性病はどんな種類がある?それぞれの症状や治療法を解説

性病は性的な接触によって感染する病気で、さまざまな種類が存在します。性病に感染すると、深刻な健康問題を引き起こす可能性があるため、予防に加えて、早期発見と早期治療が大切です。

この記事では、国内でよく見られる性病の種類とそれぞれの症状、そして一般的な治療法について解説します。性病に関心のある人や自身・パートナーの健康を守りたい人はぜひ参考にしてください。

性病とは

性病は性感染症(Sexually Transmitted Infections)とも呼ばれる、性行為によって感染する病気の総称です。性器だけでなく、口腔や肛門、眼球などから感染することもあります。性的な接触によって細菌、ウイルス、寄生虫などが伝染し、さまざまな症状や合併症を引き起こすのが性病のメカニズムです。一部の性病は、無症状または軽症で感染していることに気付かない場合もあり、それが感染の拡大を促す原因となるケースも少なくありません。

性病の主な種類

性病にはさまざまな種類がありますが、ここではよく見られる性病の種類に加え、それぞれの症状の特徴や治療法を解説していきます。

クラミジア

クラミジアは「Chlamydia trachomatis」に感染することで発症する性病です。

主な感染経路は性器間の接触ですが、オーラルセックスやアナルセックスによっても感染することがあります。また、母子感染で胎児や新生児に感染させてしまうケースもあるため注意が必要です。

クラミジアの主な症状は、尿道炎や膣炎、性器のかゆみや痛み、排尿時の痛みなどがあります。しかし、感染が軽度もしくは初期の場合、無症状であることが多いです。そのため、クラミジアに感染していることに気付かず性行為をして、感染拡大の一助となってしまうこともあります。

クラミジアは、予防策を講じながらも、定期的に検査を行い、早期発見と早期治療を徹底することが大切です。

クラミジアの治療法

クラミジアの治療には抗生物質が使用されます。一般的には、レボフロキサシンやアジスロマイシンなどの抗生物質が処方され、継続した服用で完治可能です。

レボフロキサシンが処方された場合は、1日1錠を7日間継続して内服しましょう。アジスロマイシンが処方された場合は、4錠を一気に服用することで効果を1週間持続させることができます。

レボフロキサシンアジスロマイシン
服用量1日1錠一度に4錠
服用期間1週間1日
ポイント・妊娠している場合はこちらを服用・1週間毎日服用するのが大変・効果持続期間中は飲酒を控える必要がある・下痢をしやすくなる

治療期間は通常、1週間から2週間程度ですが、自己判断で服用を止めずに、医師の指示に従って完全に治療を終えることが大切です。

淋菌感染症(淋病)

淋菌感染症(淋病)は、「Neisseria gonorrhoeae」に感染することで発症する性病です。

淋病の主な感染経路は、性器間や分泌物の接触です。淋菌は尿道や膣、肛門などの粘膜に感染し、炎症を引き起こします。淋病の合併症として、尿道炎や精巣上体炎、不妊症などを発症するリスクがあります。

それにより、男性では尿道からの異常な分泌物や排尿時の痛み、女性では膣からの異常な分泌物や性器のかゆみ・痛みなどが見られる場合があります。また、淋菌感染症は、男性と比べて女性が症状を自覚しづらいとされています。

淋菌感染症の治療法

淋菌感染症の治療には、一般的に抗生物質が使用されます。具体的な治療薬としては、スペクチノマイシンやロセフィンなどが有効です。

治療期間は通常、1回または毎日1錠の1週間の服用で完了することが多いですが、感染の状態や個人の状態によっては、長期間の治療が必要な場合もあります。

スペクチノマイシンロセフィン
投与方法注射点滴
投与時間・期間1分を1回15分程度を1回
使い分け淋菌性尿道炎の場合に投与咽頭淋菌の場合に投与

クラミジアと同時感染している場合もあります。医師の指示に従い、治療を進めていくことが大切です。

梅毒

梅毒は、「Treponema pallidum」に感染することで発症する性病です。

主な感染経路は、感染した相手との性的接触による性行為になります。また、妊娠した母親から胎児にも感染することがある性病です。

梅毒の症状は、4つの期に分けられて語られます。初期症状である第1期は、感染してから数時間で全身に病原体が拡散され、約3週間経つと、感染した箇所に軟骨のような硬度の「硬結」が生じるのが特徴です。

