女性の性器に痛みがある原因は多種多様で、まずは病気の可能性を探ることが重要です。この記事では女性の性器に痛みがある場合の一般的な原因や症状、病気の種類、対処法、予防法を解説します。
痛みの原因が性感染症の場合は、早期発見、早期治療により重症化や感染拡大を防ぐことができますので、我慢せずに病院で受診しましょう。
女性の性器の痛みの原因とは
女性の性器の痛みは、物理的か病気的(感染症含む)かにわけられます。物理的であれば一時的な痛みで済む場合が多いですが、病気的であれば迅速な対応が求められます。まずは該当するかどうかを以下で確かめて、判断しましょう。
擦れやかぶれによる痛み
長時間の歩行や運動、自転車の乗車、仕事中などに下着や肌着が擦れて痛いと思われている方は少なくありません。考えられるのは女性ホルモンの減少による膣の萎縮や皮膚への雑菌の侵入です。膣の萎縮がみられる場合の対処法はレーザー治療で、皮膚への雑菌の侵入がみられる場合は抗生剤治療となります。
また皮膚の乾燥がひどくなる、洗剤・化粧品・外用薬・ゴム・金像・植物などのアレルゲンに触れて起こる接触皮膚炎の場合でもかぶれやかぶれによる痛みが生じます。
傷や病気による痛み
女性の性器の痛みの原因として、身体的な傷や特定の病気も考えられます。性行為中や自慰行為中に痛む場合は、摩擦がかかっている可能性があります。数日で痛みが収まるのであれば問題ありません。しかし長く続いたり症状が悪化したりすると雑菌感染が考えられます。
特定の病気による痛みとしては、バルトリン腺炎、子宮内膜症や卵巣嚢腫、骨盤内炎症疾患(PID)、月経困難症などが考えられます。バルトリン腺炎は性行為中に出る粘液が炎症によって出せなくなる病気です。その粘液が分泌されないとバルトリン腺に溜まり、しこりができるバルトリン腺嚢腫へとつながります。症状としては、焼灼感や疼痛です。
子宮内膜症は、子宮内膜があるべき子宮の内側ではなく他の箇所で育ってしまう病気です。痛みや不妊につながります。卵巣嚢腫は卵巣の中に何かが溜まる病気で症状はほぼありませんが、卵巣の根元がねじれると激痛が走ります。
骨盤内炎症疾患(PID)は、子宮や子宮頸部、卵管、卵巣といった女性器に起こる病気の総称で、出血や異常な分泌物、下腹部痛がみられます。ひどくなると不妊や子宮外妊娠などの原因にもなります。月経困難症は月経痛のことで、出血を行う際に痛みを伴う病気です。日常生活に影響がある場合は、治療対象となります。
感染症による痛み
性感染症によっても合併症による痛みを誘発する場合があります。痛みの種類と病気が性感染症の種類によって異なるため、以下の表を参考にしてください。
性感染症 | 痛みの種類 | 合併症病名 |
クラミジア | 下腹部の痛み、右季肋部痛 | 骨盤内炎症性疾患、肝周囲炎 |
マイコプラズマウレアプラズマ | 排尿時の痛み | 尿道炎 |
淋病 | 下腹部の圧痛、咽頭痛、移動性疼痛 | 子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患、フィッツ・ヒュー・カーティス症候群 |
性器ヘルペス | 疼痛 | 潰瘍 |
トリコモナス症 | 腟への刺激 | トリコモナス腟炎 |
尿道 | 排尿痛、尿道痛 |
クラミジア、淋病、性器ヘルペスは5類感染症に分類され、マイコプラズマ・ウレアプラズマ、トリコモナス症は指定がありません。しかし感染症の分類に関係なく痛みを伴う合併症を生じるので注意しましょう。
女性の性器の痛みを伴う主な病気について
性器の痛みは性器ヘルペス、淋病、クラミジア、尿道炎、トリコモナス症、マイコプラズマ・ウレアプラズマなどの性感染症が考えられます。それぞれの病気がどのような症状を発症するのか、そしてその対処法について説明します。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、HSV(単純ヘルペスウイルス)の感染で起こる性感染症の一つです。他の性感染症とは異なり、4類感染症に分類されています。主に性行為により感染し、感染しても70〜80%は無症状です。場合により、陰部が気持ち悪い・かゆい、リンパ節の腫脹、発熱、全身倦怠感、強い疼痛を経て水疱や潰瘍が陰部に発生します。潰瘍性病変がみられると、エイズの原因菌であるヒト免疫不全ウイルスを移しあう可能性が高まるので非常に危険です。
