です。感染後の治療には、「洗浄や軟膏の塗布」「アルコール消毒」「サプリメント」「抗生物質」などがあります。しかし、抗生剤などを前もって服用しても、性病は予防できません。完全に防ぐには性行為をしないことが一番でしょう。

さまざまな性感染症がありますが、そのなかでも、HIV感染によるエイズは体の免疫を下げ、日和見感染症や骨粗鬆症、神経障害など、合併症を引き起こしやすくなる恐ろしい病気です。また、一度感染すると完全に治癒することはありません。

では、パートナーが感染者だったり、不特定多数の方と性行為をする必要がある場合は、どのような対処法があるのでしょうか。

この記事では、HIV感染症の予防薬と、それを服用する予防法について解説します。

HIV予防薬とは?

HIV予防薬とは、HIV感染のリスクを低下させるための内服薬です。これを使用した予防法には、「性行為後に緊急で使用するもの」と「予防目的で日常的に服用するもの」があります。

HIV予防薬の使用は、性感染症の感染歴がある人や風俗店勤務の人など、HIV感染リスクが高い人に推奨されています。ただ、性行為の相手が確実にHIV陰性者であったり、すでに自身がHIV感染者であったりする場合は、HIV予防薬の適用外です。

HIV予防薬の種類

HIV予防薬にはさまざまな種類があり、使用する薬は療法によって異なります。ここでは、HIV感染予防法である、「PEP療法」、「PrEP療法」、「オンデマンドPrEP療法」の3種類について解説します。

PEP療法

PEPは、「post-exposure prophylaxis」の略語で、曝露後予防のことです。

性行為から72時間以内にHIV予防薬を服用し、HIV感染リスクを低下させます。薬の組み合わせによりますが、開始後は1日1回、もしくは2回の服用を28日間継続しなければなりません。

PEP療法の対象者は、HIV感染者との性行為、またはコンドームを使わないなどのHIVに感染しうる性行為後、72時間以内の方です。適切にPEP療法を行った場合、感染リスクを80%以上低下させるという研究結果が出ています。

また、PEP療法は予期せぬ事態に対する予防のため、性行為を避ける、コンドームを使用するなど、事前の基本的な感染対策が大切です。

PEP療法の流れ

PEP療法の流れは、以下のとおりです。

1問診・診察HIV感染リスクとPEP療法の適応判断をする。
2血液検査HIV非感染の確認と、薬を服用できる状態かを確認するために行う。
3医師の説明・同意書へ署名服用方法・副作用と副作用が発現したときの対処方法などの説明と、同意書への署名をする。
4薬の処方初回外来では14日分を処方する。時間外や休日の受診の場合、1~3日分を処方し、次の平日に再受診する。
5再診服用開始から14日後に再診。診察・血液検査で副作用の有無を確認し、残りの14日分を処方する。
6フォローアップ服用開始から1か月後と3~4か月後のタイミングで、HIV検査を推奨している。そのほか、B型・C型肝炎検査も、適宜行うことを推奨している。これらの検査費用は別途支払いとなる。

PrEP療法 

PrEPは、「pre-exposure prophylaxis」の略語で、曝露前予防のことです。

性行為前のHIV予防薬服用により、HIV感染のリスクを低下させます。

この療法は、男性同性間の性行為や薬物の静脈注射など、HIV感染リスクがあるすべての方に対して有効です。リスク行為の有無に関係なく、1日1回ツルバダまたはデシコビを1錠、決まった時間に毎日服用します。

PrEP療法の適応条件は、「成人」「HIV非感染者」「腎機能が正常」「日常的にHIV感染のリスクがある」です。これは、感染リスクが高い、以下のような方に推奨されています。

  • HIV感染者のパートナーが適切な治療を受けていない
  • 性感染症の感染歴がある
  • 性行為をする相手が多数いる
  • コンドームを使わないことがある
  • 風俗店勤務である

スケジュールを守り、適切にPrEP療法を行った場合、性行為99%、薬物の静脈注射74%も感染リスクを低減させる効果が期待できます。

PrEP療法の流れ

PrEP療法の流れは、以下のとおりです。

1問診・診察HIV感染リスクとPrEP療法の適応判断をする。
2血液検査HIV・B型肝炎ウイルス非感染の確認と、腎機能障害がないことの確認を行う。
3医師の説明・同意書へ署名服用方法・副作用と副作用が発現したときの対処方法などの説明と、同意書への署名をする。
4薬の処方毎日夕食後に1錠服用する。24時間間隔が理想である。性行為は服用開始10日後から可能である。
5フォローアップ原則、服用開始から3か月ごとにHIV・B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・梅毒の検査を行う。そのほか、肝機能、腎機能検査を適宜行うことを推奨している。

オンデマンドPrEP療法

オンデマンドPrEP療法は、リスク行為の前後で服用するPrEP療法です。

この療法は、男性と、ホルモン療法を行っていないトランスジェンダー女性のみができます。性行為の間隔が週1回以下の方に向けて、PrEP療法のオプションとして検討されます。慢性B型肝炎の方は対象外です。

オンデマンドPrEP療法は、男性同性間の性行為のみに推奨されており、その理由は以下のようなものです。

  • 男性と性交渉を行うシスジェンダー男性以外への有効性がまだ証明されていない。
  • 使用する薬の成分のひとつであるテノホビルが、膣だと直腸に比べて十分な濃度に達するまでの時間が長い。そのため、膣性交では十分な効果が期待できない。