第2期になると、硬結の周囲も硬く盛り上がり、硬結を中心にして潰瘍を作り出します。第3期には、皮膚だけでなく骨や筋肉、臓器などあらゆる箇所に感染し、細胞を破壊してしまいます。

そして、第4期になると、大動脈炎や大動脈瘤、進行性麻痺といった症状が表れます。ただし、第3期と4期はほとんど見られなくなっているのが現状です。しかし、梅毒は進行すると、内臓や神経系に深刻な障害を引き起こす可能性があるため、早期の発見と治療が大切になります。

梅毒の治療法

梅毒の治療には、ペニシリンの投与が第1選択肢となります。国内でも、2021年9月に、世界的な標準治療薬となっている「ベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤」の製造と販売が承認されました。

治療の期間や方法は、感染の進行度合いや個人の状態によって異なりますが、通常は数週間から数ヶ月にわたる投薬が必要です。治療中は性行為を避け、感染を広げないように注意しなければなりません。

検査や治療が遅れると、後遺症が残り、日常生活に影響が出る場合もあるため、早い段階での治療と、治療後の定期的な検査やフォローアップを受けることをおすすめします。

HIV(エイズ)

HIVとは、Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)のことで、人の細胞に感染するウイルスです。このHIVに感染することさまざまな病気を発症します。この病気の状態をエイズ(AIDS:Acquired Immuno-Deficiency Syndrome、後天性免疫不全症候群)といます。

新規患者数は、横ばいの状態が続いています。主な感染経路は、感染した相手との性的接触や血液を介した感染、母子感染(妊娠・出産・授乳時)などです。

HIVは、感染初期、無症候期、エイズ発症の3期に分けられ、この間に免疫システムの崩壊が起こっていきます。初期症状として、インフルエンザのような症状が現れ、病期が進行すると、無症候の時期を挟み、再び発熱やリンパ節の腫れ、帯状疱疹といった症状を引き起こしやすくなります。

最終的に、免疫システムの低下によって、日和見感染症を発生しやすい状態になるのが特徴です。悪性腫瘍を発症することもあります。

HIVの治療法

HIV感染者の治療では、3種類以上の抗HIV薬を服用して治療を進める「多剤併用療法」が基本です。

複数の抗HIV薬を併用することで、ウイルスの増殖を抑え、免疫機能の維持や病状の進行を遅らせます。具体的な治療薬は、ウイルス量や患者の状態によって個別に決定されます。

国内で承認され、使われている薬剤の一部は次のとおりです。

  • ヌクレオシド系逆転酵素阻害剤:ジドプジン、ラミプジン、テノホビルなど
  • 非ヌクレオシド系逆転酵素阻害剤:ネビラピン、エトラビリンなど
  • プロアテージ阻害剤:インジナビル、リトナビル、ホスアンブリナビルなど

抗HIV薬は、体内からウイルスを完全に排除することはできません。あくまで、ウイルスの量を抑え続けて免疫力を回復させることが目的です。

そのため、エイズの治療は一生続ける必要があります。また、HIV感染者は感染拡大を防ぐために、安全な性行為の実践や注射器の共有を避けることも大切です。

ヘルペス

ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)の1型または2型に感染することで発症する性病です。

3~7日間の潜伏期間を経て、性器に小さい水泡やただれが生じるのが特徴です。感染経路は、感染者の皮膚や粘膜との接触や、唾液や体液を介した感染、ウイルスを含む体液が付着した物品への接触などがあります。