妊婦が出産時に感染していたら新生児にも感染し重篤な新生児ヘルペスを生じるリスクが高くなります。避けたいところですが、無症状ゆえ、知らぬ間にパートナーや新生児に移してしまう方も少なくないのです。治療法としては抗ウイルス薬です。しかし厄介なことに性器ヘルペスは一度感染すると再発を繰り返し完治は期待できませんし、現在のところ、ワクチンはありません。
淋病
淋菌に感染することで起こる性感染症の一つで、性行為により感染します。感染すると初期症状として下腹部の不快感や著明な圧痛、肛門のかゆみ、直腸分泌物の混濁、出血、咽頭痛、発熱、移動性疼痛、関節腫脹などが見られる場合があります。
また悪化すると子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患、フィッツ・ヒュー・カーティス症候群といった合併症を併発する可能性も少なくありません。治療法としては、点滴治療、筋肉注射治療、抗菌薬治療があり、医師との相談によって決められます。
クラミジア
クラミジアはクラミジア・トラコマチス菌が原因となる性感染症で、特に20代などの若い女性に多く見られます。感染源は感染者との性行為であり、性器性交だけではなく、口腔性交や肛門性交によっても感染します。男女ともに半数以上は無症状です。しかし、重症化したり合併症を引き起こしたりすると症状が現れます。
女性の症状例としては、下腹部の痛みや出血、異常な分泌物、おりものの増加、右季肋部痛などです。また合併症としては骨盤内炎症性疾患や肝周囲炎が起こります。治療法の基本は薬物療法で、内服と点滴が検討されます。長くても1週間程度で効果が見られますが、再度検査でクラミジアが再検出されると治療がリスタートです。
尿道炎
尿道炎は尿道が炎症を起こしている状態で、下記のように複数に分類されます。
淋菌性尿道炎 | ||
非淋菌性尿道炎 | クラミジア性尿道炎 | |
非クラミジア性非淋菌性尿道炎 | Mycoplasma genitalium 性 | |
Trichomonas vaginalis 性 | ||
その他 |
日本国内で感染する多くは淋菌性尿道炎か非淋菌性尿道炎クラミジア性尿道炎です。症状としては強い~軽い排尿痛、尿道痛のほか、尿道不快感、尿道掻痒感がみられます。原因菌によって合併症や治療法は異なるので、まずは該当する原因菌を突き止める必要があります。
トリコモナス症
トリコモナス症はトリコモナスという原虫の感染による性感染症です。感染経路としては性行為のほか、タオルや下着を介した感染や検診台、浴槽、便器を通じた感染などがあるため、幼児や子ども、中高年と幅広い層での感染がみられます。
20〜50%は無症状ですが、トリコモナス腟炎になると泡状の悪臭の強い帯下の増加や外陰、腟の刺激感、強い掻痒感が出現します。治療法の基本は座剤や経口投与ですが、難しい場合は膣錠単独療法が必要です。
マイコプラズマ・ウレアプラズマ
マイコプラズマはマイコプラズマ・ホモニスとマイコプラズマ・ジェニタリウムが原因菌で、ウレアプラズマはウレアプラズマ・ウレアリチカムとウレアプラズマ・パルバムが原因菌とされる性感染症です。感染経路は性行為が多いとされています。
これらの主な症状は、膣分泌物の増加や異臭、性器のかゆみ、排尿時の痛み、性行為時の痛みなどです。 重症化すると、尿道炎や腹膜炎、卵管炎、不妊、子宮外妊娠などにつながってしまいます。治療の基本は、1〜7日間投与で行う薬物療法です。
痛みをなくすためにはどうしたらよいか
痛みをなくすためには、まず状態を確認しましょう。痛みが数日続くようならば、速やかに病院へ行き検査及び治療を受ける必要があります。
陰部の状態を確認する
性器の痛みを感じたら、まずは自分の陰部の状態を確認します。特に性行為後に痛みを感じて、3日以上経ったり症状が悪化したりする場合は無理して我慢せずに病院を受診しましょう。性感染症に罹患しているかもしれません。
その他の場合でも、女性器に痛みを生じて治らないようであれば病院へ行きましょう。
検査する
まず、痛みの原因を調べるために検査を行います。性行為に心当たりがある方は婦人科へ、ほかの心当たりがある方は泌尿器科・婦人科へ行きましょう。性感染症の場合であれば、考えられる性感染症の検査を行います。
検査方法としては血液検査、核酸増幅検査が一般的で、検体は感染が考えられる箇所の分泌物です。分泌物を抽出するときは痛いイメージがあるかもしれませんが、その心配はありませんので安心してください。
市販の検査キットもありますが、病院で検査をする方が専門家のチェックが入るため安心して受けられるでしょう。
