日本でも感染者数が増加しているとニュースなどで目にする性感染症ですが、そのなかでもクラミジア感染症は、無症状で知らない間に感染を広めてしまう危険性のある性感染症です。
無症状のまま放置していると症状が悪化し、痛みを伴うだけでなく、将来的には不妊の可能性もあります。男性よりも女性が悪化した場合のリスクが高いとされていますが、合併症を引き起こしたり、不妊の原因・リスクとなるのは男女に共通しています。
ここでは、クラミジア感染症についての症状やリスク、予防法について解説していきます。正しい知識を持って、感染対策をしましょう。
クラミジアの症状
クラミジア感染症は、感染しても無症状であるケースが多いことが特徴です。無症状により治療を行なわないことで、下記のようなリスクがあります。
- 知らない間に他者へ感染を広げてしまう
- 重症化につながる
- 将来妊娠・出産をするときのトラブルにつながる
クラミジア感染症への知識を正しく持つことが大切です。下記のような症状や違和感を少しでも感じたときは、必ず病院で検査を受けましょう。
男性の症状
男性の症状として、下記のようなものがあります。
【尿道炎】
男性の症状で最も多いのが尿道炎です。主な症状として「排尿時の痛み」があります。そのほか性器のかゆみ、尿道から無色・乳白色・黄色っぽい分泌物や膿が出るなどの症状もあります。
【前立腺炎】
前立腺には痛みを感じる神経があまりないため、病気に気付かないこともあり、発見が遅れてしまう危険性が高まります。
前立腺炎の主な症状としては、下腹部、会陰(えいん)部、鼠径(そけい)部、内ももなどに感じる鈍い痛みです。
【副睾丸炎(精巣上体炎)】
副睾丸炎を発症すると、睾丸から鼠経部に激しい痛みを感じ、高熱を起こすこともあります。
また、この副睾丸には睾丸でつくられた精子を集める働きもあるため、両方の睾丸に炎症をきたした場合、将来不妊の原因となってしまうため注意が必要です。
女性の症状
女性の症状として、下記のようなものがあります。
【子宮頸管(けいかん)炎】
女性においては、初期に膣の奥・子宮の入り口である子宮頸管部粘膜に感染します。痛みを感じにくいため、症状に気付かないことも少なくありません。
しかし、クラミジア感染症に感染することで、膣内の抵抗力が下がり膣炎を引き起こす可能性があります。膣炎の症状は、性器のにおいやかゆみ、おりもの、性交痛などです。
【子宮内膜症・卵管炎・骨盤腹膜炎など】
クラミジア感染症の初期にはあまり起こらない症状ですが、症状が悪化して体の奥に侵入していくと、このような症状が起こる可能性もあります。
下腹部の痛みや生理痛、生理時以外に出血する不正出血などの症状があり、早産・流産などのリスクも高まります。
母子感染による新生児における症状
男性と比較して、女性の方が初期の段階で症状を感じにくく、発覚が遅れるケースが多いのもクラミジア感染症の特徴です。
そのため、妊婦健康診査で検査ができる産院や産婦人科も多いです。妊婦の場合は、母体だけでなく出産時に産道を介して母子感染するリスクもあります。
初期の段階で感染が発覚した場合は、治療によって出産前に完治することで母子感染を防ぐことが可能です。しかし、出産時に完治していない場合は帝王切開になることもあります。
新生児が母子感染をしていた場合、起こりうる症状は「新生児肺炎」や「結膜炎」です。治療は可能ですが、もし出産時に母体への感染が把握されていないと、産後すぐに症状が出るものではないため、新生児への感染発覚が遅れてしまいます。
クラミジアの治療法
クラミジア感染症の治療は、一般的に抗生物質の服用のみで、入院などの必要はありません。
ただし、国内ではクラミジア感染症の抗生物質は市販されていません。医師から処方される抗生物質が治療に必要なため、病院に必ず受診しましょう。一部では、海外の市販薬が出回っていますが、安全性も考慮して控えるべきです。
下記では、クラミジア感染症に処方される主な抗生物質をご紹介します。
クラミジア感染症で用いられる抗生物質
クラミジア感染症で用いられる抗生物質は、以下のようなものがあります。
【マクロライド系】
主な抗生物質 | 特徴 | 副作用 |
・ジスロマック(アジスロマイシン)・クラリスロマイシン | ・副作用が比較的少ない・単回服用療法に用いられる・妊婦にも使用可能 | ・下痢、腹痛が起こる可能性がある・まれに胃腸や肝臓障害、気管支喘息の治療薬との併用による副作用 |
【ニューキノロン系】
主な抗生物質 | 特徴 | 副作用 |
・シタフロキサン・レボフロキサン | ・抗菌力が強い・妊婦と小児の服用は厳禁 | ・発疹、めまい、下痢、頭痛、腹痛、吐き気、口内炎など |
このほかにも重症化した場合の抗生物質などもあるため、症状や持病がある場合は、医師に事前に伝えましょう。
また、抗生物質の服用は自己判断で中止せず、症状がなくても決められた期間服用し続けてください。
クラミジアを放置するとどうなる?