主な症状として、性器ヘルペスでは、発熱や性器周辺に発疹、痛みが生じます。初発の場合、発熱をはじめとした全身症状を伴うケースが多いのが特徴です。また、性器ヘルペス患者のうち6~7割が再発とされているため、再発予防や対策が非常に重要となります。

ヘルペスの治療法

ヘルペスの治療には、抗ヘルペスウイルス薬が使用されます。性器ヘルペスで割合の多い再発例に対しては、抗ヘルペスウイルス薬であるアシクロビル錠200mgを1日に5回、バラシクロビル錠500mgを1日2回、5日間服用し続けます。

しかし、注意点として、発症から24時間以内に服用を始めないと十分な効果が得られません。 また、症状の軽減や治癒期間の短縮に効果がありますが、ヘルペスウイルスを完全に除去することはできないことを把握しておきましょう。

ご紹介したウイルスの増加を抑え、症状の出現(再発)を防ぐことが目的です。

それには、医師の指示に従い、適切な治療を進めることと、免疫力の維持や適切な生活習慣を身に付けることが大切になります。2~4週間程度で自然治癒もされますが、再発を繰り返すため、必ず放置せずに医療機関を受診して治療を行いましょう。

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマは「human papillomavirus:HPV」によって発症する性病です。

主な感染経路は、性行為による直接感染が最も多く、性器、肛門、口腔の粘膜や皮膚の接触によって感染が広がります。他にも、分娩時に母子感染もするため、注意しなければなりません。

症状は、3週間~8か月程度の潜伏期間を経て、性器や肛門の皮膚や粘膜にイボ状の腫れや突起が現れるのが特徴です。しばしば痛みやかゆみを伴い、増殖や拡大することがあります。

尖圭コンジローマの治療法

尖圭コンジローマの治療にはいくつかの方法があります。

  • 薬物療法:イミキモド5%クリームを尖圭コンジローマに感染した箇所に塗布する治療法です。これにより、ウイルスの増殖を妨害し、病変の縮小や消失を促します。
  • 凍結療法:液体窒素を用いて病変を凍結し、破壊する方法です。ウイルスに感染した細胞が障害され、正常な皮膚や粘膜が再生されることが期待されます。
  • 手術療法:レーザーや電気メスを用いた手術による摘出や焼灼療法が行われる場合があります。

性病を予防する方法

ここでは、性病すべてに共通して行える予防方法をご紹介します。

性行為をしない

性病への感染を予防するには、性行為を避けることが最適な方法です。

性病は性行為によって感染するものであるため、性交渉を避けることで感染のリスクを大幅に低減できます。また、性行為をする場合でも、特定の相手に限定したり予防策を十分に取ったりすることで予防可能です。

パートナーとの良好な関係を築くためには、性行為は大切なものです。お互いの健康を守るためにも、安全に性行為を行うようにしましょう。

避妊具は必ず使用する

避妊具の中でも、避妊具(コンドーム)を使用することは、性病予防のために必要不可欠です。

正しい使用方法で使うことで、性器の分泌物やウイルス、細菌の感染を防ぎます。しかし、間違ったやり方で使用してしまうと、感染リスクの低減効果を発揮できないため、性行為の際には必ず正しく使用することが大切です。

また、避妊具にJISマークの入っている品質が確かなものを使用することと、一度の使用で捨てて新しいものを使うことも忘れずに行いましょう。

まとめ

性病は性的な接触によって感染する病気で、クラミジア、淋病、梅毒、ヘルペス、HIVなど、さまざまな種類があります。

それぞれの性病は特定の症状や合併症を引き起こす可能性があり、早期の検査と治療が大切です。適切な予防策の実践、定期的な検査の受診などが性病の予防に役立ちます。

また、性病に関して話すことに抵抗感のある人は少なくないでしょう。自治体によっては、匿名で性感染症の検査や相談を受け付けているところがあります。少しでも気になる点がある人は、自治体に問い合わせてみるのもおすすめです。

もし感染が判明した場合には、放置せず医師の指示に従って治療をしましょう。

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