抗HIV薬は、性行為の2~24時間前に2錠服用し、最初の服用から、24時間後と48時間後にも1錠ずつ服用します。服用中に次の性交があったときは、最後の性行為からさらに2回、1錠ずつの服用が必要です。PrEP療法の抗HIV薬にツルバダとデジコビがありますが、オンデマンドPrEP療法において、デジコビの有効性は確認されていません。

正しくオンデマンドPrEP療法を行った場合、感染リスクを86%低下させたという研究結果が出ています。

オンデマンドPrEP療法の流れ

オンデマンドPrEP療法の流れは、以下のとおりです。

1問診・診察HIV感染リスクとオンデマンドPrEP療法の適応判断をする。
2血液検査HIV・B型肝炎ウイルス非感染の確認と、腎機能障害がないことの確認を行う。
3医師の説明・同意書へ署名服用方法・副作用と副作用が発現したときの対処方法などの説明と、同意書への署名をする。
4薬の処方性行為の2~24時間前に2錠服用し、最初の服用から、24時間後と48時間後にも1錠ずつ服用する。
5フォローアップ原則、服用開始から3か月ごとにHIV・B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・梅毒の検査を行う。そのほか、肝機能、腎機能検査を適宜行うことを推奨している。

服用するメリット

HIV予防薬を服用する大きなメリットは、感染リスクの低減です。

日本のHIV感染者は、1日あたり約3人のペースで増えています。「今まで大丈夫だったから次も大丈夫」とはいえません。

感染リスクから高い確率で身を守ることができる抗HIV薬は、感染による不安や恐怖に対しても大きな助けとなるでしょう。そのほかのメリットは、PEP療法とPrEP療法・オンデマンドPrEP療法で異なります。

PEP療法「性行為中にコンドームを正しく装着できなかった」「レイプなどによりコンドームが使用されなかった」「医療機関で針刺し事故が起こった」など、事後に感染リスクを負った場合でも高確率で予防が可能。
PrEP療法・オンデマンドPrEP療法「パートナーがHIV感染者」「性行為をする相手が多い」「風俗で働いている」など、日常的にHIV感染のリスクが高い人に対して高確率で予防が可能。

服用時の注意点

HIV予防薬の服用には、以下のような注意点があります。

  • 成人になってからの服用が推奨されている
  • 肛門性交の場合、予防効果が最大値に達するまで服用開始から約7日かかる
  • 短期的な副作用として、吐き気・腹痛・下痢・頭痛・皮疹を発症する可能性がある
  • 長期的な副作用として、腎機能の低下や骨密度が減少する可能性がある

短期的な副作用のほとんどは、制吐剤などで軽減できるものです。発症した際は、医師に相談しましょう。

予防薬の価格帯

では、実際に抗HIV薬を服用すると、どのくらいの費用がかかるのか、目安を紹介します。

PEP療法初回と14日後の診察料+検査費用33,000円薬剤費308,000円(28日分)※PEP期間(4週間)後の検査費用は別途発生
PrEP療法初回の診察料+検査費用22,000円薬剤費198,000円(30日分)※PrEP期間中、3か月ごとの検査費用は別途発生
オンデマンドPrEP療法初回の診察料+検査費用22,000円薬剤費26,400円(4錠1セット)

上記費用は、あくまで目安なので、気になる方は受診機関に直接問い合わせてください。また、これらは保険適用外のため、全額自費となります。

予防薬を服用できない場合もある

下記に該当する方は、抗HIV薬を服用できないことがあります。

  • すでにHIVに感染している
  • 腎機能・肝機能に異常がある
  • B型肝炎に感染している
  • 梅毒・淋病・クラミジアなどの性感染症に感染している
  • 強い副作用が発現する

そのほか、診察・検査の結果や医師の判断により服用を検討されるでしょう。

PEP療法やPrEP療法により、HIV感染は予防できますが、ほかの性感染症を防ぐことはできません。これらを開始してからコンドームの使用率が減少してしまい、HIV以外の性感染症が増えたという報告があります。

さまざまな性感染症を予防できるため、PEP療法・PrEP療法のみに頼らず、コンドームを使用する「Safer Sex」が重要です。

まとめ

HIV予防薬を服用することで、HIV感染のリスクを大きく低減できます。日本では未承認のため、費用が高額になってしまいますが、それに見合う予防効果が期待できます。

しかし、性感染症全体で考えると、PEP療法やPrEP療法のみでリスクを回避することはできません。HIV予防薬の服用は性感染症対策のひとつと考え、自身の健康や安全のために、コンドームを使用する「Safer Sex」を心がけましょう。

医療機関へ行くのが難しい方は自宅で検査できる「FemCHECK」がおすすめ

医療機関へ行くのが恥ずかしい、忙しくて病院へ行く時間が確保できない方はFemCHECKで自宅で簡単に性病の検査ができます。

FemCHECKは婦人科医が作った、自宅で検査ができる郵送の性病検査キットです。

結果が陽性であった場合は、オンライン診療で診察からお薬の処方まで自宅で完結させることが可能です。

おりものの異常がある、性病の心配がある方は一度検査してみることをお勧めします。

以下のバナーから注文することができます。時期によっては品薄になる場合があるのでご注意ください。