クラミジアは、無症状で気付かないことも多い感染症ですが、治療をしない限りは完治することのない病気です。
長年治療を行なわず放置することで、無症状の間にも体内で感染が進み、症状が悪化することもあります。また、クラミジア感染症による症状が悪化するだけでなく、抵抗力が下がるため、ほかの性感染症にも感染するリスクが高まります。
そのため感染者との接触があった場合や症状、体に違和感を覚えた場合は、速やかに病院を受診しましょう。
クラミジア性結膜炎を放置するリスク
クラミジアは、感染者の粘膜や体液などに触れ、その手で目を擦ると感染することがあります。これをクラミジア性結膜炎といいます。
主な初期症状は以下のとおりです。
【クラミジア性結膜炎の主な初期症状】
- 膿状の目やに
- 角膜の充血
- 耳前リンパ節の腫れ、むくみ
- 痛み
症状が進むとまぶたの裏に多数の突起物が現れ、この炎症によって充血や痛みが増していきます。
治療を受けずにさらに症状が進めば、結膜だけでなく角膜にも症状があらわれます。治療には、抗生物質を含む点眼薬・眼軟膏や内服薬を用います。
また、クラミジア性結膜炎は目にのみ症状が出るわけではなく、感染に気付かず放置することで体内にも症状が広がることもあります。その場合、男性であれば尿道炎、女性であれば子宮内膜症などあらゆる病気につながっていくため、早めの治療が必要です。
咽頭クラミジアを放置するリスク
クラミジア性感染症の主な感染原因は、性行為ですが、フェラチオやクンニリングスなどのオーラルセックスなどが原因で喉に感染する危険性もあります。これを咽頭クラミジアといいます。
咽頭クラミジアの主な初期症状は下記のとおりです。
【咽頭クラミジアの主な初期症状】
- 喉の痛み
- 咳、たん
- 発熱
しかしほとんどの場合が無症状で、喉の痛みや発熱しても風邪と間違ってしまい、性感染症が原因だと気付くことは難しいでしょう。
治療を行なわず感染が進行していくと、扁桃炎を引き起こすこともあります。
喉の奥にある扁桃が赤く腫れるだけでなく、白い膿が出たり痛みや発熱の症状があらわれます。さらに放置し続けていると上咽頭炎になる場合があるほか、難聴や中耳炎を引き起こす可能性もあるので、検査と治療が必要です。
咽頭クラミジアは抗生物質を1〜7日間服用して治療します。薬の種類や症状により服用方法は異なるので、医師の指示にしたがって正しく服用しましょう。
男性特有のリスク
男性のクラミジア感染で最も起きやすい症状は尿道炎です。
感染から1〜3週間が潜伏期間で、主に排尿時の痛みや尿道のかゆみを感じるほか、尿道口からやや粘液性の液体が出ることもあります。
感染に気付かず放置してしまうと、精巣上体炎を引き起こします。若い男性が精巣上体炎を起こすほとんどの原因は、クラミジア性感染症です。
精巣上体とは、副睾丸のことで睾丸(精巣)の後ろ側にあり、睾丸でつくられた精子を貯蔵しておく大切な器官です。
また、副睾丸には精子を貯蔵するだけでなく、精子を運ぶ器官という役割があるため、ここに炎症があることで通り道が塞がります。そうなると精子の活動にも影響が出てしまい、不妊の原因となるリスクがあります。
女性特有のリスク
女性はクラミジア感染の初期に子宮頸管炎を引き起こします。
下腹部の痛みやおりもの、出血などの症状により感染に気付くこともありますが、多くの場合は無症状で気付かないことが多いでしょう。症状があらわれた場合も、男性と比較して女性の方が軽症であることが多く、気付きにくいのも女性ならではの特徴です。