また性感染症の症状は非常に類似しています。そのため例えばクラミジア検査で陰性だったとしても淋病に罹患している可能性はあります。その場合「性感染症が陰性である」と自分で判断すると、とんでもない結末を迎えてしまうかもしれません。そのようなリスクをなくすためにも、病院での受診が安心です。
病院やクリニックで治療する
痛みの原因を取り除かないと痛みもなくならないため、治療を行います。性感染症の場合、基本治療は抗生物質の経口投与や点滴、筋肉注射などで対処します。しかし、症状が悪化して膿が溜まっていたり合併症が複数併発していると、治療期間が長引いたり治療法も並行したりするので、早期に病院へ行き、検査を受け、必要な治療を受けることが大切です。
また自分で対処して市販薬を飲んでいた場合、症状によっては悪化する恐れもあります。早く治療すれば治る病気も、放置したり不適切な対応によって悪化したりして長期化するので、素早い受診が推奨されます。
その他かゆみやできものなどの症状について
女性器の痛みに加えてかゆみやできものがある場合の症状は、何の病気が考えられるのか心配になる方も多いでしょう。以下を参考にして、解決の参考にしてください。
かゆみがある場合
かゆみが考えられる場合、アレルゲンなど物理的なものに触れる、皮膚炎、性感染症などが考えられます。性感染症が理由である場合の、考えられる合併症を以下の表にまとめています。
性感染症 | かゆみの場所 | 考えられる合併症病名 |
クラミジア | 尿道 | 尿道炎 |
マイコプラズマウレアプラズマ | 性器、尿道 | PID(腹膜炎、卵管炎)、尿道炎 |
淋病 | 肛門 | 直腸炎 |
性器ヘルペス | 性器 | 潰瘍 |
トリコモナス症 | 腟 | トリコモナス腟炎 |
尿道 | 尿道 | 尿道炎 |
性器や尿道は体の内部にあり、なかなか的確にかゆい箇所を当てられません。自己判断に頼らず、医師へ相談して適切な対処法を伺いましょう。
腫れている場合
女性器の腫れがある場合、感染症、膣炎、性行為による物理的損傷、アレルギー反応、良性あるいは悪性の腫瘍などが考えられます。性感染症が理由である場合の発生箇所を以下の表にまとめました。腫れているとかなり症状が重症化している可能性が高いため、即病院受診が推奨されます。
性感染症 | 腫れの場所 |
クラミジア | 尿道 |
淋病 | 関節 |
性器ヘルペス | 所属リンパ節 |
できものがある場合
女性器にできものが現れた場合、性感染症、皮膚疾患、腫瘍などが考えられます。性感染症では性器ヘルペスやHIV感染がみられた際に腫瘍ができたり、尖圭コンジローマの感染により性器や肛門にイボのようなできものができます。
皮膚疾患によるものとしては、毛嚢炎や皮膚囊腫があります。毛嚢炎は毛穴の毛根部分に炎症が生じて膿を含んだ状態をいい、軽度であれば抗生物質を投与して約1週間で治るでしょう。皮膚囊腫は皮膚にできた腫瘍で手術をして取り除く必要があります。
他には、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌が考えられます。癌は小さいうちや拡大する前に取り除く必要がありますので病院へ行きましょう。
日常で気を付けておきたいこと
女性器の痛みを予防するために気をつけておきたいことを以下の表にまとめたので、参考にしてください。病気がみられる場合は、病気の治療が優先されます。治療後に再発を防止するための予防策としては、以下同様です。
痛みの原因 | 予防法 | 検診 |
物理的な接触や傷 | アレルゲンに触れない衛生面に気をつける(ナプキンをこまめに変える、コンドームは清潔に扱うなど)爪を立てない | |
性感染症 | コンドームの着用不特定多数との性行為を避ける | 血液検査、核酸増幅検査 |
腫瘍 | 定期的なスクリーニング検診の受診 | 血液検査、核酸増幅検査、癌検診 |
まとめ
女性の性器に痛みが起こる原因は物理的な接触や傷、性感染症、腫瘍などが考えられます。まずは原因を突き止めて、原因にあった対処法を正しく行うことが大切です。また性感染症が懸念される場合には検査を行いますが、自宅で行える簡易検査キットよりも病院で検査した方が正確で安心できるでしょう。
検査後に感染が確認された場合は、医師の指示に従って内服を行います。再発の懸念がされる性感染症もあるため、症状が収まっても内服された分はすべて飲み切る、治療中は性行為を我慢するようにしましょう。最後に、日頃からできる予防対策をご紹介したので参考にしてください。
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