初期の症状が軽症であっても、悪化した場合に発症する合併症やリスクが男性より深刻であるため注意が必要です。
症状が進行し卵管にも症状があらわれると、子宮内膜症や卵管炎を引き起こします。子宮や卵管、卵巣など妊娠に必要な組織で炎症が起きると、着床障害や卵管障害、子宮外妊娠といった不妊の原因につながる危険性があります。
また、妊娠後にクラミジア感染症への感染が発覚し、正しく治療を行なわないと流産・早産のリスクが高まるほか、母子感染の恐れもあるので早期発見・治療が大切です。
クラミジアを予防するために実践すべきこと
クラミジア感染症は自然治癒しないため、治療が必要です。
完治には病院を受診し、医師による処置が不可欠なため、感染者との性行為などをして感染の恐れがある場合には、検査を必ず受けるようにしてください。
予防法を正しく理解して、クラミジア感染症への感染を防ぎましょう。
不特定多数の相手と性行為をしない
クラミジア感染症の主な感染原因は性行為です。
無症状であることも多く、感染に気付かず性行為を行なうと、その相手にも感染させてしまう恐れがあります。クラミジアに感染している人との接触では50%ほどの確率で感染するといわれています。
不特定多数の相手と短期間に性行為を行なうと、万が一感染をした場合に感染源の特定が困難です。
また、別の相手に感染させてしまうことも考えられます。不特定多数の相手と短期間に性行為を行なった場合には、定期的に検査を受けるなどの対策を取り、感染していないかどうかを確認しましょう。
コンドームを使用する
クラミジア感染症の感染経路は主に性行為で、感染者の粘膜や粘膜から分泌される体液との接触です。そのため、性行為の際には感染予防としてもコンドームを装着するとよいでしょう。
また性行為だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスのような類似行為の際も、粘膜との接触の予防としてコンドームを使用しましょう。
避妊のためにピルを使用している女性であっても、ピルでは性感染症の予防はできないので、コンドームを使用してください。
生理のときや体調がすぐれないときの性行為は避ける
生理中の膣内は充血し、非常にデリケートな状態です。性行為を行なってしまうと、膣内に傷をつけてしまうだけでなく、傷ついた粘膜は感染の確率も高まります。
またクラミジア感染症だけでなく、ほかの性感染症に感染するリスクも高まるため、生理中は性行為を行なわない方がよいでしょう。
生理中以外にも、体調がすぐれないときは免疫力が低下し、感染リスクが高まるので、体調が悪いときの性行為はできるだけ避けるなど感染予防をしましょう。
まとめ
クラミジア感染症の症状やリスクについて解説しました。感染しても無症状で気付かずに放置してしまい、悪化すると将来不妊の原因となる場合もあるため、早期の病院受診や治療が大切です。
クラミジア感染症は症状がない場合でも、治療を行なわないと完治しない感染症です。また、感染の主な原因は性行為ですが、目などの粘膜に触れてしまったり、喉の粘膜に接触したりすることでも感染します。さらに妊娠時に感染していることに気付かない場合、母子感染の可能性もあります。
予防法をきちんと理解し、安全な性行為を行なって、自分やパートナーが感染しないように対策をしていきましょう。
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